今日のような情報洪水の中で, 大学紀要や研究所年報はどのような役割を果たしているだろうか.紀要や年報には, 多くの場合レフリー制度がないので, これに原著論文を掲載するのは, いたずらにドクメンテーションにノイズをふやしているだけだともいわれかねない.レフリー制度のある論文誌はゴマンとあるのに, それに採用されないような論文が載るとなると"紀要ゴミ箱論"が生まれるのも当然であろう.しかし, 一方では紀要や年報の存在価値を否定できない面もある.つまり, 大学や会社での一年間の研究活動の記録として, 既発表論文のリストや抄録を掲載するのも一案かもしれないし, 製薬会社にとっては新薬承認申請にあたって公表を義務づけられているいわゆるネガチブデータの発表にも利用できるかもしれない.いずれにせよ紀要や年報のあり方を検討すべき時代がきていると思われる.
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