糖尿病の合併症である糖尿病性腎症は,進行すると末期腎不全に至り,人工透析を余儀なくされる.非糖尿病患者と比較すると,糖尿病患者は末期腎不全に至るリスクが約2倍高いことが報告されているが,2型糖尿病患者のうち実際に糖尿病性腎症を発症する割合はおよそ20〜40%である.そのため,糖尿病性腎症の発症リスクが高い患者を早期に層別化することで,腎不全の進展を予防するための効果的な治療を早期に開始することが可能となる.これを実現するためには,高い精度,特異度で腎機能の低下を予測するバイオマーカーの確立が求められる.
これまでに,2型糖尿病患者の腎不全の進展と関連がある新規バイオマーカーとして,midregional-proadrenomedullin(MR-proADM),soluble tumor necrosis factor receptor 1(sTNFR1),およびN-terminal prohormone brain natriuretic peptide(NT-proBNP)が報告されている.MR-proADMは,慢性腎不全の進行が認められた患者において,その血漿中濃度が高値であったことが報告されており,sTNFR1とNT-proBNPは,慢性腎不全の進展の予測マーカーとなることが報告されている.これら3種のバイオマーカーを組み合わせることで,更なる予測性能の向上が期待されるが,その点は明らかになっていなかった.本稿では,これら3種のバイオマーカーを組み合わせた際の2型糖尿病患者の腎機能低下の予測性能を評価した研究を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Dieplinger B.
et al.,
Kidney Int.,
75, 408-414(2009).
2) Niewczas M.A.
et al.,
J.
Am.
Soc.
Nephrol.,
23, 507-515(2012).
3) Kim Y.
et al.,
Am.
J.
Kidney Dis.,
65, 550-558(2015).
4) Saulnier P. J.
et al.,
Diabetes Care,
40,367-374(2017).
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