ファルマシア
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51 巻 , 4 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
目次
オピニオン
  • 太田 茂
    2015 年 51 巻 4 号 p. 281
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    このたび柴﨑正勝会頭の後を受けて,2015年4月より2年間日本薬学会会頭を務めさせていただくことになりました.
    日本薬学会は我が国では最も古い学会の1つとして1880年に発足して以来,薬学領域における中核的学術団体としての地位を保ち続けています.このように素晴らしい実績のある学会の更なる発展のため微力ながら精一杯貢献致す所存ですので,会員の皆様方のご支援を心よりお願い申し上げます.
    初代会頭である長井長義先生は,就任するにあたり「薬品を可及的速やかに人体に吸収されやすい形に変えること,生薬の有効成分を明らかにすること,化学合成技術を駆使して薬品を創製することを以て,世界に日本薬学を雄飛させよ」と会員に決意を促しておられます.長井先生のご指摘のように,私達も世界に開かれた学会として国際化を更に推進していくことが求められていると思います.また130年以上経過した現在においては,長井先生が示された研究領域に加えて医療薬学も重要な位置を占めております.これからの日本薬学会は基礎系分野,創薬や衛生系等の応用薬学分野に加え,医薬品の適正使用に関する領域も含んだ薬学を推進していくことはいうまでもありません.
    今後,日本薬学会を更に発展させるための課題として4点挙げさせていただきます.
    まず次世代を担う会員に対する支援についてです.伝統ある日本薬学会を次世代において更に輝かしい存在とするためには,是非必要なことであると思います.現在,柴﨑前会頭のリーダーシップのもと「長井記念薬学研究奨励事業」がスタートしております.本事業は薬学系の博士課程および博士後期課程の学生に対する支援です.本年度も継続して支援を行い,博士を取得して研究者として活躍する若手の育成をいたします.次に若手研究者についてですが,各部会においても若手会員活性化に対する取り組みはなされておりますが,将来の薬学会を担っていただく世代のニーズを反映させた学会運営を行うために,若手会員の意見を取り入れる仕組みを構築していこうと考えております.
    2番目は学術誌の活性化です.日本薬学会が発刊している学術誌はChem. Pharm. Bull.,Bio. Pharm. Bull.,薬学雑誌の3誌ですが,最近投稿数の減少が認められております.この3誌の活性化は重要な課題と認識しております.会員の皆様に活用される学会誌として,更に魅力あるものとするために具体的な目標を掲げて努力していきたいと思います.
    3番目は学会の国際化です.今年の年会から理事会企画として国際シンポジウムを行っておりますが,今後の年会においても英語のみで行うシンポジウムを徐々に増やしていき,海外からの参加者にも開かれた年会にしていければと考えております.
    4番目は会員増強です.会員数については30歳代の企業会員の減少が認められています.当然のことですが日本薬学会は大学,研究機関,医療機関,企業,行政等幅広い会員によって支えられております.その中で企業の方々に対しても,学会の有用性を具体的に伝えられるようアピールして参る所存です.
    これから2年間,皆様方のご支援どうぞよろしくお願い致します.
Editor's Eye
薬学がくれた私の道
最前線
  • 大熊 毅
    2015 年 51 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ケトンの不斉還元反応による光学活性第二級アルコールの合成は,長い研究の歴史を経て,ある種のケトン基質についてほぼ完璧なエナンチオ選択性を獲得するに至っている.この研究分野では,将来に向けて「何を作るか」に加えて「どう作るか」を考慮した反応開発が求められている.特に,工業的な大規模合成を志向した場合には,環境調和型の反応設計が必要となるだろう.
    筆者らは,これまでに「ケトン類の触媒的不斉水素化反応の開発」をテーマに数々の研究を行ってきた.この反応は図1に示すように,ケトンに水素分子を付加させるだけの最も単純で原子効率100%の物質変換である.反応の進行には「光学活性触媒」が必要であるが,そのエナンチオマーを使い分けることでアルコール生成物の任意のエナンチオマーを高純度に合成することができる.適切に設計された触媒は高い活性を示し,微量添加するだけで大量の生成物が得られる.一般に生成物の単離は容易で,抽出やカラム分離等の煩雑な操作を必要としない.このように,不斉水素化は高効率で環境への負荷が少なく,大規模合成に適した合成反応といえる.
最前線
セミナー
  • 木下 政人
    2015 年 51 巻 4 号 p. 305-309
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    少し前までは,脊椎動物で「遺伝子破壊(ジーンターゲティング)」といえば胚性幹細胞(ES細胞)が樹立されたマウスでのみ可能な技術であった.また,この方法では培養細胞中でごく低頻度で起こる相同組換を利用するため,選択培地での選別や受精卵への注入といった煩雑な操作が必要である.ところが,この数年間で急速に発展してきた,いわゆる「ゲノム編集技術」は,非モデル生物を含む多くの生物で驚くほど簡単に遺伝子破壊を可能にした.本稿では,ゲノム編集技術の基本的な原理について概説する.詳細なプロトコール等については他の成書をご参照いただきたい.
最前線
最前線
  • 加藤 博章
    2015 年 51 巻 4 号 p. 315-319
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ATP Binding Cassette(ABC)トランスポーターは,自らATPを加水分解して得られるエネルギーを用いて化合物を輸送する膜貫通型のタンパク質である.そのなかでも,P-糖タンパク質あるいはMDR1と呼ばれるABCB1は,多種多様な化学構造の分子を細胞外へと輸送する多剤排出トランスポーターであり,小腸,血液脳関門,肝臓,腎臓,生殖器に多く発現して,体外から侵入する異物から生体を防御している.しかし,投与した「薬」も排出してしまうことから薬物の吸収を低下させる原因となっており,特に,がん細胞がABCB1やABCC1,ABCG2などを過剰発現させることで,抗がん剤に対する多剤耐性を獲得してしまうことは,がん化学療法の大きな障害となっている.
    我々は,ヒトABCB1と構造および機能がよく似たホモログを好熱性真核生物シゾンCyanidioschyzon merolaeから発見し,その結晶構造を最高2.4Å分解能で決定した.さらに,CmABCB1に特異的な阻害剤を作成したところ,予想外の新規な結合メカニズムであることが明らかになった.本稿では,高分解能で明らかになったABC多剤排出トランスポーターの立体構造の特徴と新規阻害剤のメカニズムについて解説する.
話題
  • 泉 俊輔
    2015 年 51 巻 4 号 p. 320-323
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    科学の甲子園とは,高等学校等(中等教育学校後期課程,高等専門学校を含む)の生徒チームを対象として,理科・数学・情報における複数分野の競技を行う取組である.科学技術振興機構(JST)は,2011年度より科学の甲子園を創設し,全国の科学好きな高校生が集い,競い合い,活躍できる場を構築している.このような場を創ることで,科学好きの裾野を広げるとともに,トップ層を伸ばすことを目指している.また学校別に対戦することによって,科学好きの高校生がその学校のヒーロー・ヒロインとなることも目的としている.「科学の甲子園」の筆記競技の問題は,論理的思考力・判断力・表現力等を評価する大学のAO入試のような科学の問題が出されている.
    例えば,第1回の「科学の甲子園」地方大会では「重水で作られた氷は軽水に浮くか沈むか」という問題が出された.この問題を広島大学の理学部化学科の1年生10名に聞いてみると,30分以内に完答できた学生は6名に過ぎなかった.ただし,この学生たちには必要な定数は,化学便覧から探し出すように求めた.ところが,この問題よりはるかに難易度が高いと思われ,大学の入試問題によく出題される「軽水で作られた氷は軽水に浮くという理由を説明せよ」という問題には,10名中9名が完璧に答えられた.ここに,最近の学生の1つの弱点が存在する.彼らは,説明のために必要な定数を(自分で特に本から)見つけ出すことが恐ろしいほど不得意である.
    JSTの理科教育支援検討タスクフォース才能教育分科会の中で「科学の甲子園」の名称が上がってきたのは,2008年度の会議であったと記憶している.この頃社会的には経済産業省が提唱した「社会人基礎力」という内容が取り沙汰されており,社会が求める3つの人間力として[①前に踏み出す力(アクション) ②考え抜く力(シンキング) ③チームで働く力(チームワーク)]ということが言われ始めており,「科学の甲子園」もこのような力を育てる施策の1つであると思った.ただ最初の時点でJSTの意図としては,「科学の甲子園」というよりもアメリカで行われている「サイエンスオリンピアド」の文化を日本にも取り入れようという流れであったように思う.「科学の甲子園」は,以下の5つの点で「大学入試センター試験」や「数学オリンピック」など一連の「国際科学オリンピック」とは一線を画すものである.科学の甲子園推進委員会委員長の伊藤委員長の記者説明会(2014年7月16日)の資料によると
    ①学校で学ぶ内容に縛られない科学の問題への挑戦・達成感の成就
    ②難問解決に向けて,考える力の大切さの認識を醸成
    ③グループでの取組による,事前準備も含めたより高度な課題への挑戦とチームワークの醸成
    ④教科・科目の壁を越えた,分野にこだわらない課題に挑戦することによる,学びの視野の拡大
    ⑤生徒間交流の場の提供による,人的・知的レベルの向上への期待
    を目指す目標としている.
    2014年3月に開催された第3回全国大会には第1回,第2回を上回る各地域で合計6,704名のエントリーがあり,各都道府県の選考を経て選抜された47校が,写真のようにフラッグを持って入場した(図1).合計366名の高校生たちが,科学に関する知識とその活用能力を駆使して様々な科学的な課題に挑戦した.大会の概要や出場校の選考などの詳細は,ホームページを参照.第1回から第3回までの「科学の甲子園」は「甲子園」らしく兵庫県の会場で行われてきたが,2014年度の「第4回科学の甲子園全国大会」は,茨城県にて2015年の3月に開催される予定だ.この原稿は2014年11月に執筆しているので,誌面に掲載される頃には,新しい科学の甲子園の歴史が刻まれていることと思う.
    「科学の甲子園」では,筆記競技,実験競技,総合競技(ものづくり競技)の得点を加算した総合成績によって順位が決定する.2013度の「科学の甲子園」では,三重県立伊勢高等学校のチームが優勝,岐阜県立岐阜高等学校のチームが第2位,滋賀県立膳所高等学校のチームが第3位となった.そのほか,産学官の連携による科学技術系人材育成を推進する企業賞を含む,全ての成績についてはホームページを参照.
    「科学の甲子園」では,8名のチームで選手が競い合うが,それぞれの競技ごとに強いチームには特徴があるように思う.
セミナー
  • 柴山 恵吾
    2015 年 51 巻 4 号 p. 324-328
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    20世紀に入ってからペニシリンをはじめとする様々な抗菌薬が開発され,人類にとって大きな脅威である感染症から多くの人が救われてきた.しかし一方で,新たな抗菌薬が開発されると間もなく,その薬剤に耐性を獲得した細菌が出現し,薬剤の普及とともに拡散してきた.これまでに耐性が出現しなかった抗菌薬はなく,これは今後も続くと考えられる.近年,薬剤耐性菌は国境を越えて拡散し,世界的な問題になっている.菌種や薬剤によっては,耐性菌の割合が数年で大きく増加しているものもある.WHOは2013年に薬剤耐性菌に関する諮問グループを組織し,2014年に薬剤耐性菌に関する報告書を出した.WHOは,この中で今後取り組むべき課題の1つとして,薬剤耐性菌のグローバルサーベイランスの強化を挙げている.
    日本においては,薬剤耐性菌のサーベイランスとして厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infection Surveillance:JANIS)事業がある.本稿では,JANISの2013年の公開情報2)のデータを用いて,主要な各種耐性菌の国内での状況を紹介する.さらに,近年特に問題になっているカルバペネム耐性の腸内細菌科細菌について,日本でよく検出される耐性遺伝子や外国の状況との比較なども説明する.また,JANISが各参加医療機関個別に感染対策に活用していただくことを目的に返している報告書についても触れる.
話題
  • 原 英彰
    2015 年 51 巻 4 号 p. 329-331
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    日本の産業界では,近年グローバル化が急激に進んできている.製薬業界においてもその潮流は凄まじい勢いで押し寄せており,日本国内の外資系と内資系製薬企業の割合や売上げ比率を見ても,昨今の外資系企業の存在感は徐々に膨らんできている.さらに,人材面においても主要なポストに外国人を招聘する機会が内資系企業で徐々に増えてきている.このことは製薬企業の舵取りに重要な役割を担う上層部の人材として,グローバルな視点で海外と伍して戦える科学的解析力や経営管理能力の両方を兼ね備えた人材が求められているという証でもある.実際,製薬企業,特に外資系製薬企業の中には,博士号(PhD)と経営管理学修士号(Master of Business Administration:MBA)の両方を取得している人材が増えてきている.
    さて今回,岐阜薬科大学(岐阜市)と中京大学(名古屋市)は,上記の社会情勢に鑑み将来の製薬基幹産業の中枢で活躍できるグローバル人材の輩出を目的に,薬学(薬学または薬科学)博士号とMBAの両学位を取得する有能な学生の育成に他大学に先駆けて着手するため,両学位を取得できる連携協定を締結した.この共同プログラムにより,重要な基幹産業であるライフサイエンスの中の医療ならびに医薬品に関わる研究開発,生産・流通,販売,調剤,供給,経営,その他薬事衛生などの分野をリードできる多様なグローバル人材を育成することを推進していきたいと考えている.
最前線
  • 山田 陽一, 魚住 泰広
    2015 年 51 巻 4 号 p. 332-336
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    高活性で再利用可能な不溶性高分子金属触媒の開発は,環境調和を目指すグリーンケミストリー※ならびにハイスループットを目指すコンビナトリアルケミストリーなど,実践的有機合成化学において重要な研究課題である.グリーンケミストリーでは,有害な物質の生成や使用を根絶・低減するような化学物質や製造プロセスの創製,設計,応用が求められ,代替原料の利用,無害な試薬の使用,自然界プロセスの利用,代替溶媒の使用,より安全な化学物質の設計,代替反応条件の開発,エネルギー消費の極小化につながり得る.筆者らは,「環境にも人にも優しく,高い効率と選択性を持って望みとする化合物のみを簡便に迅速に自在に創り出す化学」を実現するために,シナジスティックな効果を発現する触媒反応システムの創出を目指している.
    実践的な意義付けもさることながら,触媒がmol%の1万分の1であるmol ppmの触媒量で機能し,再利用可能となるためのdriving principle(駆動原理)の学理を見いだすことが,アカデミアにとって重要であると考えている.その一端を2005年に「次世代型固相担持遷移金属触媒」のタイトルでファルマシア「最前線」に寄稿しているので,本稿では当研究室での最近の成果について紹介する.
最前線
  • 中道 範隆, 加藤 将夫
    2015 年 51 巻 4 号 p. 337-341
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    思考や感情,呼吸,心拍,消化といったあらゆる生体活動の根源である脳機能は,神経細胞が情報伝達を行うことにより担われている.情報伝達の調節システムとして,神経細胞膜上には特定の情報伝達物質に対し高い選択性と親和性を示すトランスポーター(生理的トランスポーター)が発現している(図1,a).これらは伝達物質の取り込みによって,情報伝達の制御あるいは伝達物質の再利用に働く.また,細胞内に侵入した低分子異物や細胞内で発生した代謝物を細胞外へと排出する排出トランスポーターの発現も知られる(図1,b).これらは神経細胞を生体異物から守るシステムと考えられる.生理的トランスポーターや排出トランスポーターとは別に,特定の化合物に高い親和性を示さず幅広い基質認識性を有する異物取り込みトランスポーターの機能的な発現が,近年報告されつつある(図1,c).高度な脳機能の維持に働く神経細胞に生体異物や薬物等を取り込むトランスポーターが存在すること自体が謎であり,神経細胞におけるその役割はほとんど明らかとなっていない.これらの遺伝子欠損動物がいずれも,少なくとも正常時の中枢機能には目立ったフェノタイプを示していない点も,その役割の解明を困難にしている.著者らはこのテーマに取り組み,1つの仮説として,その輸送特性から,正常時には生理的トランスポーターの補助的役割を果たす(図1,左)一方,病態時においてシナプス間隙中に過剰に放出された情報伝達物質を回収し神経毒性を回避する(図1,右),いわゆる疾患トランスポーターとしての役割があるのではないかと考えている.本稿では,神経細胞に発現するトランスポーターについて概説するとともに,異物取り込みトランスポーターの中でも有機カチオントランスポーターに着目し,神経細胞における役割を考察する.
FYI(用語解説)
  • 瀬名 秀明
    2015 年 51 巻 4 号 p. 342_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    分化した体細胞に転写因子群を導入することで,多能性幹細胞であるiPS細胞を作製し,そこから心筋や神経,肝細胞などに誘導して作製することが想定されてきた.しかし最近の研究により,多能性幹細胞の段階を経ずに(ダイレクトに)直接誘導できる(リプログラミング)ことが明らかになってきた.さらに最近では,ダイレクトリプログラミングを培養系の中ではなく,生体内で行う再生医療技術も研究されている.例として,心臓の中の線維芽細胞などの非心筋細胞に対して特異的な刺激を行うことで,生体内で直接心筋細胞を作製し,病気になった心臓を治療することを目指した研究が挙げられる.
  • 柴山 恵吾
    2015 年 51 巻 4 号 p. 342_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    国,地域,病院,または病棟ごとに分離された細菌の薬剤感受性試験のデータを集計し,それぞれの菌種で各種抗菌薬について耐性,中間,感性の菌がどれくらいの割合であるのかを図や表にしたもの.薬剤耐性菌対策を検討していくための重要な基本情報となる.また,臨床現場における治療薬のガイドラインを作成する際には,重要な参考情報となる.さらに,病院や病棟ごとでデータの経時的な変化を見たり,そのデータを地域や国全体のデータと比較することで,感染制御がうまくできているかどうかを評価することにも用いられる.
  • 原 英彰
    2015 年 51 巻 4 号 p. 342_3
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    MBAとは,master of business administrationの略称であり,日本では経営管理学修士号と言い,経営学の大学院修士課程を修了すると与えられる.MBAの目的は,経営者や経営をサポートするビジネスプロフェッショナルを短期間に育成することである.一般的に,この大学院はビジネススクールと呼ばれており,主に社会人を対象に,経営に必要な知識や能力を修得することができる.このMBAコースは,財務会計,戦略とオペレーション(経営,戦略,マーケティング,生産管理,国際ビジネス戦略),組織/人材マネジメントなどで有機的に構成され,さらにビジネス・スキルの向上を目指す実務科目を開設している.これに経済を理解するためのマクロ・ミクロ経済学が加わり,基本的なMBAの科目が構成される.
  • 山田 陽一, 魚住 泰広
    2015 年 51 巻 4 号 p. 342_4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    グリーンケミストリーとは,有害な物質の生成や使用を削減もしくは除去するような化学物質や製造プロセスの創出,設計,応用である,と定義されている.サスティナブルケミストリーとも呼ばれ,環境調和型,環境負荷を軽減した,環境に優しい化学のことをいう.Paul T. AnastasとJohn C. Warnerによりグリーンケミストリーの12箇条が提唱され,「廃棄物は出してから処理ではなく,出さない.原料をなるべく無駄にしない形の合成をする.人体と環境に害の少ない反応物・生成物にする.機能が同じなら,毒性のなるべく小さい物質をつくる.」など,害を出さないことを第一とする化学の方向性12箇条が示されている.
薬薬連携つながる病院・薬局
  • 松原 和夫
    2015 年 51 巻 4 号 p. 343-345
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    質が高く,安心・安全な医療を求める患者・家族の声が高まる一方で,医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊が指摘されるなど,医療の在り方が根本的に問われる今日,「チーム医療」は,我が国の医療の在り方を変え得るキーワードとして注目を集めている.厚生労働省も2010年4月30日付けで医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を発出し,患者の状況に的確に対応した医療を提供する「チーム医療」を推進するように指示している.そのようななか,入院医療において薬剤師が主体的に関与するチーム医療は進展を遂げつつあるといえる.
    一方で,医療は外来(在宅)へとシフトし,保険薬局の薬剤師には的確な服薬指導と医師(病院)への情報のフィードバックが求められている.つまり,外来の患者に良質な医療を提供するためには,保険薬局の薬剤師も医療チームの一員となる必要性を示す.例えば,がん化学療法に当たって病院薬剤師は,レジメンのチェック,抗がん剤の説明や副作用モニタリング,支持療法の提案などを実施している.しかし,最近は分子標的薬など経口抗がん剤が増加しており,患者の服薬状況の把握や副作用が発現した場合の対応など,病院薬剤師が対処しにくい場面が増えている.このような場合,保険薬局の薬剤師が医療チームの一員として積極的に関与することによって,化学療法の有効性と安全性が担保できる.また,血糖コントロールや喘息治療などにおいても,同様な病診薬連携によるチーム医療が必要である.これらのためには,病院と保険薬局が密接に連携する必要があり,「トレーシングレポート(施設間情報提供書)」などの情報ツールを有効に利用することが求められる.また退院時には,退院時服薬サマリーとして保険薬局に情報提供し,患者の薬学管理がシームレスに入院から在宅に引き継がれることが重要である.
    本稿においては,病院と薬局における患者情報の共有(病診薬連携)について,京都大学医学部附属病院(京大病院)における例を紹介する.
専門・認定薬剤師を知る
  • 牧野 好倫
    2015 年 51 巻 4 号 p. 346-348
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    がん医療に携わる薬剤師に初めて認定制度が発足したのは平成18年度のことである.日本病院薬剤師会が設立した「がん専門薬剤師」が現在の病院勤務の薬剤師における認定制度の先駆けとなり,今日ではいろいろな専門分野で薬剤師の認定制度が形作られている.平成26年度診療報酬改定では「がん患者指導管理料3」が新設され,薬剤師が抗悪性腫瘍剤の投薬または注射の必要性等について文書により説明を行った場合に算定が可能となった.算定の施設基準として,一定の要件を満たした薬剤師の配置が必要とされており,がん領域の認定は,チームという概念ではなく,薬剤師個人に与えられる称号として,とても重い責任を担うべき医療従事者として認められたといっても過言ではないだろう(もちろん,この診療報酬は医師であっても算定は可能である).それはなぜだろうか.
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
トピックス
  • 藤木 勝将
    2015 年 51 巻 4 号 p. 356
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    有機合成では,目的化合物を幾つかのブロックに分け,それらをつなぎ合わせていく収束的合成法がよく用いられる.しかし,結合形成の足がかりとなる官能基が少ない脂質などの分子には,上記の合成戦略はとりにくい.最近Aggarwalらは,独自に開発したカルバメートとボロン酸ピナコラートとのカップリング反応を繰り返し用いて,ヒト型結核菌細胞壁を構成する脂質に含まれるヒドロキシフチオセラン酸1の収束的合成を達成したので紹介する.なお,1はヒト型結核菌の発病メカニズムに重要な関連性があると考えられており,生物学的にも興味深い化合物である.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Stymiest J. L. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 46, 7491-7494 (2007).
    2) Rasappan R., Aggarwal V. K., Nature Chem., 6, 810-814 (2014).
    3) Pischl M. C. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 52, 8968-8972 (2013).
  • 津﨑 康則
    2015 年 51 巻 4 号 p. 357
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,医薬研究において,合成中盤以降で官能基を導入する“late-stage functionalization”という概念が注目を集めている.例えば,化合物合成の終盤で炭素―水素結合を切断し様々な官能基の導入が可能になれば,「活性のある構造」を保持したまま新規な誘導体合成が簡便に行えるため,探索合成段階の効率化につながると考えられる.またこの手法を用いることで,有望化合物のスケールアップ合成の際にも幅広く適用可能な共通中間体を利用できることから,納期短縮に寄与する.しかし,医薬品の候補となる化合物は通常複雑な構造を有しており,現状ではこの目的に使用可能な反応は限られている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hartwig J. F. et al., Science, 342, 956-960 (2013).
    2) Hartwig J. F. et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 10139-10147 (2014).
  • 山野 喜
    2015 年 51 巻 4 号 p. 358
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    生物活性物質の生理作用を理解するには,その標的となるタンパク質との相互作用様式を明らかにすることが重要である.生物活性物質との相互作用の結果,標的タンパク質の機能がどう変化するかを解明することで副作用を予測したり,より優れた薬剤の開発などにも役立つ情報が得られる.生物活性物質とタンパク質の相互作用は複雑であるが,その詳細な検討から新たな知見が得られることも多い.今回は,その一例としてScheepstraらにより行われたホノキオール(1)とレチノイドX受容体(RXR)との相互作用を明らかにした論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Scheepstra M. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 6443-6448 (2014).
    2) Kotani H. et al., J. Nat. Prod., 73, 1332-1336 (2010).
  • 吉田 賢史
    2015 年 51 巻 4 号 p. 359
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    塩化は,医薬品原薬の物性改善に用いられる最も一般的な方法である.一方で,塩の原薬は製剤中で脱塩し,品質低下を引き起こすリスクがあるため,製剤中でのフリー体化を予測する定量的手法の確立がしばしば求められる.塩基性薬物では,空気中の水分により固体表面に生じる溶液のpHがフリー体化に影響し,フリー体と塩の固液平衡が同時に成立するpHmaxを上回ると,フリー体化が引き起こされる(図1).Merrittらは,pHmaxと製剤添加物を懸濁した状態のpHを比較してフリー体化を定量する予測式を構築したが,予測精度の改善に他の因子を追加する必要性を論じている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Stephenson G. et al., J. Pharm. Sci., 100, 1607-1617 (2011).
    2) Merritt J. et al., Pharm. Res., 30, 203-217 (2013).
    3) Hsieh Y., Taylor L., Pharm. Res., 32, 549-561 (2015).
  • 松岡 正城
    2015 年 51 巻 4 号 p. 360
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ネクロトーシスは,近年明らかとなったプログラム細胞死の1つで,偶発的に起こるネクローシスとは異なり,シグナル伝達を介して引き起こされるネクローシスと位置付けられている.この機構は腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)が活性化した際に惹起される細胞死がアポトーシス経路を阻害した場合でも進行することから発見された.形態的な特徴として,ネクロトーシスを起こした細胞はネクローシスで認められる細胞の膨潤化を生じるが,アポトーシスの際に認められる核の凝集などは起こらない.生体において,このネクロトーシスは,免疫や炎症,組織の恒常性の維持,胎生期の発達における細胞死経路に必須であることが明らかとなっている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Christopher P. D. et al., Cell, 157, 1189-1202 (2014).
    2) James A. R. et al., Cell, 157, 1175-1188 (2014).
  • 斎藤 顕宜
    2015 年 51 巻 4 号 p. 361
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    オピオイドδ受容体(DOP)には,鎮痛作用,鎮咳作用,抗うつ・抗不安様作用といった様々な薬理作用を持つことが明らかにされており,これまでにDOPをターゲットとした創薬が注目されてきた.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nozaki C. et al., Br. J. Pharmacol., 171, 5376-5386 (2014).
    2) Whalen E. J. et al., Trends Mol. Med., 17, 126-139 (2011).
    3) Pradhan A. A. et al., Trends Pharmacol. Sci., 32, 581-590 (2011).
  • 阿部 太紀
    2015 年 51 巻 4 号 p. 362
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    食生活の欧米化に伴い脂肪肝の罹患者数が年々増加しており,過剰な脂肪蓄積と炎症反応を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)が注目されている.NASH 発症機序には不明な点が多く残されているが,現段階ではTwo-hit theoryが強く支持されている.First hitは高脂肪食摂取などに起因した肝臓への脂肪蓄積である.ここにsecond hitとして生体内ストレス(脂質過酸化や炎症性サイトカインなど)が加わり,NASHになると考えられている.これらsecond hitは,それ自身がDNA傷害作用を有し,肝細胞がん(hepatocellular carcinoma:HCC)発症のリスクファクターとなる.また,多くのNASH患者はインスリン抵抗性を合併しており,インスリン抵抗性の発現はNASH発症の重要な経路と考えられる.しかし,全てのNASH患者がインスリン抵抗性を示すわけではなく,インスリン抵抗性非依存的なNASH発症機構の存在が指摘されている.本稿では,小胞体(endoplasmic reticulum:ER)ストレスがインスリン抵抗性非依存的にNASHやそれに続くHCCの発症リスクを増大させる可能性について,Nakagawaらの報告を中心に概説する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mehta K. et al., Nature Rev., 60, 289-293 (2002).
    2) Nakagawa H. et al., Cancer Cell, 26, 1-13 (2014).
    3) Rutkowski D. T. et al., Dev. Cell, 15, 829-840 (2008).
    4) Hotamisligil G. S., Cell, 140, 900-917 (2010).
  • 亀井 敬泰
    2015 年 51 巻 4 号 p. 363
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    血友病とはX連鎖劣性遺伝形式を示す先天的な出血性疾患である.血友病患者全体の8割以上は,血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)の欠乏が原因とされる血友病A患者である.FⅧは血液凝固内因系に関与するタンパク質であり,トロンビンによる活性化を受け,活性型第Ⅸ因子と複合体を形成する.一連のカスケードの後,最終的にフィブリンを形成し止血する.FⅧ製剤は,血友病A患者の出血時の補充に使われるのみでなく,出血予防を目的とした定期補充療法として幼児期から長期間にわたり投与される.しかし,FⅧの血中半減期は約12時間と短く,血中FⅧ濃度を0.01U/mL以上に維持するためには2~3日おきの投与が必要となる.FⅧ製剤は非常に高額であることから,患者家族の経済的な負担は大きい.加えて,血友病A患者の一部の症例では,FⅧ補充療法開始後の早い段階でインヒビター(抗FⅧ抗体)が産生されるため,FⅧの効果が低下する.したがって,患者に優しいFⅧ補充療法を実現するためには,血中でFⅧを長時間安定に保持し,さらにインヒビター産生を誘導しない製剤の開発が必要である.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Shetty K. A. et al., J. Pharm. Sci., 104, 388-395 (2015).
    2) Bovenschen N. et al., J. Thromb. Heamost., 4, 1487-1493 (2006).
    3) Peng A. et al., AAPS J., 12, 473-481 (2010).
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