寄生植物は,他の植物に寄生し,水分や栄養を吸収して生きる植物である.ハマウツボ科の植物はほとんどが寄生植物であるが,なかでも最も有名なストライガは,アフリカなどでイネ科穀物に寄生し,深刻な農業被害を引き起こしている.また,日本にもナンバンギセルやコシオガマなどの寄生植物が存在し,多くの有用植物の生育が阻害されている.これらのことから,ハマウツボ科寄生植物の駆除を目的とした寄生メカニズムの解明が行われている.
これまでに明らかにされている主な3例を挙げる.①1根に「吸器」と呼ばれる特殊な寄生器官を形成し,宿主の根に侵入し,維管束から水や栄養を奪う.②宿主との間にmRNAの移動を伴う.③同科寄生植物ヤセウツボ(
Orobanche minor)の生育培地に芳香族アミノ酸 (AAAs:チロシン,フェニルアラニン,トリプトファン)を添加すると,その発芽や幼根の成長が阻害される.本稿では,③の知見をもとに,関連遺伝子導入によりAAAs産生量を増加させたタバコ(
Nicotiana tabacum)を作製し,エジプトハマウツボ(
O. aegyptiaca)の成長抑制に及ぼす影響を検討したOlivaらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Wakatake T.
et al.,
BSJ-Review,
7, 241-249(2016).
2) Fernández A. M.
et al.,
Front.
Plant Sci., online 17 May 2017.
3) Oliva M.
et al.,
Front. Plant Sci., online 12 Jan. 2021.
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