生薬には多様な薬理作用を有するものが多い.それは,生薬が多成分から成ることに起因すると考えられる.生薬の薬理作用を検討する場合,
in vitro試験と
in vivo試験を組み合わせて評価されることが多い.その際,
in vitro試験で有効性を示す生薬が
in vivo試験でも効果を発現するには,有効成分が体内に吸収され,標的部位に適切な濃度で到達することが必要である.しかし,消化管からの吸収は化合物の分子量や脂溶性など様々な要因に影響されるため,
in vitro試験で活性の高い化合物が必ずしも体内に吸収されるとは限らない.このことが,生薬に含まれる活性成分の特定を困難にしている一因として考えられる.そこで,あらかじめ化合物の細胞膜透過性について評価することが,消化管からの吸収の程度を予測し,
in vitroと
in vivo試験の有効性を科学的に考察するための一助になると考えられる.本稿では,クコ(
Lycium barbarum L.)の果実を基原とする生薬クコシ由来の多糖類(LBP,>10kDa)について,これまで知られていなかった小腸膜透過性を
in vitro試験で評価し,薬効との関係を検討したFengらの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Zhao Y. H.
et al.,
J.
Pharm.
Sci.,
90, 749-784(2001).
2) Feng L.
et al.,
Molecules,
25, 1351(2020).
3) Artursson P., Karlsson J.,
Biochem.
Biophys.
Res.
Commun.,
175, 880-885(1991).
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