一般的な熱傷の初期治療では,感染予防に抗菌効果を有する外用剤の使用が推奨される.その後慢性期へ移行すると,黒色または黄色の壊死組織が生じるが,壊死組織の残存は創傷治療の妨げとなることから早期に除去する必要があり,その手法は外科的手法と化学的手法がある.出血リスクや疼痛の訴えなどの理由で外科的手法が行えない場合,化学的手法としてタンパク質分解酵素を主薬とするブロメライン軟膏またはスルファジアジン銀を用いて壊死組織の分解を促す.熱傷と同様に壊死組織を生じる褥瘡において,近年,早期の壊死組織除去を目的としてスルファジアジン銀クリームとブロメライン軟膏の混合外用剤を使用した症例が報告されているが,スルファジアジンとブロメラインが結合し,酵素活性が減弱する可能性が示唆されている.
本稿では,早期の壊死組織除去による創傷治癒促進を目的として新たなタンパク質分解酵素を見いだし,スルファジアジン銀クリームと混合した外用剤の治癒効果について検討した事例を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) 一般社団法人日本熱傷学会学術委員会,熱傷診療ガイドライン〔改訂第3版〕,熱傷,
47,S42-43(2021).
2) 大岩育江ほか,褥瘡会誌
,22,125-130(2020).
3) ゲーベンクリーム インタビューフォーム, 田辺三菱製薬(株),2013,pp. 38.
4) Al-Dhuayan I.
et al.,
Pharmaceutics,
13, 923(2021).
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