ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
59 巻, 3 号
選択された号の論文の40件中1~40を表示しています
目次
  • 2023 年 59 巻 3 号 p. 172-173
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    特集:生命と金属~その動態制御と解析法の最前線~
    特集にあたって:金属は生命にとって必須である.金属の生理作用発現機構および疾患との関連は古くから研究され,かつては毒として認識されていた金属の重要な生理機能が次々と明らかになっている.近年においてはそれぞれの金属の量と分布だけでなく,どのような元素と結びつき,どのような分子,複合体となっているかも重要だということが分かってきている.新たな解析装置,手法の開発,研究者の独創的なアイデア,アプローチが研究を大きく進展させてきており,本号では,こういった生命と金属の最前線を紹介させていただく.
    表紙の説明:近年,生命と金属の関わりは,どれだけの量の金属がいつ(When),どこに(Where)に存在するのか?だけでなく,どのような分子を形成しているか(What),どのように(How)利用されているのかも重要となっている.こういった研究と,それを支える解析技術を表した.
オピニオン
Editor's Eye
最前線
  • ダイナミクスと生理/病理的意義,重金属毒性に対する作用
    有澤 琴子, 外山 喬士, 斎藤 芳郎
    2023 年 59 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    必須微量元素セレンは、肝臓で合成・分泌される血漿セレン含有タンパク質 セレノプロテインP (SeP) を介して全身に輸送される。SePは受容体を介したセレン輸送に加え、重金属に対する生体防御作用を担う。一方、SePの発現異常が糖尿病発症にも関与することが明らかとなってきた。我々はSePを軸として,セレンダイナミクスの理解とその生理的・病理的意義、および重金属毒性に関する衛生薬学的意義の解明に取り組んでいる。本項では、SePの構造と機能に関して解説するとともに、我々の最近の取り組みについて紹介する。
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 3 号 p. 222
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和4年12月23日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 3 号 p. 223-225
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,58巻12号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
  • 鄭 智恵
    2023 年 59 巻 3 号 p. 226-227
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    慢性骨髄性白血病(CML)では,9番染色体と22番染色体の相互転座により生じた融合タンパクBCR::ABL1が恒常的に活性化することで,白血病細胞の増殖や不死化が惹起される.現在の治療の主体はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)だが,2次治療以降では薬剤感受性や前治療で発現した有害事象を考慮する必要があり,治療ラインが進むにつれて選択可能なTKIが少なくなることが課題とされている.
    セムブリックス錠(一般名:アシミニブ塩酸塩,以下本剤)の臨床開発では,2014年より国際共同第Ⅰ相試験(X2101試験)が開始され,その後,国際共同第Ⅲ相検証的試験(A2301/ASCEMBL試験)で,2剤以上のTKIによる治療歴のある慢性期CML患者に対する有効性及び安全性が示された.我が国では,「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」を効能又は効果として,2022年3月に承認を取得した.なお本剤は,2021年8月に希少疾病用医薬品に指定されている.
新薬のプロフィル
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 寄立 麻琴
    2023 年 59 巻 3 号 p. 238
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    Magnetic resonance imaging(MRI)は,体内を非侵襲的に可視化できる極めて強力なイメージング手法である.特定の臓器のコントラストを更に向上させる目的で,MRI造影剤が用いられるが,最もよく使用されるガドリニウムイオン(Gd3+)錯体の毒性が明らかになり,問題視されている.Caravanらは,Gd3+よりも毒性が低く,それに次ぐMRI増感能を示すマンガン(Mn2+)錯体を精力的に研究してきた.放射性同位体52Mnを利用したPET-MRIを駆使し,線維化した肝臓を選択的かつ明瞭に検出するMRIプローブが開発されたため,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Caravan P. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 15548–15557(2015).
    2) Caravan P. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 16553–16558(2022).
    3) Kagan H. M. et al., Path. Res. Pract., 190, 910–919(1994).
    4) Tircsó G. et al., J. Inorg. Biochem., 163, 206–213(2016).
  • 髙橋 さやか
    2023 年 59 巻 3 号 p. 239
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,オートタキシン(ATX)のⅠ~Ⅳ型阻害剤の部分構造を組み合わせ,ユニークな「Ⅴ型」阻害剤を創製した文献を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Clark J. M. et al., J. Med. Chem., 65, 6338-6351(2022).
    2) Zhao Y. et al., Biochim. Biophys. Acta Mol. Cell Biol. Lipids., 1831, 86-92(2013).
    3) Bain G. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 360, 1-13(2017).
  • 迫田 凌太
    2023 年 59 巻 3 号 p. 240
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)は指定難病の1つであり,TNF-αなどを標的とする生物学的製剤の登場により,その治療成績は改善したが,難治性症例においてその効果は限定的である.そのようななかで,中国ではUCに対して経験的に使用されてきた生薬の青黛(Indigo naturalis: IN)の作用を検証するための臨床試験が行われ,有用性が報告された.INは,インジゴをはじめとした芳香族炭化水素受容体(AhR)のアゴニストを多く含み,AhRの活性化は制御性T細胞(Treg)の分化を誘導するという報告があることから,これまでのUC治療薬とは異なる機序で効果を発揮すると考えられた.しかし,その詳細な機序については不明である.そこで本稿では,UC治療におけるINの作用機序について検討したYoshimatsuらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Naganuma M. et al., Gastroenterology, 154, 935–947(2018).
    2) Pot C., Swiss Med. Wkly., 142, w13592(2012).
    3) Yoshimatsu Y. et al., Cell Rep., 39, 110773(2022).
    4) Sugimoto N. et al., Int. Immunol., 18, 1197–1209(2006).
    5) Ohkura N. et al., Immunity, 38, 414–423(2013).
  • 徳永 裕二
    2023 年 59 巻 3 号 p. 241
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    複雑に折りたたまれたタンパク質の立体構造情報は,その機能を理解するために本質的に重要であると同時に,合理的な分子設計に基づく医薬品開発においても重視されている.今日,X線結晶構造解析,核磁気共鳴(NMR)法,クライオ電子顕微鏡,および計算科学的手法の発達に伴い,タンパク質構造決定は飛躍的に進歩した.一方で,酵素反応の時定数や分子結合の親和性などの特性を,静止した立体構造のみから定量的に予測することは難しい.ここには,タンパク質が動的平衡の中で形成する自由エネルギーの高い状態の関与が示唆されている. しかし,10%に満たない低存在比の高エネルギー状態の構造解析は技術的に高難度であり,報告例は限られていた.本稿では,溶液NMR法を用いて高エネルギー状態のタンパク質の立体構造解析に挑戦したStillerらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Boehr D. D. et al., Science, 313, 1638–1642(2006).
    2) Korzhnev D. M. et al., Science, 329, 1312-1316(2010).
    3) Stiller J. B. et al., Nature, 603, 528-535(2022).
    4) Hass M. A. S. et al., J. Biomol. NMR, 61, 123–136(2015).
  • 加納 豊
    2023 年 59 巻 3 号 p. 242
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    ヒトの染色体は二倍体であり,安定な核型は遺伝的な恒常性に関与している.一方,四倍体細胞などの全ゲノム倍加(whole genome duplication: WGD)は,ヒトのがん細胞で頻繁に見られることがよく知られており,異常な有糸分裂による染色体分配の失敗により不均等分配やWGDが起こる.WGDの起きた細胞で遺伝的に不安定になるメカニズムは諸説あるが,詳細は分かっていない.本稿では,これまでの諸説とは異なる観点から,WGDによる腫瘍形成メカニズムを解明した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zack T. I. et al., Nat. Genet., 45, 1134–1140(2013).
    2) Storchova Z., Pellman D., Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 5, 45–54(2004).
    3) Gemble S. et al., Nature, 604, 146–151(2022).
  • 原 雄大
    2023 年 59 巻 3 号 p. 243
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    神経膠腫(グリオーマ)は,グリア細胞が腫瘍化した悪性脳腫瘍の1つである.そのうち,最も悪性度が高いものが膠芽腫(グリオブラストーマ)であり,神経膠腫の約4割を占める.膠芽腫は,5年生存率が約10%,平均余命が約14か月と非常に難治性のがんであり,より詳細な病態発症機序の解明が望まれている.これまで,末梢より脳に浸潤したマクロファージや脳に常在するミクログリアがその病態に重要な役割を果たすことが示されてきた.一方,アストロサイトは,グリア細胞の1種であり,脳内に最も多く存在する細胞である.その役割は多岐にわたり,血液脳関門の形成や栄養因子等の貯蔵・供給,炎症反応の調節などを担う.これまでに,神経炎症や神経変性疾患など様々な疾患への関与が報告されているが,膠芽腫を含む悪性脳腫瘍への寄与は不明であった.本稿では,アストロサイトが膠芽腫に与える影響を解明した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Pyonteck S. M. et al., Nat. Med., 19, 1264–1272(2013).
    2) Dumas A. A. et al., EMBO J., 39, e103790(2020).
    3) Perelroizen R. et al., Brain, 145, 3288–3307(2022).
  • 菱沼 英史
    2023 年 59 巻 3 号 p. 244
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    シトクロムP450(CYP)はほとんどすべての生物に普遍的に存在するモノオキシゲナーゼであり,遺伝子スーパーファミリーを形成している.ほ乳類のCYPは脂肪酸やステロイドなどの生体内物質のほか,医薬品や生体異物など多くの基質の酸化反応を触媒する.ヒトでは18ファミリー,57のCYP遺伝子が存在することが知られており,主にCYP1~3のファミリーが医薬品や環境化学物質などの代謝の半数以上に関与している.CYP分子種はそれぞれ基質特異性や発現誘導,阻害の特性を有しており,医薬品の開発段階や多様な化学物質の曝露による生体影響を評価するには,それらの代謝に係る分子種や寄与度および代謝反応生成物を特定することが重要である.
    近年,分析装置などの代謝物測定機器や,化学物質の構造同定および代謝部位を予測するためのソフトウェアツールが開発され,薬毒物代謝の解析技術の進展がみられる一方で,スタンダードとなる代謝物の評価法は存在しないのが実状である.また,代謝反応に関与するCYP分子種の特定や未知の代謝物の同定には多くの時間を要するため,解析手法のハイスループット化も重要な課題である.そこで本稿では,ほ乳動物細胞株を用いたP450による代謝産物のハイスループット評価系に関する研究成果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nebert D. W. et al., Philos. Trans R. Soc. Lond. B. Biol. Sci., 368, 20120431(2013).
    2) Lee C. M. et al., Drug Metab. Dispos., 50, 1182–1189(2022).
  • 岩田 紘樹
    2023 年 59 巻 3 号 p. 245
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー
    喘息や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)の薬物治療は,服薬アドヒアランスが22~78%との報告があり,アドヒアランス低下が課題となっている.副作用への不安や吸入薬使用上の知識不足等によるアドヒアランスの低下は疾患コントロールの不良を招き,再燃率上昇や健康関連QOL低下につながる恐れがある.特に,吸入薬は薬物治療上の重要な位置を占め,正しく使用できるよう医療従事者による効果的なサポート・介入が必要となる.これまでに吸入手技の患者教育やリマインダーの使用により,服薬アドヒアランスが改善したことが報告されているが,臨床的アウトカムまでは改善していないことがしばしば認められるのが現状である.
    オランダでは,2017年から喘息やCOPD患者を対象に,正しい吸入薬使用促進を目的としてeHealthを用いた薬剤師による吸入指導サービス(service apothecary respiratory advice: SARA)が始まっている.eHealthとは,情報テクノロジーを活用したヘルスケアサービスの総称である.本稿では,オランダの薬局におけるSARA提供の効果を検証した後ろ向き研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mäkelä M. J. et al., Respir. Med., 107, 1481–1490(2013).
    2) Normansell R. et al., Cochrane Database Syst Rev., 4, CD012226(2017).
    3) Schnoor K. et al., J. Med. Internet Res., 24, e32396(2022).
Information
賞・研究奨励・助成
薬学会アップトゥデイト
交信
会合予告
カレンダー
学術誌お知らせ
談話室
最近の新刊書から
クイズ「一問一答」/解答
次号掲載予告
編集後記
feedback
Top