炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は,腸管の非特異的炎症である潰瘍性大腸炎およびクローン病を指す.
IBDは完治困難な慢性疾患で治療は長期にわたるため,IBD治療薬に関連した合併症リスクの増加やコスト増大が問題となり,治療を縮小する治療的デエスカレーション(de-escalation: de-E)が選択肢となる場合がある.しかし,IBDの寛解状態で治療薬のde-Eを行うと50〜75%の高率で再燃し,再燃した患者の約20%が既治療に反応しなくなるため,治療的de-Eを適用すべき患者をいかに見極めるかが重要な課題である.このたび,2017年に保険収載され,IBDの診断や病勢把握の補助に用いられる糞便中カルプロテクチン(faecal calprotectin: Fcal)濃度がこの課題を克服する指標となり得ると報告されたため紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Torres J.
et al.,
Gastroenterology,
149, 1716-1730(2015).
2) Casanova M. J.
et al.,
Am.
J.
Gastroenterol.,
112, 120-131(2017).
3) Buisson A.
et al.,
J.
Crohns Colitis, online 6, Feb. 2019, doi: 10.1093/ecco-jcc/jjz023.
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