ファルマシア
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55 巻 , 9 号
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目次
  • 2019 年 55 巻 9 号 p. 824-825
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル フリー
    特集:認知症対策の基礎と臨床 アルツハイマー型認知症を中心に
    特集にあたって:昨今,医療の進歩によりこれまでは不治の病であった病気が治癒されるようになりつつある.特に,がん医療はここ数年で飛躍的に進歩し,これまで治療すらあきらめていたがんが治癒できるようになってきている.たとえ根治は困難であっても,治療を行うことにより生存期間が延長できるようになってきた.その一方で,高齢化の進展による認知機能障害が新たな問題となってきている.団塊の世代が75歳以上となる2025年には,約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症患者になるといわれており,その対策は急務である. 本特集では,認知症研究や,実際の臨床に携わっている先生方にご執筆いただくことにより,これからの認知症対策について考えていきたい.
    表紙の説明:アルツハイマー型認知症は3段階の経過をたどる.初期段階では,自分で片付けたものが分からなくなる,直前のことを忘れるなどの進行性の記憶障害,中期では見当識障害,徘徊・妄想等の行動,心理症状が認められる.後期では日常生活に問題が出始め,寝たきりに移行していく.
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セミナー
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最前線
  • 池内 健
    2019 年 55 巻 9 号 p. 848-853
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    高齢化が急速に進行している我が国では,アルツハイマー病患者の増加が大きな問題となっている.認知症に対する画像検査や脳脊髄液バイオマーカーなどの優れた診断技術が登場し,臨床現場におけるアルツハイマー病の診断精度は大きく向上した.また,モデル動物等を用いた基礎研究の成果により,認知症に対する病態メカニズムに関する理解が深まってきた.しかしながら,アルツハイマー病の根本治療を目指した薬剤開発は難航している.
    本稿では,アルツハイマー病の疾患修飾薬の最近の動向を解説し,今後の方向性を展望する.
セミナー
  • 高田 和幸
    2019 年 55 巻 9 号 p. 854-858
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    脳内(実質)で免疫を司る唯一の細胞であるミクログリアについて,近年その発生起源や新機能が次々と見つかり,ミクログリアは脳の発生や機能さらには恒常性維持に不可欠な細胞として,その存在意義が見直されている.脳疾患治療の開発に向けた標的細胞としても,ミクログリアはますます注目されている.超高齢化社会を迎えて社会問題に発展しているアルツハイマー病(Alzheimerʼs disease: AD)も例外ではなく,古くからその病態生理へのミクログリアの関与が示唆されており,ミクログリアの機能制御を介した新たな治療法の開発が期待されている.
    本稿では,近年解明されたミクログリアの新たな生態や機能,ADとの関わりとともに,我々の取り組む幹細胞由来のミクログリア様細胞を用いたADに対する細胞治療の開発アプローチを紹介したい.
セミナー
セミナー
話題
話題
FYI(用語解説)
  • 山崎 峰雄
    2019 年 55 巻 9 号 p. 876_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    側頭葉内側面と表現される解剖学的部位の中では,最も吻側(前側)に位置している.側頭葉・扁桃核移行部の脳回で,前部嗅内野とも呼ばれる.嗜銀顆粒性認知症では,この迂回回および扁桃核に嗜銀顆粒という病理学的構造物が最初に凝集し始める(ステージ1).その後,海馬,海馬台に進展し(ステージ2 ),島回,前部帯状回および眼窩前頭皮質(ステージ3),最終的には新皮質に広がる(ステージ4)が,進展の範囲と認知症の出現時期がほぼ一致していることが知られている.重複病理がなく,純粋な嗜銀顆粒性認知症である場合は,ステージ2までは認知症は明らかではなく,ステージ3以降で認知機能障害が明らかになってくる.
  • 富田 泰輔
    2019 年 55 巻 9 号 p. 876_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子の1つであり,translocated in liposarcoma(TLS)とも呼ばれる.FUSタンパク質はFETファミリーに属するRNA結合タンパク質であり,N末側にグリシンやアルギニンに富むlow-complexity(LC)ドメイン,C末側にRNA結合ドメインを持つ.FUSは核と細胞質の両方に局在し,転写制御やRNAプロセッシングなど様々なプロセスに関わると考えられている.LCドメインは濃度に依存して可逆性のポリマー線維を形成し,ヒドロゲル状態へと相転移することが知られており,液液相分離による,膜を含まないオルガネラ形成を介した生理的なFUSの機能制御,さらにはALS患者の運動神経内において観察される異常FUS蓄積封入体形成や神経細胞死に関わることが示唆されている.
  • 高田 和幸
    2019 年 55 巻 9 号 p. 876_3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    スペインの神経科学者Pio del Rio Hortegaは,改良した炭酸銀法を用いて中枢神経系を構成する新たな細胞群を発見し,ミクログリアと名付けて書に著した.Hortegaはその中で,ミクログリアは中胚葉系由来で,発生初期に血管や白質路から脳全体に侵入してくる細胞であり,当初はアメボイド型であるが,脳の成熟にともない枝分かれをしたラミファイド型へと変形し,テリトリーを有して均等・均質に分散すること,また,病的環境下では発達期初期のようなアメボイド型となり,遊走,増殖,貪食機能を獲得すると仮定した.このミクログリアの生態を規定する先駆的概念は,Hortegaの仮説と呼ばれる.
  • 山村 恵子
    2019 年 55 巻 9 号 p. 876_4
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    日本語版Zarit介護負担尺度短縮版(J-ZBI_8)は介護者が介護に感じる介護負担の程度を数値化した評価指標である.具体的には,下記の否定的な感情と社会生活の支障についての各項目で5段階(0:思わない,1:たまに思う,2:時々思う,3:よく思う,4:いつも思う)評価を行う.
    Personal strain:介護を必要とする状況に対する否定的な感情 ①患者さんの行動に対し,困ってしまう,②患者さんのそばにいると腹がたつ,③気が休まらない,④介護を誰かにまかせてしまいたい,⑤どうしていいかわからない
    Role strain:介護によって介護者の社会生活に支障をきたしている内容 ①家族や友人とつきあいづらくなっている,②自分の社会参加の機会が減った,③友達を自宅に呼びたくても呼べない
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2019 年 55 巻 9 号 p. 877
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和元年6月18日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
くすりの博物館をゆく
  • 池田 幸弘
    2019 年 55 巻 9 号 p. 878-879
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    九段下駅で降り,内堀通りを歩く.平日はビジネスパーソンが溢れている街も,休日では行き交う車もほとんどなく,皇居ランナーが心地良さそうに堀端をジョギングしている.清水門から北の丸公園に入る.門の名は,この辺りで清水が湧き出ていたからとも,清水寺という古寺があったからとも言われている.いずれにせよ,江戸城築城以前のこのあたりは海浜に近く,また水も澱み気味だったので,貴重な水源であったのだろう.この門は,振袖火事と呼ばれる1657年(明暦3年)の大火で焼失したが,その翌年1658年(万治元年)に再建されたものである.400年近い歴史を感じさせる重厚な門をくぐると,ほとんど人影もなく,ただセミの声だけが静かに響き渡っている.東京の真ん中にいるとはにわかには信じられない雰囲気のなか,しばし静謐を楽しんだ後,科学技術館へ向かう.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
トピックス
  • 安藤 眞
    2019 年 55 巻 9 号 p. 884
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    最小環構造であるシクロプロパンは,強く歪んだ構造から特異な物理的・化学的性質を示す.また,天然物や生理活性物質の部分構造として多く含まれることから,その効率的合成法,特に立体選択的合成法の開発が行われている.その中でも,金属カルベノイドをオレフィン類と立体選択的に反応させる触媒的不斉合成法が広く用いられてきた.しかし,多様な官能基を有するシクロプロパンの合成には,①金属カルベノイドに導入可能な官能基が限られること,②あらかじめオレフィン類を官能基化しておく必要があること,などが問題であった.これらの問題に対し,最近Mendozaらは,N-ヒドロキシフタルイミド(N-Hydroxyphthalimide: NHPI)を補助基としたジアゾエステル(NHPI-DA)を利用したシクロプロパン類の立体選択的かつ分岐的合成法を開発したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chen D. Y. - K. et al., Chem. Soc. Rev., 41, 4631-4642(2012).
    2) Bartoli G. et al., Synthesis, 46, 979-1029(2014).
    3) Montesinos-Magraner M. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 58, 5930-5935(2019).
  • 遠藤 裕太
    2019 年 55 巻 9 号 p. 885
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate: ADC)は,抗体と低分子医薬(ペイロード)をリンカーでつないだハイブリッド型の医薬である.抗体の標的特異性と低分子医薬の薬理活性を併せ持つため,臓器選択的な薬効が期待できる.現在いくつかのADCが上市あるいは臨床入りしているが,1種の抗体に1種のペイロードを結合させたものが基本的なプラットフォームである.一方で,例えばがんの治療では,特定の作用機序に耐性を獲得したがん細胞が存在するため,複数の薬剤を併用することが一般的である.ADCにおいても1種の抗体で作用機序の異なる複数のペイロードをデリバリーできれば,薬剤耐性がんの治療手段になりうる.今回,ADCの新たな基盤技術として1種の抗体に2種のペイロードを乗せたADCを開発したAmitらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Amit K. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 28, 3617-3621(2018).
    2) Amit K. et al., Data in Brief, 21, 2208-2220(2018).
  • 中林 亮
    2019 年 55 巻 9 号 p. 886
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    我々は,地球上に存在する約391,000種の維管束植物のうち,28,187種を医薬品の原材料に用いている.植物が生合成する二次代謝物は,その多様な構造に由来して特徴的な薬理活性を示す場合が多いことから,成分探索の対象となっている.成分を精製・単離する手法であるクロマトグラフィー法などが発達する一方で,成分群を網羅的に特定する手法の開発は遅滞している.今回,タンデム質量分析MS/MSスペクトルの類似性を用いた解析技術が確立され,従来の方法と比較して植物成分の大規模な特定が可能になったので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Royal Botanical Gardens, https://stateoftheworldsplants.org/
    2) Kang K. B. et al., Plant J., 98, 1134-1144(2019).
    3) Nothias L. F. et al., J. Nat. Prod., 81, 758-767(2018).
  • 弘津 辰徳
    2019 年 55 巻 9 号 p. 887
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    多価という概念は,複数の同じリガンドや受容体が同時に相互作用することであり,生化学や超分子化学の分野で近年注目を集めている.また,ヘテロ多価性は,結合適応性および選択性を有するため,広く研究されているホモ多価性よりも異所性表面を特徴とするタンパク質および膜のようなバイオ分野に対してより適している.その結果,ナノ医療におけるターゲティング,解毒および酵素阻害にヘテロ多価性が応用されてきた.一方,環状ホスト分子は特徴的な空洞を有するため,特定のゲスト分子と選択的に相互作用することが可能である.そこで,大環状ホスト化合物を利用してヘテロ多価分子認識を達成するために,2つ以上の異なる環状分子を1つの集合体に組み込むことにより,特にタンパク質や生体膜などに対する結合効率および選択性を劇的に改善すると考えられる.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Garcia-Moreno M. et al., Chem. Eur. J., 23, 6295-6304(2017).
    2) Xu Z. et al., Nat. Chem., 11, 86-93(2019).
    3) Song Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 139, 4298-4301(2017).
  • 下村 拓史
    2019 年 55 巻 9 号 p. 888
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    膜電位依存性Na+チャネル(Nav)は膜電位変化に応じてNa+イオンを透過させることで,活動電位の発生や心筋の収縮に寄与する.Navは,膜電位依存的に閉状態から開状態に遷移してNa+イオンを透過させた後,速やかに不活性化する(図1A).Navの特定の遷移状態を安定化できれば遮断薬あるいは開口薬として有用であるが,臨床で使用されるNav標的薬の状態選択性は必ずしも十分ではない.αサソリ毒は,Navの不活性化状態への遷移を選択的に阻害する.本稿では,αサソリ毒の状態選択性とNavの不活性化について原子レベルで解析したClairfeuilleらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Catterall W. A., Neuron, 26, 13-25(2000).
    2) Clairfeuille T. et al., Science, 363,(6433), eaav8573(2019).
  • 河西 翔平
    2019 年 55 巻 9 号 p. 889
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    加齢に伴い細胞は老化する.老化した細胞で構成された組織では,様々な生理機能の低下がみられる.これまでに,アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患において,様々な老化マーカーの発現が増加しており,老化細胞が神経変性疾患の発症に関与することが報告されている.しかし,老化細胞が神経変性疾患にどのような影響を与えるのかはこれまで明らかになっていなかった.本稿では,脳の老化細胞除去による認知機能への影響を明らかにしたTylerらの研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Bhat R. et al., PLoS ONE, 7, e45069(2012).
    2) Tyler B. et al., Nature, 502, 578-582(2018).
    3) Baker D. et al., Nature, 479, 232-236(2011).
  • 中𡌛 三弥子
    2019 年 55 巻 9 号 p. 890
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    細菌やウイルスなどの病原体は,免疫系(自己と異なる物質を識別し排除する仕組が集まった系)により生体から排除されるため,我々は健康を保っている.しかし,腸内における細菌への生体反応は真逆である場合がほとんどである.細菌を一方的に排除することなく多種多様な細菌を共存させているのである.本来なら免疫系において排除されてもよさそうな細菌が,どうして腸内では共生そして共存できるのか,その意味はあるのか,さらに腸内の免疫系はどのように働いているのか大変興味深い.
    腸内に多量に分泌されるタンパク質の1つに免疫グロブリンA(immunoglobulin A: IgA)がある.IgAは,2つの重鎖と2つの軽鎖から構成される抗体の1種である.IgA分子は2つの抗原結合部位を有しているが,腸管などの分泌液中ではJ鎖と呼ばれるポリペプチドを介して結合し2量体を形成しているため,4つの抗原結合部位を持つことになる.さらに,分泌成分(secretory component: SC)というタンパク質が2量体に巻き付くように結合している.2量体IgA(分泌型IgA)は腸管免疫の主役分子であり,腸内に侵入した病原菌やその毒素と結合し中和したり,病原体と結合し体外に排出したりしている.その一方で,腸内の分泌型IgAは病原菌だけではなく腸内常在細菌とも結合し,腸内常在細菌と宿主との共生関係を維持していることが知られている.しかし分泌型IgAが,細菌の排除と共生という真逆の応答をどのように識別し制御しているかは不明であった.Nakajimaらは,腸内における分泌型IgAの共生細菌の識別と,多種多様な細菌が共存するために必要な細菌叢の組成と代謝の調節に関する新たなメカニズムを報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Nakajima A. et al., J. Exp. Med., 215, 2019-2034(2018).
    2) Royle L. A. et al., J. Biol. Chem., 278, 20140-20153(2003).
    3) Wada Y. et al., Mol. Cell. Proteomics, 9, 719-727(2010).
  • 永島 一輝
    2019 年 55 巻 9 号 p. 891
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は,腸管の非特異的炎症である潰瘍性大腸炎およびクローン病を指す.
    IBDは完治困難な慢性疾患で治療は長期にわたるため,IBD治療薬に関連した合併症リスクの増加やコスト増大が問題となり,治療を縮小する治療的デエスカレーション(de-escalation: de-E)が選択肢となる場合がある.しかし,IBDの寛解状態で治療薬のde-Eを行うと50〜75%の高率で再燃し,再燃した患者の約20%が既治療に反応しなくなるため,治療的de-Eを適用すべき患者をいかに見極めるかが重要な課題である.このたび,2017年に保険収載され,IBDの診断や病勢把握の補助に用いられる糞便中カルプロテクチン(faecal calprotectin: Fcal)濃度がこの課題を克服する指標となり得ると報告されたため紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Torres J. et al., Gastroenterology, 149, 1716-1730(2015).
    2) Casanova M. J. et al., Am. J. Gastroenterol., 112, 120-131(2017).
    3) Buisson A. et al., J. Crohns Colitis, online 6, Feb. 2019, doi: 10.1093/ecco-jcc/jjz023.
追悼
  • 大村 智
    2019 年 55 巻 9 号 p. 883
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    中西香爾先生は、ギンコライド、フィラントトキシン、ブレベトキシンBなどの発見と構造決定に加え、レチナールとその受容タンパク質オプシンとの相互作用に関わる研究など広範囲に渡る研究を推進された。また、天然物の構造研究にIR、NMRおよびCD(円偏光二色性)など、機器分析を率先して用い、特に現在構造決定に汎用されているNMR解析に初めてNOEを使用し、また、CDを用いる絶対配置決定法を確立された。加えて、天然有機化合物討論会を創立するなど、天然物化学を日本のお家芸に育てる原動力となられた。
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談話室
  • 加藤 将夫
    2019 年 55 巻 9 号 p. 892_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    ジャーナル 認証あり
    約20年前、筆者は米国National Institute of Health(NIH)に博士研究員(ポスドク)として1年余り留学していた。研究室のボスは、一流の科学雑誌に毎年複数の論文を通すほどの優れた研究者であり、そこで雇用していただけたことは今考えても「超ラッキー」であった。その彼が、週1回のラボのミーティングでいつも話してくれたことは、ラボの研究資金の状況とともに表題の言葉である。十数人のポスドクを抱え、ブランチ(研究室の集まり)の長としてかなり忙しい人がインパクトある研究業績を挙げるには、常に何が重要かを考え行動することが求められていたのだと思う。
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