2019年12月以来,新型コロナウイルス感染症COVID-19が流行し始め,早くも1年半が経過した(原稿執筆時現在).現在,予防効果の高いワクチンの開発や接種が進んでいる.2021年6月現在までにCOVID-19治療薬として日本で承認されているのは,中等症から重症の入院患者にのみ使用可能なレムデシビル,デキサメタゾン,およびバリシチニブの3種類のみであり,後者2種は抗炎症作用を示す対症療法として用いられるものである.レムデシビルはRNAポリメラーゼ阻害薬としてウイルスの複製を阻害するが,もともとはエボラ出血熱の治療薬として開発されたものであり,開発の初期段階からSARS-CoV-2-を標的とした治療薬は未だ開発されていないのが現状である.
今回,満屋らは,SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(M
pro)がSARSの原因となるSARS-CoVのM
proと非常に高い相同性 (96%)を有していることに着目し,過去に開発されたSARS-CoV M
pro阻害薬からGRL-1720(A. K. Ghoshら)および5h(林良雄ら)が有望な創薬リード化合物であることを見いだしたので,本稿にて紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Hattori S.
et al.,
Nat.
Commun.,
12, 668(2021).
2) Boras B.
et al.,
bioRxiv, the most recent version 12 Feb. 2021 doi: https://doi.org/10.1101/2020.09.12.293498.
3) https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-initiates-phase-1-study-novel-oral-antiviral
4) https://investor.todosmedical.com/news-events/press-releases/detail/112/todos-medical-launches-phase-2-clinical-trial-of-its
5) Qiao J.
et al., Science,
371, 1374-1378(2021).
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