ファルマシア
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58 巻, 11 号
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目次
  • 2022 年 58 巻 11 号 p. 1014-1015
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー
    特集:視覚障害の新たな治療法の開発を目指して
    特集にあたって:超高齢社会を迎えた我が国の医療を取り巻く環境は大きく変化している.視覚障害を引き起こす疾患の多くは,加齢とともに罹患率が上昇する.我々が日常生活から得ている情報の大部分は視覚に由来しており,現在の情報化社会における生活の質(QOL)の維持・向上,さらには健康寿命の延伸において,視覚機能は極めて重要な役割を担っている.本特集では,眼をターゲットとして研究に注力する新進気鋭の研究者に,眼疾患の病態研究ならびに治療法開発を指向する応用研究から,眼内への薬物送達効率の向上を目的としたドラッグ・デリバリー・システムに関する研究まで,幅広く「眼」に関する最新の研究についてご紹介いただく.
    表紙の説明:光は,角膜,水晶体,および硝子体を通過して網膜で受容される.その情報は,視神経を通って脳へと伝達され,視覚として認識される.光情報の伝達が経路上のいずれかの部位で遮断されると,視覚障害が現れる.例えば,角膜疾患である角膜潰瘍,水晶体疾患である白内障,網膜疾患である緑内障,あるいは脳出血や脳梗塞,脳腫瘍でも,視覚障害が現れることがある.図の上方に示した視野の変化は,緑内障患者の視野障害の典型的な進行を例示したものである.
オピニオン
Editor's Eye
最前線
最前線
  • 非自律性神経変性機構と治療標的の可能性
    篠崎 陽一, パラジュリ ビジェイ
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1026-1030
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    非神経細胞であるグリア細胞の1種ミクログリアは、脳だけでなく網膜にも多く存在する。様々な神経変性疾患におけるミクログリアの役割が着目されているものの、緑内障など網膜の神経変性疾患においては不明な点が多い。本稿では、緑内障の発症機構、特に網膜神経節細胞の非細胞自律的傷害におけるミクログリアの役割や、その治療標的としての可能性について、最新の知見を踏まえつつ議論したい。
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
セミナー
  • 不破 正博
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1061-1065
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    緑内障は、視神経障害に起因する視野欠損を特徴とする進行性かつ非可逆性の視神経症である。エビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降させることであるため、作用機序の異なる多くの眼圧下降薬が開発されてきた。ドラッグデリバリーシステムを応用した持続製剤を含め、新規の眼圧下降薬の開発は盛んなものの、根本治療となり得る視神経保護薬の開発は進んでいない。視神経保護薬開発のための臨床試験の難易度は高く課題は多いが、様々な技術革新により、視神経を直接保護する神経保護治療の実用化が期待される。
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1068
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和4年8月30日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1069
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,58巻9号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 黒田 悠介
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1076
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    芳香族ホウ素化合物の合成法として,遷移金属錯体を用いて芳香族炭化水素のC-H結合を直接的にホウ素化する手法が注目を集めている.ところが,特定のC-H結合を位置選択的にホウ素化するためには特殊な配向基が必要であり,単純な置換ベンゼンのC-Hホウ素化ではメタ位とパラ位のホウ素化体が混合物として得られる.この問題に対し瀬川・伊丹らは,嵩高いホスフィン配位子を用いて金属近傍を覆うことで,基質と触媒間での立体反発を利用したパラ位選択的なC-Hホウ素化を報告している.本手法と相補的な反応として,浅子・イリエシュらによってメタ位選択的なC-Hホウ素化が報告されたので本稿で紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mihai M. T. et al., Chem. Soc. Rev., 47, 149–171(2018).
    2) Saito Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 5193–5198(2015).
    3) Haines B. E. et al., ACS Catal., 6, 7536–7546(2016).
    4) Ramadoss B. et al., Science, 375, 658–663(2022).
  • 倉賀野 正弘
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1077
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    非筋細胞ミオシンII(NMII)が産生する収縮力は,細胞の遊走や分裂などの形態変化に必要不可欠である.NMIIは,種々のキナーゼにより調節軽鎖(MLC)がリン酸化されることで,細胞骨格であるF-actinを動かすモーターとして機能する.過去,様々なキナーゼ阻害薬が開発され,細胞運動研究の発展に寄与してきた.しかし,低分子化合物を細胞内の一部にのみ作用させることは極めて困難である.そこで近年では,細胞の部分的な操作にOptogenetics(光遺伝学)が活用されている.本稿では,光照射により局所的にNMIIを脱リン酸化し,細胞の収縮力を減衰させる新規のシステムを開発した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kurueger D. et al., Development, 146, dev.175067(2019).
    2) Yamamoto K. et al., Nat. Commun., 12, 7145(2021).
    3) Guntas G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 112, 112-117(2015).
  • 糸数 七重
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1078
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    現在,漢方処方は医療現場で一般的に用いられるようになってきているが,その一方で西洋医学の薬剤と異なり,科学的な作用機序に基づいて「なぜ」「どのような」疾病に用いるかが明確になっていない.また,疾病や症状を漢方理論に基づいて解釈し,処方を選択する場合でも,漢方理論には複数の解釈が存在し,個々の臨床家が自分の信じる解釈に基づいて処方を選んでいる場合が多い.人参養栄湯は漢方理論では“補剤”と称され,主に“気”を補う処方である.精神的・肉体的なエネルギーが低下した状態を改善するとして古くから用いられ,疲労感,食欲不振,盗汗,四肢の冷感,貧血等に応用されている.これらの症状は,西洋医学的には異なったものとして認識されるが,漢方理論においては“気虚”が根本にあり,それが本人の心身の状況に合わせて様々な症状として現れているものと捉える.したがって,“気を補う”漢方処方によって根本原因が解決すると説明するのである.しかしながら,“気虚”の定義にも諸説あり,先行する研究でも“気虚”を“呼気・吸気の不全”と捉えるものや“加齢による生命エネルギーの減衰”と捉えるものなどが混在しており,“補気”のメカニズムについても未だに不明な点が多い.本稿では人参養栄湯の効果の中でも,うつおよび抑うつ症状の改善に着目し,その根幹に中枢のノルアドレナリン(NA)作動性神経の刺激・増強があることを明らかにした研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Tsutsumi S. et al., Tradit. Kampo Med., 9, 25–31(2022).
    2) Kudoh C. et al., Psychogeriatrics, 16, 85–92(2016).
  • 坂本 眞伍
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1079
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    タンパク質の機能とその構造変化との関係を理解することは,基礎・応用研究のいずれにおいても極めて重要である.タンパク質の構造変化を高い時空間分解能で検出する方法としては主に蛍光分光法が用いられているが,比較的大きな構造変化しか検出できないことや,複雑な化学反応を必要とするなど,いまだに制約が多い.本稿ではHarroun S. G.らにより報告された,タンパク質の機能発現に伴う構造変化を簡単な修飾で高感度に検出可能な小分子ツールである,蛍光ナノアンテナを紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Scott G. H. et al., Nat. Methods, 19, 71-80(2022).
  • 人見 祐基
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1080
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    2003年に完了したヒトゲノム計画によってヒトゲノムDNAの基準配列が決定された後,現在までの約20年間にゲノム解析技術および情報解析技術が革新的に進歩した.その結果,疾患の罹りやすさ(疾患感受性)に影響を与えるヒトゲノムDNA配列の個人差(バリアント)が,網羅的に解明されつつある.例えば,ゲノム全域にわたり疾患感受性遺伝子を探索するゲノムワイド関連解析(GWAS)によって,単一遺伝子疾患以外の様々な疾患で数十~数百か所もの疾患感受性遺伝子が同定されている.これらの遺伝子の中で,ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子群は,様々な自己免疫疾患やアレルギー疾患に加え,睡眠障害や統合失調症などにおいても最大かつ圧倒的な遺伝的リスク因子となっている.そこには,胸腺におけるT細胞選択を介した自己・非自己の識別異常の関与が示唆される一方で,未だ不明点が多い.本稿では,T細胞抗原受容体(TCR)のアミノ酸配列パターンに着目し,HLAが強い疾患感受性を示すメカニズムを説明した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) International Human Genome Sequencing Consortium, Nature, 431, 931-945(2004).
    2) Buniello A. et al., Nucleic Acids Research, 47, D1005-D1012(2019).
    3) Ishigaki K. et al., Nat. Genetics, 54, 393-402(2022).
  • 川口 高徳
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1081
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    “新型コロナウイルス”として2019年後半より世界中で猛威を振るうSARS-CoV-2の侵入および出芽の機構を明らかにすることは,治療薬の開発などにおいて重要である.SARS-CoV-2は,呼吸器上皮に発現するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)やセリンプロテアーゼであるTMPRSS2といった膜タンパク質を介して細胞内に侵入することが知られている.SARS-CoV-2は,ACE2に結合すると,TMPRSS2によってそのスパイク糖タンパク質(S糖タンパク質)のS2領域で切断され,呼吸器上皮細胞に融合することで侵入する.本トピックでは,SARS-CoV-2に感染した呼吸器上皮細胞の超微細構造について,SARS-CoV-2の気道上皮への付着と侵入,出芽のステップについて電子顕微鏡によって詳細な解析がなされた事例について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Walls A. C. et al., Cell, 181, 281–292.e6(2020).
    2) Pinto A. L. et al. Nat. Commun., 13, 1609(2022).
    3) Lee I. T. et al., Nat. Commun., 11, 5453(2020).
  • 大黒 亜美
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1082
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    大うつ病性障害(うつ病)の発症は若年層に多く,日常生活に支障をきたすため社会的影響が大きいにもかかわらず,抗うつ薬により効果が得られない患者が一定数おり,その治療抵抗性が問題となっている.Cussottoらは,現在利用されている抗うつ薬であるエスシタロプラム,セルトラリン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI))およびベンラファキシン(選択的セトロニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI))について,うつ病患者に対する臨床効果が,患者の薬剤治療開始時のω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)レベルと相関することを見いだしたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cussotto S. et al., Depress Anxiety, 39, 407–418(2022).
    2) Carney R. et al., J. Clin. Psychiatry, 77, e138–e143(2016).
    3) Lin P. et al., Biol. Psychiatry, 68, 140–147(2010).
    4) Andreone B. J. et al., Neuron, 94, 581–594. e5(2017).
  • 宇山 佳奈
    2022 年 58 巻 11 号 p. 1083
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/01
    ジャーナル 認証あり
    円形脱毛症は,頭髪,眉毛,睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患である.皮膚科を受診する脱毛疾患の中では頻度が最も高いが,毛包と爪甲以外の臓器は侵さないことから,死に直結しない.しかし,その治療には難渋し,外見上の印象を大きく左右するため,患者自身の悩みは大きく,QOLに多大な影響を及ぼす.また,疾患の性質上ランダム化比較試験を実施しにくく,重症例では,増悪・寛解を繰り返すために治療効果も判定しにくい.このことからガイドラインでは,局所ステロイド投与や局所免疫療法などエビデンスのある治療法は限られ,強く推奨される治療法は存在しない.
    COVID-19による肺炎に対する適応が追加されたバリシチニブ(レムデシビルとの併用)は,ヤヌスキナーゼ(JAK)を介したサイトカインシグナル伝達を選択的に阻害することで,抗炎症作用や免疫細胞の増殖抑制作用を持つ,関節リウマチやアトピー性皮膚炎治療薬である.本稿では,2022年6月にFDAおよび我が国で承認された重症円形脱毛症治療におけるバリシチニブの有用性について比較検討した,第Ⅲ相臨床試験(BRAVE-AA1)を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版.
    2) Brett K. et al., N. Engl. J. Med., 386, 1687-1699(2022).
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