円形脱毛症は,頭髪,眉毛,睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患である.皮膚科を受診する脱毛疾患の中では頻度が最も高いが,毛包と爪甲以外の臓器は侵さないことから,死に直結しない.しかし,その治療には難渋し,外見上の印象を大きく左右するため,患者自身の悩みは大きく,QOLに多大な影響を及ぼす.また,疾患の性質上ランダム化比較試験を実施しにくく,重症例では,増悪・寛解を繰り返すために治療効果も判定しにくい.このことからガイドラインでは,局所ステロイド投与や局所免疫療法などエビデンスのある治療法は限られ,強く推奨される治療法は存在しない.
COVID-19による肺炎に対する適応が追加されたバリシチニブ(レムデシビルとの併用)は,ヤヌスキナーゼ(JAK)を介したサイトカインシグナル伝達を選択的に阻害することで,抗炎症作用や免疫細胞の増殖抑制作用を持つ,関節リウマチやアトピー性皮膚炎治療薬である.本稿では,2022年6月にFDAおよび我が国で承認された重症円形脱毛症治療におけるバリシチニブの有用性について比較検討した,第Ⅲ相臨床試験(BRAVE-AA1)を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版.
2) Brett K.
et al.,
N.
Engl.
J.
Med.,
386, 1687-1699(2022).
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