ファルマシア
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51 巻 , 8 号
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目次
  • 2015 年 51 巻 8 号 p. 730-731
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    表紙の説明:『温故知新』ファルマシア創刊50周年を記念して過去掲載の表紙より抜粋.20~23巻では,絵画がファルマシア表紙を飾った.23巻では,宇佐美圭司氏作「閉ざされた扉」であり,池川信夫編集委員長は「人間の健康と生命を美しく昇華させたその意図は,芸術と科学の同一性を浮き彫りにしている」と,その理由を述べている.本誌の編集委員会が開催される会議室には,宇佐美氏作「アポロンたち」が飾られていることから,本号の表紙に選択した.
オピニオン
  • 水上 元
    2015 年 51 巻 8 号 p. 729
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    地方が福祉や医療の危機,地域経済の衰退など様々な問題に直面している.その背景には,出生率の低下に加えて,とりわけ若い世代の流失による人口減少があることはよく知られている.
    私の住む高知県のケースを具体的に見てみよう.人口はこの10年間で81万人から74万人と7万人,約9%減少した.なかでも若い世代の減少は著しく,0~14歳の人口は11万人から9万人へと2万人,約18%も減少しており,高知県では今やこの世代は「絶滅危惧種」といっても過言ではない.平成25年度の年齢別転出超過数を見ると20~24歳が1,233人,15~19歳が565人と格段に多く,大学への進学と卒業が人口流出の大きな要因であることがよく分かる.大学進学という点では,県内に大学は国立大学1校,県立大学2校しかない.募集定員の合計は1,935人(平成27年度募集分)で,これは県内の高校3年生の生徒数の約30%に過ぎない.学部の種類という点で見ると,薬学部と法学部がなく,これらの学部を志望する学生は全て県外に出て行くことになる.
    一般には雇用の不足によって卒業時の人口流出が起こっているが,薬学を含む医療の世界では全く事情が異なっている.高知県医事薬務課の「平成26年度薬剤師等実態調査」をもとに推定すると,毎年70名程度の学生が高知県から全国の薬学部に入学しているが,一方で薬学部の新卒者で高知県内の医療機関に就職する学生は20名程度に過ぎず,需要に対する充足率は50%程度であると思われる.これは高知県全体の数値であるため,四万十など郡部の実情は推して知るべしである.「高知家健康づくり支援薬局」など地域の医療を支えるために様々な事業が実施されているが,肝腎のマンパワーが決定的に不足している.
    地方の再生のために大学の果たすべき役割が大きいことが認識され,文部科学省も様々な取組への支援を計画しているようである.しかしながら薬学人材の確保という点では,地方大学と自治体との連携による雇用の創出,地方に就職する学生に対する奨学金返済支援,大都市圏の私立大学での入学者数の抑制といった対策では,問題が解決するとは思われない.私は,とりわけ大都市圏に集中している薬学系大学に,次の2つのことをお願いしたい.第一に,人口の過疎化は決して地方だけの問題ではない.最近の人口移動統計を見ても大都市を抱える自治体においても過疎化が進行している地域があり,最終的には東京都の23区内を除いて人口の減少が進むものと予測されている.このような状況を踏まえて,地方において住民の健康を促進し,命を守る活動に薬剤師として取り組むことは,大病院における先進医療に薬剤師として関与するのと同じ程度に,我が国医療の最前線に立つことであるとしっかりと教え込んでいただきたい.第二に,薬学の専門教育体系の中で学生が地域に関わる取組を進めていただき,地方出身者であれ大都市出身者であれ,地域に飛び込み,住民との協働のもとに薬剤師として地域医療に参画する意欲と能力を有する学生の育成を図っていただきたい.文部科学省は「トビタテ!留学JAPAN」なる留学促進キャンペーンを行っているが,海外の大学に飛び立つ意欲を持った学生を育てることも,地方に飛び込む挑戦力を持った学生を育てることも,根はひとつのところにあるのではないだろうか.
Editor's Eye
ベランダ
  • 内川 治, 大髙 章, 橋本 祐一, 宮田 直樹, 吉松 賢太郎, 赤井 周司
    2015 年 51 巻 8 号 p. 739-746
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    創薬に関わる人材の育成は,日本薬学会の使命の1つである.医薬化学部会は平成24年度,製薬企業の協力の下に「創薬人育成事業」をスタートし,人材育成活動を組織的に行ってきた.3年が経過し,本事業の成果について取りまとめるとともに,会員の方々への周知を図る目的で,また今後,産と学の連携を強化し,系統的かつ継続的に教育一体型の人材育成活動を進め,創薬研究で活躍する人材育成を支援していきたいという趣旨で本座談会を企画した.議論はこれからの4年制と6年制の両方の薬学教育の更なる充実と活性化にも言及し,薬に関わる様々な職場で活躍する人材の輩出に薬学会が果たす役割についても有意義な提案があった.
研究室から
  • 馬場 嘉信
    2015 年 51 巻 8 号 p. 747-749
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ナノテクノロジーは,半導体微細加工技術や自己組織化技術により,原子・分子サイズで精密にサイズを制御したナノバイオデバイスを開発することができる.私の研究室は,ナノテクノロジーを駆使して,医工薬などの異分野融合の基礎研究を展開するとともに,産学連携による医療・創薬応用可能なナノバイオデバイスの実用化を進めており,ナノポア1分子DNAシークエンシング※,単一分子計測・単一細胞計測に基づくがん超早期診断と疾患診断,がん治療・ドラッグデリバリーシステム(drug delivery system:DDS),iPS細胞再生医療用in vivoイメージング,がん診断・治療融合などの成果を上げてきた.
    本稿では,私が研究を始めた動機から,どのように異分野の壁を乗り越えて,基礎研究から実用化まで研究を展開してきたのか振り返ってみたい.
セミナー
  • 長谷 耕二
    2015 年 51 巻 8 号 p. 750-754
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    我々の腸内には,生物六界のうち五界に属する生物が存在している.特に大腸管腔は細菌の生育にとって最適な環境であり,地球上のあらゆる環境中で最も高密度の細菌が棲息している.このような腸内細菌は,総体として「腸内細菌叢(マイクロバイオーム)」と呼ばれている.ヒト腸内細菌叢は,ヒトが原人であった時から,宿主との相互作用により,腸内環境に最適となるよう共進化してきたと考えられる.近年,腸内細菌叢は,宿主のエネルギー代謝や免疫応答,さらには情動や行動といった中枢神経系にも影響を及ぼすことが次々と明らかになりつつある.本稿では,腸内細菌による生命機能調節作用を紹介したい.
セミナー
  • 津田 誠
    2015 年 51 巻 8 号 p. 755-759
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    痛みを連想すると,恐らく多くの人はあまりいいイメージを持たないだろう.熱いものを触った時の痛み,どこかに手足をぶつけたときの痛み.一見,私たちにとって有害なものと思えるこのような痛みだが,私たちはこの感覚を経験し学習することで,痛みを伴う外傷を未然に避ける防御行動を習得することができる.このような生理的な痛みは急性疼痛と呼ばれ,私たちが安全に生きていくために必要な生体警告信号としての重要な役割を担っている.
    一方で,がんや糖尿病,脊髄損傷,手術の後遺症,HIV感染,多発性硬化症など多くの疾患で発症する慢性化した耐え難い痛みは,患者のQOLを極度に低下させ,疾患そのものの治療や,精神にも悪影響を及ぼしてしまう.また,四肢の切断や帯状疱疹ウイルス感染などの場合,患部の外傷は治癒したにもかかわらず,痛みだけが慢性的に残ることがある.このような疾患では,自発痛に加え,通常であれば痛みを起こすはずのない軽度な刺激,例えば衣服が肌に触れるという軽い刺激によってさえも強い痛みが出るアロディニア(異痛症)が特徴的である.
    すなわち,本来痛みが有する生体防御信号としての役割がこれらの疾患では完全に破綻しており,慢性化した痛みそのものが病気であるといえる.この慢性疼痛は,神経系の損傷や機能異常に起因することから「神経障害性疼痛」と総称される.全世界で数千万人が慢性疼痛で苦しんでおり,適切な痛みのコントロールが必要であるが,実際は強い鎮痛薬であるモルヒネにさえ抵抗性を示す症例が少なくなく,未だ有効な治療法も確立されていない.現在の疼痛研究における大きな課題の1つは,この神経障害性疼痛メカニズムの解明と有効な治療法の開発であり,その克服に向けて,様々な視点から研究が進められている.
    本稿では,まず末梢から脊髄,さらに脳へ至る痛覚伝達経路を概説し,神経の障害後に脊髄後角神経回路がどのように変化して神経障害性疼痛を引き起こすのかを,神経細胞および非神経細胞のグリア細胞に注目した最新の研究成果を交えて紹介する.
セミナー
  • 松村 隆之, 阿戸 学
    2015 年 51 巻 8 号 p. 760-764
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    劇症型溶血性レンサ球菌感染症(severe invasive group A Streptococcus infections)は,一旦発病すると急速に進行し,ショック症状,多臓器不全などを伴う致死率の高い重篤な感染症である.集団発生が極めてまれで,高齢男性や生活習慣病などの危険因子があり,感染部位に炎症細胞浸潤が乏しいという特徴から,劇症型感染起因菌であるStreptococcus pyogenesが宿主生体防御を障害することが示唆されているが,その詳細な機序は不明であった.
    本稿では,劇症型溶血性レンサ球菌感染症において,主要な宿主防御細胞である好中球の機能障害をもたらす感染起因レンサ球菌の病原因子と,好中球減少に伴い誘導され,保護的に働くと考えられる新規未熟骨髄系細胞の役割についての知見を解説する.
話題
  • 南雲 清二
    2015 年 51 巻 8 号 p. 765-769
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    マラリアは今日でも毎年推定200万人に上る感染死亡者を出し,人類最大級の感染症とされている.マラリアといえば抗マラリア薬のキニーネが連想されるが,キニーネを成分とするキナノキ(キナcinchona)は17世紀に南米で発見された.その後キナ皮の卓効が欧州に知られるようになると,それまで治療法のなかった多くのマラリア患者に福音をもたらすとともに,マラリアとキナ・キニーネに関する多くの研究が展開された.それとともに欧州列強国によるキナの争奪や植民地での移植栽培化が競われることになり,その中でオランダは1850年代に支配地のジャワ島で南米からキナの移植に初めて成功し,さらに優良品種を得て以後ジャワ島が世界のキナ皮生産をほぼ独占するに至っている.一方,日本国内では大正時代になって当時日本が統治していた台湾での栽培成功が知られているが,それ以前の時代に国内でどのような栽培上の展開があったかについてはこれまで知られていなかった.最近そのことが明らかになってきたので本稿で紹介したい.
セミナー
  • 竹田 浩之, 野澤 彰, 澤崎 達也
    2015 年 51 巻 8 号 p. 770-774
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    既存薬もしくは開発薬剤のほぼ半数が膜タンパク質を標的にしているといわれるように,膜タンパク質は主要な創薬ターゲットである.ヒトゲノム上にコードされた全タンパク質の約1/3を占める膜タンパク質は,Gタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)やチャネル,トランスポーターなどシグナル伝達や物質輸送・代謝といった重要な役割を担っているものが多い.膜タンパク質の機能解析には,高純度かつ大量の膜タンパク質試料の調製が欠かせないが,膜タンパク質の多くは細胞を用いた既存のタンパク質大量発現系では発現が困難である.その原因として,複数の膜貫通ドメインを含む複雑な疎水性構造を持ち一般的な水溶性環境では不安定であること,小胞体やゴルジ体など複雑な細胞内輸送系を介して生体膜に発現すること,細胞にとって重要な機能を担う膜タンパク質を大量発現させることで細胞内のホメオスタシスを乱してしまうことなどが挙げられる.このような膜タンパク質大量調製の困難さは,膜タンパク質の生化学的解析,立体構造解析,さらに抗体作製の大きな問題点であり,基礎研究のみならず創薬における大きな障壁である.
    一方で,無細胞系を用いた膜タンパク質合成の報告が近年増えてきている.無細胞系では細胞の生存に重要な膜タンパク質を合成しても反応系自体はかく乱されず,様々な種類の膜タンパク質を安定に合成できる.創薬ターゲットとなるヒト膜タンパク質を無細胞合成するには,ヒトと同じ真核系翻訳機構を持つコムギ無細胞合成法が適している.本稿では,リポソーム添加型コムギ無細胞膜タンパク質合成法をはじめ,GPCRとトランスポーターの合成・活性評価や無細胞合成膜タンパク質抗原を用いた抗体作製などの具体例を示しながら,無細胞系による膜タンパク質合成の利点や活用法についてご紹介したい.
FYI(用語解説)
  • 馬場 嘉信
    2015 年 51 巻 8 号 p. 775_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    シリコン上に,DNAの直径と同程度(2nm)の孔(ナノポア)を形成し,ナノポア中にDNAが通り抜ける間隔で電極を作成したデバイスを用いて,DNAのシークエンシングを行う技術である.ナノポア中の電極間にトンネル電流を流し,1分子の1本鎖DNAを一定速度で通過させると,DNAの各塩基の電子状態の違いにより,トンネル電流値が変化するために,その変化量を解析しDNA配列を解読できる.DNA解読速度は,1秒間に1,000塩基程度であり,1,000個のナノポアを並列化することで,1時間で30億塩基のヒト・ゲノム解析が可能になる.DNAのみならず,RNA,メチル化DNA,タンパク質もシークエンシング可能である.
  • 竹田 浩之, 野澤 彰, 澤崎 達也
    2015 年 51 巻 8 号 p. 775_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアキャリアは,主に真核生物のミトコンドリア内膜に局在するトランスポーターである.MCファミリーにはプロトンからアミノ酸,核酸など多様な構造を有する基質を輸送する輸送体が存在する.近年,ミトコンドリア内で行われる代謝活動に関して生物間で様々な違いが存在することが明らかになってきた.それぞれの生物のミトコンドリア代謝と密接に関連するMCタンパク質は,それぞれの生物のミトコンドリアの役割を理解する上で重要な解析対象となっている.
  • 竹田 浩之, 野澤 彰, 澤崎 達也
    2015 年 51 巻 8 号 p. 775_3
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    色素体内膜局在型糖リン酸輸送体は,色素体の内膜に局在する膜タンパク質で,リン酸と様々な糖リン酸の対向輸送を行うトランスポーターである.トリオースリン酸,ホスホエノールピルビン酸,グルコース6-リン酸,またはキシルロース5-リン酸に高い基質特異性を示す4種の輸送体が知られており,色素体と細胞質の糖代謝を結び付ける役割を担っている.
  • 中安 一幸
    2015 年 51 巻 8 号 p. 775_4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    健康情報活用基盤実証事業はその名のとおり,日々の診療等を通じて個々の医療機関等に蓄積される医療情報や健康増進に取り組む個人の日々の記録等を,適切な権限管理に基づく認証を経て相互参照することにより医療や健康づくりの品質を向上させようとするものである.ICTネットワークを用いてそのような社会基盤(定義こそあるわけでないが,こういった社会基盤や制度が「EHR(Electronic Health Record)」と呼ばれている)を形成できるかどうかの実現可能性を検証し,社会的な有用性を世に訴求する社会実験事業であった.医療ICTにまつわる政策はこの後,総務省,厚生労働省,経済産業省や内閣官房においても,EHR構築に向け進んでいくこととなった記念すべき事業である.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2015 年 51 巻 8 号 p. 777-779
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    このコラムでは既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,51巻6号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
  • 平山 富美子
    2015 年 51 巻 8 号 p. 780-781
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    本剤の臨床開発は外国で開始され,米国ではレナリドミド及びボルテゾミブの治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫(MM)患者を対象とした外国第I/Ⅱ相試験,欧州では外国第Ⅲ相試験を主要な試験成績として製造販売承認申請を行い,2013年2月に米国で迅速承認を取得し,2013年8月に欧州で承認を取得した.日本では,2012年より再発又は難治性のMM患者を対象とした国内第I相試験,続いて2013年より国内第Ⅱ相試験が実施された.これらの結果,日本人でも本剤の有効性が期待できるとともに,安全性プロファイルも忍容可能であることが確認され,2014年7月に外国第Ⅲ相試験を主要な試験成績として製造販売承認申請を行い,2015年3月に日本で承認を取得した.なお,本剤は「再発又は難治性のMM」に対して,2014年6月に希少疾病用医薬品に指定されている.
薬薬連携つながる病院・薬局
在宅医療推進における薬剤師のかかわり
  • 佐々木 昌弘
    2015 年 51 巻 8 号 p. 785-788
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「社会保障と税の一体改革」は,社会保障の充実・安定化と,そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものであり,平成23年6月に菅首相のもとで改革案がまとめられ,平成24年8月には,関連8法が野田首相のもとで成立した.同年12月に,社会保障制度改革国民会議が設置され,報告書が平成25年8月にとりまとめられ安倍首相に手渡された.同報告書等に基づき,改革の全体像や進め方を明らかにする持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律が,同年12月に成立し,平成26年6月には医療法や介護保険法を含む一括法(医療介護総合確保推進法:図1)が成立した.
    同法は,効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに,地域包括ケアシステムを構築することを通じ,地域における医療および介護の総合的な確保を推進することを目的としている.そして今年5月には,プログラム法に基づく最後の法的措置として,持続可能な医療保険制度を構築するため,国民健康保険をはじめとする医療保険制度の財政基盤の安定化,負担の公平化,医療費適正化の推進,患者申出療養の創設等の措置を講ずる持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律が成立した.
    この一連の改革を一言でいえば,「消費税率を5%から8%,10%に段階的に引き上げ,それによる税の増収分は全額,社会保障の安定と充実に振り向ける.また,社会保障に関して,少子化対策,医療制度,介護保険制度,公的年金制度の改革を行う.」ということであり,こうした法的整備が全て揃った中で,来年の診療報酬改定を迎えることとなる.
続・数式なしの統計のお話
  • 酒井 弘憲
    2015 年 51 巻 8 号 p. 790-791
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    昨年は年末に任期の半分というタイミングで衆院選挙が行われ,つい先日も統一地方選挙が行われたが,開票があまり進んでいないにもかかわらず,選挙速報で「当選確実」のクレジットが出るのを不思議に思われている方もいるのではないだろうか? 選挙では,よく出口調査をやっているのにお気付きだろう.結論を先に言えば,選挙速報での当確情報は,実際の開票状況と出口調査の結果に基づいている.
    そもそも,調べたい対象の全てのデータを得ることは,多くの場合,不可能である.そのため一部のデータ,つまり抽出サンプルから,全体の母集団を推定することが必要になる.一部から全体を予測する統計的方法として,「推定」という考えがある.推定の良さは,一致性や不偏性などによって決まってくる.一致性とは,データの数が多くなればなるほど,1つの値に収れんしていく性質のことである.つまり,少ないサンプルよりは多数のサンプルを集めた方が,良い推定が可能になるということである.不偏性とは,偏りのないことであり,推定値の期待値が真の値に限りなく一致してくるということである.
    説明を簡単にするために,出口調査で,ある候補者Aの得票率を推定することを考えてみよう.
    例えば,投票を済ませた任意の100人の有権者に投票した候補者を聞いたところ,そのうち45人がAに投票したと答えたとしよう.この場合,注目するAの得票率は45/100=0.45である.この値は一点決め打ちの推定値なので点推定値と呼ぶ.この値に基づいて,Aの真の得票率(これは全部の票を開票してみないと分からない)に対する区間推定,つまり,上で調査した0.45という得票率がどのくらいの信頼性を持っているのかということを調べてみる.ここでは,Aが立候補した選挙区で投票した有権者全体が母集団ということになり,出口調査の対象となった100人が標本ということになる.標本が100人で,調査結果としてAに投票した人数が45であるとすると,得票率45%の信頼度95%の信頼区間は,0.3525~0.5475となる(簡単な式なので提示しておくと,p±1.96√(p(1-p)/n)で計算できる).いま,Aに対立するB候補がいるとしよう.Bに投票したと答えた人数が100人中35人であったとする.そうすると,Aに投票したとする人よりも10%少ない.したがって,かなりの確率でAの方がBよりも得票率が高いと言えそうであるが,本当にそうだろうか? 実際にBの得票率について同じく95%信頼区間を計算してみると,0.2565~0.4435となる.これは,Aの信頼区間とかなり重なっている.つまり,Aの得票率は低ければ40%を切る可能性もあり,Bの得票率は高ければ40%を超えることも考えられる.したがって,この出口調査からだけでは,AがBを抑えて当選するとは言い切れない.これは出口調査の対象人数が少ないためである.もし,全投票者を出口調査対象とすれば答えは簡単であるが,そのような調査は不可能である.そうすると,どのくらいの人数が標本として適当なのかということになるが,出口調査の対象者を増やしてn人にしたとしよう.その場合でもAとBの得票率はそれぞれ45%,35%としておく.このとき,95%の確率で両候補の真の得票率に差があると言うためには,2つの信頼区間が重なり合わなければよいことになる.つまり,「Aの信頼区間の下端」>「Bの信頼区間の上端」であればよい訳である.信頼区間の公式に当てはめて計算すると,この場合,n>364.8となる.したがって,出口調査でAとBの得票率の差45-35=10%が信頼度95%で有意な差であると言うためには,365人以上の人に回答してもらう必要があるということになる.このように標本抽出して得られた結果を用いて,選挙速報で当選確実が出ている訳である(当然,本連載の去年の第1回に紹介したギャロップ調査のように,地域差,性別,年齢構成なども考慮して出口調査する投票所も選ばれているはずである).もし,接戦でB候補者の得票率が43%であったとすると,僅か2%の得票率の差を見いだすためには調査対象として9,462人が必要になってくる.
    読者の皆さんは論文などで,この「95%信頼区間」という記述を目にされたことがあるだろう.95%信頼区間であれば,その区間内にその推定値が存在する確率が95%であることを示していることになる.さらに,その区間幅はサンプルサイズ,臨床研究や治験で言えば症例数が増えれば,狭くなる.つまり推定精度が高まる訳である.医薬の世界では,5%有意であるか否かという二者択一の「検定」偏重のきらいがあるが,検定の弱点は,具体的にどのくらいの差があるのかとか,その試験がどのくらいの精度で実施されたのかというようなことが分からないことである.「推定」は,「検定」の弱点を補強する情報を提示してくれる方法なのである.
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
トピックス
  • 占部 大介
    2015 年 51 巻 8 号 p. 800
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    化学者は天然物やその類縁体の多段階合成において,多くの新規化合物に遭遇する.それらの中には標的化合物よりも重要な化合物が紛れ込むことがある.本稿では,エポキシイソプロスタンEC(1)の合成において予期せぬ2が得られたことに端を発し,種々の類縁体を合成することで1の活性発現において重要な構造変換を推定した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Egger J. et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 17382-17385 (2014).
    2) Egger J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 52, 5382-5385 (2013).
    3) Jung M. E. et al., Org. Lett., 10, 4207-4209 (2008).
  • 海沼 美香
    2015 年 51 巻 8 号 p. 801
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    Cytochrome P450(CYP)はC-H結合を酸化する金属酵素である.多くの生体反応に関わる酵素であり,合成化学的に難しい位置あるいは立体選択的酸化を行うことから,CYPの反応機構は大変興味深い.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ortiz de Montellano P. R., Chem. Rev., 110, 932-948 (2010).
    2) Yoshimoto F. K., Guengerich F. P., J. Am. Chem. Soc., 136, 15016-15025 (2014).
  • 小西 徹
    2015 年 51 巻 8 号 p. 802
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,幻覚・暴言・攻撃的行動・不安といった認知症の周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)に対して抑肝散が有効であることが報告され,大規模臨床試験におけるデータも集積されてきている.抑肝散のBPSDに対する作用機序の1つに,グルタミン酸(Glu)過剰による毒性から神経細胞を保護する作用が考えられている.神経毒性発現のメカニズムにはNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸,N-methyl-D-aspartic acid)型グルタミン酸受容体を介するものと,システムXc(シスチン/グルタミン酸アンチポーター)を介するものが提唱されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Iwasaki K. et al., J. Clin. Psychiat., 66, 248-252 (2005).
    2) Matsuda Y. et al., Human Psychopharmacol., 28, 80-86 (2013).
    3) Kawakami Z. et al., Neurosci., 159, 1397-1407 (2009).
    4) Kanno H. et al., PLoS One., 9, e116275 (2014).
  • 水谷 健二
    2015 年 51 巻 8 号 p. 803
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    昨年11月,日本で世界に先駆け,全く新しい作用機序の睡眠剤が発売された.世界初となるオレキシン受容体拮抗薬,スボレキサント(商品名:ベルソムラ)である.そして早くもその約1か月後,スボレキサントが結合したオレキシン受容体の立体構造が,Natureオンライン版で公開となった.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yin J. et al., Nature, 519, 247-250 (2015).
    2) Rosenbaum D. M. et al., Science, 318, 1266-1273 (2007).
  • 中谷 絵理子
    2015 年 51 巻 8 号 p. 804
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    褐色脂肪細胞は,熱産生作用を持つミトコンドリア脱共役タンパク質(uncoupling protein 1:UCP1)を有しており,このUCP1は体温調節に関わっている.また,遺伝子操作によって人為的に褐色脂肪組織を除去したマウスは,体重が重く,血中トリグリセリド濃度や血糖値が高いことから,褐色脂肪細胞は全身の代謝にも関与することが予想されている.しかし,熱産生作用を抑制するためにUCP1を欠損させたマウスの体重や血中コレステロール値,血糖値が対照マウスと変わらないことから,褐色脂肪細胞には,熱産生作用以外に代謝を調節するシステムが存在する可能性が考えられた.そこでWangらは,褐色脂肪細胞にも白色脂肪細胞と同様に何らかの分泌因子を介する代謝調節システムが存在することを予想し,褐色脂肪組織から分泌されるneuregulin 4(Nrg4)が肝臓での作用を介して全身の栄養代謝を調節する可能性を明らかにしたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lowell B. B. et al., Nature, 366, 740-742 (1993).
    2) Kotani Y. et al., Aging Cell, 4, 147-155 (2005).
    3) Wang G. X. et al., Nature Medicine, 20, 1436-1443 (2014).
    4) Harai D. et al., Oncogene, 18 (17), 2681-2689 (1999).
  • 黒川 和宏
    2015 年 51 巻 8 号 p. 805
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    現在我が国では,喫煙は健康被害をもたらすことなどの理由ならびに禁煙補助治療薬であるバレニクリンの登場により,喫煙者率が大きな減少を見せている.一方,ニコチン依存時には,中脳辺縁ドパミン神経系の抑制ならびに扁桃体における副腎皮質刺激ホルモン放出因子(corticotropin releasing factor:CRF)の増加が引き起こされ,このような原因により簡単には禁煙できないと考えられている.今回Griederらは,ニコチン依存時ならびに休薬時に腹側被蓋野のドパミン神経細胞でCRFが合成・遊離されることを初めて明らかにしたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Koob G. F. et al., Neuropsychopharmacol., 35, 217-238 (2010).
    2) Grieder T. E. et al., Nat. Neurosci., 17, 1751-1758 (2014).
  • 遠藤 直紀
    2015 年 51 巻 8 号 p. 806
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,関節リウマチなどの自己免疫疾患が17型ヘルパーT細胞(T helper 17 cell:Th17)と制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)のバランスの不均衡によって生じる可能性が示唆されている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Berod L. et al., Nat. Med., 20, 1327-1333 (2014).
    2) Abu-Elheiga L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 102, 12011-12016 (2005).
    3) Michalek R. D. et al., J. Immunol., 186, 3299-3303 (2011).
  • 上林 敦
    2015 年 51 巻 8 号 p. 807
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    患者が毎日服用する医薬品に対して,毎回同等の有効性と安全性を担保することは,製薬メーカーとしての使命である.製薬メーカーは適切な品質試験により,全てのロットの製剤の品質を担保している.品質試験の中でも,溶出試験は医薬品の経口投与後の吸収性能の指標となる極めて重要な試験である.医薬品承認申請の際に,製品ごとに科学的エビデンスに基づいた溶出試験条件およびクライテリアを設定する必要がある.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mitra A. et al., AAPS PharmSciTech, 16, 76-84 (2015).
    2) Selen A. et al., AAPSJ, 12, 465-472 (2010).
    3) Dickinson P. A. et al., AAPSJ, 10, 280-290 (2008).
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  • 富田 泰輔
    2015 年 51 巻 8 号 p. 789_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    東京大学では入学後に進振りという制度によって専門課程が決まるため,進学したい学部によっては教養課程で点数を上げる必要がある.その手段として「ゼミ」と呼ばれる,出席だけで高点数が得られる講義に出るという選択肢があった.高校時代にブルーム著「脳の探検」を読み,脳神経系への興味を持っていた自分は,迷わず医学部附属脳研究施設(現在は改組により廃止)が開催していたゼミを選択した.しかし物理が非常に苦手な自分にとって,電気生理学を主体とする講義は全く意味不明で苦痛であった.
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