ファルマシア
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51 巻, 6 号
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目次
  • 2015 年 51 巻 6 号 p. 514-515
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    表紙の説明:『温故知新』ファルマシア創刊50周年を記念して過去掲載の表紙より抜粋.上:第1巻(1965),右(赤丸):第7巻(1971),下(緑丸):第9巻(1973),左(青丸):第15巻(1979).第1号から第19巻の表紙は洗練された幾何学模様で飾られ,各巻,年間で同じデザインが使われていた.第1巻の表紙は電子顕微鏡の試料をのせるグリッドのようにも見える.図形の意味を想像しながら,ファルマシアのページをめくるのも楽しい.
オピニオン
  • 中島 元夫
    2015 年 51 巻 6 号 p. 513
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    我が国の医療研究開発の全体最適化を目指すため,今年,遂に日本版NIH(National Institute of Health)といわれる日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)が始動した.基礎から臨床までの医療に関わる研究を国家的に支援し,統一的な司令塔を置いて縦割り行政による弊害をなくし,省庁の壁を越えて,領域ごとに柔軟な研究資金の提供と運営がなされるものと期待される.
    このAMEDの手本となった米国のNIHは,医学領域の研究に国家予算から膨大な競争的研究資金を提供してきたが,このNIHの研究費を獲得してきた研究テーマや手法を歴史的に振り返ってみると,その時々のトレンドに乗っている研究が勝者であることが多い.言い換えれば,米国では日本と異なり,時流に乗れない研究は競争的研究資金を得るのが難しいと言える.私は,1980年代に10年間勤めていた米国テキサス大学M. D. アンダーソンがんセンターで,NIHグラントを獲得するために,この潮流に乗ることの大事さを痛感していた.
    実は,これは世界的規模の創薬研究を見た場合にも同じことが言える.創薬研究にはトレンドがある.それは標的分子であったり,医薬品の形や分子種であったりする.かつて,スイスのバーゼルにあるチバガイギー(後のノバルティス ファーマ)で,オンコロジー領域の研究開発の中枢に在籍していたころ,世界で初めてのがん分子標的薬となるグリベックの開発に関して,オンコロジー領域会議で意見を戦わせていた.世界初のABLキナーゼ阻害薬を慢性骨髄性白血病に対するオーファンドラッグとして開発しなければ,タンパク質チロシンキナーゼ阻害薬のような代物が医薬として日の目を見る機会は絶対に来ないと思った.事実,このグリベックが承認されるや否や,せきを切ったように,各種チロシンキナーゼ阻害薬が怒涛のように開発されていった.
    そして次の大きな波となったのが抗体医薬である.これは1980年代初頭に注目されたミサイル療法などより進化し,次から次へと明らかにされてきた治療薬標的分子である細胞膜表面受容体とリガンドをターゲットとした抗体を用いるものである.この抗体医薬の可能性は無限に近く,いずれ低分子化合物の分子標的薬をりょうがするかもしれない.一方で核酸医薬の研究が進むと,研究手段としてのsiRNA(small interfering RNA)の利用からRNAを診断と治療の標的にするようになり,さらにRNAを治療薬そのものにする時代が到来した.これは,21世紀の大きなトレンドになりつつある.
    それでは合成低分子化合物や天然物の世界ではどうなっているか? これまでに新規合成された化合物や構造が明らかにされてきた天然化合物の中には,生体内代謝や毒性と安全性が調べられているものの,当時は薬として及第点が付かずにお蔵入りしているものが多くある.21世紀に入ると,これらの既存の化合物から新たな治療領域における用途を探し出そうとする研究,いわゆるドラッグ・リポジショニングの時代が到来した.大手の巨大製薬企業は,これらのトレンドを見逃さない.いやトレンドを創り出して,ベンチャー企業を躍らせている.
    我が国の創薬研究の現場では,今後AMEDの指揮下で産学連携を上手く進め,毎年日本の20倍もの多くのディスカバリーステージの医薬を生み出す米国の創薬力に負けないように,創薬研究のトレンドを見逃さず,さらに世界的創薬トレンドを創出する意気込みで頑張っていただきたい.
Editor's Eye
挑戦者からのメッセージ
  • 掻いてベールをはぎ取ろう
    倉石 泰
    2015 年 51 巻 6 号 p. 523-525
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    良くないとは分かっているが我慢できずに掻いてしまう,あの衝動的な感覚を私達は「痒み」と呼ぶ.医学用語の「そう痒(症)」に対応する英語はpruritusであるが,一般に使用される「痒い」「痒み」の英語itchには別の意味もある.COUBILD英語辞典には,「If you are itching to do something, you are very eager or impatient to do it.」と説明されている.「したくてたまらず,我慢できずにイライラする」のが,正に「痒みitch」である.皮膚の表層に局在した寄生虫や刺激物は掻き出せる可能性があるので,それらを除去するために脳が痒み(掻きたいとの衝動)の指令を出すと考えられる.皮膚の深部を含む生体内部の異常で生じる「痛みpain」が,患部を保護するために耐えてじっとする反応を引き起こすのとは対照的である.
    手術の際に鎮痛目的でモルヒネなどオピオイド鎮痛薬をくも膜下あるいは硬膜外に投与する.その際に生じる副作用で頻度の高いのが痒みであるが,痒みが強い場合,患者さんは「痛みは我慢するので痒みを取って欲しい」と訴えるそうである.胆汁うっ滞性肝障害で強い痒みが慢性的に起きると掻爬により皮膚がぼろぼろになることもある.また,三叉神経領域の帯状疱疹で,皮疹治癒後に神経障害性そう痒が起き,掻いても(神経障害により)痛みが生じなかったために頭蓋までも掻きむしった症例が報告され衝撃を与えた.皮膚の大きな損傷は痛みを生じ,皮膚表層に限局した刺激・異常が痒みを生じるので,痛みと比較して痒みは一般に苦痛が軽い印象を与えるが,掻いても抑制されない痒みは苦痛・イライラ感が大きく,「生活の質」を著しく低下させる場合も多い.
    このように医療の観点からも痒みは重要な感覚である.ところが,そう痒症の病態生理のみならず,痒みの生理的機構もまだ不明な点が多い.痒みの研究者は世界的にもまだ少数である.痒みの研究に多くの若い研究者が参加されることを期待して,筆者の痒み研究の動機などを振り返ってみたい.
セミナー
  • 久保 允人
    2015 年 51 巻 6 号 p. 526-530
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    気管支喘息や花粉症などのⅠ型アレルギーは,B細胞から産生される免疫グロブリンE(immunoglobulin E:IgE)によって引き起こされ,IgEは肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球が持つ受容体に結合することで,アレルゲン特異的にアレルギー反応を誘導することが知られている.このIgEの産生は,T細胞から産生される2型サイトカインを必要とすることから,アレルギーはT細胞を必要とする免疫反応と考えられてきた.近年は,T細胞やIgEを介したマスト細胞の反応系が存在しなくてもアレルギーが起こり得ることが知られるようになって,好塩基球や自然リンパ球による免疫反応系の存在が明らかになり,これら自然免疫系の細胞に注目が集まっている(図1).そこで本稿では,好酸球性食道炎と喘息などのアレルギー性炎症を制御する自然免疫系の細胞について紹介する.
話題
  • 阿波 圭介
    2015 年 51 巻 6 号 p. 531-535
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    我が国では,大学等に革新的な基礎研究の成果があるにもかかわらず,医薬品・医療機器等としての臨床応用につながらない,いわゆる「死の谷」の存在が指摘されており,この「死の谷」を越えるための「橋渡し研究(Translational Research:TR)」の強化が必要とされている.また,我が国の医薬品・医療機器産業は輸入超過となっており,我が国発の革新的な医薬品・医療機器等の創出が求められている.
    本稿では,文部科学省における橋渡し研究の推進に向けたこれまでの取組と今後の展望について概説する.
話題
  • 設楽 研也
    2015 年 51 巻 6 号 p. 536-540
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    製薬産業は,代表的な知識集約型の高付加価値産業であり,資源の乏しい我が国が世界と競争するために非常に重要な産業である.平成25年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略(成長戦略)」の中で,世界第3位の新薬創出力を持つ我が国の製薬産業は戦略産業に位置付けられ,日本再生の柱の1つとして期待されている.
    製薬産業の重要な使命の1つは,いまだ満たされない医療用の必要性(アンメットメディカルニーズ)に応えることができる革新的な新薬を継続的に創出することにより,人々の健康や福祉の向上に貢献することである.一方,新薬の成功確率は低く,投資額も膨大であり,研究開発期間も非常に長い中では,革新的な新薬の創出のためには特許の役割が極めて重要である.
    本稿では,特許について専門性を有しない方を対象に,医薬品の研究開発における特許の重要性について分かりやすく紹介したい.
話題
  • 髙橋 宏次
    2015 年 51 巻 6 号 p. 541-545
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    情報技術が発展を遂げ,インターネットを通じての商取引が活発になってきた昨今,商品やサービス(役務)の目印である商標の重要性がますます高くなってきている.商標法が改正され音などの新しい商標の保護が開始されると,商標の利用形態も多様化してくる.グローバルで事業展開する医薬品メーカーでは,世界統一ブランドによる医薬品の販売が望まれるが,各国または各地域での商標登録および医薬品名称の審査などのハードルを乗り越えなければならないところ,米国においては医薬品名称の審査のガイドラインが整備されている状況であり,欧州においてもガイドラインの改正が行われ,これらの活動が活発に行われている.また,一般薬のインターネット販売が解禁になり偽造医薬品対策も急務となっているところ,水際規制としての商標の利用もますます望まれる.ここでは,医薬品販売名における商標,新製品名開発における商標,および,偽造医薬品対策における商標について紹介する.
話題
  • 秋葉 秀一郎
    2015 年 51 巻 6 号 p. 546-550
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    現在,日本の医療の現場では多くの医師,薬剤師が漢方薬を扱っており,医療保険が適用される漢方薬も150種を超え,非常に幅広く漢方薬が用いられている.漢方薬にはエキス剤と煎じ薬があるが,いずれも医療保険が適用される.これらのエキス剤や煎じ薬は処方にしたがった生薬の組合せにより構成されている.日本で使用される漢方薬の原料となる生薬の80%以上は中国からの輸入によって賄われており,また,生薬の種類によっては100%中国からの輸入に頼っているものも多く存在する.しかし,供給国である中国における経済成長や世界レベルでの漢方薬のニーズが高まり,漢方薬の需要は増加している.さらに需要増を見込み,投機目的に生薬が取り引きされ,ここ数年における生薬の価格は著しく高騰している.
    筆者は漢方薬や生薬製剤などの企業団体である日本漢方生薬製剤協会(以下,日漢協)に所属し,原料生薬の流通に関する活動を行っており,原料生薬の使用量調査を実施した.その活動の中から,原料生薬の流通の現状と課題について紹介する.
セミナー
  • SACLAでなにができる
    石川 哲也
    2015 年 51 巻 6 号 p. 551-555
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    X線は波長の短い光であり,その透過力を利用して古くから医学診断に応用されている.およそ100年前に結晶によるX線回折現象が発見され,分子を結晶化してその構造を解析する糸口が開かれた.我々が電磁波である光を用いて物を観察するとき,空間的分解能は光の波長の程度となる.可視光の波長が1万分の数ミリメートルであるのに対して,X線の波長は1,000万分の数ミリメートルであり,これは物質を構成する原子の間隔と同程度となるため,原理的には原子の並びかたを弁別することができる.しかし,1つの分子からのX線散乱は非常に微弱であり,多数の分子を結晶とし3次元的規則配列での干渉効果を用いて散乱強度を強め構造解析を行ってきた.このような結晶構造解析は,初期には非常に簡単な構造をその対象としてきたが,最近ではタンパク質分子やその複合体の構造解析も可能となり,創薬ターゲットタンパク分子の構造解析も進められるようになってきた.
    X線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser:XFEL)はピーク輝度が従来のアンジュレータ放射光の10億倍程度高く,空間的に完全コヒーレントで,100fs秒以下の超高速パルスを発生するX線光源である.特に日本のさくら(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser:SACLA)では数fsのパルス幅が日常的に提供されており,非常に高速な電子状態の変化を原子スケールで捉えることが原理的に可能である.原子スケールでの超高速現象は,今まで観察の手段がなかったため,ライフサイエンスを含むあらゆる科学技術分野で「見てきたような話」がまかり通る世界となっている.XFELは「見てきたような話」を実際に見る手段である.
    我々の周りには,何が起こっているかは知られていても,なぜそうなるのかが原子レベルでは分かっていない現象が無数にある.XFELは,高輝度放射光と相補的に用いられることによって,多くの「なぜ」に答えを与えていくであろう.
最前線
話題
  • めざせ「科捜研の人」
    片木 宗弘
    2015 年 51 巻 6 号 p. 561-563
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    最近,薬学部の講義カリキュラムから裁判化学を外してしまった大学が少なくないようで,我々科学捜査研究所(科捜研)の仕事を紹介する機会もほとんどなくなってきた.筆者が学生の頃は,クラブの顧問教授が担当される裁判化学の講義の際には,勉学に燃える真面目な同級生の迷惑も顧みず,男子クラブ員一同講義室の最前列に陣取り講義を受けたものである.残念ながらその講義内容はあまり覚えていないが,とにかく裁判化学という分野の存在を知る機会になったことは確かであり,その講義の甲斐あってか筆者は今,科捜研の職に就いている.
    薬学部において,裁判化学が置かれている立場は危機的な状態だが,科捜研への就職を希望する学生は,減少するどころか増加しているようにさえ思われる.これは,国内外で放映される科捜研を題材としたテレビ番組が,内容の真偽はさておき,科捜研人気に拍車をかけているように思える.そこで,科捜研の業務の一端を紹介することにより,テレビ番組以外では触れる機会のなくなった読者特に薬学部生の皆さんに,少しでも裁判化学というものに触れていただき,薬学部出身者が大いに活躍できる場であることを改めて認識していただければと思う.
FYI(用語解説)
  • 髙橋 宏次
    2015 年 51 巻 6 号 p. 564_1
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    商標権者が他人に登録商標の使用を認めるために許諾するもので,許諾を受けた者は登録商標を非独占的に使用することができる(商標法第31条).なお,使用権には,これとは異なる専用使用権があり(商標法第30条),専用使用権の設定を受けた者は,独占的に登録商標を使用することができる.専用使用権は商標権とほぼ同様の強力な独占的権利といえ,通常使用権はより弱い権利といえる.専用実施権は特許庁に設定登録する必要があるが,通常使用権は専用使用権と異なり,必ずしも特許庁に登録する必要はない.
  • 髙橋 宏次
    2015 年 51 巻 6 号 p. 564_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    勃起不全(ED:Erectile Dysfunction)を改善する薬剤のことをいい,5型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)阻害作用を有する.勃起は神経および陰茎海綿体内皮細胞由来の一酸化窒素刺激により環状グアノシン一リン酸(cGMP)が産生されることによって,陰茎海綿体の平滑筋が弛緩し血流が増加することで起こる.海綿体血管平滑筋はcGMPにより制御されており,cGMPが増加すると弛緩し減少すると収縮する.ここで,cGMPの分解はPDE-5により行われるが,これを阻害することによってcGMPの細胞内濃度が上昇し,海綿体血管平滑筋が弛緩され勃起が維持される.この作用を有する化合物として,シルデナフィル,バルデナフィル,タダラフィルが知られている.
  • 小幡 史明, 三浦 正幸
    2015 年 51 巻 6 号 p. 564_3
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    病原体関連分子パターンPAMPsと対比してDAMPsとも呼ばれる.HMGB1,熱ショックタンパク質,細胞外マトリックス分解産物,ベータアミロイド,酸化型LDL,酸化リン脂質,二本鎖DNA,ミトコンドリア由来ペプチド,ミトコンドリアDNAなどが知られ,それ単独または他の免疫賦活化因子とともに免疫の活性化を引き起こす.主に細胞壊死(ネクローシス)を起こした細胞から放出され,急性炎症・慢性炎症の要因になっていると考えられる.近年では,遺伝学的にプログラムされたネクローシス(ネクロプトーシスとも)からの放出が多数報告されており,医学的にも注目されている.
  • 小幡 史明, 三浦 正幸
    2015 年 51 巻 6 号 p. 564_4
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    Forkhead box Oの略称で飢餓ストレス応答因子.FoxOはインシュリン受容体の下流で制御され,おもに飢餓応答時に活性化される転写因子である.その標的として,翻訳抑制因子4E-BPやリパーゼ,インシュリン受容体やPEPCK(糖新生の律速酵素)などが知られる.また酸化ストレスによっても活性化し,カタラーゼやSODを転写する.強いストレスで細胞の修復が不可能となった場合,細胞死を誘導するが,その際にも細胞死誘導因子の発現制御に関与する.様々な機能を持つが,その活性調節は様々な因子により行われる.例えばインシュリン受容体下流のAKTに加え,ストレスキナーゼJNK,長寿因子サーチュインなどが知られる.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2015 年 51 巻 6 号 p. 565
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    このコラムでは厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    当コラムは,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成27年3月26日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
続・数式なしの統計のお話
  • 酒井 弘憲
    2015 年 51 巻 6 号 p. 566-567
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    あっという間に1年が過ぎ,昨年12月でこの連載も終わったと,ホッとしていたのもつかの間,編集部からあと1年連載を続けて欲しいとのご依頼があった.有難いお話ではあるが,さてどうしたものかと思ったものの何とかネタを絞りだして,あと6回書き続けてみることにした.読者の皆さんももう少しお付き合い願えれば幸甚である.
    先日,非常勤講師を務めている九州大学に講義に行き,講義終了後に仲良しの統計の准教授と一緒に透き通ってコリコリとした食感が堪らない“呼子の烏賊の活き造り”を肴に一杯やっていたところ,その准教授の講座の教授,助教として最近2名の英国人が赴任してこられたということを伺った.英国人というので,准教授は,気を利かせて,某有名メーカーの紅茶に,ティーポットとカップのセットを買い込み勇んで待ち受けていたところ,何と2人とも紅茶よりもコーヒー党であったというオチであった.ひとしきり笑ったのだが,考えてみれば,英国では,紅茶よりもコーヒーの歴史の方が古いのである.
    英国に初めてコーヒーハウスなる店が開店し,コーヒーを提供し始めたのが1650年とされている.オックスフォードでは,1654年に開業したクィーンズ・レイン・コーヒーハウスが現在でも営業を続けているらしい.ロンドンでも1652年からコーヒーハウスが開店し,情報収集の重要な役割を果たすようになる.当時から金融センターであったロンドン・シティの取引所近くのコーヒーハウスには,多くの商人が情報を求めて集まった.その中でも特に,ロイズ・コーヒーハウスには,船主たちが多く集まり,店では船舶情報を載せる「ロイズ・ニュース」を発行していた.店で船舶保険業務を取り扱うようになり,これがロイズ保険会社の起源となった.
    一方,紅茶は1717年に,イギリスで最初のティー・ハウスであるゴールデン・ライアンズが開店した.インドでアッサム茶の原木が発見されたのが1823年なので,この頃は中国茶が原料であったはずである.その後,大英帝国がインドを支配し,徐々にコーヒーに代わる非アルコール飲料として,紅茶が市民生活に定着していくことになった.
製剤化のサイエンス
薬学実践英語
トピックス
  • 瀧川 紘
    2015 年 51 巻 6 号 p. 576
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,顕著な生理活性を有するペプチドが数多く発見され,それらを基礎とした創薬研究やケミカルバイオロジー研究が盛んに進められている.化学的観点から見れば,ペプチドの物性制御や機能化を図るためにはペプチド鎖を自在に修飾する手法の開発が重要である.このとき,理想的には室温下,高希釈条件で反応が速やかに進行し,さらには側鎖に保護基を導入することなく望みの位置で結合形成できることが望ましい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dumas A. M. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 51, 5683-5686 (2012).
    2) Noda H. et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 5611-5614 (2014).
    3) Noda H., Bode J. W., Chem. Sci., 5, 4328-4332 (2014).
  • 唐木 文霞
    2015 年 51 巻 6 号 p. 577
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    狙った細胞・組織だけに薬剤を届けられれば,より高い効果を発揮させながら副作用の軽減が可能となる.特に抗がん剤のように毒性の強いものでは,このようなアプローチが重要である.その点,特定の細胞だけを見分けて感染するウイルスには見習うべきものがある.Ohらは,その仕組みを模倣することで,がん細胞選択的に抗がん剤を届けることを試みたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Oh S. S. et al., J. Am Chem. Soc., 136, 15010-15015 (2014).
    2) Buning H. et al., J. Gene Med., 10, 717-733 (2008).
    3) El-Sagheer A. H., Brown T., Chem. Soc. Rev., 39, 1388-1405 (2010).
  • 笠島 直樹
    2015 年 51 巻 6 号 p. 578
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    プロシアニジン(PC)は,カテキンやエピカテキンなどのフラバン-3-オール類が重合した構造を持つ化合物の総称であり,ブドウ,リンゴ,カカオなどの身近な植物にも含まれることが知られている.PCは縮合型タンニンとも呼ばれ,これまでに抗酸化作用,血管保護作用,肝機能改善作用,血圧上昇抑制作用など多くの生物活性が報告されているが,その活性の強さは構成されるフラバン-3-オール類の種類や結合様式,さらにはその重合度によって異なると考えられている.これまでの研究において,in vitroでPCの構造活性相関について評価を行った報告はあるものの,in vivoでの検討は少ない.今回,Wuらによって,PCの重合度と生体での効能に関する報告がなされたので,それらについて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wu Z. et al., Nat. Prod. Res., in press (2015).
    2) Roopchand D. E. et al., J. Agric. Food Chem., 60, 8860-8865 (2012).
    3) Sugiyama H. et al., J. Agric. Food Chem., 55, 4604-4609 (2007).
    4) Schafer A. et al., Diabetes. Res. Chin. Pract., 77, 41-46 (2007).
    5) Monagas M. et al., J. Agric. Food Chem., 51, 6475-6481 (2003).
  • 鈴木 卓也
    2015 年 51 巻 6 号 p. 579
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    近年,分子生物学的手法の進歩により遺伝子レベルで発がんメカニズムが解明されるようになり,イマチニブ,ゲフィチニブおよびトラスツズマブなどの分子標的薬が次々と登場している.がんにおいて重要な役割を果たす分子への特異性が高いこれらの分子標的薬は,がんの治癒率を改善し,重篤な副作用を低減させると期待された.しかしながら,分子標的治療により腫瘍は劇的に縮小し一定の延命効果が得られてきたものの,多くの場合,腫瘍細胞の耐性獲得のため長期間の使用ができない.さらに,これらの分子はよく本来の標的に対する効果(オンターゲット効果)や他の分子に対して親和性を示して発揮される効果(オフターゲット効果)による重篤な副作用を引き起こすことが報告されていることから,無病生存期間の延長,がん患者の生活の改善を目的に,より標的特異性が高く,毒性の少ない治療法の開発が求められている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Matsuo Y. et al., Sci. Transl. Med., 6, 259 ra 145 (2014).
    2) Park JH. et al., Cancer Res., 66, 9186-9195 (2006).
    3) Allen T. M. et al., Adv. Drug. Deliv. Rev., 65, 36-48 (2013).
  • 安井 菜穂美
    2015 年 51 巻 6 号 p. 580
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    肥満の予防・改善に当たり,エネルギー消費を亢進させる褐色脂肪細胞の役割が注目されている.脂肪細胞は,大きく白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞に分けられる.白色脂肪細胞はエネルギー源となる脂質の貯蔵と生理活性物質の分泌を担い,褐色脂肪細胞は体温調節のために,ミトコンドリア脱共役タンパク質1(uncoupling protein1:UCP1)を介した熱産生を行うエネルギー消費器官として機能している.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lidell M. E. et al., Nat. Med., 19, 631-634 (2013).
    2) Ohno H. et al., Cell. Metabo., 15, 395-404 (2012).
    3) Bi P. et al., Nat. Med., 20, 911-918 (2014).
  • 宮岸 寛子
    2015 年 51 巻 6 号 p. 581
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    我々が日常生活を送る上で,ストレスを避けることは不可能である.これまでに心理社会的なストレスは,心血管疾患を含む様々な疾患のリスク因子となることが報告されている.また,マウスにおいては,慢性ストレス負荷がアテローム性動脈硬化症の症状を促進することが報告されている.しかしながら,これらの詳細なメカニズムについてはいまだ不明な点が多い.本稿では,慢性ストレスが,骨髄において造血幹細胞の増殖を促進し,その結果,白血球の増加やアテローム性動脈硬化症の増悪を引き起こすことを示した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Black P. H., Brain Behav. Immun., 17, 350-364 (2003).
    2) Rosengren A. et al., Lancet, 364, 953-962 (2004).
    3) Bernberg E. et al., Atherosclerosis, 221, 359-365 (2012).
    4) Heidt T. et al., Nat. Med., 20, 754-758 (2014).
    5) Méndez-Ferrer S. et al., Nature, 452, 442-447 (2008).
  • 八幡 紋子
    2015 年 51 巻 6 号 p. 582
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    「カロリーゼロ」「ノンシュガー」.これらは今日の生活で多く見掛ける言葉である.消費者の健康指向の高まりを背景に,様々な食品や飲料に低カロリー甘味料が選ばれている.なかでも人工甘味料は砂糖に比べ甘味度が数百倍高く,カロリーを抑えて使用できることから,今後も使用量が増加すると予測されている.一方で人工甘味料を含む飲料の摂取と,高血圧,高血糖,高トリグリセリドといったメタボリックシンドロームを示すパラメータとの高い相関が報告されている.本稿では,人工甘味料によって腸内細菌叢に変動が起こり,正常な血糖コントロールができない耐糖能異常が現われるという論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lutsey P. L. et al., Circulation, 117, 754-761 (2008).
    2) Suez J. et al., Nature, 514, 181-186 (2014).
    3) Soldavoni J. et al., Dig. Dis. Sci., 58, 2756-2766 (2013).
    4) Schwiertz A. et al., Obesity, 18, 190-195 (2010).
  • 兒玉 幸修
    2015 年 51 巻 6 号 p. 583
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫は,主に皮膚や粘膜に存在する色素細胞から発生し,比較的初期から転移を生じる予後不良のがんである.しかし近年,悪性黒色腫に対する新規治療薬が次々と開発され,治療成績が著しく向上している.その1つが,特定の遺伝子変異を標的とした分子標的薬である.転移性の皮膚悪性黒色腫の約50%はBRAF V600変異を有しており,この変異によりmitogen-activated protein kinase(MAPK)経路の構成的活性化を生じ,細胞外からの刺激がなくても細胞の増殖をもたらすことが明らかになっている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chapman P. B. et al., N. Engl. J. Med., 364, 2507-2516 (2011).
    2) Hauschild A. et al., Lancet, 380, 358-365 (2012).
    3) Larkin J. et al., N. Engl. J. Med., 371, 1867-1876 (2014).
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薬学と50年
談話室
  • 花輪 剛久
    2015 年 51 巻 6 号 p. 575_2
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー
    ひと昔前,CMにも出てきたこの言葉の意味について検索してみた.英語では“honest injun”と表現し,Marc Twainの“Adventures of Tom Sawyer”で使われているが,起源は更に古いと考えられていることが分かった(www.alc.co.jp;アルクより).また,その背景としては「ネイティヴアメリカンにとって言葉は神聖なもの,絶対的なものであり,言葉をもって他人と約束をするということは神と約束を交わすのと同等で,それを破ることは神を欺くことになる.」という概念にあるとされているのが一般的な解釈である.私は学生時代,大切な恩師からこの言葉を幾度となく聞いた.それはゼミ中だったり,酒宴の席だったり様々であったが,現在でも事あるごとに思い出される貴重な言葉となっている.
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