ファルマシア
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58 巻, 12 号
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目次
  • 2022 年 58 巻 12 号 p. 1098-1099
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:生物活性天然物・擬天然物研究の最前線
    ミニ特集にあたって:天然物化学は創薬の基盤をなす学問分野であり,活性天然物の探索研究や生合成研究に加えて,新たな創薬標的の開拓,擬天然物の分子多様性創出,さらに薬効・副作用を制御する代謝経路の解明など,多様な方面で注目すべき進展が見られている.本ミニ特集では,若い世代を中心として独創的で興味深い研究を推進している先生方に「生物活性天然物・擬天然物研究の最前線」についてご解説いただいた.発展を続ける天然物化学の世界に興味を持っていただける機会となれば幸いである.
    表紙の説明:コニシ(株)は1870年に薬種商として創業し,現在は合成接着剤「ボンド」の製造販売を行う「ボンド事業」,化学品を扱う商社「化成品事業」,橋梁やトンネル,建築物などを維持・補修・改修する「工事事業」の3事業を展開している.2020年に創業150周年を迎え,重要文化財である旧小西家住宅が史料館として開館された.史料館の展示ゾーンには,コニシ(株)の歴史に関する映像展示や衣装蔵に収蔵されていた道具などが展示されている.住宅見学ゾーンでは,書院や台所,前栽などを見学することができる.
オピニオン
  • 「分け入っても分け入っても青い山」
    長田 裕之
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1097
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    日本における天然物化学の源流は、薬学の長井長義、農芸化学の鈴木梅太郎、合成化学の眞島利行らに遡及できる。その後、学部の枠を超えて、天然有機化合物討論会が作られ、我が国の天然物化学のレベルアップに貢献してきた。
    生物が生産する物質の不思議さを解き明かしたいという知的好奇心は、天然物化学の原点であるので、次世代を担う若手研究者には、「物質を手掛かり」として、生物の不思議さを解明する研究に挑んで欲しい。
Editor's Eye
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
  • 中嶋 優
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1110-1114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    「沈香(じんこう)」は線香や香水などの原料として用いられる高級香木である。しかしながら、この香り成分は木材そのものには含まれておらず、細菌や傷、病気などの外部からのストレスに対する防御策として内部分泌される樹脂に含まれている。そのため、実際に香りの原料として使える木材は全体の数%であり供給の問題が挙げられてきた。本稿では、沈香の香り成分の生産に関わる酵素を明らかにした上で、この香り成分が、どのようにして植物の中で組み立てられてくるのかを今後の展望も踏まえて紹介する。
ミニ特集 話題
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
  • 石内 勘一郎, 森永 紀, 吉野 鉄大
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1130-1134
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    偽アルドステロン症は、漢方薬の副作用として最も発症頻度が高いものの一つとして知られる。この副作用の原因物質は、甘草の主要成分であるグリチルリチン酸 (GL)が腸内細菌により加水分解して生じるグリチルレチン酸 (GA)とされてきたが、近年、真の原因物質候補として3-モノグルクロニルグリチルレチン酸 (3MGA)の可能性が推測された。筆者らは、3-MGA説の検証および偽アルドステロン症の予防法確立を目指した3-MGA検出キット開発研究の過程で、新たなGL代謝物 (GA3S)を発見した。本稿では、これまでの経緯を含め、偽アルドステロン症に関する真の原因物質探索研究と今後の展望について紹介する。
セミナー
セミナー
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1145
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和4年9月26日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
最終講義
  • 金澤 秀子
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1146-1147
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    漠然と研究者を目指して,学部卒業後に研究所に就職したが,研究者としての能力不足を痛感し,退職して30歳で大学院へ入学し,博士の学位を取得したのは35歳の時だった.特別研究員(PD)として在籍した工学部でのポリマーとの出会いが『温度応答性クロマトグラフィー』の開発に繋がった.大学院で学んだことが基礎となり,研究論文や国際学会がチャンスをくれた.振り返ると学生達と過ごした大学教員としての研究生活は楽しい時間であった.
留学体験記 世界の薬学現場から
日本人が知らないJAPAN
  • 余 子璋
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1151
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    海外留学は知識を身に付けるだけでなく、自分の人生の旅を豊かにする。親元から離れ、全く知らない環境で勉学に励むことは、異郷の学生と思考の衝突、相互の議論、非情は自らの自主的な思考力を鍛える。留学は私にとって人生の中で最も重要な転換点であり、最も利益のある人生経験の一つでもある。たとえ人と人との間に多くの違いがあっても、私たちはグローバルな世界で異なる文化的背景を体験し、理解し、同時に新しい場所で自分の新しい目標を追い求めるべきだと思う。
アメリカ薬学教育の現場から
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 辻 美恵子
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1156
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    超解像顕微鏡(SRM)技術によって,細胞内の構造や機能をより詳細に観察することが可能になった.しかしながら,複数の標的分子の機能を同時に捉えるためには,マルチイメージングに適した光学特性を有するプローブが求められており,蛍光波長の制限に加え,それぞれの重なり・漏れ込みを防ぐことが大きな課題になっている.これらの課題に対し,Albitzらはテトラジンとシクロオクチン(BCN)の歪み促進逆電子要請型Diels–Alder反応に伴う蛍光特性の変化を利用したFörster共鳴エネルギー移動(FRET)プローブの開発を行い,マルチイメージングに成功した. 本稿では,その研究内容について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Albitz E. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 61, e202111855(2022).
    2) Evelin N. et al., Biomolecules, 10, 397(2020).
  • 小池 晃太
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    近年,これまで創薬に使用されてこなかった中分子領域の化合物が新規モダリティの1つとして注目されている.なかでもペプチドは,細胞内のシグナル伝達を担うタンパク質―タンパク質相互作用(PPI)を標的とした創薬への展開が期待されている.特に環状ペプチドは,生物活性や動態の面でペプチドの創薬シードとしての可能性を拡張すると期待される.様々な環化様式の環状ペプチドやそのライブラリーが報告されているが,新たにユニークな特性を持ったトリアゼン構造を含む環状ペプチドが報告されたため,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Muttenthaler M. et al., Nat. Rev. Drug Discov., 20, 309–325(2021).
    2) Nwajiobi O. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 4633–4641(2022).
    3) Kimball D. B., Haley M. M., Angew. Chem. Int. Ed., 41, 3338–3351(2002).
  • 濵﨑 保則
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1158
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    チョウジやケイヒは芳香性健胃生薬として胃腸薬などのOTC医薬品に配合されている.また,香辛料のクローブやシナモンとして食用にも広く用いられている.両生薬の主精油成分であるオイゲノールやシンナムアルデヒドには,抗菌作用や食欲増進作用などが知られている.本稿ではチョウジとケイヒの抽出物の抗菌作用に着目し,エマルゲルという特徴的な剤形を用いて義歯口内炎治療への応用を検討したIyerらの報告を紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ogawa K., Ito M., Biol. Pharm. Bull., 39, 1559–1563(2016).
    2) Iyer M. S. et al., Gels, 8, 33(2022).
  • 小林 直也
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1159
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    望みの標的タンパク質と特異的に結合するタンパク質を設計し,タンパク質相互作用を自由自在に制御することができれば,新しい医薬品の開発への応用が期待できる.これまで結合タンパク質を設計するには,標的タンパク質が他のタンパク質と結合した複合体構造が必要であり,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて結合タンパク質を設計する一般的な方法はなかった.本稿では,標的タンパク質の立体構造情報のみを用いて,任意の標的タンパク質の特定の部位に結合するタンパク質を設計する手法を開発したCaoらによる研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cao L. et al., Nature, 605, 551–560(2022).
    2) Dou J. et al., Nature, 561, 485–491(2018).
    3) Rocklin G. J. et al., Science, 357, 168–175(2017).
    4) Chevalier A. et al., Nature, 550, 74–79(2017).
    5) Jumper J. et al., Nature, 596, 583–589(2021).
  • 秋山 雅博
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1160
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    古くから脳と腸管の間には双方向のコミュニケーションシステムが存在することはよく知られている(脳腸相関).一方,近年の研究により腸管の100兆個を超える共生微生物(腸内細菌)の集合体である腸内細菌叢は,自閉症,統合失調症やパーキンソン病などの精神疾患に関与することが明らかにされている.また,加齢に伴い腸内細菌叢の組成が大きく変化することも知られ,腸内細菌叢の組成が,発達期および成人期の脳機能に関与することも報告されている.そのため,脳腸相関における腸内細菌叢の重要性が強く認識されるようになり,腸内細菌叢―腸管―脳を軸とした新たな脳腸相関の研究が注目されている.本稿では脳の老化に着目して,腸内細菌叢―腸管―脳の関わりと,そのメカニズムの一端についての研究成果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cryan J. F. et al., Physiol. Rev., 99, 1877-2013(2019).
    2) Mossad O. et al., Nat. Neurosci., 25, 295-305(2022).
  • 髙橋 浩平
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    大うつ病(MDD)は,全世界で年間3億人が罹患している慢性疾患である.最近の病理学的研究では,うつ病患者の死後脳において,前頭前皮質(PFC)でのミエリン形成の低下を示すことが明らかになっている.また,反復社会敗北ストレス(RSDS)や予測不可避な慢性軽度ストレスなどのうつ病モデル動物は,PFCでのオリゴデンドロサイトの分化やミエリン形成,ランヴィエ絞輪維持に対して変性を引き起こすことが明らかにされている.さらに,オリゴデンドロサイトの分化・成熟化は,シナプス可塑性において重要な神経調節因子であり,MDDの病態生理の重要な構成要素であることが明らかになっている.これらの研究は,オリゴデンドロサイト細胞やミエリンに関係する病理学的変化がうつ病発症に寄与している可能性があることを示唆している.
    本稿では,うつ病モデルとして汎用されているRSDSマウスを用いて,慢性ストレス曝露が内側PFC(mPFC)でのオリゴデンドロサイト細胞への分化ならびに成熟化への影響を及ぼすとともに脱髄が生じることを示したKokkosisらの研究成果を報告する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lake E. M. R. et al., Eur. Arch. Psychiatry Clin. Neurosci., 267, 369–376(2017).
    2) Bonnefil V. et al., Elife, 8, e40855(2019).
    3) Tang J. et al., Brain Res. Bull., 149, 1-10(2019).
    4) Kokkosis A. G. et al., Mol. Psychiatry, 27, 2833-2848(2022).
  • 松尾 康平
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1162
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    没食子酸は野菜,果物,赤ワイン,お茶等に含まれ,その高い還元力から食品添加物(酸化防止剤)としても使用されている身近なポリフェノールである.一方で,近年没食子酸には,抗酸化作用だけではなく抗がん作用,抗炎症作用,抗菌作用など様々な生理的効果が報告されている.非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)は,先進国において発症率が増加し続けている進行性の肝疾患であり,肝細胞に脂肪が蓄積するだけの単純性脂肪肝と,炎症や肝細胞へのダメージを伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分類される.NASHの発症には2型糖尿病などの代謝異常が関与しており,NASHが進行すると肝硬変や肝がんを引き起こす場合がある.しかし,NASH治療薬の開発は難度が高く,アメリカ食品医薬品局に承認された治療薬は未だない.本稿では,没食子酸がNASHを改善する分子機構の一端を解明したLeeらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yang K. et al., Front. Immunol., 11, 580208(2020).
    2) Lee A. T. et al., Antioxidants., 11, 92(2022).
    3) Ramezani Ali Akbari F. et al., Acta Endocrinol., 15, 187–194(2019).
    4) Meng X. et al., J. Biol. Chem., 291, 10625–10634(2016).
  • 伊東 育己
    2022 年 58 巻 12 号 p. 1163
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    2020年3月「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」が改正され,経口製剤に対し,溶出試験とヒトにおける生物学的同等性試験が必須となった.後発医薬品の開発においては添加物を自由に選択することができるが,生物学的同等性に影響する製剤の崩壊性や主薬の溶出性,膜透過性については各添加物の固有の性質とともに,主薬と添加物間の相互作用も考慮しなくてはならない.特に膜透過性は,in vivoにおける吸収率を予測する手がかりとなるが,開発段階において溶出試験は実施しても,膜透過性の測定・評価は行われてこなかった.そのため溶出性と膜透過性を同時に試験しようという多くの研究がなされ,in vivoおよびin vitroの研究を通じて,熱力学的溶解度と膜透過性に負の相関関係があることや,溶解性向上を目的とした界面活性剤等の添加が膜透過性に影響を与えることが報告されている.添加物として頻用される高分子は非晶質固体分散体(ASD)技術において,薬物を微粒子または分子の状態で分散させるための非晶質担体としても使用される.ASD技術が難溶性薬物の溶解性を向上する技術である一方で,高分子の添加が溶解性,つまり膜透過性に影響する可能性が報告されている.
    そこで本稿では,ヒトにおける生物学的同等性試験を実施する前に,賦形剤が膜透過性に与える影響を製剤開発の全工程にわたって調査するAbsorption Driven Drug Formulation(ADDF)というコンセプトを打ち出したKadarらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dahan A. et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 101, 99–107(2016).
    2) Borbás E. et al., Mol. Pharm., 15, 3308–3317(2018).
    3) Szabina Kádár. et al., The AAPS J., 24, 22(2022).
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