ファルマシア
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55 巻, 6 号
選択された号の論文の49件中1~49を表示しています
目次
  • 2019 年 55 巻 6 号 p. 502-503
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    表紙の説明:夏の低山にラン科の花を探しに行った.山を登るにつれ,強い芳香が鼻をついてきた.「ヤマユリに違いない!」つづら折りを曲がり,平坦な道に出たところで,目の前にヤマユリが現れた.あまりの重さに,山の斜面から垂れ下がるように咲いていた.大きいだけではなく,本当に美しい.薬用には,秋に鱗茎を収穫して用いる.しばらく花に見とれて休憩していると,谷からの涼しい風が巻き上がってきた.なんという清涼感だろう.夏も野山の花散策にでかけてみては,いかがでしょう?
オピニオン
Editor's Eye
話題
話題
  • ICH M9ガイドライン案の概説
    栗林 秀明
    2019 年 55 巻 6 号 p. 514-518
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    医薬品の製剤開発の過程で重要な位置づけとなる生物学的同等性試験を免除(バイオウェーバー)する方法論について議論が進められている中、この度、日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)でガイドライン案(M9:BCSに基づくバイオウェーバー)がまとめられた。意見公募により一部改正される可能性はあるものの、我が国の薬事規制において新たに導入されるBCSに基づくバイオウェーバーの考え方と適用の要件について概説する。
話題
セミナー
最前線
最前線
研究室から
  • アカデミア発の抗体医薬開発を目指して
    加藤 幸成
    2019 年 55 巻 6 号 p. 537-539
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    抗がん剤としての抗体医薬を開発する際、がん細胞に特異的な抗体を樹立しなければ、常に正常組織への毒性が懸念される。しかしながら、がん細胞だけに高発現している分子は限られており、新規の標的分子はもはや枯渇している。我々の研究室では近年、がん細胞に特異的反応性を示すモノクローナル抗体(CasMab)を作製する技術を開発した。CasMab法は、斬新な新規技術ではなく、むしろ様々なノウハウを結集させたものである。本項では、最初のCasMabを生み出すまでの経緯を紹介したい。
最前線
話題
セミナー:創薬科学賞
  • 国忠 聡, 吉野 利治, 森島 義行, 緒方 孝一郎, 木村 哲也
    2019 年 55 巻 6 号 p. 549-552
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    当社では1970年代に理想的な経口抗凝固薬の研究開発を開始した。幾多の困難を経て2012年に上市することができたが、本セミナーでは二つの大きな困難に絞って研究開発の経緯を紹介する。すなわち、研究開発の初期には経口吸収性の高い化合物の獲得およびFXa阻害薬が実際に抗血栓薬に成り得るかを見極めることに注力した。さらに、プロジェクトの最終段階における、心房細動によって誘発される脳卒中・全身性塞栓症の抑制という主適応症での臨床開発における厳密な用量設定と国際共同第Ⅲ相試験の推進という未経験領域への挑戦についても紹介する。
セミナー:創薬科学賞
  • 阿部 博行, 菊池 慎一, 吉田 孝行, 山口 尚之, 酒井 敏行
    2019 年 55 巻 6 号 p. 553-557
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    トラメチニブは抗がん剤として世界で初めて承認されたMEK阻害薬である。しかし,我々は始めからMEK阻害薬の開発を目指したわけではない。細胞周期抑制因子p15INK4bの発現を上昇させる化合物探索のために開発したフェノタイプスクリーニングによってリード化合物を見出し,がん細胞増阻害活性を指標に医薬品として構造最適化することによってトラメチニブ創製に至った。後に,その標的分子はMEKであることを明らかにした。本稿では,first-in-classの分子標的薬トラメチニブの創薬研究とがん治療における臨床的意義について紹介する。
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2019 年 55 巻 6 号 p. 559
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成31年3月26日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2019 年 55 巻 6 号 p. 560-563
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,55巻3号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
前キャリアが今に生きること
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 秋山 敏毅
    2019 年 55 巻 6 号 p. 568
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    チオエーテル骨格は医薬品などの有用化合物に見られる部分骨格であり,この骨格構築に利用される遷移金属触媒を用いた効率的な炭素-硫黄結合形成反応の開発は有機合成上重要である.しかし,これまでの一般的な方法ではチオールが触媒毒として作用するため,多量の金属触媒が必要となる.また,強塩基性条件や高温条件を必要とする場合が多く,基質の分解や生体分子の熱変性も問題になる.最近Linらは,ヨウ化アリール1とチオール2のカップリング反応に有効なイリジウム(Ⅲ)フォトレドックス触媒とニッケル(Ⅱ)触媒を担持した金属-有機構造体(metal-organic frameworks: MOF)Zr12-Ir-Niを開発したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhu Y. -Y. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 57, 14090-14094(2018).
    2) Oderinde M. S. et al., J. Am. Chem. Soc., 138, 1760-1763(2016).
  • 中尾 允泰
    2019 年 55 巻 6 号 p. 569
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    リンパ球T細胞の一種であるVγ9 Vδ2 T細胞は,ヒトやほ乳類に特異的に存在しており,感染防御に重要な役割を果たしていると考えられている.近年は,Vγ9 Vδ2 T細胞が様々な腫瘍に対して強い細胞傷害活性を有することから,がん免疫療法への応用が注目されている.Vγ9 Vδ2 T細胞の活性化には,腫瘍細胞に存在する膜貫通型タンパク質の1つであるブチロフィリン3A1の細胞内領域にリガンドが結合する必要があり,天然のブチロフィリン3A1リガンドとして(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニル二リン酸(1)が知られている.しかしながら,1を抗がん剤や抗感染症剤として臨床応用していくにあたり,血漿中でホスファターゼにより容易に加水分解を受ける,生理的条件下ではイオン型として存在するため膜透過性が低い,という問題点を克服する必要があった.本稿では,天然物である化合物1の化学構造を基盤とし,高い血漿中安定性と膜透過性を有する新規ホスホノアミダート型プロドラッグの開発について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lentini N. A. et al., J. Med. Chem., 61, 8658-8669(2018).
    2) Mehellou Y. et al., ChemMedChem, 4, 1779-1791(2009).
  • 橋元 誠
    2019 年 55 巻 6 号 p. 570
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    チオペプチドは,構造中にチアゾール環などの複素環を持つ二次代謝産物であり,リボソーム翻訳系翻訳後修飾ペプチド(ribosomally synthesized and post-translationally modified peptide: RiPPs)に分類されている.それらの生理活性は,バンコマイシン耐性菌に対する抗菌作用や家畜の成長促進作用など多岐にわたる.近年,チオペプチド生合成遺伝子が相次いで機能同定され,遺伝子探索に必要な情報が入手可能となった.本稿では,チオペプチド生合成関連遺伝子を精度良く探索するプログラムの作成をきっかけに,新規チオペプチドの発見につながったSchwalenらの研究成果について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Arnison P. G. et al., Nat. Prod. Rep., 30, 108-160(2013).
    2) Schwalen C. J. et al., J. Am. Chem. Soc., 140, 9494-9501(2018).
    3) Mahanta N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 115, 3030-3035(2018).
  • 小川 祥二郎
    2019 年 55 巻 6 号 p. 571
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    組織内における内因性代謝物の局在情報を取得することは,代謝プロセスや生物学的役割を理解する上で極めて重要である.近年,MALDI-IMSを用いたイメージング技術の発展に伴い,生体組織表面上の神経伝達物質,脂肪酸などの低分子な生理活性物質のイメージングにも関心が高まっている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cosima C. C. et al., Anal. Bioanal. Chem., 410, 4015-4038(2018).
    2) Ibrahim K. et al., Anal. Chem., 90, 13580-13590(2018).
    3) Wu C. et al., Analyst, 135, 28-32(2010).
  • 北條 寛典
    2019 年 55 巻 6 号 p. 572
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞は自己複製能と多分化能を有しており,全ての血球系細胞の供給源であり,ニッチと呼ばれる微小環境により制御,維持されている.造血幹細胞ニッチには間葉系幹細胞が存在し,CXCL12やstem cell factor(SCF)に代表されるニッチ因子を産生することで造血幹細胞の制御を担っている.造血幹細胞に影響を与える要因の1つとして加齢が知られる.加齢は,造血幹細胞の老化を引き起こし,これによって感染症や自己免疫疾患などのリスクが増加する.老齢マウスでは間葉系幹細胞数の減少とニッチ因子の発現低下が見られることから,加齢は造血幹細胞ニッチを変化させることで造血幹細胞の老化を促進すると考えられる.しかしながら,加齢がいかにして造血幹細胞ニッチの変化を引き起こすのかはよく分かっていなかった.本稿では,加齢に伴って造血幹細胞ニッチへの交感神経の投射が減少することで,本ニッチの機能低下が生じ,造血幹細胞の老化が起こることを示したMaryanovichらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kusumbe A. P. et al., Nature, 532, 380-384(2016).
    2) Maryanovich M. et al., Nat. Med., 24, 782-791(2018).
    3) Lucas D. et al., Nat. Med., 19, 695-703(2013).
  • 福田 亮介
    2019 年 55 巻 6 号 p. 573
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    人体は多種多様な機能を持った約37兆個の細胞で構成されている.細胞の分類学は顕微鏡技術の進歩や新たな細胞染色法の開発により,この一世紀で飛躍的に発展してきた.2012年には細胞1つ1つの遺伝子発現量の定量が可能なscRNA-seq(single cell RNA-sequencing)法が開発され,2014年頃から個々の細胞の遺伝子発現パターンを比較することで網羅的に細胞集団を区別することが可能になった.同時に解析可能な細胞数も数千〜数万個の単位まで増え,遺伝子発現による細胞集団の同定は現在非常に活発な研究分野になっている.気道は,粘液の分泌や繊毛運動によって侵入してきた異物や細菌・ウイルスのクリアランスを担う生体防御の最前線である.気道上皮は,主に基底細胞,クラブ細胞,および繊毛細胞で構成され,そこに少数の神経内分泌細胞や杯細胞,タフト細胞が存在するという細胞存在比のバランスによって機能が維持されている.しかしながら,それぞれの細胞の詳細な分布や分化系譜は未だ不明であった.
    本稿では,気道組織について網羅的に細胞集団を分類したMontoro,Lindseyらの論文について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Regev A. et al., eLife, 6, e27041(2017).
    2) Montoro D. T. et al., Nature, 560, 319-324(2018).
    3) Lindsey W. Plasschaert et al., Nature, 560, 377-381(2018).
  • 志津 怜太
    2019 年 55 巻 6 号 p. 574
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    前立腺がんは,胃がん,肺がん,大腸がんに次いで罹患率が高い男性特有の悪性腫瘍である.前立腺がんの増殖は,男性ホルモン(アンドロゲン)によるアンドロゲン受容体(androgen receptor: AR)の活性化に依存して起こる.したがって,前立腺がんの治療にはARへのアンドロゲンの結合を阻害する抗アンドロゲン薬が使用される.しかし,薬物投与を行ってもARの活性化が全く抑制されず治療効果の認められない「去勢抵抗性前立腺がん」が存在することも知られている.抗アンドロゲン薬を投与しているのにもかかわらず,なぜ去勢抵抗性前立腺がんのARは不活性化されないのか.
    近年の研究により,去勢抵抗性前立腺がんではARの様々なスプライシングバリアントが発現増加していることが明らかとなった.中でもARスプライシングバリアント7(AR-V7)は,去勢抵抗性前立腺がんの進行において極めて重要な役割を担う.AR-V7はアンドロゲンの結合領域であるリガンド結合ドメイン(ligand binding domain: LBD)を欠損している.LBDがないのならアンドロゲン存在下でも活性化しないと思われるが,AR-V7は逆に,恒常的に活性化状態にある.したがって,AR-V7に対してアンドロゲンを標的とした治療法は効果がない.本稿では,AR-V7の活性化を抑制するため,AR-V7による標的遺伝子転写調節の分子機序を明らかにしたCaiらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Watson P. A. et al., Nat. Rev. Cancer, 15, 701-711(2015).
    2) Cai L. et al., Mol. Cell, 72, 341-354(2018).
    3) Asangani I. A. et al., Nature, 510, 278-282(2014).
  • 須賀 隆浩
    2019 年 55 巻 6 号 p. 575
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    胆汁うっ滞症は,体内に胆汁中成分が蓄積した病態であり,発症機序として肝細胞で生合成された胆汁の分泌障害や胆道閉塞等があげられる.胆汁うっ滞時には,胆汁酸の肝細胞内への過剰な蓄積を防ぐ機構が働いており,胆汁酸の生合成酵素の発現が低下するとともに,胆汁酸輸送に関与するトランスポーターの発現変動が認められる.Organic anion transporter polypeptide(OATP)は,胆汁酸や甲状腺ホルモンなどの生体内物質だけでなく,HMG-CoA還元酵素阻害薬を含む様々な薬物の輸送に寄与するトランスポーターである.OATPファミリーの中でも,ヒトOATP3A1をコードするSLCO3A1遺伝子はnuclear factor(NF)-κBの活性化に関わり,クローン病や腸穿孔と関連することが知られている.通常OATP3A1は主に脳や乳管に発現しているが,胆汁うっ滞時には肝臓での発現が増加する.しかしながら,肝臓におけるOATP3A1の機能ついては明らかになっていなかった.本稿では,胆汁うっ滞症におけるOATP3A1の機能とその発現変動制御機構に関する報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wei S. C. et al., PLoS One, 9, e100515(2014).
    2) Wagner M., Trauner M., F1000Res., 5, 705(2016).
    3) Pan Q. et al., Gastroenterology, 155, 1578-1592(2018).
    4) Naoi S. et al., J. Pediatr., 164, 1219-1227(2014).
紹介
資料
追悼
  • 佐治 英郎
    2019 年 55 巻 6 号 p. 585
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー
    横山 陽先生は放射性薬品化学のパイオニアで、日本はもちろん国際的にこの領域を牽引された。錯体化学の研究、それを基盤に臨床医学との接点を開拓されて99m-Tc(テクネチウム)をはじめとする金属放射性医薬品、PET放射性医薬品の開発研究などに多大な研究業績を残された。日本薬学会理事、近畿支部長を務められ、日本薬学会の運営に尽力された。日本核医学会理事、日本アイソトープ協会理事も務められ、薬学はじめ、核医学、放射線関連等の広い分野にわたってその発展に尽力された。
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