胆汁うっ滞症は,体内に胆汁中成分が蓄積した病態であり,発症機序として肝細胞で生合成された胆汁の分泌障害や胆道閉塞等があげられる.胆汁うっ滞時には,胆汁酸の肝細胞内への過剰な蓄積を防ぐ機構が働いており,胆汁酸の生合成酵素の発現が低下するとともに,胆汁酸輸送に関与するトランスポーターの発現変動が認められる.Organic anion transporter polypeptide(OATP)は,胆汁酸や甲状腺ホルモンなどの生体内物質だけでなく,HMG-CoA還元酵素阻害薬を含む様々な薬物の輸送に寄与するトランスポーターである.OATPファミリーの中でも,ヒトOATP3A1をコードする
SLCO3A1遺伝子はnuclear factor(NF)-κBの活性化に関わり,クローン病や腸穿孔と関連することが知られている.通常OATP3A1は主に脳や乳管に発現しているが,胆汁うっ滞時には肝臓での発現が増加する.しかしながら,肝臓におけるOATP3A1の機能ついては明らかになっていなかった.本稿では,胆汁うっ滞症におけるOATP3A1の機能とその発現変動制御機構に関する報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Wei S. C.
et al.,
PLoS One,
9, e100515(2014).
2) Wagner M., Trauner M.,
F1000Res.,
5, 705(2016).
3) Pan Q.
et al.,
Gastroenterology,
155, 1578-1592(2018).
4) Naoi S.
et al.,
J.
Pediatr.,
164, 1219-1227(2014).
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