本年4月3日, 日本薬学会100周年記念式典(於国立教育会館ホール)において行われたG.M.Edelman教授による記念講演の抄録を, 同教授の快諾のもとにここに掲載する.Edelman教授のお仕事は免疫学の基礎である抗体の分子構造の研究を完成させ, 抗体の示す特異性ならびに多様性について分子論的根拠を与えたこと, 更に細胞表層の特異性に注目して細胞間認知あるいは細胞の増殖における表層の変動の基本的研究にまで及んでいる.Edelman教授は抗体の構造を明らかにし免疫学の基礎をきづいたことで1972年, イギリス・オックスフォード大学のR.R.Porter教授と共にノーベル医学生理学賞を授賞されている.細胞認知の問題は, 抗体の構造のようには一元的には考えられないにしても, 免疫学のみならず細胞生物学, 発生生物学, がん生物学などの基礎的な問題であり, これからの薬学にとっては重要な分野であることは言うまでもない.教授も本講演のしめくくりでこれからの薬学の分野について展望しておられる.Edelman博士は1929年ニューヨーク市の内科医の家に生まれ, 当年51歳である.25歳で医学博士の学位をペンシルバニヤ大学医学部でとられ, 1年程軍務につかれた後, 1957年からロックフェラー研究所Kunkel博士の下で大学院を過し, 1960年Ph.D.をとられた.それ以来現在までロックフェラー研究所で研究を続けられ, 1966年からはロックフェラー大学の教授であられる.本抄録に関係したレビューには, 次のようなものがある.G.M.Edelman, Surface modulation in cell recognition and cell growth, Science 192,218-226(1976) ; U.Rutishauser, J.-P.Thiery, R.Brackenbury, G.M.Edelman, Surface molecules mediating interactions interactions among embryonic neural cells, Neurosciences, 4,735-747(1979).
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