ファルマシア
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52 巻, 7 号
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目次
  • 2016 年 52 巻 7 号 p. 622-623
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    表紙の説明:新しい薬学教育制度では,教員が一方的に話をする従来型の講義形式のほかに,チーム医療に貢献するためのコミュニケーション能力や問題解決能力の向上を目指して,少人数で議論しながら学習するスモールグループディスカッション(small group discussion:SGD)などの形式が多く採り入れられています.
    特集にあたって:平成18年4月に新薬学教育制度がスタートしてから,この春でちょうど10年が経過した.平成24年3月に初めての6年制課程の卒業生が巣立って以来,6年制課程を修了して薬剤師国家試験に合格した卒業生の数は,既に4万4千人を超えている.ファルマシアでは,平成24年5月に6年制薬学教育に関する特集号を組んだが,今回は4年制も含めて新制度全体に関して,これまでの10年を振り返るとともに,現状と今後の課題について,各方面からご執筆いただいた.会員の皆様が情報を共有し,薬学教育について改めて考えるきっかけとなれば幸いである.
オピニオン
  • これまでの10年とこれから
    橋田 充
    2016 年 52 巻 7 号 p. 621
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    新薬学教育制度に先立ち大学設置基準の大綱化や国立大学法人化が実施され、一方、看護系の大学学部・学科の増設、医師に対する2年間の卒後教育の制度化が行われた。新制度が始まって以降、その充実に向けた努力、試行が行われ、日本学術会議では、薬学・薬学教育のあり方を広く問うために提言、報告を表出し、その内容は各大学の将来構想や行政の施策に取り入れられた。今後は、薬学に対する社会の期待や受験生の夢に如何に応えるかが議論の核になる。
Editor's Eye
話題
  • 前島 一実
    2016 年 52 巻 7 号 p. 631-634
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    臨床に係る実践的な能力を有する薬剤師を養成するため,平成18年度から6年制の学部教育が開始された.また,基礎薬学に重点を置いた教育や生命科学等の薬学関連の境界領域に係る教育による多様な人材の養成という薬学教育の果たす役割にも配慮し,4年制の学部教育も併せて行われている.
    6年制の学部教育では,関係者の多大な尽力により策定されたモデル・コアカリキュラムに基づく教育に加えて,各大学それぞれの理念や特色に応じたカリキュラム編成が行われ,さらに,全ての薬学部を対象とした分野別第三者評価が始まるなど,教育の質の確保に向けた取組も進められている.本稿では,主に6年制薬学教育の充実に向けたこれまでの経緯を概括しつつ,今後の課題や期待を述べたい.
話題
  • 田宮 憲一
    2016 年 52 巻 7 号 p. 635-637
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    医薬分業に対する批判を踏まえ、厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」の中でかかりつけ薬剤師の機能を明確化するなど、様々な検討の場で、患者に寄り添い、薬物療法の結果に責任を持つ薬剤師への期待が示されている。これらを踏まえ、今後の6年制薬学教育においては、特に実務実習と卒業研究を充実させるとともに、医療人としての心構え、更には研究マインドを持ち卒後も自己研鑽を続けていくことの重要性をしっかりと身に付けた薬剤師が輩出されるよう、期待したい。
話題
話題
話題
  • 野呂瀬 崇彦, 櫻井 しのぶ, 安井 浩樹
    2016 年 52 巻 7 号 p. 644-646
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    薬学教育はもとより医療人教育の分野では,多職種連携教育(interprofessional education:IPE)が注目されている.IPEの導入による学習成果として,チームワーク能力,多職種の役割理解,コミュニケーション能力,省察の促進,患者理解,倫理/態度といった6つの領域が報告されている.一方で,大学・学部間の物理的距離(空間的障壁),各学部カリキュラム調整と時間確保の困難(時間的障壁),各学部文化の違いや相互理解不足(心理的障壁)により,導入に困難を抱えるケースも少なくない.そこで筆者らのプロジェクトチームでは,1人の患者を核として学生同士の継続的コミュニケーションを実現することにより,これらの障壁を取り除き,21世紀の少子高齢社会を支える医療人育成に資する教育ツールinterprofessional education devise(iPED)を開発,運用し教育効果を検証してきたので,その概要を報告する.
話題
  • 求められる教育環境の整備
    伊東 明彦
    2016 年 52 巻 7 号 p. 647-649
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    薬学教育における実務実習は、薬剤師としての臨床実践能力を磨く、唯一の機会であり非常に重要な位置づけにある。新薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づく新たな薬学実務実習は、大学での準備教育を含めて一貫性のある病院・薬局実習の実施と参加・体験型臨床実習の充実が求められる。新たに導入された学習成果基盤型教育の概念からは教育・実習環境を整備することが重要であり、大学および医療現場が協力して新たな実務実習に臨むべきである。
話題
  • 橋渡し教育の構築(有機化学の立場から)と大学院の充実を目指して
    宮田 興子
    2016 年 52 巻 7 号 p. 650-652
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    薬学の6年制教育が開始されてから早いものでもう10年が経過した.更なるステップアップを目指して,6年制教育をより充実させることが求められている.そのような中で,薬学生および薬学部卒業生がより一層飛躍できるように,基礎薬学分野の1つである有機化学を専門にしている著者が,少しずつ実行していることを本稿で紹介させていただき,読者の方々のご意見を頂戴できたらと思う.さらにファーマシストであり,サイエンティストである優れた卒業生を輩出するためには,4年制博士課程の活性化が必要であると考えられる.このことについても,現在5人の博士課程学生の教育に携わっている立場より述べさせていただく.
話題
話題
話題
  • 3年目の評価を終えて
    平田 收正
    2016 年 52 巻 7 号 p. 659-662
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    平成16年9月に出された中央教育審議会による薬学6年制教育に対する提言では、「第三者評価の体制の整備」が最重要事項として取り上げられた。6年制教育開始以降、薬学教育評価機構において体制整備を進めて来た薬学教育第三評価は、平成25年度から本評価が始まり、平成27年度末で3年目の評価を終えた。本稿では、第三者評価について、その社会的意義と目的、実施体制、実際の評価プロセスを概説すると共に、評価基準をもとにして、評価する側の立場から6年制教育の在り方について何点か取り上げて論じたい。
話題
話題
話題
話題
  • 眞野 成康
    2016 年 52 巻 7 号 p. 672-674
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    6年制薬学教育が開始されてから今年で10年が経過した.当院薬剤部でも6年制卒の1期生が既に薬剤師歴5年目を迎え,これまでに6年制薬学教育を受けた薬剤師を50人以上採用している.たしかに医療薬学関連教育の充実もあって業務全般の習得速度は速いように感じるが,薬剤師としての能力を考えてみると,それまでの4年制卒の薬剤師たちとそれほど大きな差があるようにも思えない.日頃,筆者の感じていることを述べながら,その理由を考えてみたい.
話題
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2016 年 52 巻 7 号 p. 678-679
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    このコラムでは厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    当コラムは,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成28年3月28日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページ→「医薬品関連情報」→「承認情報(医薬品・医薬部外品)」→「医療用医薬品の承認審査情報」(http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_index.html)より検索できます.
新薬のプロフィル
  • 森本 宏, 菊川 義宜
    2016 年 52 巻 7 号 p. 680-681
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    オゼノキサシンは,細菌DNAジャイレースおよびトポイソメラーゼⅣを阻害し殺菌作用を示す。尋常性痤瘡に対し,2%オゼノキサシンローション1日1回,12週間塗布は,最終評価時の炎症性皮疹数減少率で,プラセボに対する優越性および1%ナジフロキサシンローションに対する非劣性が検証された。また,表在性皮膚感染症に対し,2%オゼノキサシンローション1日1回,7日間塗布は,最終評価時有効率が70.0%であった。
家庭薬物語
薬学を糧に輝く!薬学出身者の仕事
くすりの博物館をゆく
薬学実践英語
トピックス
  • 南部 寿則
    2016 年 52 巻 7 号 p. 692
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    アニリン類は,医薬品や有機EL等の原料となる化合物群であるため,その合成法の開発は重要な研究課題である.これまでに,その優れた合成法として,Buchwald-HartwigカップリングやUllmannタイプのアミノ化が開発された.これらの反応では,アミンとのカップリング剤としてハロゲン化アリールや活性化したフェノール誘導体(スルホン酸エステルや炭酸エステル等)を用いるが,事前にこれらの調製が必要であり,さらに反応後にも脱離基由来の廃棄物が問題となる.そのため,安価で入手容易なフェノール自体をカップリング反応に使用できれば効率的であるが,その問題点として,①ヒドロキシ基の反応性の高さ,②p軌道―π結合間の共役によるC―O結合切断の難しさ,が挙げられる.本稿では,Liらにより報告されたPd/C触媒によるフェノールとアミンとの直接的カップリング反応について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chen Z. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 54, 14487-14491 (2015).
    2) Chen Z. et al., Chem. Sci., 6, 4174-4178 (2015).
  • 我妻 勉
    2016 年 52 巻 7 号 p. 693
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(PD)は50~60代の高齢者に発症する神経難病であり,超高齢社会を迎えた日本にとって大きな問題となっている.PDでは,ドパミン神経の変性による脳内ドパミン低下が原因となり主に運動症状が発現する.ドパミンを分解するモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)に対する阻害剤セレギリン(SE)やラサギリン(RA)は,ドパミン分解を抑制することでPDの症状を改善する.したがって,内在性MAO-Bの化学標識による高感度検出法や,MAO-Bと薬剤との相互作用の可視化法は,PD病態とMAO-Bの関連性解明や新しい治療薬創出のための重要なツールと成り得る.最近,MAO-Bに対する多機能型低分子プローブM2がYaoらから報告されたので紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Li L. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 54, 10821-10825 (2015).
    2) Krysiak J. M. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 51, 7035-7040 (2012).
    3) Li L. et al., Nat. Commun., 5, 3276 (2014).
  • 松尾 洋介
    2016 年 52 巻 7 号 p. 694
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    エピコラクトン(1)は,サトウキビやカカオの木に共生するEpicoccum属の菌が産生する化合物であり,抗菌活性を持つことが知られている. エピコラクトンは複雑な炭素骨格を持ち,5つの不斉炭素を有するが,ラセミ体として単離された.一般的に,植物や微生物が作り出す天然有機化合物の多くは生合成酵素によって合成されることから,キラル化合物の場合は単一のエナンチオマーとして単離されることが多い.一方,複数の不斉炭素を持つ化合物が天然よりラセミ体として得られる場合,アキラル化合物からの非酵素的なカスケード反応を経て生成していると推測される.今回,Ellerbrockらはカスケード反応を鍵反応とするエピコラクトン(1)の生合成機構を推定するとともに,それに基づく全合成を達成した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) da Silva Araujo F. D. et al., Eur. J. Org. Chem., 5225-5230 (2012).
    2) Talontsi M. F. et al., Eur. J. Org. Chem., 3174-3180 (2013).
    3) Ellerbrock P. et al., Nat. Chem., 7, 879-882 (2015).
    4) Bentley R., Nat. Prod. Rep., 25, 118-138 (2008).
  • 蛭田 勇樹
    2016 年 52 巻 7 号 p. 695
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    世界人口の約半数は,衛生管理がなされていない飲み水を飲んでおり,世界の下痢疾患のほとんどは,不衛生な飲水に起因すると言われている.また,このような地域では,十分な医療診断を受けることも難しい.高速液体クロマトグラフィーのような高度な実験室用計測機器を利用することで,定量的な医療診断,飲み水の安全性モニタリングが可能となるが,これらは大型で高価であり,さらにはその機器の使用に熟練した人材が必要である.そのため発展途上国では,こういった分析技術を容易に利用しにくい現状にある.このような背景から,2007年にハーバード大学のホワイトサイド教授らのグループが,安価,持ち運び可能,誰でも簡単に使用できる紙ベースのセンサー(microfluidic paper-based analytical devices:μPADs)を開発した. この研究を皮切りに,世界中でμPADsの研究が盛んに行われるようになった.μPADsの検出方法としては,尿検査試験紙のように比色分析が主であり,サンプルを滴下後の色変化をカメラ,スキャナーにより読み込み,コンピュータにより解析する必要がある.μPADsが安価で持ち運び可能でも,検出器が高価で,持ち運びに不向きとなってしまう.
    本稿では,検出器を必要としない紙センサーとして,色が変化した距離によって水中のCu2+を測定できるFang らの研究について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Martinez A. W. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 46, 1318-1320 (2007).
    2) Fang X. et al., Analyst, 140, 7823-7826 (2015).
    3) Dungchai W. et al., Analyst, 138, 6766-6773 (2013).
    4) Cate D. M. et al., Lab Chip, 13, 2397-2404 (2013).
  • 大垣 隆一
    2016 年 52 巻 7 号 p. 696
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    真核生物における栄養シグナルとしてのアミノ酸は,細胞内代謝を司るセリン/スレオニンキナーゼ複合体mechanistic target of rapamycin complex1(mTORC1)を活性化し,タンパク質・脂質合成,オートファジーなど様々な細胞機能の調節を介して増殖・成長に寄与する.アミノ酸の中でもロイシンは特に高いmTORC1活性化能を有するが,ロイシンを直接認識するロイシンセンサーの分子実体は長らく不明であった.最近,WolfsonおよびChantranupongらによってストレス応答タンパク質のSestrin2がロイシンセンサーであると報告されたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wolfson R. L. et al., Science, 351, 43-48 (2016).
    2) Chantranupong L. et al., Cell Rep., 9, 1-8 (2014).
    3) Saxton R. et al., Science, 351, 53-58 (2016).
  • 益子 崇
    2016 年 52 巻 7 号 p. 697
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    免疫系は生体内に存在する異物を感知して除去するシステムで,自然免疫と獲得免疫がある.自然免疫は非特異的な応答と考えられてきたが,この概念はToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)の発見で改められた.TLRは自然免疫においてウイルス・細菌の構成成分を認識し,I型インターフェロン(IFN)や炎症性サイトカン産生の誘導,樹状細胞の成熟化を介してリンパ球に感染防御のシグナルを伝えるパターン認識受容体として知られている.13種類のTLRのうち,TLR3はヒトの脳,特にグリア細胞に多く発現している.最近,このTLR3と脳虚血誘発性の神経細胞死との関連が報告されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Jeong S. -K. et al., J. Neurochem., 136, 851-858 (2016).
    2) Suzuki S. et al., J. Cereb. Blood. Flow. Metab., 29, 464-479 (2009).
    3) Li Y. et al., CNS Neurosci. Ther., 21, 905-913 (2015).
    4) Liu W. et al., Life Sci., 89, 141-146 (2011).
  • 朴 鐘旭
    2016 年 52 巻 7 号 p. 698
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    全てのヒトは自身の常在微生物に,また健康に影響を与え得る環境中の微生物に絶え間なくさらされている.ヒトは大半の時間を室内で過ごすため,室内環境の微生物はヒトの健康と深く関係している.そのため,一般家庭においても微生物学的な安全・安心に対する関心が高まっている.行き過ぎた管理による微生物の排除はヒトにとって有益な微生物も除去するため,正しい理解と適切な対応が必要である.その一方で,手術室や集中治療室,また宇宙船組み立て施設などのクリーンルームではヒトの健康および設備の保護のため,微生物や浮遊粒子などの厳しい管理が必須である.しかし,微生物は厳しい環境にも適応するため,徹底的な管理は困難である.このようなクリーンルームにおける微生物学的な理解を深めることは,その場における安全保証だけではなく,室内環境の微生物管理の効果や安全性評価などと直接的につながる.このことから,クリーンルームの1つである宇宙船組み立て施設でメンテナンスの差がそこに存在している微生物へ与える影響を評価したMahnertらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mahnert A. et al., PLoS ONE, 10, e0134848 (2015).
    2) Nocker A. et al., Appl. Environ. Microbiol., 73, 5111-5117 (2007).
  • 髙見 陽一郎
    2016 年 52 巻 7 号 p. 699
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,飲酒歴がないにもかかわらず,アルコール性肝炎と類似した炎症や線維化を認める予後不良の病態である.NAFLDのうち,進行性の病態が非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)であり,治療介入がない場合5~10年で5~20%が肝硬変に進行すると言われている. NASHの診断において最も重要な問題は,確定診断が侵襲を伴う肝病理組織検査で行われ,病理医により診断に違いが生じることである.したがって,肝生検に代わる血液マーカーが望まれている.本稿では,glycoprotein nonmelanoma protein B(Gpnmb)がNASHのバイオマーカーと成り得ることが岡山大学のグループにより示されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 岡上 武ほか,“NASH・NAFLDの診療ガイド2015”, 日本肝臓学会編, 文光堂, 東京, 2015, pp. 26-31.
    2) Katayama A. et al., Sci. Rep., 5, 16920 (2015).
    3) Safadi F. F. et al., J. Cell. Biochem., 84, 12-26 (2001).
紹介
  • 白神 誠
    2016 年 52 巻 7 号 p. 700
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    国立医薬品食品衛生研究所名誉所長の内山充先生が,平成28年度日本薬学会功労賞を受賞された.功労賞は,本会の運営あるいは薬学の発展に顕著な功績のあった者を受賞対象としているが,今回の内山先生の受賞は,近年薬学のみならず我が国の科学技術の基本施策としても位置付けられている「レギュラトリーサイエンス」を初めて提唱し,その普及啓発に貢献されたことに対して贈られたもので,心からお祝い申し上げたい.
  • 平嶋 尚英
    2016 年 52 巻 7 号 p. 701
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    名古屋市立大学名誉教授の宮田直樹先生が、日本薬学会功労賞を受賞された。先生は、薬学会発行の雑誌の編集委員長や編集委員を務められ、さらに学術誌の現在の3誌への統合にむけて尽力されました。また、薬学会医薬化学部会の部会長等を歴任され、創薬研究の発展と創薬化学者の育成に力を注がれました。レギュラトリーサイエンス部会の常任世話人も長く務められ、レギュラトリーサイエンスの普及と発展にも貢献されるなど、日本薬学会の運営と薬学の発展に多くの功績を残されました。
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総説目次
談話室
  • 掛見 正郎
    2016 年 52 巻 7 号 p. 679
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    わが国の薬学研究者、とりわけ薬剤学/薬物動態学研究者は、多くの医薬品について多様で高度な論文を内外を問わず発表している。しかしこれらの多くは未だ動物実験が中心であって学問的に評価は高いものの、「ヒトを対象としたデータ」ではないために殆ど臨床には役立っていない。薬学教育6年制が施行されて10年、薬学は「patient oriented な実学」であるという基本に立ち帰って、教育も研究もヒトを対象としたテーマに切り替える必要がある。
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