ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
59 巻, 10 号
選択された号の論文の39件中1~39を表示しています
目次
  • 2023 年 59 巻 10 号 p. 886-887
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:免疫グロブリンをはじめとするFc受容体リガンドの化学修飾,体内動態とターゲティング
    ミニ特集にあたって:免疫グロブリンG(IgG)やアルブミンはピノサイトーシス等で細胞内に取り込まれたのち,新生児Fc受容体(neonatal Fc receptor: FcRn)と結合して血液中にリサイクルされる.したがってこのリサイクル過程は,抗体薬や抗体薬物複合体,Fc融合タンパク質など,様々な高分子医薬品の体内動態を決める重要な因子である.一方,アルブミンは多くの低分子薬物と結合し,組織移行性に影響を与える血清タンパク質である.高分子のみならず低分子医薬品の体内動態や組織ターゲティングを理解するべく,Fc受容体リガンドの化学修飾,体内動態制御と予測,抗体エンジニアリング等の最新の知見を学び,新たな研究のアイデアを考えてみたい.
    表紙の説明:59巻偶数号の表紙を飾るのは,先の東京オリンピックでもおなじみのピクトグラムである.様々な分野で活躍するファルマシア読者の姿をイメージしてデザインした.ご自身の姿と重なるピクトグラムは見つかるだろうか.見つからないという方は,ご自身の姿を表現するピクトグラムを思い浮かべてほしい.表紙のイメージよりも多くの分野の方々にファルマシアが届くことを願っている.
オピニオン
Editor's Eye
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
最前線
話題
話題
セミナー
最終講義
アメリカ薬学教育の現場から
  • 藤原 亮一, ボイル ジャクリン
    2023 年 59 巻 10 号 p. 936-937
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    日本の薬学教育は、特に6年制になってからはアメリカのものと似たものであると認識していた。しかしながら、2019年に異動しアメリカの薬学教育に直接携わるようになってからと言うもの、筆者は日米間での薬学教育の違いを目の当たりにする日々が続いている。そこで本コラムでは、アメリカ薬学部にて教鞭をとる立場から、アメリカの薬学教育、日本での薬学教育との違い、またそれぞれの特色について筆者が感じ取ったことをシリーズで伝える。今回のコラムでは、ジャクリン ボイル准教授へのインタビューを交え、アメリカのレジデントやその研修制度などについて紹介する。
留学体験記 世界の薬学現場から
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
  • 日色 啓仁
    2023 年 59 巻 10 号 p. 941_2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    博士課程進学を考えている人の中には,就職や経済面に対し不安を抱いている人も少なくないと思うが,長井記念薬学研究奨励支援事業は大きな心の支えとなることを伝えたい.本事業によって経済的な支援が得られるだけではなく,自身の研究や将来像を見つめなおすことができ,得られた経験はかけがけのないものであった.本稿をきっかけに難題に積極的に挑戦し,本事業を通じてWell-beingな研究生活を掴み取ってくれることを願う.
トピックス
  • 小林 大志朗
    2023 年 59 巻 10 号 p. 942
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    芳香族の官能基化は,医薬品化学を含む有機化学研究に多大な貢献をもたらし続けており,近年では電荷移動錯体を利用した方法論が注目されている.電荷移動錯体は,電子豊富分子(ドナー)と電子不足分子(アクセプター)から形成され,光照射によりドナーからアクセプターに一電子移動し,ラジカルカチオンおよびラジカルアニオンにそれぞれ変化する分子間化合物である.その利用例として,ハロゲン化アリールをアクセプターとする電荷移動錯体に光照射し,ハロアニオンの脱離を伴ったアリールラジカル生成と続く官能基化が報告されているしかし本法では,基質が電子不足ハロゲン化芳香環に限定されるという欠点があった.これを解決した新手法がDewanjiらにより最近報告されたため本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Crisenza G. E. M. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 5461–5476(2020).
    2) Tobisu M. et al., Chem. Lett., 42, 1203–1205(2013).
    3) Liu B. et al., J. Am. Chem. Soc., 139, 13616–13619(2017).
    4) Dewanji A. et al., Nat. Chem., 15, 43–52(2023).
  • 山本 一貴
    2023 年 59 巻 10 号 p. 943
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質分解誘導剤は,標的タンパク質に結合してその機能を低下させる従来の阻害剤とは異なり,標的タンパク質を化学的にノックダウンすることから,新たな創薬モダリティとして注目されている.Proteolysis targeting chimera(PROTAC)は,分子内にE3リガーゼおよび標的分子への結合部位を有し,強制的に標的タンパク質をユビキチン化することで分解を誘導する.PROTACは,触媒的に働くことも利点の1つであり,低用量化による毒性低減も期待できる.しかし,PROTACの開発においては,標的バインダーの修飾位置やリンカーの長さ・形状の最適化には指針がなく,標的によってオーダーメイドする必要があり,効率化が求められている.今回,ChenらのDNA encoded library(DEL)を用いたPROTAC最適化のアプローチについて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sakamoto K. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 98, 8554-8559(2001).
    2) Brenner S., Lerner R. A., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 89, 5381-5383(1992).
    3) Chen Q. et al., ACS Chem. Biol., 18, 25-33 (2023).
    4) Winter G. E. et al., Science, 348, 1376-1381(2015).
  • 谷口 慈将
    2023 年 59 巻 10 号 p. 944
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    天然化合物は非常に高い構造多様性を有しており,現在も多数の新規化合物が単離,報告され続けている.一方で,増え続ける既知化合物の中から新規生理活性化合物を探索するにあたって,生物活性などを指標として天然資源の抽出物を分画し活性化合物を単離する古典的なスキームは,必ずしも効率的とは言えない.近年の質量分析装置の高感度化,高精度化およびインフォマティクスの発展に伴い,新規天然物探索における新たなツールとしてタンデム質量分析(MS2)スペクトルを用いた分子ネットワーク解析が注目されている.データシェアweb型プラットフォームであるGlobal Natural Products Social Molecular Networking(GNPS)では,データベース上に登録されているMS2スペクトルから既知化合物の迅速な同定,および測定サンプルに含まれる各成分間のMS2スペクトルの類似性を判定し,構造類似性のある成分同士をクラスターにまとめて表示することが可能である.更にHPLCの溶出時間や付加イオン,同位体イオンなどを考慮した解析手法としてFeature-Based Molecular Networking(FBMN)がGNPS上で利用されるようになり,新規天然物探索研究で活用され始めている.本稿では,生薬ライコウトウとして用いられるタイワンクロヅルに含まれる二次代謝産物を二次元クロマトグラフィーとFBMNによりクラスタリングし,これまで同植物から報告のない新規骨格を有する化合物候補を効率よく見いだしたQuらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wang M. et al., Nat. Biotechnol., 34, 828–837(2016).
    2) Nothias L. -F. et al., Nat. Methods, 17, 905–908(2020).
    3) Qu B. et al., Analyst, 148, 61–73(2023).
  • 佐藤 駿平
    2023 年 59 巻 10 号 p. 945
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    抗生物質に対する耐性菌の出現は,現代医療において重大な問題となっている.細菌を抗生物質へと緩やかに曝露した場合,細菌の増殖は完全には抑えられない.増殖の継続は変異のチャンスを生み,薬剤感受性が低下した変異体が出現した場合,その変異が集団中に広まる.このように増殖の維持は,遺伝的な薬剤耐性の進化にとって必要な要素となる.したがって,十分な量の薬剤に十分な期間曝露することが,基本的な抗生物質の使用戦略となっている.この十分な量に関する実験環境における1つの基準として最小発育阻止濃度(Minimum inhibitory concentration: MIC)が用いられる.MICは段階的に薬剤濃度を上げていったときに,培地中の細菌が増殖することのできない最小の濃度として定義される.通常MICの測定は,試験管内の細胞集団を薬剤に曝露することで行われてきた.一方で,今回紹介する論文では9種類の薬剤に対する大腸菌の増殖を,マイクロ流体デバイスを用いて1細胞ごとに調べている.
    その結果,薬剤下でも比較的増殖が維持されている細胞が集団内の一部に存在する例が見られた.このとき使用された大腸菌には同一クローンが用いられていたため,この増殖率の差は非遺伝的な原因によるものである.彼らは,このような細菌の性質をパーセバランスと定義して,その詳細を解析した.その結果,パーセバランス細胞はMICの薬剤下でも増殖を維持することで,耐性変異株を出現させる可能性が示された.これまでもパーセバランスを含む非遺伝的な薬剤への抵抗性は知られていたが,それが遺伝的な耐性へとつながる証拠は得られていなかった.細菌における高濃度の薬剤に対する遺伝的,非遺伝的な両耐性機構の間に関連が示された今,耐性菌の出現リスクを再考する必要があるだろう.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Brandis G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 120, e2216216120(2023).
    2) Balaban N. Q. et al., Science, 305, 1622-1625(2004).
    3) Wakamoto Y. et al., Science, 339, 91-95(2013).
    4) Baltekin Ö. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 114, 9170-9175(2017).
  • 金子 尚志
    2023 年 59 巻 10 号 p. 946
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    過酸化脂質の蓄積を特徴とする鉄依存的な細胞死「フェロトーシス」は,抗酸化分子であるグルタチオン(GSH)の低下やグルタチオンペルオキシダーゼ4の機能抑制などで誘導される細胞死である.フェロトーシスは,Ras遺伝子に変異が生じたがん細胞においても細胞死を誘導できることから,がん治療標的として注目されている.しかし,一部のがん細胞では,シスチン取り込みトランスポーターであるxCT(SLC7A11,SLC3A2によって構成される)を高く発現し,細胞内GSH量が増加することでフェロトーシス抵抗性を示す.一方で,このようながん細胞ではグルコース飢餓により細胞死が誘導されることから,がん細胞の代謝リプログラミング(ここでは,グルコース依存性が亢進することを意味する)が引き起こされている可能性が指摘されていた.しかし,どのように細胞死が誘導されているか,その詳細なメカニズムは不明であった.本稿では,Liuらによって明らかにされた,細胞に過剰に蓄積したシスチンが誘導する新規細胞死「ジスルフィドトーシス」とがん治療応用への可能性について概説する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dixon S. et al., Cell, 25, 1060-1072(2012).
    2) Liu X. et al., Nat. Cell Biol., 22, 476-486(2020).
    3) James J. et al., J. Biol. Chem., 295, 1350-1365(2020).
    4) Liu X. et al., Nat. Cell Biol., 25, 404-414(2023).
  • 尾花 理徳
    2023 年 59 巻 10 号 p. 947
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    SARS-CoV-2の出現で,ウイルスを専門分野としない薬学関係者も少なからずウイルスを身近に感じ,興味や知識を持ったことであろう.より身近には,我々人類のゲノムにはウイルス感染の痕跡である内在性レトロウイルス(endogenous retroviruses: ERVs)遺伝子が約8%もの割合で存在する.ERVsが,ほ乳類の胎盤形成に関与していることをご存知の方も多いかもしれない.ERVsは様々な疾患に関与することが知られているが,腎疾患におけるERVsの役割については不明である.慢性腎臓病は,腎臓が持続的に障害を受けている状であり,我が国では新たな国民病と言われる.最近,Dhillonらのグループによって,慢性腎臓病におけるERVsの役割が明らかにされたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lander E. S. et al., Nature, 409, 860–921(2001).
    2) Nakkuntod J. et al., J. Hum. Genet., 58, 241–249(2013).
    3) Antony J. M. et al., Nat. Neurosci., 7, 1088–1095(2004).
    4) Dhillon P. et al., Nat Commun., 14, 559(2023).
  • 岡村 和幸
    2023 年 59 巻 10 号 p. 948
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    環境因子の曝露は,当該世代への影響に加え,子どもや孫,ひ孫世代以降にも影響をおよぼすことがある.この現象を多世代・継世代影響と呼び,影響伝搬のメカニズムとして,生殖細胞への突然変異とエピジェネティック変化が考えられてきた.生殖細胞の突然変異は進化の原動力になる一方で,先天性疾患の要因にもなる.本稿では,放射線曝露による雄の生殖細胞を介した影響伝搬メカニズムの新たな知見について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Campbell C. D., Eichler E. E., Trends Genet., 29, 575–584(2013).
    2) Heard E., Martienssen R. A., Cell, 157, 95–109(2014).
    3) Wang S. et al., Nature, 613, 365–374(2023).
  • 酒井 隆全
    2023 年 59 巻 10 号 p. 949
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    自発報告は,医薬品による潜在的な有害事象のリスクを早期に特定する際に活用されており,市販後の医薬品安全性監視において重要な情報源である.ただし,報告バイアスの存在,分母情報が得られないために発生率を算出することができない,臨床情報の不足といった種々の限界が存在する.したがって,データマイニング手法に基づいてシグナルが検出されただけでは,医薬品と有害事象間の因果関係が結論付けられたことを意味せず,必ずしも検出された全てのシグナルについて何らかの規制措置が行われるわけではない.逆に言えば,将来に規制措置が行われる重大な情報である可能性もまた秘めているという,不確実性の伴う情報である.米国食品医薬品局(FDA)では,FDA Amendments Act of 2007に基づき,その保有する自発報告データベースであるFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)より特定された安全性シグナルを公表している.なお,FAERSには2021年は230万件以上の自発報告が集積されており,非常に大規模なデータベースとなっている.
    本稿では,Dhodapkarらが2008年から2019年の間にFDAより公表された安全性シグナルについて横断的に調査した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Beninger P. et al., Clin. Ther., 43, 380-395(2021).
    2) Dhodapkar M. M. et al., BMJ, 379, e071752(2022).
    3) Mintzes B. et al., BMJ, 379, o2275(2022).
資料
  • 梅垣 敬三, 千葉 剛
    2023 年 59 巻 10 号 p. 940
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    ゲノム編集食品が市場に出回るようになり、遺伝子組換え食品との違いについても話題に上がることが多くなっている。2019年4月に食品表示基準の一部を改正する内閣府令(平成31年内閣府令第24号)が公布されたことに伴って、この遺伝子組換え食品の表示にかかる食品表示基準が改正され、2023年4月1日に施行された。遺伝子組換え食品表示制度には、義務表示と任意表示がある。義務表示に関して変更はないが、任意表示に関する決まりが改正され、「遺伝子組換えではない旨」を表示する際には、生産流通過程における厳密な管理が必要となった。
追悼
  • 平澤 典保
    2023 年 59 巻 10 号 p. 950
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    恩師鶴藤丞先生におかれましては、当年5月9日にご逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。
    鶴藤先生は、東北大学薬学部生化学講座の初代教授として赴任され、一貫して炎症応答の病態生化学、そして薬物療法の理論的追求に力を注がれました。薬学教育においては、機能形態学という新しい教育分野をいち早く薬学に導入されました。この功績は、その後の薬学教育に大きな影響を与え、1989年日本薬学会から教育賞を受賞されています。
Information
薬学会アップトゥデイト
交信
会合予告
カレンダー
学術誌お知らせ
談話室
新刊紹介
日本薬学会第144年会(横浜)一般学術発表申込要領
次号掲載予告
編集後記
feedback
Top