ファルマシア
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56 巻, 11 号
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目次
  • 2020 年 56 巻 11 号 p. 982-983
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    特集:2025年問題を見据えたエージング研究と医薬品開発
    特集にあたって:高齢者人口は2025年にピークを迎える.国民の多くが高齢者となる超高齢社会においては,従来型とは異なる視点での医薬品開発が求められる.一方で,人生100年時代とも言われる超高齢化の時代は,長く健康に生き抜くチャンスでもあり,老化のしくみを科学的に解明し,健康寿命を延ばすアプローチが望まれる.本特集号では,超高齢社会の到来を見据え,健康な状態をいかに長く維持するかを命題として,老化研究の最前線,創薬・創剤を目指した老化研究等について,最新情報を掲載する.
    表紙の説明:老化は,避けることのできない自然現象の1つである.しかし近年のエージング研究によって,老化は人体や細胞が持つ生体機能を反映することが分かってきた.表紙は,イメージングやバイオマーカー,老化モデル動物,老化細胞などを駆使することで老化を科学的に解明しつつあること,さらにその知見をもとに現在,老化予防薬等の研究に発展しつつあることを表している.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 老化制御の視点から
    石井 恭正, 安田 佳代
    2020 年 56 巻 11 号 p. 989-993
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    社会の関心は、病気の『治療』から『予防』、身体の『消費』から『維持』へと移行しつつある。これを背景に、老化の研究対象は生体に現れる『結果(疾患症状)』から『変容過程(未病の生理機能状態)』へと移行し、『老化の分子生理基盤』の解明が望まれている。本稿では、老化の分子生理基盤ではたらく分子のうち、インスリン/IGF-1シグナル伝達系,PI3K/AKT/mTOR経路,SIRT,AMPKによる『エネルギー代謝制御』、およびSAPK,細胞死,NF-κB転写因子,JAK経路による『ストレス制御』について紹介する。
最前線
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最前線
最前線
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話題
話題
話題
FYI(用語解説)
  • 石井 恭正, 安田 佳代
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1027_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    Senomorphic(老化細胞阻害)薬とは,老化細胞の表現型のうち,慢性炎症を惹起するなどの「負の作用」のみを阻害(主に,SASP因子の分泌を低下)する標的薬の総称である.生体にとって「正(抗ガン化作用など)」と「負」の作用を併せ持つ老化細胞を,特異的に死滅させる老化細胞除去(Senolytic)薬と対比して用いられる呼称である.現在,ドラッグ・リポジショニングの研究によって,mTOR阻害薬であるラパマイシン(Rapamycin),AMPK賦活剤であるメトホルミン(Metformin),JAK阻害剤であるルキソリチニブ(Ruxolitinib)などが有用視されている.
  • 齋藤 義正
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1027_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    ほ乳類では7種類のサーチュインファミリーが存在し,Sirt1からSirt7まで同定されている.もともと,酵母のSir2遺伝子について研究されており,カロリー制限をすることによってSir2遺伝子の発現が上昇し,寿命が延長することが分かっていたが,酵母のSir2と最も構造や機能が類似しているものがSirt1である.Sirt1は,NAD+依存性脱アセチル化酵素としての機能を持ち,生体内の様々なタンパク質と相互作用することにより広範な生理機能を持つ,寿命を制御する分子の1つと考えられている.
  • 樋口 京一, 森 政之
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1027_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    イギリスの生命保険専門家Benjamin Gompertzにより考案された,加齢と死亡率の増大との数学的関係を表した関数.ヒトでは30歳以降,8年ごとに死亡率が約2倍に上昇していくが,横軸に年齢,縦軸に死亡率の対数を取る(片対数グラフ)と,直線関係で表される.すなわち,死亡率が年齢の指数関数になる.ある(動物)集団においてこの直線の傾きが大きいことは,その集団の老化速度が速いことを意味する.老化研究での重要な概念で,数学はとっつきにくいと感じられがちだが,1825年に発表されたこのゴンペルツ関数に基づいて私たちの生命保険料も決められていると思うと,少し身近に感じられる.
  • 杉本 昌隆, 川口 耕一郎
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1027_4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    老化細胞特異的に細胞死を誘導する活性を持つ薬剤.老化細胞は特定の経路にその生存を依存するようになるため,正常細胞よりもその経路の阻害剤に高い感受性を示すことに起因すると考えられる.セノリティック薬を用いることにより,遺伝子改変に依存しない老化細胞の除去が可能となるため,ヒトへの応用が期待される.これまでに,多くのセノリティック活性を持つ候補薬剤が同定されており,dasatinibやnavitoclaxなど抗がん剤として既に使用されている化合物も,セノリティック薬剤として実験室レベルで使用されている.ヒト疾患におけるセノリティック活性の効果に関しては,現在試験が行われている.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1028-1032
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,56巻9号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
くすりの博物館をゆく
  • 池田 幸弘
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1034-1035
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    富山駅から富山地方鉄道に乗る.富山といえば路面電車の印象が強いが,富山地方鉄道(株)は,この路面電車と鉄道の両方を運営している.鉄道線の営業距離は90kmを超え,地方私鉄としては比較的規模は大きい.地元の人々には地鉄と略して呼ばれ,親しまれている.とは言っても,地方鉄道の多くがそうであるように,営業的には決して楽観できない状況のようである.一方で,かつて東急電鉄や,西武鉄道,京阪電鉄で走っていた車両も使用されており,1971年(昭和46)年にデビューした京阪の3000系テレビカー(富山地鉄では10030形に改称)などは,マニア垂涎の車両であろう.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
トピックス
  • 松本 晃
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1040
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    グルコースなどのバイオマスから抽出される糖類は,再生可能な化学原料として大規模スケールで生産されている一方,これらの立体異性体の中には天然資源から単離できないものも存在する.このような「希少糖」は,様々な生物活性化合物や医薬品の構造中に含まれるものの,その効率的な供給法は未だ確立されておらず,複数の異性体を副生する非選択的な手法に依存している.
    本稿では,バイオマス由来の糖類の位置選択的なエピメリ化によって希少糖の合成を達成したWendlandtらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wang Y. et al., Nature, 578, 403-408(2020).
    2) Jeffrey J. L. et al., Science, 349, 1532-1536(2015).
  • 大澤 宏祐
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1041
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    鎖状ペプチドをリード化合物とした創薬研究において,側鎖を介した12員環以上の形成は,代謝安定性や膜透過性の向上が期待できる有用なアプローチである.一方,架橋構造の導入により分子量は増大し化学合成が煩雑になる傾向にあるため,ファーマコフォアのみ適切に抽出したテンプレートの設計が迅速な合成展開には望ましい.著者らは,鎖状ペプチドの物性改善を目的に,活性配座の三次元構造を基にした環状ミメティクスの設計ならびに誘導体展開を行ったので,紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Marsault E., Peterson M. L., J. Med. Chem., 54, 1961-2004(2011).
    2) Houštecká R. et al., J. Med. Chem., 63, 1576-1596(2020).
    3) Knight C. G., Barrett A. J., Biochem. J., 155, 117-125(1976).
  • 位上 健太郎
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1042
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    日本にも生息するヒトスジシマカ等が媒介するデングウイルスは,デング熱をもたらす1本鎖RNAウイルスである.デング熱は,主に東南アジア,南米で発生しており,致死率は10〜20%におよぶが,いまだ治療薬が開発されていない.日本でも,2014年に70年ぶりの国内感染事例が確認されており,地球温暖化に伴う流行が危惧されている.このような背景のもと,現在,天然物を素材とした抗デングウイルス薬の開発が活発に進められている.
    本稿では,バーチャルスクリーニングにより,きのこの1種である霊芝(Ganoderma lucidum)の抗デングウイルス活性成分の探索を行った,Bharadwajらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Velmurugan D. et al., Curr. Bioinform., 7, 187-211(2012).
    2) Bharadwaj S. et al., Sci. Rep., 9, 19059(2019).
  • 高橋 光規
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1043
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    脳神経系は,神経細胞の膜電位変化に伴って神経伝達物質をやりとりし,情報処理を達成している.近年,膜電位を光学顕微鏡で可視化するセンサーを用いることで,こうした神経細胞の膜電位を低侵襲・ハイスループットで測定できるようになった.しかし,膜電位センサーの多くは,励起光として波長500nm以下の可視光を必要とする.こうした短波長光は,生体組織内での散乱や自家蛍光によるSN比の低下,光毒性といった問題を引き起こしやすい.最近,Duらは近赤外光で励起可能なナノ粒子を活用し,これらの課題を克服する膜電位センサーを報告したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chamberland S. et al., eLife, 6, e25690(2017).
    2) Abdelfattah A. S. et al., Science, 365, 699-704(2019).
    3) Liu J. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 7858-7867(2020).
  • 安藤 祐介
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1044
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    狭心症や心筋梗塞に代表される虚血性心疾患は,我が国をはじめ先進諸国における主要な死因の1つである.虚血性心疾患に対しては,大きく分けて薬物療法と再灌流療法の2つが行われ,特に心筋梗塞については,閉塞した冠動脈の迅速な血行再建を行い,心筋虚血の原因を取り除くことが治療の鍵となる.その一方で,再灌流時には,虚血再灌流障害と呼ばれる組織障害が引き起こされることが知られるが,その発生機序については未だ不明な点が多い.本稿では,軸索ガイダンス因子であるセマフォリン7A(Sema7A)が,虚血再灌流障害の新たな治療標的となることを明らかにしたKöhlerらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Köhler D. et al., Nat. Commun., 11, 1315(2020).
    2) Morote-Garcia J. C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 109, 14146-14151(2012).
    3) Roth J. M. et al., PLoS One, 11, e0146930(2016).
  • 祖父江 顕
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1045
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    脳内のマクロファージ様細胞として知られるミクログリアは,中枢神経系の環境調整を担っている細胞である.これまで,活性化されたミクログリアは神経傷害型(M1)と神経保護型(M2)などに分類されてきたが,アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)などの病態におけるミクログリアはそれだけでは説明がつかず,近年では疾患に共通した活性化ミクログリア(disease associated microglia: DAM)という概念が主流になってきた.DAMは,神経疾患の病態進行に深く関与することが報告されているが,このDAMがAD脳全体へ及ぼす影響については,不明な点が多いのが現状である.
    今回は,このDAMの発現に関与するtriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)の機能変化と,ミクログリアをはじめとする中枢神経系の細胞への影響が明らかとなったため紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhou Y. et al., Nat Med., 26, 131-142(2020).
    2) Krasemann S. et al., Immunity, 47, 566-581(2017).
    3) Keren-Shaul H. et al., Cell, 169, 1276-1290. e17(2017).
    4) Guerreiro R. et al., N. Engl. J. Med., 368, 117-127(2013).
    5) Jonsson T. et al., N. Engl. J. Med., 368, 107-116(2013).
  • 進藤 佐和子
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1046
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    核内受容体は,ホモ/ヘテロ二量体を形成することで様々な遺伝子の発現誘導に関与している.なかには,核内受容体同士が巨大な複合体を形成する可能性も示唆されているが,詳細は不明である.一方,エストロゲン硫酸転移酵素(SULT1E1)は,エストロゲンや内分泌かく乱物質を基質とし,硫酸化することで不活性化させる硫酸転移酵素の一種である.SULT1E1遺伝子の発現誘導には,核内受容体である常在性アンドロスタン受容体(CAR)の活性化が関与しており,本機構においてCARのDNA結合ドメイン(DBD)内のThr38の脱リン酸化による核移行が重要である.Negishiらは,Thr38周辺の配列(リン酸化モチーフ)がほとんどの核内受容体分子種の間で保存されていることから,他の核内受容体の機能においてもこのリン酸化モチーフが重要な役割を果たしている可能性があると考えた.エストロゲン受容体α(ERα)も,Ser212(ヒト)/Ser216(マウス)周辺のリン酸化モチーフが保存されている.
    本稿では,SULT1E1遺伝子の発現誘導に関わるCARとERαの複合体形成と,ERαのリン酸化の必要性を明らかにした論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Negishi M., Drug. Metab. Dispos., 45, 532-539(2017).
    2) Yi M. et al., Sci. Rep., 10, 5001(2020).
    3) Fashe M. et al., FEBS Lett., 592, 2760-2768(2018).
  • 山岸 喜彰
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1047
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    トランスポーターが介在する薬物相互作用(drug-drug interaction: DDI)は,しばしば深刻な副作用が生じる要因として医薬品開発や臨床現場において注視されているが,トランスポーターが介在する薬物-栄養素相互作用(drug-nutrient interaction: DNI)についてはDDIほど注目されていない.しかしながら,2012年当時,骨髄繊維症の新規治療薬候補として注目を集めていたJanus kinase 2阻害薬フェドラチニブの臨床第3相試験において,複数の患者にチアミン不足によって生じる重篤な神経障害であるWernicke脳症の発症が認められ,当該臨床試験は中断を余儀なくされた.後に当該臨床試験におけるWernicke脳症は,チアミンの消化管吸収における主要なトランスポーター(thiamine transporter 2: THTR-2)が,フェドラチニブによって阻害されたためであったことが明らかとされた.
    本稿では,一連の経緯からトランスポーター介在DNIに着目し,THTR-2阻害能を有する医薬品のスクリーニングとチアミン欠乏を誘導するリスク医薬品の予測について検討した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Vora B. et al., Am. J. Clin. Nutr., 111, 110-121(2020).
    2) Zhang Q. et al., Drug Metab. Dispos., 42, 1656-1662(2014).
    3) Giacomini M. M. et al., Drug Metab. Dispos., 45, 76-85(2017).
    4) Pardanani A. et al., JAMA Oncol., 1, 643-651(2015).
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談話室
  • 荒武 誠士
    2020 年 56 巻 11 号 p. 1039
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー
    「自分の作った化合物が患者さんの役に立つことができたら,これ以上にメディシナルケミスト冥利に尽きることはない.今日からあなたが目指すのはそういう仕事をすることです.」 創薬の右も左も知らなかった私の配属初日に,当時の上司から開口一番言われた言葉である.正直あまりピンときていなかったが,その1年近く後に,その上司がまさに有言実行し,創製した薬剤が上市されたことを知ることとなる.その日以来,あの日の上司の言葉を,メディシナルケミストとして歩んでいく上での至言として心に留め続けている.
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