腫瘍細胞が免疫細胞からの攻撃を回避するメカニズムの1つに,腫瘍細胞表面に過剰発現しているprogrammed cell death ligand 1(PD-L1)とT細胞表面のprogrammed cell death 1(PD-1)との結合による免疫細胞からの攻撃回避機構がある.これら免疫チェックポイント分子の特異的相互作用を阻害する抗体は,免疫応答を回復させる分子標的薬として実用化されているが,抗体医薬は,高価格,経口投与不可,高い免疫毒性リスクといった短所も多い.
一方で,分子量500〜2,000程度の中分子は,タンパク質表面に結合するのに十分な大きさがある上に,細胞膜透過性を有するものもあり,免疫毒性リスクも少ないと考えられている.そのため,PD-1/PD-L1相互作用を標的とした抗体医薬を中分子薬に置き換える研究が進められている.ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社はペプチドリーム社と共同で,PD-1/PD-L1相互作用を阻害する特殊環状ペプチドを創製している.Magiera-Mularzらは最近,ヒット化合物として見いだされた15または14残基の環状ペプチド(peptide-57または-71)の結合様式をNMRおよびX線結晶構造解析により原子レベルで明らかにしたので紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Miller M. M.
et al., patent US20140294898 A1(2014).
2) Magiera-Mularz K.
et al.,
Angew.
Chem.
Int.
Ed.,
56, 13732-13735(2017).
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