近年,痛みやそのメカニズムに性差があることが明らかにされつつある.機械的刺激や電気,熱,化学刺激などを用いた実験的研究だけでなく,線維筋痛症,偏頭痛,緊張性頭痛,過敏性腸症候群,間質性膀胱炎などに伴う慢性疼痛は女性に多いとされる疫学研究も報告されている.これらの性差には,性ホルモンや内因性オピオイド神経機能,痛みに関わる受容体の遺伝子多型が関連していると言われている.最近では,疼痛発症における免疫担当細胞の役割にも性差があることが分かってきた.例えば,神経部分損傷によるアロディニア(異痛症)の発症メカニズムは,雄性マウスではミクログリア依存的である一方で,雌性マウスでは,ミクログリア非依存的であり,T細胞が関与すると報告されている.
本稿では,雌性マウスでの疼痛発症メカニズムについて,特にミクログリアと T 細胞の役割に着目し,妊娠期間の影響を観察したRosen らの報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Bartley E. J., Fillingim R. B.,
Br.
J.
Anaesthesia,
111, 52-58(2013).
2) Sorge R. E.
et al.,
Nat.
Neurosci.,
18, 1081-1083(2015).
3) Rosen S. F.
et al.,
J.
Neurosci.,
37, 9819-9827(2017).
4) Casagrande D.
et al.,
J.
Am.
Acad.
Orthop.
Surg.,
23, 539-549(2015).
5) Ostensen M., Villiger M. P.,
Semin.
Immunopathol.,
29, 185-191(2007).
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