薬剤性肝障害(drug-induced liver injury: DILI)はその多くが特定の個人にのみ生じ,かつ用量依存性が見られないことも多い.DILIは,重篤な症例を除けば原因薬剤を速やかに中止することで回復することが知られているため,早期の診断と対応が重要になる.臨床において,DILIの診断には,他の肝疾患の可能性を考慮したうえで臨床情報の評価による鑑別診断を実施する.現在,DILIであると確定診断を下すことができる検査方法はなく,信頼性の高い診断ツール,検査方法の開発が求められている.1993年にDananとBenichouが発表したrousell uclaf causality assessment method(RUCAM)は,現在世界中で広く用いられるDILI診断のためのツールの1つである.しかし,いくつかの欠点も指摘されており,実際に我が国でも日本肝臓学会を含む複数の学会が合同で開催したDDW-J 2004ワークショップにおいて,独自に改良を施した診断基準が提案されている.今回取り上げる論文において,HayashiらはRUCAMで評価する臨床情報の妥当性を再評価し,さらに可能な限り主観性を排することによって,診断の精度と診断者間での再現性を向上させることを目指してrevised electronic causality assessment method(RECAM)という評価方法を確立した.このような臨床におけるDILI診断方法の改良により,不必要な投薬が回避され重篤な肝障害を予防できる.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Danan G., Benichou C.,
J. Clin. Epidemiol.,
46, 1323–1330(1993).
2) Takikawa H.
et al.,
Kanzo,
46, 85–90(2005).
3) Hayashi P. H.
et al.,
Hepatology,
76, 18–31(2022).
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