急性リンパ性白血病の治療薬であるメルカプトプリン(mercaptopurine: MP)は,臨床効果や有害事象の個体差が大きいことが知られている.個体差の原因として,thiopurine S-methyltransferase(
TPMT)の遺伝子多型の存在が報告されたが,我が国では
TPMT変異のアレル頻度は低く,個体差の原因を説明することはできなかった.そのような状況の中,2015年にYangらは小児白血病患者において,新たなMPの個体差に関わる因子として,nudix hydrolase 15(
NUDT15)の遺伝子多型を報告した.NUDT15はMPの活性代謝物であるthioguanine triphosphate(TGTP)を脱リン酸化する酵素であり,
NUDT15変異例は酵素活性が低く,TGTPが増加しMPの感受性が高いことが示唆されている.しかし,
NUDT15変異例に対して,治療効果を減弱せずにどの程度MPを減量すべきか不明であった.本稿では,
Nudt15変異マウスを作製してMP投与量別に有効性や毒性を検証した論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Weinshilboum R. M.
et al.,
Am.
J.
Hum.
Genet.,
32, 651-662(1980).
2) Yang J. J.
et al.,
J.
Clin.
Oncol.,
33, 1235-1242(2015).
3) Nishii R.
et al.,
Blood.,
131, 2466-2471(2018).
抄録全体を表示