ファルマシア
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56 巻, 10 号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
目次
  • 2020 年 56 巻 10 号 p. 890-891
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ミニ特集:専門・認定薬剤師を知る
    ミニ特集にあたって:今回,ミニ特集「専門・認定薬剤師を知る」を企画するに当たって,様々な意見を委員の先生方よりいただき,専門・認定薬剤師制度は薬剤師の専門性の質を確保する手段の1つに過ぎないことを改めて強く感じている.乱立する専門・認定制度に対する懐疑的な見方もあるが,認定を取得した各個人が考え行動することで,のちにその認定制度が評価されるのではないだろうか.本ミニ特集では,初めに日本薬剤師研修センター,日本病院薬剤師会,日本医療薬学会,認定薬剤師認証機構としての認定・専門薬剤師制度の考え方について,さらに保険薬局薬剤師・病院薬剤師のどちらも取得できるという観点と,近年のニーズを踏まえ,日本腎臓病薬物療法学会,日本緩和医療薬学会,日本臨床腫瘍薬学会,日本薬局学会が認定する認定・専門薬剤師ついて,そのねらいや認定条件,今後の展望などを寄稿していただいた.専門・認定薬剤師制度についての理解を深めるきっかけになれば幸いである.
    表紙の説明:薬用植物と家紋シリーズは明智光秀の桔梗紋から始まっている.大河ドラマ「麒麟がくる」は8月末に放送再開となった.波乱万丈なドラマのクライマックスは本能寺の変だが,その戦いの彼方では,秀吉が毛利家と最後の戦いを演じていた.その毛利家は,沢鷹紋も家紋として用いていた.電子付録では,毛利家を取り巻く歴史物語とオモダカ属など水辺の植物を紹介する.写真のオモダカには薬効はなく,類縁のサジオモダカが漢方に用いられる.
オピニオン
  • 関水 和久
    2020 年 56 巻 10 号 p. 889
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    世界中に新型コロナウイルス感染症が蔓延しており,人々は恐怖にさらされている.パンデミックを引き起こす病原体はウイルスばかりではない.MRSAやMDRPなどの多剤耐性細菌,真菌,さらにはマラリアのような原虫も,パンデミックの原因となる可能性がある.また我が国では,結核でいまだに毎年約2,000人が亡くなっており,結核による死亡率は先進国の中では突出して高い状況である.感染症治療薬の開発に対する期待がこれまでになく高まっている今,薬学分野の若い研究者諸君には,是非とも感染症治療薬創生研究に挑戦していただきたい.
Editor's Eye
ミニ特集 わだい
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
  • 各種生涯研修制度・認定制度の認証への取り組み
    吉田 武美
    2020 年 56 巻 10 号 p. 913-917
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    薬剤師認定制度認証機構(Council on Pharmacists Credentials:CPC)は、薬剤師に対する各種生涯研修制度・認定制度を公平・公正に評価・認証し、公表する第三者評価機関である。本稿では、内山充前代表理事によるCPC設立の提案までの情報収集・提供と内閣府公益社団法人認定に至る経緯、生涯研修制度と認証事業の状況、薬剤師生涯学習のあり方、認証された生涯研修プロバイダーの現状、研修認定薬剤師とかかりつけ薬剤師、認定証の発行数推移、薬剤師への期待等に関して、記載する。
ミニ特集 話題
  • 腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師の現状
    木村 健
    2020 年 56 巻 10 号 p. 918-920
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    我が国における慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)患者は1,330万人以上で成人8人に1人と推計されており、そのうち透析療法を受けている患者は約33万人と国民の健康に重大な影響を及ぼしている。人口の高齢化に伴い今後さらにCKD患者が増加する中、腎機能を考慮した薬物療法について深い知識と経験を有する腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師へのニーズは、今後一層高まっていくと予測される。
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
最前線
話題
新薬のプロフィル
新薬のプロフィル
  • 髙木 桂代子
    2020 年 56 巻 10 号 p. 942-943
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    メラトベル®顆粒小児用0.2%(本剤)は,日本で初めて,内因性ホルモンであるメラトニンを有効成分とした入眠改善剤であり,「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」の効能又は効果で2020年3月25日に製造販売承認を取得した.
    神経発達症に伴う睡眠障害において特に注意すべき点は,慢性的な睡眠不足と不規則な睡眠覚醒リズムの問題である.睡眠不足がある場合,多動や過活動,興奮症状を示すことが多く,睡眠の問題は神経発達症の特性を強め,困りごとを大きくし,さらにそのことによって睡眠の問題が悪化するという悪循環を伴う.
    これまで,国内に「小児期の神経発達症に伴う睡眠障害」に対する医薬品が承認・販売されていなかったことから,2013年より本剤の臨床試験が開始された.なお2019年1月に,日本小児神経学会より厚生労働大臣宛に「神経発達症に伴う睡眠障害に対するメラトニンの早期承認」について要望書が提出された.
新薬のプロフィル
  • 蛭田 仁
    2020 年 56 巻 10 号 p. 944-945
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    ビルトラルセンは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の変異したジストロフィン遺伝子のエクソン53をスキップさせるアンチセンス核酸で、機能のあるジストロフィンタンパク質の産生を促す。臨床試験において、治療効果を期待できる結果が得られたことから、本邦で「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」を効能・効果として2020年3月に製造販売承認を取得した。
最終講義
前キャリアが今に生きること
  • やりたいことを後悔しないようにやってきた人生
    湯川 アヤ
    2020 年 56 巻 10 号 p. 948-949
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    中学校卒業間近の社会の授業で、先生はクラス全員に小さな紙を配り、無記名で自分の欲しいものを書いて提出するよう言った。私は「ある程度のお金」と書いて提出した。先生はみんなの前で私が書いたものを紹介した。「ある程度」というところが良い!と。私にとっては、家や車があって、食費や学費に困らない生活ができるお金が必要だった・・・。
    現在私は病院薬剤師、学校薬剤師として働いている。ある程度の生活を求めて仕事と向き合い、女性という立場だからこそ苦悶した日々、薬学に興味を持ったきっかけ、薬剤師になったことで出会えた興味、やりたいことをただ後悔しないように歩んできた経緯を振り返る。
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 深谷 圭介
    2020 年 56 巻 10 号 p. 954
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    生薬には,合成医薬品とは異なるケミカルスペースを占める有用な複雑天然物が多種多様に含まれている.(−)-oridonin(1)は,中国で市販されている抗炎症生薬Rabdosia rubescensの主要な有効成分であり,ent-kaurene(2)が高度に酸化されたジテルペノイドである.1は様々ながん細胞に対して有効な活性を示すだけでなく,最近では1から半合成された誘導体の第I相試験なども行われており,広範な構造活性相関研究を志向した効率的な全合成経路の確立が望まれる.
    ところで,Nazarov環化は4π電子環状反応の1つであり,環化に続いて生じるオキシアリルカチオン中間体の脱プロトンを経て反応が完結する.ここで基質を巧妙に設計した場合,このカチオン中間体に対してカスケード型に求核剤などを作用させる“interrupted Nazarov”反応に展開することが可能である.Luoらは本反応を利用し,1の初の全合成を達成したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Fujita E. et al., Chem. Commun., 252-254(1967).
    2) Yadykov A. V., Shirinian V. Z., Adv. Synth. Catal., 362, 702-723(2020).
    3) Kong L. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 20048-20052(2019).
  • 山下 泰信
    2020 年 56 巻 10 号 p. 955
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    µ-オピオイド受容体(µ-OR)は,Gタンパク質共役型受容体の1つであり,主に中枢および末梢神経系に発現し痛みの知覚と伝達の調整に関与する.これまでに本受容体は,アゴニストとの共結晶構造が報告されており,アゴニストの理論的な分子設計が可能になったものの,生理的な条件下における動的な挙動に関する理解は不十分であった.
    一方,1分子イメージングは,高い分解能を有する顕微鏡を用いて個々のタンパク質を生理的条件下で観察する手法であり,Sungkawornらは2017年に1分子イメージングにより,Gタンパク質共役型受容体が細胞膜上で相互作用していることを報告している.筆者らは,µ-ORを選択的に観測できる蛍光プローブを用いた1分子イメージングに成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Koehl A. et al., Nature, 558, 547-552(2018).
    2) Sungkaworn T. et al., Nature, 550, 543-547(2017).
    3) Gentzsch C. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 59, 5958-5964(2020).
  • 蒔田 吉功
    2020 年 56 巻 10 号 p. 956
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    薬と生体分子の関係が「鍵と鍵穴」に例えられるように,化合物(=鍵)の三次元構造は生物活性と密接に関わる.しかし多様な天然物の中には,その複雑な構造のために三次元構造の解析が困難な化合物も存在する.三次元構造の複雑さを生む1つの要因として,ビナフチル類の軸不斉に代表されるアトロプ異性が挙げられる.不斉中心が生み出す点不斉とは異なり,アトロプ異性は単結合の回転障害によって生じる立体異性である.放線菌由来化合物トリプトルビンAは,こうしたアトロプ異性を有する天然物である.本化合物はアリと共生する菌類より分離されたStreptomyces属放線菌が産生するヘキサペプチドで,特徴として,①Trp2のインドール環とTyr3およびTrp5との結合と,②Trp5のインドール窒素とアミノ基によるアミナール形成が挙げられる.これらの非ペプチド結合の存在により,本化合物は2個のマクロ環が縮合した興味深い構造を有している.本稿では,ReisbergらによるトリプトルビンAの全合成研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Wyche T. P. et al., J. Am. Chem. Soc., 139, 12899-12902(2017).
    2) Reisberg S. H. et al., Science, 367, 458-463(2020).
  • 鈴木 浩典
    2020 年 56 巻 10 号 p. 957
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病は血液中の血糖が慢性的に多い状態となり,血糖値が一定の基準を超えている状態を指す疾患である.生活習慣とは無関係の自己免疫疾患等を起因とする1型と,食生活等に起因する2型とに分類される.1型は絶対的にインスリン注射が必要であり,2型は運動や食事療法,血糖降下薬の投与による血糖値低下が不十分な場合にインスリン投与が行われる.遺伝子工学の発展に伴い,健常人から分泌されるインスリンと同じアミノ酸配列を持ったヒトインスリン製剤が用いられてきた.
    近年ではアミノ酸の一部を置換することで,血糖降下作用はそのままに,薬物動態を変えたインスリンアナログ製剤が用いられている.しかしこれらの製剤は,保管中にアミロイド様の線維を形成してしまい,そのような物性変化によって適切な投与量を維持できないことから,製剤の有効期間を短縮し期限切れ医薬品を生み出す原因となっている.タンパク質製剤の体内動態を変える手段として,ポリエチレングリコールや糖鎖などの高分子修飾が用いられており,代表的なものとして,ペグインターフェロンやダルベポエチンアルファなどが挙げられる.本稿では,糖鎖修飾によってインスリンアナログの線維形成を抑制する手法が報告されたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhou C. et al., J. Pharm. Sci., 105, 551-558(2016).
    2) Hossain M. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 1164-1169(2020).
  • 竹原 朋宏
    2020 年 56 巻 10 号 p. 958
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    抗PD-1抗体,抗CTLA-4抗体(免疫チェックポイント阻害剤)は2013年に開発され,以来手術・放射線療法・化学療法に次ぐ新たながん治療の柱を築いた.T細胞活性化時に発現誘導されるCTLA-4は活性型補助刺激受容体CD28よりも抗原提示細胞上(APC)のCD80/86に対する親和性が50倍も高い.よって抗CTLA-4抗体は,ナイーブT細胞がAPCから抗原提示を受ける段階(プライミング相)でT細胞上に発現したCTLA-4によって抑制されたCD28活性化シグナルを回復させる.一方,抗PD-1/L1抗体は,プライミング相におけるT細胞のPD-1とAPCのPD-L1/2のみならず,活性化T細胞が機能する段階において腫瘍抗原に常に曝露され反応性が低下したT細胞のPD-1と腫瘍細胞のPD-L1/2を介する抑制性補助刺激を解除することで抗腫瘍効果を発揮する.近年,単剤から抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体を組み合わせたレジメンへと適応が拡大している.本稿では,抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の複合がん免疫療法に関する新規メカニズムを明らかにしたZhaoらの論文を取り上げる.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhao Y. et al., Immunity, 51, 1059-1073(2019).
    2) Sugiura D. et al., Science, 364, 558-566(2019).
    3) Wolchok J. D. et al., N. Engl. J. Med., 369, 122-133(2013).
  • 北谷 和之
    2020 年 56 巻 10 号 p. 959
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    喘息は,遺伝的および環境的因子により発症する多因子疾患である.特に小児喘息の発症では,遺伝的因子が強い.これまでのヒトゲノムコホート研究から,染色体17q21領域のrs7216389部分におけるTT型,CT型,CC型の遺伝子多型のうち,特にTT型が非アレルギー性小児喘息と関連付けられていることが明らかになっている.また,原因は解明されていないものの,このTT型が17q21領域にコードされるorosomucoid like 3(ORMDL3)の遺伝子発現上昇に関与することも示されている.このような背景から,ORMDL3遺伝子は喘息関連遺伝子として考えられている.
    ORMDL3は,スフィンゴ脂質de novo合成の律速酵素であるセリン・パルミトイルCoAトランスフェラーゼ(SPT)の活性を抑える小胞体局在性分子である.また,喘息モデルマウスでは,このORMDL3遺伝子の過剰発現や薬理学的なSPT阻害により,気道リモデリングや気道過敏性が亢進することが示されている.しかしながら,小児喘息における17q21領域喘息関連遺伝子多型とスフィンゴ脂質合成との臨床的な関連性は不明であった.本稿では,小児喘息発症におけるORMDL3の役割についての報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ober C., Yao T. -C., Immunol. Rev., 242, 10-30(2011).
    2) Davis D. et al., Adv. Biol. Regul., 70, 3-18(2018).
    3) Worgall T. S. et al., Sci. Transl. Med., 5, 186ra67(2013).
    4) Ono J. G. et al., J. Clin. Invest., 130, 921-926(2020).
  • 宮内 優
    2020 年 56 巻 10 号 p. 960
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    グルコースなどの還元糖は,タンパク質の遊離アミノ酸残基に結合し,メイラード反応と呼ばれる多段階の不可逆的な反応を受ける.この反応により生成した終末糖化産物(advanced glycation end-products: AGEs)は,AGEs受容体(the receptor for AGEs: RAGE)に結合し,炎症シグナルを介して加齢や多くの炎症性疾患(糖尿病,がん,アルツハイマー病など)を惹起する.この炎症シグナルによって新たなRAGEの発現が誘導されるため,一度生じたAGEs-RAGEシグナルは増悪のループを形成する.このAGEs-RAGEシグナルは不妊の原因となることも知られている.本稿では,不妊原因の1つとして知られる,多嚢胞性卵胞症候群(polycystic ovary syndrome: PCOS)とAGEs-RAGEシグナル/小胞体ストレスとの関連を報告したAzharyらの研究成果について紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Brownlee M., Annu. Rev. Med., 46, 223-234(1995).
    2) Hudson B. I., Lippman M. E., Annu. Rev. Med., 69, 349-364(2018).
    3) Azhary J. M. K. et al., Endocrinology, 161, bqaa015(2020).
    4) Baba T., Acta. Obst. Gynaec. Jpn., 65, 2709-2720(2013).
  • 小林 映子
    2020 年 56 巻 10 号 p. 961
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/01
    ジャーナル フリー
    妊婦への解熱鎮痛剤の使用について,NSAIDsは流産との関連性を示唆する報告や,胎児動脈管早期閉鎖との関連性によって妊娠後期は禁忌とされ,注意喚起されている.一方でアセトアミノフェンは,より安全性が高いとされ使用経験は多く,欧米では妊婦の半数以上に使用経験があるといわれている.妊娠後期の使用における胎児動脈管への影響との因果関係は認められていないとされているが,ヒトでの研究から胎盤を通過し長期間胎児の血液循環に残るとされる.
    近年,注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)との関連を示唆する多数の前向きコホート研究の結果が示され,欧米で大きな話題となった.さらにメタ解析によっても胎児曝露との有意な関連性を示した.妊婦の医薬品使用による胎児へのリスク評価については,倫理的視点から介入試験ができないことにより,観察研究の結果に情報が限定されるため正確な評価が難しい.ADHDやASDとの関連性に関するこれまでの研究も,ほとんどが母親の自己申告情報に基づくものであった.
    そこで今回,子宮内での胎児のアセトアミノフェン曝露による影響を明らかにする目的で,出生時の臍帯血漿中濃度と児の疾患診断との関連性について前向きコホート研究を実施した.特に,本研究は以前の研究で指摘されてきたエビデンスとして用いる上での制限や方法論的懸念に対応すべく研究デザインが設定された.その結果,ADHDおよびASDのリスクに有意な正の相関が確認され,用量反応性も認められたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dathe K. et al., BJOG, 126, 1560-1567(2019).
    2) Ystrom E. et al., Pediatrics, 140, e20163840(2017).
    3) Masarwa R. et al., Am. J. Epidemiol, 187, 1817-1827(2018).
    4) Ji Y. et al., JAMA Psychiatry, 77, 180-189(2020).
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