肺がんの薬物療法において,中心的に使用されるシスプラチン(CDDP)は,強力な抗腫瘍効果と高い催吐性を有する抗がん剤である.化学療法誘発性悪心・嘔吐(chemotherapy - induced nausea and vomiting: CINV)は,患者の生活の質を著しく損なう有害事象である.しかし,CINVには中枢神経系の様々な受容体が関連しており,5HT
3受容体拮抗薬,コルチコステロイド,ニューロキニン-1受容体拮抗薬を併用することで,よりよくコントロールできるようになった.
一方,CDDPを使用した患者のほとんどが,これらの制吐療法を行っているにもかかわらず,食欲不振を経験しているとの報告がある.化学療法誘発性食欲不振(chemotherapy-induced anorexia: CIA)は,栄養を維持し,化学療法を完遂するために解決すべき重要な問題である.しかし現在の医療現場では,CIAを克服できる薬剤を持ち合わせていない.
六君子湯は,上部消化管の症状を改善するために広く使用されている.六君子湯が,食欲刺激ホルモンであるグレリンの作用を増強することが,最近注目されており,グレリンを介しての食欲改善のメカニズムが明らかになってきた.
本稿では,肺がん患者におけるCDDPを含む化学療法後のCIAに対する六君子湯の効果を検討した報告を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Ishikawa A.
et al.,
Mol.
Clin.
Oncol.,
1, 65-68(2013).
2) Takeda H.
et al.,
Curr.
Pharm.
Des.,
18, 4827-4838(2012).
3) Yoshiya T.
et al.,
Invest.
New Drugs,
38, 485-492
(2019).
抄録全体を表示