ファルマシア
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56 巻, 6 号
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目次
  • 2020 年 56 巻 6 号 p. 492-493
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ミニ特集:立体構造から読み解く多剤耐性のメカニズム
    ミニ特集にあたって:多剤耐性にはたらくトランスポーターは,細胞膜中あるいは細胞質内の様々な化合物を細胞外にくみ出し,その効果を抑制している.これらトランスポーターは,微生物では抗生物質に対して,がん細胞では抗がん剤に対して耐性因子として働く.一方,ヒトの通常組織で発現しているトランスポーターは薬物のクリアランス機構など重要な役割も果たしている.近年,それらの立体構造解析から,化合物の基質認識や輸送機構の理解に大きな進展が得られてきた.本ミニ特集では,これら立体構造と多剤耐性のメカニズムについて最前線で研究されている先生方から最新の成果をご寄稿いただいた.多剤耐性への理解をさらに深めるきっかけになれば幸いである.
    表紙の説明:黄門様の印籠で有名な徳川家の家紋は,三つ葉葵紋だが,自然界にミツバアオイなる植物は存在しない.葵とは,通常,下鴨神社,上賀茂神社の神紋であるフタバアオイを指しており,徳川家の家紋のルーツもここにある.葵祭は,内裏,牛車,勅使,供者の衣冠に至るまで,全てフタバアオイの葉で飾ったことがその名の由来とされる.フタバアオイには,神の不思議な力が宿っていると両神社では伝えている.電子付録では,フタバアオイの植物と共に双葉葵紋を紹介する.
オピニオン
  • 入村 達郎
    2020 年 56 巻 6 号 p. 491
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    薬学の領域において患者力が重視されるようになりつつある。患者は疾患の持つ社会的な位置付けについてだけでなく、科学的な情報を得、新たな知識を求め、必要とされる科学の発展に寄与するべく発信し始めている。その内容は、医薬品開発のあり方や、創薬のための科学の方向性をも変えてゆく可能性を持つ。これからの薬剤師は患者に寄り添うことにより、患者にとって将来必要な医薬品を医師や創薬開発の現場に伝える重要な役割を担うようになることが期待される。このような創薬人材、実務人材の育成が薬学教育に期待される。
Editor's Eye
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
  • 小段 篤史, 木村 泰久, 植田 和光
    2020 年 56 巻 6 号 p. 519-523
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    多剤排出ポンプMDR1 (Multi-drug resistance 1) (別名:P糖蛋白質、ABCB1)は、ATPを駆動力として幅広い構造の薬剤を細胞や体内から排出することで生体防御機構に重要な役割を果たす。一方で、癌細胞において高発現し、抗癌剤を排出するため、癌の化学療法にとっては大きな障壁となっている。最近、我々は、MDR1オーソログのATP結合状態と非結合状態の3次元構造を高解像度で決定し、ATP依存的に薬剤を絞り出すように排出するMDR1の精巧な分子メカニズムを明らかにしたので概説したい。
最前線
最前線
  • 玉田 耕治, 城﨑 幸介
    2020 年 56 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    造血器腫瘍に対して優れた治療効果を発揮しうるCAR-T細胞療法は、がん治療に新たな選択肢をもたらしたが、同時に、課題も浮き彫りになった。標的抗原の消失、固形腫瘍に対する不十分な治療効果、サイトカイン放出症候群をはじめとした重篤な副反応の発生、効率的なCAR-T細胞作製法の必要性など、現在、これらの課題を克服するための次世代型CAR-T細胞の研究・開発が世界各国で精力的に行われている。
医療の現場から
セミナー:創薬科学賞
セミナー:創薬科学賞
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2020 年 56 巻 6 号 p. 547-549
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,56巻4号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
新薬のプロフィル
  • 枝廣 誠之
    2020 年 56 巻 6 号 p. 552-553
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    ドチヌラド(ユリス®錠)は、(株)富士薬品で創製され、第Ⅲ相試験から持田製薬(株)とともに開発され2020年1月「痛風・高尿酸血症」を適応症として製造販売承認された。本剤は選択的で強力な尿酸トランスポーター1(urate transporter 1:URAT1)阻害作用を示し、さらに、肝障害の原因の1つと考えられているミトコンドリア呼吸阻害やCYP2C9阻害による薬物相互作用が少ないと期待される新規の選択的尿酸再吸収阻害薬(selective urate reabsorption inhibitor: SURI)である。
新薬のプロフィル
  • 辰巳 圭太
    2020 年 56 巻 6 号 p. 554-555
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    ニュベクオ錠は、極性基を有するピラゾール環など、従来とは異なる特徴的な化学構造を有する非ステロイド性抗アンドロゲン剤である。また、非臨床薬物動態試験ではマウスにおいて脳内への移行性が低いことが示されている。本剤は、ハイリスクの非転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験において有効性と安全性が示された。我が国では、2020年1月に「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌」の効能・効果にて承認を取得し、2020年4月に薬価収載された。
最終講義
前キャリアが今に生きること
留学体験記 世界の薬学現場から
トピックス
  • 勝山 彬
    2020 年 56 巻 6 号 p. 562
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    β-分岐非天然アミノ酸は,β位の置換基の立体的影響により,ペプチドの配座制限が可能である上,構造の多様性に富むことから,ペプチドリガンドの設計において有用な構成要素である.その合成法の1つとして,配向基を利用したC(sp3)-H結合活性化反応による合成法が複数のグループにより研究されてきた.しかし,配向基の除去に過酷な反応条件を要するため,ペプチド合成への適用は制限されていた.今回Geyerらは,8-アミノキノリル(8-aminoquinolyl: 8AQ)基を配向基として用いたC(sp3)-H結合活性化によるβ-アリールトリプトファンの立体選択的合成,ならびに8AQから脱離基への変換を鍵とするペプチドとの直接的連結法を開発したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hruby V. J. et al., Biochem. J., 268, 249-262(1990).
    2) Reddy B. V. S. et al., Org. Lett., 8, 3391-3394(2006).
    3) Nicke L. et al., Chem. Sci., 10, 8634-8641(2019).
  • 太田 英介
    2020 年 56 巻 6 号 p. 563
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    ケージド化合物は光照射によって除去可能な保護基(photoremovable protecting group: PRPG)を持つ化合物の総称である.代表的なPRPGの中でも,クマリン誘導体は高いモル吸光係数と分解速度を示し,比較的長波長の光で除去可能である.またクマリン自身が蛍光分子であるため,反応過程を追跡可能な点も魅力的である.保護可能な官能基も幅広く,アルコール,アミン,チオール,ケトン,カルボン酸,リン酸などのケージド化合物が知られる.本稿では,クマリン誘導体が1,3-ジオールの保護に適用できることを示し,光照射によって生細胞内の2-アラドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol: 2-AG)量の調節に成功したSchultzらの成果を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Laguerre A. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 16544-16547(2019).
    2) Nadler A. et al., Nat. Commun., 6, 10056(2015).
    3) Höglinger D. et al., eLife, 4, e10616(2015).
    4) Lin W., Lawrence D. S., J. Org. Chem., 67, 2723-2726(2002).
  • 中野 扶佐子
    2020 年 56 巻 6 号 p. 564
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    生薬は天然の動植物を基原とするため,その生物種の同定は品質管理のために重要である.生物種の同定を行うための手法としては,従来,生物の指標成分をターゲットとした分析が主であったが,交雑種や近縁種との区別が困難な場合も多い.そこで近年,生薬含有成分の網羅的解析に基づくメタボロミクスの応用が試みられている.本稿では,ミカン属植物の果実や果皮を基原とする5種の生薬(キジツ,トウヒ,チンピ,キッピ,セイヒ)についてLC-MSとNMRを用いたメタボロミクスを行い,生薬の基原を特徴づける成分を同定するとともに,各分析手法の比較を行ったTsujimotoらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Tsujimoto T. et al., J. Nat. Prod., 82, 2116-2123(2019).
    2) Tsujimoto T. et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 161, 305-312(2018).
  • 郡 聡実
    2020 年 56 巻 6 号 p. 565
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    Proteolysis targeting chimeras(PROTACs)は,細胞内で不要になったタンパク質を分解するユビキチンプロテアソーム経路を利用し,標的タンパク質の分解を誘導する新しい技術である.E3リガーゼは標的となる分子と相互作用し,分解の目印となるユビキチンを標的分子に付加する.PROTACは,標的タンパク質結合リガンドとE3リガーゼ結合リガンドをリンカーで連結した二機能性分子である.分解の標的となるタンパク質とPROTAC,E3リガーゼの三者複合体の形成は,標的タンパク質を人為的にユビキチン化し,プロテアソーム経路で分解する.タンパク質の機能を阻害する従来の低分子薬の標的は,基質結合部位や活性部位を有するタンパク質のみであった.一方,PROTACは非機能的ドメインも分解できるため,疾患の原因となる全てのタンパク質を標的にできる.本稿では,クロマチンリモデリング因子BAF複合体を標的としたPROTACの設計について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Farnaby W. et al., Nat. Chem. Biol., 15, 672-680(2019).
    2) Soares P. et al., J. Med. Chem., 61,599-618(2018).
  • 福島 圭穣
    2020 年 56 巻 6 号 p. 566
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    ほとんどのがんは,何らかの不可逆的な遺伝子変異を経てがん化すると考えられている.大腸がんにおいては,KRASおよびBRAF遺伝子に発がん性の変異が高頻度で認められる.変異型のKRASやBRAFは,外部刺激なしにERKキナーゼ経路を活性化し,細胞増殖を促進させてがん化を促進させると考えられている.一方で,すべての大腸がん細胞で一様にERKが活性化しているわけではない.例えば,がん組織の中心部と外周部ではERKの活性化強度が異なるなど,その不均一性が指摘されていた.
    本稿では,近年注目されているシングルセル解析技術を用い,特定の細胞群でのみ,発がん性の変異型KRAS遺伝子がERKを活性化することを明らかにした報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cancer Genome Atlas Network, Nature, 487, 330-337(2012).
    2) Blaj C. et al., Cancer Res., 77, 1763-1774(2017).
    3) Brandt R. et al., Nat. Commun., 10, 2919(2019).
  • 兒玉 大介
    2020 年 56 巻 6 号 p. 567
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    恐怖や危機に遭遇した際に起こる心拍数や呼吸数の増加などを含む一連の生理的反応は「闘争・逃走反応」と呼ばれ,脊椎動物において高度に保存されている.これらの急性ストレス応答には交感神経系および糖質コルチコイドが関与することが古くから知られている一方,その他の因子については明らかではなかった.骨は,第一に体を形作る構造体であり,臓器を外傷から守り,素早い運動を可能にすることから,進化学的に危機を回避するために発達した器官であると捉えられる.さらに近年,骨が内分泌器官として様々な役割を持つことが示されたことから,危機に対する生理機能調節においても何らかの役割を持つ可能性が考えられる.本稿では,骨から分泌されるペプチドホルモンであるオステオカルシンの急性ストレス応答への関与についてBergerらの報告を元に紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Berger J. M. et al., Cell Metab., 30, 890-902. e8(2019).
    2) Khrimian L. et al., J. Exp. Med., 214, 2859-2873(2017).
    3) Mera P. et al., Cell Metab., 23, 1078-1092(2016).
  • 鶴田 佳保里
    2020 年 56 巻 6 号 p. 568
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    フェロトーシスは,鉄を介したフェントン反応による脂質酸化依存的な細胞死で,カスパーゼの活性化を介さない非アポトーシス経路の細胞死である.フェロトーシス誘導剤は,薬剤耐性転移がんへの新たな抗がん剤として注目されている.フェロトーシスは過酸化脂質を消去するグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPx4)によって抑制されるため,GPx4の阻害剤やグルタチオンの生成を抑制するシスチントランスポーターの阻害剤はフェロトーシス誘導剤である.しかし,GPx4阻害剤であるRSL3に耐性を示すがん細胞株が存在することから,GPx4以外にもフェロトーシスを抑制する遺伝子があると考え,DollらとBersukerらは,フェロトーシス抑制因子FSP(ferroptosis suppressor protein)の探索を行い,ともにユビキノン(CoQ)の還元を行うCoQ還元酵素を同定し,連報として報告されたのでまとめて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yang W. S. et al., Cell, 156, 317-331(2014).
    2) Doll S. et al., Nature, 575, 693-698(2019).
    3) Bersuker K. et al., Nature, 575, 688-692(2019).
  • 輿石 徹
    2020 年 56 巻 6 号 p. 569
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー
    肺がんの薬物療法において,中心的に使用されるシスプラチン(CDDP)は,強力な抗腫瘍効果と高い催吐性を有する抗がん剤である.化学療法誘発性悪心・嘔吐(chemotherapy - induced nausea and vomiting: CINV)は,患者の生活の質を著しく損なう有害事象である.しかし,CINVには中枢神経系の様々な受容体が関連しており,5HT3受容体拮抗薬,コルチコステロイド,ニューロキニン-1受容体拮抗薬を併用することで,よりよくコントロールできるようになった.
    一方,CDDPを使用した患者のほとんどが,これらの制吐療法を行っているにもかかわらず,食欲不振を経験しているとの報告がある.化学療法誘発性食欲不振(chemotherapy-induced anorexia: CIA)は,栄養を維持し,化学療法を完遂するために解決すべき重要な問題である.しかし現在の医療現場では,CIAを克服できる薬剤を持ち合わせていない.
    六君子湯は,上部消化管の症状を改善するために広く使用されている.六君子湯が,食欲刺激ホルモンであるグレリンの作用を増強することが,最近注目されており,グレリンを介しての食欲改善のメカニズムが明らかになってきた.
    本稿では,肺がん患者におけるCDDPを含む化学療法後のCIAに対する六君子湯の効果を検討した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ishikawa A. et al., Mol. Clin. Oncol., 1, 65-68(2013).
    2) Takeda H. et al., Curr. Pharm. Des., 18, 4827-4838(2012).
    3) Yoshiya T. et al., Invest. New Drugs, 38, 485-492(2019).
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