ファルマシア
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58 巻, 10 号
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目次
  • 2022 年 58 巻 10 号 p. 916-917
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:ハロゲン結合による分子活性化を駆動力とする反応開発
    ミニ特集にあたって:ハロゲン結合(XB)とは,ハロゲン原子が他の原子と結合した際に,結合の180度反対方向のハロゲン原子表面上に局所的に生じる正電荷(σホール)と,ルイス塩基との間に生じる非共有結合性相互作用である.方向依存性が強いハロゲン結合は,分子認識や自己凝集に利用されてきたが,近年ハロゲン結合供与体を取扱い容易なルイス酸として活用した有機分子触媒あるいは反応剤の開発が活発に展開されるようになってきた.そこで本ミニ特集では,この分野の第一線で活躍されている先生方に最近の研究成果をご紹介いただいた.
    表紙の説明:野義製薬本社ビル1階ロビーの展示コーナーでは,SHIONOGIの商標である「分銅」や「大福帳」のほか,二代塩野義三郎が収集した江戸~明治時代に作成された「絵びら」や「引き札」などが展示されている.これらは近代広告の先駆けで,歴史資料としての価値だけでなく美術品としても評価されている.
オピニオン
Editor's Eye
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
話題
最前線
最終講義
留学体験記 世界の薬学現場から
アメリカ薬学教育の現場から
  • 藤原 亮一
    2022 年 58 巻 10 号 p. 970-971
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    日本の薬学教育は6年制になってからは特にアメリカのものと似たものであると認識していたが、2019年に異動しアメリカの薬学教育に直接携わるようになってからと言うもの、筆者は日米間での薬学教育の違いを目の当たりにする日々が続いている。そこで本コラムでは、アメリカ薬学部にて教鞭をとる立場から、アメリカの薬学教育、日本での薬学教育との違い、またそれぞれの特色について筆者が感じ取ったことをシリーズで伝える。今号では前回に引き続き、定期試験について取り上げる。質の良い試験問題や定期試験の作り方、またそれらが求められる理由について紹介する。
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 安井 猛
    2022 年 58 巻 10 号 p. 974
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    アルケンは多様な化学変換の対象となる重要な官能基の1つであり,その導入や誘導化の例は枚挙に暇がない.なかでも,アルケンの位置異性化は原子効率が高く,多様なアルケンの合成や幅広い誘導化に寄与する魅力的な反応である.しかし内部アルケンから末端アルケンへの異性化は,熱力学的に不利なため直接的な変換は難しく,段階的な変換を余儀なくされていた.一方,近年目覚ましい発展を遂げている光駆動型反応では,E-アルケンからZ-アルケンへの異性化などの熱力学的に不利な反応が実現されている.今回Knowlesらによって,クロム触媒による内部アルケンから末端アルケンへの光駆動型異性化反応が報告されたので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Neveselý T. et al., Chem. Rev., 122, 2650–2694(2022).
    2) Zhao K., Knowles R. R., J. Am. Chem. Soc., 144, 137–144(2022).
    3) Omoto M. et al., Tetrahedron Lett., 42, 939–941(2001).
    4) Occhialini G. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 145–152(2022).
  • 喜多村 佳委
    2022 年 58 巻 10 号 p. 975
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    キメラ分子とは,主に1分子の中に2つ以上の異なるリガンド構造を有する分子の呼称であり,タンパク質分解誘導キメラ分子(Proteolysis targeting chimera: PROTAC)の発見によって注目を集めている.PROTACは基質タンパク質とE3リガーゼの近接を誘導し,基質タンパク質のユビキチン化と分解を起こす.このように,キメラ分子は生体分子の近接を誘導することで,従来の低分子化合物では実現困難な効果を狙って引き起こすことができ,薬効や基質選択性の観点でも優位な性質を示す.したがって,今後この概念のユビキチン化以外への拡張が期待される.翻訳後修飾の中でも,リン酸化は最も頻繁に見られ,キナーゼ阻害薬が数々の適応疾患で開発されてきたように,その制御の創薬における意義は大きい.本稿では,PROTAC研究で功名なCrewsらが報告した,リン酸化標的キメラ分子(Phosphorylation Targeting Chimera: PhosTAC)を用いたタンパク質脱リン酸化制御の技術検証について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chen P. -H. et al., ACS Chem. Biol., 16, 2808–2815(2021).
    2) Yamazoe S. et al., J. Med. Chem., 63, 2807–2813(2020).
    3) Zheng J. et al., Sig. Transduct. Target. Ther., 6, 269(2021).
  • 小沼 実香
    2022 年 58 巻 10 号 p. 976
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    根圏は植物の根から直接影響を受ける地下領域のことであり,様々な微生物(根圏微生物)が生息している.シロイヌナズナの根圏では,植物生育促進微生物が放出する揮発性有機化合物が,軟腐病に対する植物の全身抵抗性(induced systemic resistance: ISR)を誘発する.このことから,病害に対して有効な根圏微生物を解明し利用することは,植物栽培における病害のリスク回避と生産量増加に寄与し得ると考えられる.土壌伝染性真菌病原体Sclerotium rolfsiiは白絹病などの原因菌として知られ,生薬「附子」の原植物であるハナトリカブトに感染する.この菌は,温暖湿潤な環境下で茎基部の土壌に白い絹状の菌糸を形成し,ハナトリカブトの薬用部位である塊根の腐敗を引き起こす.現状,S. rolfsiiの防除には化学農薬が使用されているが,化学農薬に依存しない防除法の開発が望まれている.そこで本稿では,S. rolfsiiに感染したハナトリカブトの根圏微生物群に注目した研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Ryu C. -M. et al., Plant Physiol., 134, 1017–1026(2004).
    2) Li Y. et al., Biol. Control, 165, 104790(2022).
    3) Wang W. et al., PLoS One, 13, e0205891(2018).
  • 東浦 彰史
    2022 年 58 巻 10 号 p. 977
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    2019年に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックが我々の生活に大きな影響を与えていることはご承知のとおりであり,発生当初より変異ウイルスによる感染の波が幾度となく押し寄せている.2021年11月下旬に南アフリカで初めて確認されたオミクロン変異体は、感染に機能するスパイク(S)タンパク質にこれまでになく多くの変異が蓄積されていた.日本においても,本稿執筆時点(2022年4月)ではオミクロン変異体BA.1系統がBA.2系統へと置き換わりつつあり,未だ予断を許さない状況である.このパンデミックの渦中に,構造生物学のコミュニティはX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡単粒子構造解析の手法を駆使し,スパイクタンパク質の各種変異体を始め,抗体薬の主役となる各種抗体との複合体構造解析などに取り組み,立体構造情報を積み上げ続けている.本稿では,SARS-CoV-2のオミクロン変異体が示す広範な免疫回避の分子基盤を立体構造解析より解明したMcCallumとCzudnochowskiらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) McCallum M., Czudnochowski N. et al., Science, 375, 864-868(2022).
  • 色川 隼人
    2022 年 58 巻 10 号 p. 978
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    がん化した細胞は,腫瘍形成過程において酸素の有無にかかわらず好気呼吸に対する解糖系の活性比が大きいという特徴を持ち,発見者の名前からワールブルグ効果と呼ばれる.近年,この現象を標的とした新たながん治療戦略を確立するために,解糖系酵素群の解析が盛んに行われている.代謝反応は複数のタンパク質が関与する連続した酵素反応であり,いくつかの代謝酵素同士が結合して,代謝を行うことがわかっており,
    この代謝酵素の集合体は‘metabolon’と呼ばれ,その存在が1970年代から提唱されている. Metabolonは酵素同士の非共有結合による集合体で,主にタンパク質―タンパク質間相互作用が関与すると考えられてきた.本稿では,長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が解糖系酵素群のmetabolon形成の足場になることを報告した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Clarke F. M., Masters C. J., Biochim. Biophys. Acta, 381, 37–46(1975).
    2) Zhu Y. et al., Molecular Cell, 82, 542–554 (2022).
    3) Iyer M. et al., Nat. Genet., 47, 199–208 (2015).
  • 髙羽 里佳
    2022 年 58 巻 10 号 p. 979
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    最近の報告から,マジックマッシュルームに含まれる幻覚成分であるシロシビンを治療抵抗性うつ病患者に投与したところ,2回の投与で,投与1週間後に患者の抑うつ症状が減少し,この作用は6か月間持続したことから,シロシビンが即効かつ持続的な抗うつ作用を有することが明らかとなった.その結果は,その後の臨床研究からも支持され,アメリカ食品医薬品局は,シロシビンがうつ病の画期的治療薬に成り得ると報告した.シロシビンをはじめとしたセロトニン作動性の幻覚薬が,うつ病のみならずアルコール依存症,不安障害,心的外傷後ストレス障害などに治療効果を示すとして,徐々に注目されはじめている.しかしながら,これらの薬物は,大脳皮質のセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2AR)を刺激することにより,幻覚作用も誘発してしまうことがわかっている ため,治療薬としての応用には課題がある.本稿では,Gタンパク質共役型受容体の結晶構造を活用したリガンド探索により,マウスにおいて幻覚作用を示さずに,抗うつ様作用を示すリガンドの合成に成功したことを報告したCaoらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Carhart-Harris R. L. et al., Lancet Psychiatry, 3, 619-627(2016).
    2) U. S. FOOD & DRUG. Breakthrough therapy, 2019年1月4日.
    3) Michaiel A. M. et al., Cell Rep., 26, 3475-3483(2019).
    4) Cao D. et al., Science, 375, 403-411(2022).
    5) Thomas E. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 94, 14115-14119(1997).
  • 澤井 円香
    2022 年 58 巻 10 号 p. 980
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は,グリシンを除いて,D体およびL体の光学異性体が存在する.生体においては,L-アミノ酸がタンパク質合成の材料として,生命活動に利用されていると長年考えられてきた.D-アミノ酸により構成されるペプチドは,L-アミノ酸で構成されたものに比べプロテアーゼによる分解を受けにくいことが知られている.加齢に伴い,タンパク質を構成するL-アミノ酸はD-アミノ酸へ変化する.近年の研究により,このように変化したタンパク質は臓器へ蓄積し,アルツハイマー型認知症(AD)や白内障などの発症に関与することが明らかとなった. 一方,D-アミノ酸により構成されるペプチドは,その安定性に加え,高い生物活性や血液脳関門透過性も認められ,新たな創薬のターゲットとして期待されている.このように,ペプチド中のD-アミノ酸は疾患の発症に関与する場合もあるが,一部のD-アミノ酸ペプチドは治療を促進する可能性があるため,D-アミノ酸の特性を詳細に解析し,評価する必要がある.本稿では,ADの病態に関与するタウタンパク質(Tau)に対し,D-アミノ酸ペプチドが与える効果を報告したAillaudらの研究成果について紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Mohamed A. et al., Biomolecules, 11, 1716(2021).
    2) Zhou Y. et al., Adv. Healthc. Mater., 10, 2100980(2021).
    3) Aillaud I. et al., Alzheimers Res. Ther., 14, 15(2022).
    4) Neumann M. et al., Expert Rev. Mol. Med., 11, e23(2009).
  • 上原 有貴
    2022 年 58 巻 10 号 p. 981
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    持続的腎代替療法(CRRT)を受けている患者は,その施行中に抗凝固療法を行う必要がある.Kidney disease: improving global outcomes(KDIGO)ガイドラインでは,CRRTを受ける際の抗凝固療法においては,血液凝固カスケードの重要な補因子であるカルシウムイオン(Ca2+)をキレートし,抗凝固作用を示すと考えられるクエン酸が第一選択である.
    クエン酸は肝臓で分解されるため,肝機能が低下する急性肝不全(ALF),慢性肝不全の急性増悪 (ACLF)では代謝が低下し,クエン酸中毒になる可能性がある.クエン酸中毒は,しびれや手指筋の攣縮,けいれんの出現,まれに意識消失に至る.これまでCRRT療法施行下でのクエン酸クリアランスは算出されているが,ALFやACLF患者でのクエン酸動態に関する研究は行われていない.本稿では,CRRTを必要とする重症肝不全患者に対するクエン酸動態を評価した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kellum J. A. et al., Kidney Int. Suppl., 2, 1–138(2012).
    2) Thanapongsatorn P. et al., Sci. Rep., 12, 1815(2022).
資料
追悼
  • 江口 正
    2022 年 58 巻 10 号 p. 972
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    恩師池川信夫先生におかれましては、当年 5 月12 日にご逝去されました。衷心よりお悔み申し上げます。
    池川先生は東京大学応用微生物研究所助手、理研副主任、東京工業大学教授,いわき明星大学教授,新潟薬科大学学長等の要職を歴任されるとともに多大な研究業績を残されました。先生は微量分析並びに天然物化学分野で多くの研究業績を上げておられ、特にステロイドの分野では世界的権威者で、天然ステロイドの構造決定並びに合成、昆虫のステロイド代謝、活性型ビタミンD構造研究と合成、植物生長ホルモンの合成等が有名であります。これらの業績に対して,昭和53年第1回佐藤記念国内賞、昭和56年日本薬学会賞(学術賞)、昭和 57 年Tswett Chromatography賞受賞、平成3年島津賞等の数々の賞を受賞されております。このように,先生は生涯を学者としてのみならず,大学・学会の運営にも真に大きな貢献をなされ,平成11年薬学会功労賞を受賞され、平成14年には、勲三等旭日中綬章の栄に浴されました。
    先生はいつも快活で明るく,周囲の人々を引きつけるお人柄で、教職員、学生に慕われていました。そのため先生の周りには自然と人が集まり、その生涯を通して研究の楽しさを門下生だけでなく、多くの人に伝えてこられました。先生を囲んでの池川研同窓会での先生の楽しそうなお顔が、今になってまた思い起こされます。あの温顔にもう接することができないのは、残念至極です。先生のご冥福を心からお祈りする次第である。
追悼
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談話室
  • 太田 茂
    2022 年 58 巻 10 号 p. 989_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    最近いわゆる「評価」という仕事が多くなって来ている。長年にわたって評価される側の大変さを実感してきた私としては「評価」の仕事が来た時はできるだけ断らないようにしようと思っている。評価される側の立場としてはそれぞれ大変な思いで申請書などを作成していることは重々承知しているつもりなので気が抜けない仕事である。
    評価という仕事をしている際に気になる点を挙げて、日頃感じていることを述べている。
最近の新刊書から
新刊紹介
日本薬学会(および医薬化学部会)入会申込書
次号掲載予告
正誤表
日本薬学会第143年会(札幌)一般学術発表申込要領
編集後記
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