ファルマシア
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55 巻 , 7 号
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目次
  • 2019 年 55 巻 7 号 p. 636-637
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    特集:天然物化学研究の新展開
    特集にあたって:微生物や植物などから得られる天然物は,現在においても医薬品として使われるとともに,新たな有用化合物の宝庫である.近年,天然物化学の研究は,ゲノム情報などの活用や理論計算などから生合成経路がより詳細に明らかにされてきている.さらには,新たな生合成系の構築による非天然型の機能性分子の創出や,細胞内の一次代謝系と二次代謝系とのクロストーク制御などによる大量生産系の構築などの応用展開も実現可能となってきている.本特集号では,天然物化学の世界について最前線を走っている先生方にご執筆をいただいた.
    表紙の説明:近年,有機化学,構造生物学,植物学・微生物学,遺伝子工学,生合成工学などの知識や技術を有する研究者が相互に交流しつつ,天然物化学研究を推し進め,新たな展開をみせている.創薬シード化合物のライブラリー構築や,医薬品や香粧品原料の安定生産,新規有用物質の創出などへと応用展開されており,我が国の薬学や医療の発展にも大きく貢献すると期待される.
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FYI(用語解説)
  • 阿部 郁朗
    2019 年 55 巻 7 号 p. 689_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    合成生物学Synthetic Biologyとは,バイオテクノロジー,遺伝子工学,システム生物学など,幅広い研究領域を統合して,DNAやタンパク質などの生体構成物質を目的に応じて人工的に改変し,それらを組み合わせて人工生体システムを構築することにより,生命を全体的に理解しようとする学問である.細胞をプログラミングして,再生可能な資源から大量のバイオ燃料を生産したり,抗マラリア薬や抗がん剤,モルヒネなどの天然薬物を,遺伝子操作した微生物を生産工場として,大量醗酵生産させる試みなどが現在世界中で盛んに行われている.
  • 山崎 真巳
    2019 年 55 巻 7 号 p. 689_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    技術的特異点(シンギュラリティ)とは,未来学と呼ばれる社会科学分野で使われるようになった用語で,ある技術が指数関数的に高度化することによって,それまでの概念が覆されるような転換点をいう.例えば,AIが進歩して人間の能力を上回るような転換点がまもなく来るであろうと予測されることなどである.ライフサイエンス領域においては,高速シークエンスの技術が近年急速に進歩し,ゲノムサイエンスの概念が飛躍的に発展し転換期を迎えつつある現在の状況についてシンギュラリティという言葉が使われる.
  • 渡辺 賢二
    2019 年 55 巻 7 号 p. 689_3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    ある1種類の二次代謝産物において,その化合物のほぼ全てを生合成する複数の酵素が染色体上の1か所に集合してコードされている領域.複雑な化学構造を有する抗生物質などに至っては,20〜30種類の酵素群が1か所に集合してコードされ,その領域が50kbpを超えるものも多数存在する.一方で,タキソールなどの植物由来の天然物では遺伝子クラスターを構成することなく生合成酵素が染色体上に散逸してコードされている場合も知られている.
  • 白石 太郎, 葛山 智久
    2019 年 55 巻 7 号 p. 689_4
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    ゲノム情報を基に新しい天然化合物(二次代謝産物)を探索する手法の1つである.ゲノム情報を宝の山に見立て,それを採掘する(mine),つまり解析することで新しい天然化合物を発見することを意図している.機能が明らかにされている既知遺伝子の配列との相同性を頼りにして,生産される天然化合物の構造予測が可能になってきている.一方で,ゲノム解析から見いだされた生合成遺伝子クラスターの強制発現やその転写の活性化によって,実際に新しい天然化合物を取得する研究も行われている.斎藤和季,“より根源へ:ゲノムマイニングのすすめ”,ファルマシア Vol. 45, No. 9, 849, 2009も参照.
新薬のプロフィル
くすりの博物館をゆく
  • 池田 幸弘
    2019 年 55 巻 7 号 p. 692-693
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    二度目の滋賀県への取材になる.奈良,富山とともに伝統薬の3大産地の1つであることもあり,本稿に取り上げたい話題はまだまだありそうである.近江八幡から初めて近江鉄道に乗り込む.八日市をハブとして,近江八幡,米原,貴生川を結ぶ総路線距離60km程度のローカル鉄道である.地方の鉄道事業は全国いずこも厳しく,本鉄道も例外ではない.現在は西武グループの子会社として存続しているが,創業時から既に経営は苦しかったようで,「上り列車は『借金借金』と走り,下り列車は『足らん足らん』と走る」と,経営状況を揶揄するとんでもない歌まで残されてしまっている.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
トピックス
  • 山口 繭美
    2019 年 55 巻 7 号 p. 698
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    創薬研究で網羅的に誘導体を合成するには,効率的に多様性を生み出す合成手法が必要である.合成終盤におけるC-H官能基化はその典型であるものの,既存の分子骨格そのものを改変することは難しい.こうした状況に鑑み,C-C単結合などの強固な結合を切断し,分子骨格を作り変える手法が着目されている.本稿では,Sarpongらが報告した環状アミン誘導体のC-NおよびC-C結合切断を伴う分子骨格変換法を紹介したい.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Roque J. B. et al., Nature, 564, 244-248(2018).
    2) Roque J. B. et al., Science, 361, 171-174(2018).
    3) Andresen J. M., Kochi J. K., J. Am. Chem. Soc., 92, 1651-1659(1970).
    4) Edwards J. O., Gallopo A. R., J. Org. Chem., 36, 4086-4096(1971).
  • 戸谷 博希
    2019 年 55 巻 7 号 p. 699
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    RNAは遺伝情報の伝達やタンパク質合成に関わる生命に必須の分子であり,多くの疾患に関与している.4種類の核酸塩基とリボース,リン酸基から構成されており,電荷および親水性が大きいため,タンパク質とは物理化学的な性質が大きく異なる.そのため従来のタンパク質を標的とした低分子創薬の手法で,RNAの標的部位に特異的に相互作用可能な低分子化合物を創出するのは困難であると考えられていた.そのようななか,DalesらはmRNAに作用する脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)治療薬ブラナプラム(1)を報告したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dales N. A. et al., J. Med. Chem., 61, 11021-11036(2018).
    2) Sivasankaran R. et al., Nat. Chem. Biol., 11, 511-517(2015).
  • 尾崎 葵
    2019 年 55 巻 7 号 p. 700
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    ウメ(Prunus mume)の果実は昔から体に良い食材としてアジア諸国で利用されており,有益な生理活性が数多く知られている.例えば,ジャムや梅肉エキスなどに含まれるムメフラールは,梅を加熱した際に糖とクエン酸が反応して生じる物質であり,血小板凝集抑制作用により血流を改善することから,脳梗塞や心筋梗塞など心血管疾患への予防効果が期待されている.また,梅エキスに含まれるオレアノール酸などのトリテルぺノイドが抗酸化作用や抗炎症作用を持つことも報告されている.本稿では,喫煙によるDNA損傷の修復が期待される梅エキスの新規有用物質の単離とその作用機序解析を行ったAndrewらの研究成果について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 忠田吉弘ほか,ヘモレオロジー研究会誌,1, 65-68(1998).
    2) Kawahara K. et al., Int. J. Mol. Med., 23, 615-620(2009).
    3) Andrew J. et al., Sci. Rep., 8, 11504(2018).
    4) Hwang J. et al., Korean J. Food Sci. Technol., 36, 329-332(2004).
  • 堀越 直樹
    2019 年 55 巻 7 号 p. 701
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    2014年に西アフリカで驚異的なエボラウイルスの感染拡大が報告されたのは記憶に新しい.エボラウイルス(Ebola virus: EBOV)の感染による致死率は50%前後と極めて高く,治療法の確立が急務である.EBOVに対する創薬研究を行うためには,ウイルスの感染や宿主内での増殖の分子機構を理解することが非常に重要である.本稿では,エボラウイルスと宿主のタンパク質間相互作用ネットワークを網羅的に解析し,エボラウイルスに対する創薬研究に向けて重要な知見を与えたBatraらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Batra J. et al., Cell, 175, 1919-1930(2018).
    2) García-Dorival I. et al., J. Proteome Res., 15, 4290-4303(2016).
    3) García-Dorival I. et al., J. Proteome Res., 13, 5120-5135(2014).
    4) Yamayoshi S. et al., Cell Host Microbe, 3, 168-177(2008).
  • 近藤 慎吾
    2019 年 55 巻 7 号 p. 702
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    血液がんに対する化学療法に用いられるメトトレキサートは,ジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase: DHFR)を阻害して,ヌクレオチド合成に必要なテトラヒドロ葉酸(tetrahydrofolate: THF)を枯渇させ,DNAとRNAの合成を抑制することにより細胞死を誘導する.メトトレキサートの副作用症状には,嘔吐,腎障害,肝障害や間質性肺炎などがあり,重症化によって治療中断を余儀なくされることもある.本稿では,メトトレキサートの治療効果の増大につながる因子としてアミノ酸のヒスチジンが関与していることを明らかにした研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Hitchings G. H. et al., Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol Biol., 27, 417-468(1965).
    2) Howard S. C. et al., Oncologist., 12, 1471-1482(2016).
    3) Kanarek N. et al., Nature, 559, 632-636(2018).
  • 篠原 広志
    2019 年 55 巻 7 号 p. 703
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    ダウン症候群は約700人に1人の割合で発症する遺伝子疾患である.症状として精神発達遅滞,筋緊張低下,頭部顔面異常,成長障害,心疾患などが認められる.原因は21番染色体が通常より1本多い3本になること,いわゆる21トリソミーである.また,21トリソミーはダウン症候群のみならず,繊毛関連疾患を引き起こすことが知られている.繊毛関連疾患では,細胞の増殖・分化,四肢発生,幹細胞の維持に関与するソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog: Shh)の変異によりShhシグナル伝達に破綻が生じることで,心臓・骨格系・脳に異常が認められる.ダウン症候群でShhシグナルの低下が認められる知見もあるが,ダウン症候群でのShhシグナル伝達破綻と1次繊毛形成不全との関連性については不明であった.
    本稿では,21トリソミーに起因した遺伝子異常により,中心体およびそれを基盤とした1次繊毛の形成が阻害され,Shhシグナル伝達破綻およびダウン症候群の発症につながることを示したGalatiらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Galati D. F. et al., Dev. Cell, 46, 641-650(2018).
    2) Currier D. G. et al., Prog. Brain Res., 197, 223-236(2012).
    3) Nguyen T. L. et al., Dis. Model. Mech., 11, doi:10. 1242/dmm.035634(2018).
  • 鵜木 隆光
    2019 年 55 巻 7 号 p. 704
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    我が国はメチル水銀曝露による公害として水俣病を経験し,大きな傷跡を残した.現代においても産業活動や自然活動由来の無機水銀が環境中にて微生物の活動を経てメチル水銀へと変換され,生物濃縮を介し魚介類へと蓄積される.我々は日常的にその魚介類を摂取することから,特にメチル水銀に高感受性を示す胎生期・新生児期の曝露影響を含め,その健康影響は世界的な懸念事項である.したがって水銀の化学形態を問わず,その環境中への排出抑制が肝要であり,2017年には国際的な水銀管理を目指し「水銀に関する水俣条約」が発効された.このような情勢のなか,2018年末にトランプ政権下のアメリカ合衆国環境保護庁が化石燃料発電所からの水銀排出規制を撤廃する方針を示したことは大きな波紋を呼んでいるが,その根底にはコスト問題がのしかかっている.したがって水銀回収技術には,高効率かつ再利用可能であり環境負荷の少ない「グリーン」さが求められるが,従前の方法はこれらの点において様々な問題を抱えている.本稿ではTunsuらによる水中からの優れた水銀除去法を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Sheehan M. C. et al., Bull. World Health Organ., 92, 254-269F(2014).
    2) Rodríguez O. et al., J. Environ Manage., 101, 197-205(2012).
    3) Tunsu C., Wickman B., Nat. Commun., 9, 4876(2018).
  • 岡田 信人
    2019 年 55 巻 7 号 p. 705
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    錠剤は,内服固形製剤において最も繁用される剤形の1つである.錠剤は,有効成分を示す原薬をはじめ,賦形剤や崩壊剤などの添加剤から構成される粉体を打錠することででき上がる.しかし,打錠工程において,錠剤品質に影響を及ぼす問題が生じることがある.これらの現象は打錠障害と呼ばれている.打錠障害には,錠剤の上面が帽子状に剥離するキャッピング,錠剤の側面に傷が付くバインディング,錠剤表面に傷が付くスティッキング等があり,錠剤に傷や曇り,刻印の欠損,識別性等,錠剤外観を損なうだけではなく,主薬の含量均一性にも影響を及ぼすと考えられている.これらの打錠障害を防ぐため,添加剤の1つである滑沢剤が添加されている.
    滑沢剤は打錠時に,錠剤と杵臼との摩擦を減少させ,打錠障害を防ぐことができる.滑沢剤には,様々な種類があり,滑沢効果が優れるステアリン酸マグネシウム(MgSt)が,医薬品分野において最も一般的に使用されているが,添加することで,錠剤硬度の低下や崩壊時間の延長,溶出の遅延など製剤物性に望ましくない影響を及ぼすことが知られている.
    本稿では,界面活性剤として使用されているラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が滑沢剤として打錠時の摩擦を効果的に低下させた事例について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Xiaorong H. et al., J. Pharm. Sci., 96, 1342-1355(2007).
    2) Billany M., Richards J., Drug Dev. Ind. Pharm., 8, 497-511(1982).
    3) Jiangnan D. et al., Int. J. Pharm., 552, 139-147(2018).
    4) Sun C. C., J. Adhes. Sci. Technol., 25, 483-499(2011).
追悼
  • 内林 政夫
    2019 年 55 巻 7 号 p. 706
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    米国コロンビア大学のギルバート・ストーク名誉教授が2017年10月21日に逝去され,追悼シンポジウムが2018年10月20日に同大学で開催された.ストーク教授は生涯にわたって天然化合物の立体特異的全合成の研究論文を多数発表されたが,その最後になる論文『(±)-ジャーミン全合成に向けて:(±)-4-メチレンジャーミンの合成』が逝去の1か月前の9月6日の米国化学会『Organic Letters』誌に掲載された.その報文の参考文献の欄に科学論文としては異例の著者の個人的コメントが加えられていて目をひいた.
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談話室
  • 坂本 謙司
    2019 年 55 巻 7 号 p. 711_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル 認証あり
    昨年末,青春18きっぷを使って東北地方を旅した.その際,東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸地方を34年ぶりに訪れた.津波により浸水した場所を示す多数の道路標識や,流されて更地のようになってしまった駅の跡地を目の当たりにし,想像を越えた被害の甚大さに足が震えた.今回の旅により,自分の身近で災害が起きる可能性を常に意識し,もしもの時にどのように行動すべきなのか議論することも,我々薬学部の教員にとって重要であることを再認識させられた.
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