錠剤は,内服固形製剤において最も繁用される剤形の1つである.錠剤は,有効成分を示す原薬をはじめ,賦形剤や崩壊剤などの添加剤から構成される粉体を打錠することででき上がる.しかし,打錠工程において,錠剤品質に影響を及ぼす問題が生じることがある.これらの現象は打錠障害と呼ばれている.打錠障害には,錠剤の上面が帽子状に剥離するキャッピング,錠剤の側面に傷が付くバインディング,錠剤表面に傷が付くスティッキング等があり,錠剤に傷や曇り,刻印の欠損,識別性等,錠剤外観を損なうだけではなく,主薬の含量均一性にも影響を及ぼすと考えられている.これらの打錠障害を防ぐため,添加剤の1つである滑沢剤が添加されている.
滑沢剤は打錠時に,錠剤と杵臼との摩擦を減少させ,打錠障害を防ぐことができる.滑沢剤には,様々な種類があり,滑沢効果が優れるステアリン酸マグネシウム(MgSt)が,医薬品分野において最も一般的に使用されているが,添加することで,錠剤硬度の低下や崩壊時間の延長,溶出の遅延など製剤物性に望ましくない影響を及ぼすことが知られている.
本稿では,界面活性剤として使用されているラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が滑沢剤として打錠時の摩擦を効果的に低下させた事例について紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Xiaorong H.
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96, 1342-1355(2007).
2) Billany M., Richards J.,
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3) Jiangnan D.
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552, 139-147(2018).
4) Sun C. C.,
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