ファルマシア
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54 巻, 4 号
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目次/ミニ特集にあたって/表紙の説明
  • 2018 年 54 巻 4 号 p. 286-287
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:これからどうなる?バイオシミラー
    ミニ特集にあたって:薬価の根本的見直し,新薬創出加算制度の廃止に対する強硬なコメントなど,製薬業界にとっては逆風の吹く今日この頃である.バイオ医薬は成功確率が高いが,標的分子を発見・導入するには多額の資金が必要である.後発品普及施策とも相まって,日本でもバイオシミラーの開発が活発化してきており,2016年にはバイオシミラー協議会が設立された.しかしながら,バイオシミラーに関する一般の認知度は未だ低い.また,オリジナルなバイオ医薬を有する企業が,オーソライズド・バイオ医薬の検討も始めている.まだまだ混沌としたバイオシミラーは,今後どうなっていくのか様々な角度から思索してみたい.
    表紙の説明:『本草品彙精要』全42巻は中国の弘治18年(1505)に皇帝の命を受けて編纂された明代唯一かつ中国最後の勅撰本草である.生薬図は当時の宮廷画家の手で極彩色で描かれた.原本は完成後,長い間秘蔵され,現在は武田科学振興財団杏雨書屋に所蔵されている.掲示の図は,巻10にある麻黄と,巻30にある河豚の図.我が国近代薬学の父・長井長義は1885年麻黄からエフェドリンを抽出した.長井と親交があり,日本初の薬学博士となった田原良純(1855~1935)は1907年河豚からテトロドトキシンを単離,命名し,薬理と鎮痛効果を明らかにした.
オピニオン
Editor's Eye
会頭インタビュー
ミニ特集 セミナー
  • 柴田 寛子, 木吉 真人
    2018 年 54 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    欧州で初めてソマトロピンのバイオシミラーが承認されてから10年以上が経過し、日本においても承認申請等に関する一連の通知と申請区分が設置されてから9年が経過しようとしている。この間に、日本では6品目の先行品に対するバイオシミラーが承認されている(H29年12月時点)。世界的な医療費削減に向けた動きと、ブロックバスターと呼ばれる大型バイオ医薬品の特許が切れることから、今後、バイオシミラー産業はより活発になると予想されている。一方で、ジェネリック医薬品と比べると、その普及は進んでいないのが現状である。本稿では、バイオシミラーの品質・有効性・安全性の確保について概説するとともに、国際的な開発状況を含むバイオシミラーの現状と、今後の使用促進に向けた課題についても考えてみたい。
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 話題
  • 後発医薬品の使用推進状況と比較して
    鎌田 泉
    2018 年 54 巻 4 号 p. 316-318
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    政府が掲げる「後発医薬品(GE)使用促進のためのロードマップ」は、GE使用数量割合で目標設定されたが、目標が前倒しで達成間近といえよう。大学病院等なかなか進まなかったGE導入が飛躍的に進んだのは、包括医療費支払い制度 (DPC制度)における後発医薬品係数の新設が契機である。一方で医薬品費用節減効果の高いバイオ後続品(BS)については、GEと異なり大きな進展が見られない。GE導入に苦慮した経験も交え、医療機関におけるBSの課題を考察した。
ミニ特集 話題
ミニ特集 話題
  • 黒川 達夫
    2018 年 54 巻 4 号 p. 322-324
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    バイオシミラー(医薬品)の正式な呼称はバイオ後続品である.日本でのバイオシミラーの市場規模は推定200億円に満たず,また現在承認されているバイオシミラーは11品目しかないが,一方で医療や医薬品産業への貢献が期待されている.
    2016年4月にバイオシミラー協議会が設立され,一連の活動が展開されているなか,同協議会とその前身のバイオシミラーフォーラムの活動経緯などから,バイオシミラーを取り巻く環境と将来を考察する.なお本稿では,定着していると思われる「バイオシミラー」をバイオ後発品と同義に用いている.
ミニ特集 話題
  • バイオシミラーのより良い理解のために
    本田 真也
    2018 年 54 巻 4 号 p. 325-329
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    抗体医薬品をはじめとするバイオ医薬品は、化学合成医薬品と多くの点で異なる。なかでも、生物を利用して生産されることと、不安定な巨大高分子で複雑な構造であることの2点は本質的な違いである。バイオ医薬品の製造と品質管理に関しては、化学合成医薬品とは全く異なる専門的な知識と先進的な技術が不可欠であり、別次元の環境と体制の整備を製造業者に強いている現況があるが、これらは上記の本質的相違に因るものである。本稿では、主に抗体医薬品を例にとって、バイオ医薬品の製造と品質管理に関する基本的事項を概説する。
話題
最前線
FYI(用語解説)
  • 柴田 寛子, 木吉 真人
    2018 年 54 巻 4 号 p. 339_1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    公的な文書等において定義されていないが,一般的に互換性とは,同じ臨床効果が期待される他の医薬品へ交換できることを,代替調剤とは,保険薬局において,処方医に事前確認することなく,別の同等もしくは互換性のある医薬品を調剤する行為を意味する.バイオシミラーの互換性については,FDAガイドライン等で使われ始めた用語で,FDAでは“interchangeable product”は代替調剤が可能であろうと考えられているが,本文中で紹介した文献の“interchangeability”は「医師主導もしくは医師同意のもと」と限定されており,世界的に統一されていない.
  • 荒戸 照世
    2018 年 54 巻 4 号 p. 339_2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    被験薬の有効性が実対照薬に比較して劣らないことを示すための試験のこと.実対照薬の効果が一般的であり,同様の効果が強く求められる場合や,プラセボ対照試験が困難な場合に計画される.非劣性の許容限界は,臨床的に許容できると判断し得る最大の差であり,過去に実対照薬の有効性を立証した優越性試験において観察された差よりも小さいものであるべきとされている.被験薬の有効性がプラセボあるいは実対照薬よりも優れていることを示す優越性試験や,後発医薬品の生物学的同等性を検証する同等性試験とは試験デザインが異なる.
  • 鎌田 泉
    2018 年 54 巻 4 号 p. 339_3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    DPCとは診断群分類(diagnosis procedure combination)のことであるが,一般に「DPC=包括医療」と認識されている.DPC制度は「診療報酬を均一にすることで,無駄な入院日数や薬品等の材料費の節減が病院経営に資するようにする」と概説できる.実際には,業務内容や看護体制等の評価(機能評価係数)が包括点数に乗じられ,施設間格差が生じる.2014年度改定で,機能評価係数Ⅱに後発医薬品への置換割合を数量%で評価してインセンティブを与える後発医薬品係数が加わった.DPC病院の大半が政府目標(当初60%,2017年70%)に到達したことから,2018年度改定で本係数は廃止され,機能評価係数Ⅰ(後発医薬品使用体制加算)での評価に置き換わることが決まっている.
  • 西辻 和親, 内村 健治
    2018 年 54 巻 4 号 p. 339_4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    アミロイド線維は通常1,000を超える繰り返し構造を含み,各繰り返し構造は線維軸に対して垂直に積み重なったβストランドが形成する2つのβシートの層から成るクロスβ構造をとる.アミロイド線維にX線を線維軸に対し垂直に入射すると,クロスβの線維回折パターン,すなわち,各βストランド間の距離に対応する子午線上の4.8Åの反射,およびβシート間の距離に対応する赤道線上の6〜12Å(この距離はアミロイド前駆体タンパク質の種類に依存する)の反射を示す.クロスβ構造は,タンパク質の種類によらずアミロイド線維に共通する特徴的な構造であり,1935年にAstburyらにより初めて報告された.
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2018 年 54 巻 4 号 p. 343
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,平成30年1月19日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
医療現場につながる基礎科学
留学体験記 世界の薬学現場から
創薬研究から製品化へのマネジメント・モデル
トピックス
  • 服部 倫弘
    2018 年 54 巻 4 号 p. 351
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化アルキルを基質とした金属触媒的な炭素-炭素(C-C)結合形成反応は,複雑な分子を構築するために重要な方法論であるが,一般にハロゲンで官能基化された位置などで特異的に反応が進行する.最近Martinらは,二酸化炭素存在下,臭化アルキルの臭素置換部から遠隔位に存在する末端炭素にてカルボキシル化を進行させる手法の開発に成功したので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Juliá-Hernández F. et al., Nature, 545, 84-88(2017).
    2) Mei T. -S. et al., Nature, 508, 340-344(2014).
  • 髙野 智史
    2018 年 54 巻 4 号 p. 352
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    光や超音波などの外部刺激で分子を活性化する治療法において,分子の局在の可視化による刺激位置・時間の制御は,高い薬効の発現と副作用の低減につながる.
    そのため近年,刺激応答治療とイメージングを一体化したセラノスティクス(theranostics:therapeutics+diagnostics)プローブの研究が盛んである.しかし,既存のセラノスティクスプローブのシグナル活性化は非可逆的で,“常時オン”となったシグナルはバックグラウンド蛍光となり,感度低下や偽陽性の原因となる.Zhaoらは可逆的に活性化する新規プローブ1(図1)を開発し,in vivo精密イメージングと効果的な刺激応答治療を報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Zhao X. et al., Nat. Commun., online. 8, 14998(2017).
    2) Zhao X. et al., Chem. Commun., 51, 11721-11724(2015).
  • 白畑 辰弥
    2018 年 54 巻 4 号 p. 353
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    天然有機化合物の成分研究は,液-液分配や各種クロマトグラフィーを組み合わせ,いわゆる「ものとり」により単一の化合物へ導き,MS,NMR等の分析機器を用いてその化学構造を特定する.この過程では単離後に新規化合物か既知化合物かが判明するため,新規化合物の発見に至るまでに時間と労力のロスが生じる.近年,MSの技術革新とデータベース整備によって天然物の混合物から単離操作なしに化合物の同定が可能となり,新規化合物か既知化合物かの判断(dereplication)が迅速となった.今回,BakiriらはMSの代替手法として13C-NMRを利用し,植物抽出エキスから直接的に化合物の同定を行ったので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Dorrestein P. C. et al., Nat. Biotechnol., 34, 828-837(2016).
    2) Bakiri A. et al., J. Nat. Prod., 80, 1387-1396(2017).
    3) Hubert J. et al., Anal. Chem., 86, 2955-2962(2014).
  • 坂本 達弥
    2018 年 54 巻 4 号 p. 354
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    近年,オミクスという分野の研究が盛んに行われている.オミクスとは生体中に存在する分子全体を網羅的に研究する学問分野であり,低分子代謝物を対象とする場合はメタボロミクスと呼ばれる.メタボロミクス研究は,その網羅性から疾患関連分子の探索や,疾患の診断マーカーの探索研究など広い分野で有用である.オミクス研究の進展には,質量分析計など分析機器の性能の向上が大きく寄与している.特に液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)は成分の分離,定性・定量を一度に行うことのできる高い汎用性から広く活用されている.LC/MSは,試料成分を様々な方法でイオン化させ,一般的にプロトン付加体として検出する.そのためプロトン化されにくい分子の検出が困難であること,他成分の共存によりイオン化の程度が変動し再現性不良を招く場合があることが問題として挙げられる.
    本稿では,Shuangらにより報告された感度,精度の向上を目指した誘導体化メタボローム分析法について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Shuang Z. et al., Anal. Chem., 89, 6758-6765(2017).
    2) Sforza S. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 44, 5126-5130(2005).
  • 藤井 拓人
    2018 年 54 巻 4 号 p. 355
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    ヒトは,甘味,苦味,酸味,塩味,うま味の5種類の味を,舌の味蕾に存在する味覚受容体で感じとる.甘味,うま味および苦味の受容体は,Gタンパク質共役型受容体である.興味深いことに,甘味やうま味の受容体(TAS1Rs)はそれぞれ1種類しか同定されていないが,苦味受容体(TAS2Rs)は,少なくとも25種類が見つかっている.これは,ヒトが様々な有害物質に即座に対応するために,苦味を単なる味ではなく,「危険」シグナルとして検知するためと考えられる.
    近年,味覚受容体が口腔以外の様々な組織において発現し,味覚受容以外の機能を担っていることが報告されている.苦味受容体も,気道,胃,大腸,心臓などで発現が確認されている.胃においては1940年代に,コーヒーや紅茶に含まれる苦味物質であるカフェインを胃内投与することで,胃酸分泌が促進することが報告された.また,苦味物質が胃の内分泌細胞のグレリン産生を促進することも報告されている.しかし,苦味物質による酸分泌調節の詳細な分子メカニズムは不明であった.本稿では,カフェインによる胃酸分泌調節機序を詳細に検討した論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Avau B., Depoortere I., Acta Physiol., 216, 407-420(2016).
    2) Roth J. A., Ivy A. C., Am. J. Physiol., 141, 454-461(1944).
    3) Janssen S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 108, 2094-2099(2011).
    4) Liszt K. I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 114, E6260-E6269(2017).
  • 倉内 祐樹
    2018 年 54 巻 4 号 p. 356
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    「寝る子は育つ」,「果報は寝て待て」,「早起きは三文の徳」などのことわざにもあるように,睡眠は私たちの生活に必要不可欠なイベントである.しかし,現代の24時間型生活スタイルや多忙に伴う睡眠サイクルの乱れは睡眠の質を低下させ,日本のみならず諸外国でも生活の質(Quality of life)を著しく低下させる原因となっている.睡眠不足は仕事能率の低下,うつ病や認知症,循環器系疾患のリスクを高めることが知られているが,睡眠不足の健康への影響は未だ不明な点が多い.本稿では,睡眠不足が疼痛感受性を亢進させることを実証したAlexandreらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Fossum I. N. et al., Behav. Sleep Med., 12, 343-357(2014).
    2) Luyster F. S. et al., Sleep, 35, 727-734(2012).
    3) Alexandre C. et al., Nat. Med., 23, 768-774(2017).
  • 三原 義広
    2018 年 54 巻 4 号 p. 357
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    タバコの煙に含まれるニトロソアミンで,強力な前発がん物質である4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone(NNK)とN’-nitrosonornicotine(NNN)は,DNA付加体を形成し,細胞内の塩基損傷に影響を及ぼす.このような損傷はヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair: NER)によってほとんどが修復されるほか,O6-alkylguanine-DNA alkyltransferase(AGT)が化学量論的に塩基中の損傷部位を除去する.したがって,AGTが枯渇することによってピリジルオキソブチル(POB)化DNA付加体が修復されずに残ると,DNA複製や転写の正確性や効率性に影響を及ぼし,遺伝情報の伝達をかく乱する恐れがある.喫煙と発がんとの因果性を検証するには,POB化DNA付加体の正確な定量法を確立することが課題となる.
    本稿では,ほ乳動物細胞DNA中のPOB化dTおよびdG損傷の程度やDNA修復経路を評価するために,安定同位体希釈法とnLC-nESI-MS/MSを組み合わせた定量法を最初に報告したLengらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Leng J. et al., Anal. Chem., 89, 9124-9130(2017).
    2) Li L. et al., Chem. Res. Toxicol., 22, 1464-1472(2009).
    3) Urban A. M. et al., Chem. Res. Toxicol., 25, 2167-2178(2012).
  • 赤下 学
    2018 年 54 巻 4 号 p. 358
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    マクロライド療法は,マクロライド系抗生物質の抗菌作用以外に認められている抗炎症および免疫調整作用を利用した治療法である.例えば,14員環マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンや,15員環マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン(AZM)の少量長期投与において,びまん性汎細気管支炎に対する有効性が報告されている.近年,喘息を含む慢性気道炎症性疾患への適応拡大が,マクロライド療法で検討されている.喘息の増悪は致死的症状を呈することがあり,維持療法でコントロール不良の喘息患者に対し,AZMが治療の選択肢として期待されている.そこで本稿では,持続性の症候性喘息患者に対するAZMの有用性を検討したAMAZES試験を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) 工藤翔二ほか,日胸疾会誌,22(増),254(1984).
    2) 小林宏行ほか,感染症誌,69, 711-722(1995).
    3) Gibson P. G. et al., Lancet., 390, 659-668(2017).
    4) Tojima I. et al., Auris Nasus Larynx., 42, 332-336(2015).
速報 資料
  • 谷口 怜
    2018 年 54 巻 4 号 p. 341-342
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    ジカウイルス感染症はフラビウイルス科フラビウイルス属ジカウイルスによる感染症である。本感染症はジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症の2つに大別される。アメリカ大陸におけるジカウイルス感染症の流行は2016年に世界保健機関により「国際的な脅威に対する公衆衛生上の緊急事態」と宣言された。日本の感染症法では2016年2月5日に四類感染症に指定され、医師はジカウイルス感染症患者を診た場合は直ちに最寄りの保健所に届出しなければならない。本稿ではジカウイルス感染症の臨床的・疫学的特徴、診断法、予防法について解説したい。
紹介
追悼
  • 松尾 淳一
    2018 年 54 巻 4 号 p. 365
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー
    石橋弘行先生は、2017年5月4日に69歳にてご逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。石橋先生は、含窒素環状化合物合成における連続的ラジカル環化反応の有用性を示され、ラジカル化学の学術的発展に大きく貢献されました。また、石橋先生は金沢大学薬学部長として金沢大学薬学の発展にも貢献されました。人と季節と金沢という土地柄をこよなく愛されておられたと思います。心からご冥福をお祈り申し上げます。
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