ファルマシア
Online ISSN : 2189-7026
Print ISSN : 0014-8601
ISSN-L : 0014-8601
58 巻, 5 号
選択された号の論文の50件中1~50を表示しています
目次
  • 2022 年 58 巻 5 号 p. 406-407
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    特集:コロナ禍から生まれたイノベーション
    特集にあたって:新型コロナウイルス感染症によって行動制限という後ろ向きの変化を余儀なくされたが,コロナ禍だからこそ生まれたイノベーションも存在する.mRNAワクチン,高感度検査,ウイルス飛散シミュレーションは,日本の感染者数抑制に直接寄与したイノベーションであろう.また治療に関する情報がまったくないなかで,現在の治療方針を築き上げた医療従事者の努力も大きい.さらには行動制限によってデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し,そのメリットを実感することもできた.コロナ禍をうまく乗り切るだけでなく,新たなパンデミックへの準備や新しい常識の構築を視野に入れながら,これらのイノベーションについて情報共有したい.
    表紙の説明:人類史上最大の困難とも思われる新型コロナウイルス感染症の蔓延を阻止すべく,様々なイノベーションが起こった.新しいタイプのワクチン,ウイルス感染を高感度で判定する検査,様々なシーンでの感染対策に貢献した飛沫の飛散シミュレーション,遠隔でのコミュニケーションを可能にしたDX.コロナ禍という大惨事にもかかわらず,我々の生命活動を支援してくれるイノベーションに心から感謝したい.
グラビア
  • 石川 文博, 坪倉 誠, 熊本 卓哉
    2022 年 58 巻 5 号 p. 401-404
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    特集号「コロナ禍から生まれたイノベーション」コラムより「新型コロナウイルス禍における臨床教育担保のための昭和大学の取組み:大学教員による PCR 検査とワクチン接種」と「スパコン「富岳」を用いたウイルス飛沫・エアロゾル飛散シミュ レーションによる感染リスク評価」と「初めてのオンラインでの日本薬学会年会を開催して」を取り上げた。コラムと共にグラビアからも創薬、医療、研究、教育などの各分野で生まれた取り組みについて読者の皆さまへ情報共有できれば幸いである。
オピニオン
Editor's Eye
最前線
  • 中西 秀之, 位髙 啓史
    2022 年 58 巻 5 号 p. 415-419
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    COVID-19のパンデミックを契機として急速に注目を集めたのが、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである。mRNAワクチンが感染拡大の抑制においてこれほど重要な役割を果たした最大の理由は、mRNAワクチンは従来のワクチンとは異なるその製造法ゆえに、新たな病原体に対するより迅速な対応が可能であったからだと言って良いだろう。実際、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のゲノム配列が発表されてからmRNAワクチンの製造までに要した期間は、1か月足らずであったと言われている。本稿ではmRNAワクチンとはどういったものなのか、なぜCOVID-19に対してこれほど迅速な対応が可能だったのか、そしてワクチンだけにとどまらないmRNAの医療応用について解説する。
最前線
  • 垰田 善之, 佐名木 孝央
    2022 年 58 巻 5 号 p. 420-424
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    2019年12月に中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者の集団発生が報告され,2020年1月に世界保健機関(WHO)から肺炎の病原体は新型コロナウイルス(後にSARS-CoV-2と命名)であるという声明が出された.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に世界中に広がり,2020年3月にはWHOによりパンデミックが宣言される事態に至った.この原稿を執筆している2021年12月時点において,世界中で確認された症例は2億8,000万に上り,死者数は540万人を超えた.これほど多くの感染者と死者を出して世界的規模で流行した感染症は,100年前のスペイン風邪以来である.日本では感染者数は一時的に激減したが,新たな変異株(オミクロン株)の急拡大に伴い,世界では感染者増加に転じ,中和抗体やワクチンの効果に懸念が生じている.ロックダウンをはじめとした様々な行動制限は多くの人々の生活に大きな影響を与え,世界経済に広範囲にわたる影響を及ぼしている.
    この世界的な危機に対し,世界中の製薬企業や公的な研究機関がワクチンや治療薬の開発に乗り出し,激しい競争を繰り広げている.その過程において,mRNAワクチンが初めて実用化され,中和抗体薬が迅速に承認に至るなど科学技術の目覚ましい進展が見られた.また,低分子治療薬においても,ドラッグリポジショニングによって短期間で抗ウイルス薬の候補化合物が特定されている.本稿では,このような多くの研究成果の中から,日本国内で使用されているものや,臨床試験のステージが進んでいるものを中心に紹介する.
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
最前線
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 5 号 p. 460
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和4年2月10日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2022 年 58 巻 5 号 p. 461
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,58巻3号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
日本人が知らないJAPAN
  • 孫 思嘉
    2022 年 58 巻 5 号 p. 467
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    父の勧めで選んだ瀋陽薬科大学の中薬学(日本語強化クラス)専攻で、日中学生交流活動に参加して日本に対する興味が深まった。また当時、Tu Youyou氏の業績を知り、天然物の可能性に魅了されて富山大学の和漢医薬学総合研究所への留学を決心した。静かな土地での生活や大雪など、留学生活では多くの問題に直面した。今は富山での暮らしにも慣れて、すべてが良い思い出となっている。研究室の発展とともに、25報の論文に貢献して博士号を取得した。日本への留学を勧めてくれた父が私の成長を喜んでいる。
期待の若手
期待の若手
  • 松田 研一
    2022 年 58 巻 5 号 p. 465_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    ラボ閉鎖・リモート生活など、思わぬ形で日々の人間関係の大切さを実感することとなった今日この頃、「研究」という個人的活動を、「ラボ」に集って行うことについて、思うことを述べた。コラム本文を見ると、筆者は筋骨隆々の体育会系研究者であるかのように誤解されるかもしれないが、あらかじめお断りさせていただくと、私は生まれつき線が細く、今もそれほど変わっていない。コロナ終息後にリアルでお目にかかった際、体格については「期待」しないでいただきたいです。
トピックス
  • 軽尾 友紀子
    2022 年 58 巻 5 号 p. 468
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    アミド誘導体の1つである2-アミドピリジン1は有用なファーマコフォアとして知られている.一般的に1の合成は,カルボン酸2とアミン3の縮合と,生成したアミドとピリジンN-オキシド4との縮合により達成される.2と比較し,アミドの活性化には強力な求電子剤を必要とするため,同一反応系でこれらの縮合反応を連続して行うのは困難であった.Radosevichらは有機リン触媒を用いたレドックスニュートラルな反応を種々報告し,最近ではアミドの形成と引き続く活性化を利用したアザヘテロ環の合成法を確立している.今回,同触媒系によって2,3,4を連続的に縮合させることで1のワンポット合成に成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Medley J. W. et al., J. Org. Chem., 74, 1341–1344(2009).
    2) Lecomte M. et al., J. Am. Chem. Soc., 141, 12507–12512(2019).
    3) Lipshultz J. M. et al., Am. Chem. Soc., 143, 14487–14494(2021).
  • 上杉 惇一郎
    2022 年 58 巻 5 号 p. 469
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質間相互作用(PPI)は,がんや中枢神経など,様々な領域の創薬研究において魅力的な標的として認識されている.PPI阻害薬設計の難易度は,相互作用を形成する表面構造に依存することが知られており,これまで阻害薬が報告されたPPIの大半は相互作用形成に重要な部位(hotspot)が局在している標的に限られていた.一方で,hotspotが点在した相互作用面を有し,かつタンパク質間の親和性が低いPPIに対する阻害薬設計手法の開発は,研究の余地が大きく残されていると言える.今回,新たな阻害薬設計アプローチとして「高親和性改変タンパク質と天然タンパク質との相互作用様式を模倣する手法」の有用性を示す結果が報告されたので,本稿にて紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Pan C. et al., Eur. J. Med. Chem., 213, 113170(2021).
    2) Yin H. et al., J. Am. Chem. Soc., 143, 18536-18547(2021).
    3) Maute R. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 112, E6506-E6514(2015).
    4) Pascolutti R. et al., Structure, 24, 1719-1728(2016).
  • 小川 鶴洋
    2022 年 58 巻 5 号 p. 470
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    漢方薬や生薬は多くの薬理活性成分を含むため,その作用機序や成分間相互作用を解明することは容易ではない.実際,漢方薬では配合生薬の成分間相互作用による薬理活性の向上や副作用の低減などが以前より指摘されてきたが,それらの分子レベルでの詳細な機序については未だに不明な点が多い.このような生薬の成分間相互作用を分子レベルで解明することができれば,生薬製剤の有効性や他の医薬品との相互作用をより科学的に説明できる可能性がある.本稿では,生薬活性成分のバイカリン(BA)とエモジン(EM)が相乗的に潰瘍性大腸炎(UC)改善作用を示すことを報告したXuらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Xu B. et al., Phytother. Res., 35, 5708-5719(2021).
    2) Han X. H. et al., J. Ethnopharmacol., 148, 182-189(2013).
  • 横川 真梨子
    2022 年 58 巻 5 号 p. 471
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus: HBV)は,肝炎を引き起こすウイルスである.B型肝炎は,世界に約3億人,日本に約100万人の持続感染患者がいるとされ,慢性化すると肝硬変や肝がんに進行しうる.2012年に,肝細胞に特異的に発現している胆汁酸トランスポーター(sodium taurocholate cotransporting polypeputide: NTCP)がHBV受容体であることが判明し,in vitro感染系が確立されたことにより研究が飛躍的に進んだ.しかし,現在用いられている治療薬は逆転写酵素阻害薬である核酸アナログとインターフェロンのみであり,これらの治療薬ではHBVを排除できないため,作用点の異なる治療薬の創製が望まれている.HBVの肝細胞への侵入は感染の最初のステップであり,その過程の阻害は重要な創薬標的の1つである.本稿では,実験と計算科学を用いて,HBVのエンベロープと宿主の膜との融合メカニズムを提唱したPérez-Vargasらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Yan H. et al., elife, online 1, e00049(2012).
    2) Pérez-Vargas J. et al., elife, online 10, e64507(2021).
  • 大山 翠
    2022 年 58 巻 5 号 p. 472
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    糖鎖は単糖がグリコシド結合でつながった化合物であり,細胞膜上のタンパク質や脂質などに付加し,細胞表面を覆っている.そのため糖鎖は,細胞同士の相互作用などに関わり,生体防御や組織形成といった重要な生体内イベントに欠かせない物質である.タンパク質の場合は,糖鎖修飾はN-結合型とO-結合型に大別され,いずれの場合も糖鎖末端にはシアル酸が付加されていることが多い.糖鎖修飾の基質はタンパク質と脂質が知られている.本稿ではこれらに加えて,RNAが糖鎖修飾の基質と成り得ることを示した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Reily C. et al., Nat. Rev. Nephrol., 15, 346–366(2019).
    2) Flynn R. A. et al., Cell, 184, 3109–3124(2021).
    3) Saxon E., Bertozzi C. R., Science, 287, 2007–2010(2000).
  • 三上 統久
    2022 年 58 巻 5 号 p. 473
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    制御性T細胞(Regulatory T cell: Treg)は免疫抑制機能に特化したT細胞集団である.Tregのマスター転写因子であるFoxP3はTregの分化や機能において重要な役割を担い,FoxP3を誘導する化合物は抗原特異的免疫抑制薬として,あらゆる炎症性疾患への応用が期待できる.最新の研究により,cyclin-dependent kinase(CDK)8/19阻害薬が活性化T細胞に作用して高効率にFoxP3を誘導することが明らかとなった.本稿では,その分子生物学的機序について述べる.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Arnett A. et al., Mol. Cell Biol., 41, e0008521(2021).
    2) Akamatsu M. et al., Sci. Immunol., 4, eaaw2707(2019).
    3) Guo Z. et al., Front Immunol., 10, 1988(2019).
  • 高岡 尚輝
    2022 年 58 巻 5 号 p. 474
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    うま味は,食品に含まれるグルタミン酸やイノシン酸が,舌の味蕾にあるうま味受容体と結合することで生じる.このうま味成分は食品添加物として使用されており,その安全性は十分に確認されている.一方で,近年,疫学研究や動物試験により,グルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate: MSG)などのうま味成分の多量摂取がメタボリックシンドロームの発症につながる可能性が報告されている.しかしながら,うま味成分の摂取がメタボリックシンドロームを引き起こす分子機構は未解明であった.本稿では,プリン分解経路に関与する酵素AMPデアミナーゼ(AMPD)の遺伝子欠損マウスなどを用いて,うま味成分がメタボリックシンドロームを誘発する分子機構の一端を解明したAndres-Hernandoらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) He K. et al., Am. J. Clin. Nutr., 93, 1328–1336(2011).
    2) Andres-Hernando A. et al., Nat. Metab., 3, 1189–1201(2021).
    3) Cicerchi C. et al., FASEB J., 28, 3339–3350(2014).
  • 金子 恭平
    2022 年 58 巻 5 号 p. 475
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は,気道,気管支,および肺胞の慢性的な炎症による組織破壊が原因の呼吸器疾患であり,我が国には約530万人の患者が存在すると推定されている.COPDは不可逆的な疾患であるため,発症予防が重要である.現在までに危険因子として喫煙や有害物質の長期曝露がわかっているが,COPD患者のうち喫煙者は12〜13%のみであることから,喫煙以外の危険因子の存在が示唆されている.
    機械学習法とは,人工知能を実現するための手法の1つであり,「問題」と「答え」のデータベースを基にルールやパターンを発見する技術のことで,端的に言えば過去の事象から未来を予測する技術のことである.医療機器では,12製品が画像診断に応用されている(2020年10月時点).
    本稿では,機械学習法を用いてCOPD患者の危険因子を予測したMuroらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Satng P. et al., Chest, 117, 354S-359S(2000).
    2) Muro S. et al., JMIR Med. Inform., 9, e24796(2021).
紹介
賞・研究奨励・助成
Information
薬学会アップトゥデイト
交信
会合予告
カレンダー
MEDCHEM NEWS 目次
学術誌お知らせ
談話室
正誤表
最近の新刊書から
新刊紹介
クイズ「一問一答」/解答
次号掲載予告
編集後記
feedback
Top