経皮製剤は局所作用だけでなく, 吸収された薬物が毛細血管を通り, 経口薬と同様に全身作用を得られる製剤であり, 軟膏やクリームなどの製剤, パッチやテープ型製剤に大きく分類される. 利点として, 薬物の血中濃度を一定に保つこと, 薬物吸収において小腸や肝臓を通らずに全身循環することで,経口薬で課題となることもある初回通過効果による薬物の消失を回避することが可能である. また経皮製剤は,経口薬と比較して胃や腸への負担が少なく, 副作用が生じた場合にすぐ中止できることも利点として挙げられる.
このように経皮製剤は魅力的な多くの利点が挙げられるが, 経皮製剤の医薬品開発には薬物の高い安定性, 溶解度および膜透過性などの物性を有していることが必要となり, この高いハードルが適用拡大の妨げとなる. 有機溶剤や界面活性剤などを使用した緻密な製剤設計によって, 皮膚透過性や溶解性を改善できるが, 刺激性の観点から使用量に限度があり, 薬物本来および更なる高度な製剤技術による物性改善が重要な課題となっている. 本稿では, Cheらの研究について紹介する.
なお、本稿は下記の文献に基づいて、その研究成果を紹介するものである。
1) Che J.
et al.,
Eur. J. Pharm. Biopharm., 93, 136-148 (2015).
2) Ge S.
et al.,
Int. J. Pharm., 465, 120-131 (2014).
3) Schoellhammer C. M.
et al.,
Expert Opin. Drug Deliv., 11, 393-407 (2014).
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