ファルマシア
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57 巻, 3 号
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目次
  • 2021 年 57 巻 3 号 p. 168-169
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    特集:嗅覚研究の進展が拓く新たな薬物療法の可能性
    特集にあたって:様々な生物において,嗅覚は生存や種の保存に必要な本能的行動を調節している.一方で,嗅覚は食事をおいしく感じることや円満な人間関係を構築することにも密接に関連しており,人間が豊かな生活を営むためには欠かせない感覚である.昨今の嗅覚研究の進展によってその神経化学的理解は飛躍的に向上しており,嗅覚受容体を介したにおい・香りの伝達メカニズムが明らかにされてきた.さらに近年では,においの元になる多様な化合物の特性や,それらが生体におよぼす薬理作用に関する研究も注目を集めている.本特集では,嗅覚研究における最新のエビデンスを紹介するとともに,におい・香りを応用した新しい薬物療法の可能性にも言及したい.
    表紙の説明:嗅覚は鼻腔において検知され,その情報は脳へと伝達される.におい・香りは7回膜貫通型の嗅覚受容体で受容され,複雑な神経ネットワークに基づいて生体に様々な影響をおよぼす.天然の植物にも人間が好むにおい・香りを有するものが多く存在し,その成分の科学的特徴も明らかにされている.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 山口 正洋
    2021 年 57 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    生物は様々な化学物質を手がかりに外界の様子を知り,適切に行動することで生存している.また生物自身も化学物質を体外に分泌し,これをもとに生物同士が関係性を認識し合って個体間の行動が成り立っている.嗅覚はこのような化学物質の情報に基づいて,個体の生存や種の繁栄を支えている感覚系である.
    本稿では,ほ乳類,主にげっ歯類を題材として,嗅覚系における化学物質の検知機構と,それを行動に結びつける神経機構について述べる.また嗅覚系の2つのシステムの構造と働きについて,近年の知見を交えて紹介する.
最前線
  • 西野 浩史
    2021 年 57 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    匂いは空気中に離散的に分布しているが、これを動物が匂い源定位にどう利用するのかについては不明な点が多い。多くの動物は左右の嗅感覚器に当たる匂い強度を比較することで匂い源への方向づけを行うが、匂いを運ぶ媒体である空気揺らぎの少ない環境ではこの左右比較は非効率となる。本稿では家屋害虫であるゴキブリが匂いプルームの構造を利用しながら航行すること、洗練された匂いの位置検出システムを発達させていることを紹介する。
セミナー
  • 霊長類の嗅覚の進化
    新村 芳人
    2021 年 57 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ヒトをはじめとする霊長類は視覚型の動物であり、嗅覚は退化してしまったと一般に信じられている。しかし、嗅覚は霊長類にとっても重要な感覚である。鼻の中には嗅覚受容体(OR)と呼ばれる匂いセンサーがあり、このORの遺伝子を我々ヒトは約400個もっている。OR遺伝子のレパートリーはその生物が住む環境によって大きく異なる。多様な霊長類のOR遺伝子を比較することで、霊長類の進化の過程で食べ物の匂いが重要だったことが明らかになった。
セミナー
  • 長谷川 登志夫
    2021 年 57 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    においを感じるという認知は,においの元であるにおい分子が,鼻にあるにおいを感じるところ(におい受容体)に達することから始まる。脂溶性の有機分子であるにおい分子の特徴をとらえることがにおいを理解するには必要である。また,香気素材のにおいは,多数のにおい分子のにおいの単純な足し合わせによって形成されてはいない。香気素材に含まれている多数におい分子同士の相互作用が,素材香気の特徴にとって重要なカギとなっている。
セミナー
話題
話題
話題
  • 宮本 理人
    2021 年 57 巻 3 号 p. 207-209
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    柑橘類は主に生食目的のものと、酸味や香りを楽しむ香酸柑橘類に大きく分けられる。世界的には香酸柑橘類のシェアの大部分をレモンとライムが占めているが、国内では和食の付け合わせ等として柚子やカボスなど地域に根ざした多様な香酸柑橘類が広く親しまれている。
    スダチ(Citrus Sudachi)は小型な果実を実らせる香酸柑橘類の一種であり、特徴的な香りと酸味が全国的に好まれている。しかし、その生産エリアは徳島周辺に限られていることから、スダチは徳島特有の農産資源といえる。我々は徳島県などとともにスダチの有用性の探求に薬学の立場から取り組んできた。本稿ではスダチの香りが有する薬理作用に関する我々の知見と取り組みを簡単に紹介したい。
最前線
新薬のプロフィル
  • 西嶌 伸郎
    2021 年 57 巻 3 号 p. 216-217
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    インターロイキン6(IL-6)は,炎症反応,各種細胞の分化や増殖の誘導,免疫応答の調節,および血小板産生等の多様な機能を有する炎症性サイトカインであり,視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders: NMOSD)患者では再発時に血清および髄液中でIL-6が上昇することが報告されており,NMOSD病態への関与が示唆されている.
    本剤は,当社の抗体工学技術を用いて創製されたpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体である.pH依存的にインターロイキン6レセプター(IL-6R)に結合することで,血中滞留性を向上させることを目的としている.2014年より実施された視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)およびNMOSDの患者を対象とした国際共同第Ⅲ相二重盲検並行群間比較試験(SA-307JG試験:SAkuraSky),および海外第Ⅲ相二重盲検並行群間比較試験(SA-309JG試験:SAkuraStar)3)において有効性および安全性が確認された結果,我が国では2020年6月に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」の効能または効果で承認された.なお,本剤は2019年9月に希少疾病用医薬品に指定されている.
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
くすりの博物館をゆく
  • 池田 幸弘
    2021 年 57 巻 3 号 p. 222-223
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    機会あって,富山大学の杉谷キャンパスにある和漢医薬学総合研究所民族薬物資料館を訪ねた。富山大学薬学部の前身である共立富山薬学校は、広貫堂資料館の稿1)で紹介したとおり、富山市や広貫堂をはじめとする多数の有志の寄付金により、私立学校として1893年に設立された。その後、富山市立薬学校、富山県立薬学専門学校、官立富山薬学専門学校、国立富山大学薬学部、富山医科薬科大学薬学部を経て、2005年に旧富山大学、富山医科薬科大学、および高岡短期大学が統合された際に、現在の富山大学薬学部となった。母体や名称は変わりながらも、薬に向き合う精神、すなわち「人々の健康を第一に考える奉仕の精神」と「よりよい薬を創出するための探求心」は連綿と受け継がれている。
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 山本 耕介
    2021 年 57 巻 3 号 p. 226
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    アラインは芳香環内に歪んだ三重結合を有する高反応性中間体であり,有機合成反応に広く用いられている.しかし,その反応性の高さゆえに,アラインを反応剤とする不斉反応の多くは基質制御型であり,触媒制御による高立体選択的な反応例は限られる.
    有機電解合成は電子を反応剤とする酸化剤・還元剤を用いない環境調和型の分子変換法であり,近年,電解反応による活性種の生成と不斉触媒反応を組み合わせた不斉電解反応が急速な発展を遂げている.最近,Luoらは陽極酸化によるベンザイン生成法を見いだし,光学活性な第一級アミン1によるβ-ケトエステル2の高エナンチオ選択的な触媒的α-アリール化反応を達成したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Li L. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 59, 14347-14351(2020).
    2) Fu N. et al., Org. Lett., 19, 2122-2125(2017).
    3) Campbell C. D., Rees C. W., J. Chem. Soc. C, 742-747(1969).
  • 関 陽平
    2021 年 57 巻 3 号 p. 227
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    近年,低分子の創薬手法の1つとしてコバレントドラッグが注目されている.コバレントドラッグは,標的タンパク質の特定のアミノ酸残基と共有結合することで,その機能を阻害する.そのため,一般的な低分子医薬品(静電相互作用や水素結合に代表される非共有結合性相互作用のみを介して標的タンパク質を認識する)と比較して,強力かつ持続的な薬効が期待できる.一方で,コバレントドラッグはオフターゲットとの非特異的な結合形成による副作用の懸念がある点に課題を残す.そうした中,Liらが低分子ではなくタンパク質に反応性基を導入したコバレントプロテインドラッグを新たに報告したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Li Q. et al., Cell, 182, 85-97. e16(2020).
    2) Wang N. et al., J. Am. Chem. Soc., 140, 4995-4999(2018).
    3) Dong J. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 9430-9448(2014).
  • 村重 諒
    2021 年 57 巻 3 号 p. 228
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンは,細菌のライフタイムにおいて絶えず生合成され,その形状保持に重要な役割を担っている.ペプチドグリカンは2種類の糖,N-アセチルグルコサミン(NAG)とN-アセチルムラミン酸(NAM)の繰り返し構造にペプチド鎖(ムロペプチド)が結合し,近傍のムロペプチド間で特定のアミノ酸同士が共有結合性の強固なクロスリンクを形成することで網目構造をとる(図1).このクロスリンク形成を阻害するペニシリンGの発見以降,現在もなおβ-ラクタム系抗生物質は重要な創薬ターゲットの1つである.β-ラクタム系抗生物質によってペプチドグリカン生合成を阻害された細菌は,浸透圧に耐えきれずに迅速に溶解してしまう.では,これとは逆にペプチドグリカンのクロスリンクを人工的に形成するとどうなるのだろうか?
    近年の研究で,細菌のペプチドグリカンのクロスリンク形成を触媒するトランスペプチダーゼに,非天然D-アミノ酸もムロペプチドC末端に取り込む働きがあることが明らかとなった.この知見をもとにDikらは,求電子基を導入した非天然の芳香族D-アミノ酸をムロペプチドに取り込ませ,その近傍にある別のムロペプチドのアミノ基との非酵素反応による人工的なクロスリンク形成を報告したので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Cho H. et al., Cell, 159, 1300-1311(2014).
    2) Lupoli T. J. et al., J. Am. Chem. Soc., 133, 10748-10751(2011).
    3) Dik D. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 142, 10910-10913(2020).
    4) Kuru E. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 51, 12519-12523(2012).
  • 安保 真裕
    2021 年 57 巻 3 号 p. 229
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    生体分子は,細胞内の特定部位に局在することで生命機能を形成する.生体分子間の空間的局在関係を解明する方法論である微小空間マッピングは,生命現象を理解するうえで重要な研究テーマである.微小空間マッピングの有力な手法として,近接ラベル化法がある.この手法では,標的タンパク質に融合させた酵素によって近傍のタンパク質をビオチン修飾することで,分離精製と質量分析による同定を可能とする.既存の例として,ビオチンリガーゼを用いるBioID法やアスコルビン酸ペルオキシダーゼを利用するAPEX法等が知られている.ただし,タンパク質相互作用を分子レベルで解析するには,既存の方法ではビオチン修飾の空間分解能が必ずしも十分とは言えない.本稿では,イリジウム触媒と青色の可視光を利用することで,既存の方法よりも高い空間分解能を実現した微小空間マッピングの新技術を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Branon T. C. et al., Nat. Biotechnol., 36, 880-887(2018).
    2) Lam S. S. et al., Nat. Methods, 12, 51-54(2015).
    3) Geri J. B. et al., Science, 367, 1091-1097(2020).
  • 青山 和正
    2021 年 57 巻 3 号 p. 230
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    EZH2は,ヒストンH3リジン27トリメチル化(H3K27me3)を触媒することで,遺伝子発現を負に制御する.EZH2はがんにおいてマルチフェイスに振る舞い,がん促進にもがん抑制にも寄与する.例えば,リンパ腫や悪性黒色腫においては促進的に機能し(EZH2機能亢進型遺伝子変異の頻度:それぞれ9〜24%,2%),骨髄異形成症候群やT細胞性急性リンパ芽球性白血病においては抑制的に機能する(EZH2機能喪失型遺伝子変異の頻度:それぞれ3〜13%,18%).EZH2の制御機構を詳細に解明することが,がんを攻略する1つの鍵であるものの,EZH2の制御機構は未だ十分に解明されていない.本稿では,前立腺がんを抑制するEZH2の新規制御機構を見いだした文献を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Conway E. et al., Curr. Opin Cell Biol., 37, 42-48(2015).
    2) Iwama A., Blood., 130, 23-29(2017).
    3) Yuan H. et al., Cancer. Cell., 38, 350-365.e7(2020).
    4) Margueron R. et al., Mol. Cell., 32, 503-518(2008).
    5) Aoyama K. et al., Leukemia(2020), doi: 10.1038/s41375-020-01023-1.
  • 古関 竹直
    2021 年 57 巻 3 号 p. 231
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    モルヒネ等のオピオイドによる薬物依存は,中脳辺縁系の腹側被蓋野(VTA)から側坐核へ投射する中脳辺縁系ドパミン作動性神経の賦活化によって形成されると考えられている.オピオイドは,様々な脳領域からVTAに投射するGABA作動性神経上のオピオイドµ受容体を刺激し,GABA作動性神経を抑制することでVTAのドパミン作動性神経が脱抑制され,過剰興奮をきたす.吻側内側被蓋核(RMTg)と中脳中心灰白質(PAG)からVTAへ投射するGABA作動性神経もドパミン作動性神経発火制御に関わっているとされているが,RMTgおよびPAGのGABA作動性神経の神経生理学的な反応やオピオイド反応性の相違については明らかにされていない.St Laurentらは,特定の神経細胞上にチャネルロドプシン(ChR2)を発現させ,光刺激を与えることでChR2を発現した神経細胞を特異的に活性化させる光遺伝学技術を用いて,RMTgまたはPAGのGABA作動性神経上にChR2を選択的に発現させたマウスを作製した.本稿では,St Laurentらがこのマウスを用いて明らかにしたRMTgおよびPAGからVTAへ投射するGABA作動性神経の異なる機能について紹介する.
    1) St Laurent R. et al., Neuron, 106, 624-636. e4(2020).
  • 堀 武志
    2021 年 57 巻 3 号 p. 232
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    高齢出産が増えている我が国では,産科合併症への対応がより一層重要になっている.産科合併症の中には妊娠高血圧症候群のような胎盤に発症原因があると考えられているものがある.しかし胎盤の構造・機能には種差があるため,疾患原因を解明するためにはヒトの胎盤を調べなければならない.胎盤の主要な構成細胞は栄養膜細胞である.この細胞は胚盤胞(受精5〜6日後の受精卵)の外側を構成する栄養外胚葉(trophectoderm: TE)に由来する.これまでヒトの胎盤研究では,胎盤絨毛に由来するがん細胞や初代栄養膜細胞が使用されてきた.しかし,絨毛がん細胞は生体の栄養膜細胞とは異なる性質を持っており,また単離ヒト栄養膜細胞の供給には制限がある.
    そんななか,近年,胚盤胞や単離栄養膜細胞から,ヒト栄養膜幹(trophoblast stem: TS)細胞を樹立できる培養条件(TS細胞培地)が報告された.TS細胞は,栄養膜細胞へと分化する能力を持っている.また,ヒト多能性幹細胞を用いた研究も進み,プライム型よりも未分化な状態にあるナイーブ型と呼ばれる初期胚に近い状態のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いても,TS細胞を作製できることが明らかになった.
    本稿では,Liuらが単一細胞/核RNAシーケンスを駆使し,体細胞から直接的にTS細胞を樹立する方法を見いだしたので紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Okae H. et al., Cell Stem Cell, 22, 50-63.e6(2018).
    2) Dong C. et al., eLife, 9, e52504(2020).
    3) Liu X. et al., Nature, 586, 101-107(2020).
  • 有安 葵
    2021 年 57 巻 3 号 p. 233
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    小児用医薬品開発は,USおよびEUでは法的に義務化されている.日本でも義務化はされていないものの推進され,各社それぞれ開発を進めている.しかし,小児用医薬品開発には製剤開発および臨床試験両方の観点でハードルが存在し,製薬企業にとって意義は高いものの開発は容易ではない.
    製剤開発,特に経口製剤の処方開発においては薬物の吸収性の最大化が重要であり,それには薬物の消化管内での溶解性および膜透過性が大きく寄与する.この2つの要素で薬物を分類する概念を体系化したのがbiopharmaceutics classification system(BCS)であり,1995年にAmidonらによって提唱された.BCSに応じた製剤開発は現在における経口製剤の処方開発の指針となっている.
    一方,小児の消化管内環境は,その容量の違いなど成人とは大きく異なり,同一薬物の溶解性および膜透過性も小児と成人で異なると考えらえる.その考察に基づき,近年小児に対応したBCS,すなわちpediatric BCS(pBCS)の研究が進んでいる.特に小児の慢性疾患の治療には,院内製剤が用いられることが多く,薬物動態などのデータが不足している.そこで,慢性疾患治療薬のpBCSを検討および提案した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Amidon G. L. et al., Pharm. Res., 12, 413-420(1995).
    2) Bhatt-Mehta V. et al., EurJ. Pharm. Sci., 152, 105437(2020).
    3) Shawahna R., AAPS J., 18, 728-736(2016).
    4) Maharaj A. R. et al., Pharm. Res., 33, 52-71(2016).
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談話室
  • 加藤 良規
    2021 年 57 巻 3 号 p. 221
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー
    昨今のコロナ禍で,良くも悪くもオンライン授業が注目されている.Eラーニングの学習効果の面でのメリットとしては,繰り返し視聴が可能な点が挙げられる.受講する側および作成する側双方にとって,コストやインフラなど解決すべき課題は山積みであるが,優れたEラーニングプログラムの構築は,うまく活用することで学生へ良い形で還元することができる.今回の経験を活かし,今後は更なるEラーニングの普及や活用が期待される.
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