ファルマシア
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59 巻, 1 号
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目次
  • 2023 年 59 巻 1 号 p. 2-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    特集:様々な機能を有する新世代の生理活性脂質
    特集にあたって:1982年にプロスタグランジンの発見とそれに関連する研究により3人の研究者,Vane,Samuelsson,Bergströmらがノーベル賞を受賞した.それから40年が経ち,技術革新の目覚ましい質量分析技術により,今まで同定されていなかった新世代の生理活性脂質が多数発見された.さらに,様々な脂質代謝酵素の遺伝子欠損マウスを用いることで,新たな脂質の機能解析も可能となってきた.本特集では,最近見いだされた生理活性脂質の生理的意義や最新の分析技術について,気鋭の研究者にご紹介いただいた.
    表紙の説明:日本国内には脂質分野をリードする研究者が多数おり,現在,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(ERATO)では,脂質研究の大型プロジェクト「リピドームアトラス」が進められている.「アトラス」には「地図集」という意味があり,本号の表紙は,まさに新しい脂質の世界地図が編纂されていく様子をイメージしている.
オピニオン
Editor's Eye
セミナー
  • 有田 誠
    2023 年 59 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    生体内には様々な機能を有する生理活性脂質が存在し、また脂質代謝異常が多くの疾患の背景因子であることから、それら生体内の時空間ダイナミクス制御を分子レベルで明らかにすることは、新たな創薬標的、早期診断、治療法の開発につながる可能性がある。筆者らは、生命の脂質多様性および分布・局在・脂質修飾を総体として捉える「リピドームアトラス」を構築し、生体内で脂質多様性やその局在を創り出し、調節・認識・機能発現するしくみの解明、およびその破綻による疾患解明を目指している。
セミナー
  • 宮本 潤基, 木村 郁夫
    2023 年 59 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    近年の腸内細菌研究の発展に伴い、免疫系疾患や代謝性疾患などの様々な疾患の発症や増悪と密接に関与することが科学的根拠に基づいて明らかにされている。このような腸内細菌と宿主を結びづける実質的な分子実体として、腸内細菌代謝物が注目を集めており、宿主の生体恒常性維持に重要な役割を果たしていることが示唆され始めている。本稿では、腸内細菌代謝物の一つとして生理活性脂質に着目し、宿主のエネルギー代謝調節に及ぼす影響について概説する。
最前線
セミナー
最前線
  • 小胞型ヌクレオチドトランスポーターを標的としたエイコサペンタエン酸の慢性疼痛抑制メカニズム
    宮地 孝明
    2023 年 59 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    1970年代のデンマークの白人とグリーンランドのイヌイットの疫学調査によって、白人よりもイヌイットは、心臓病の死亡率が大幅に低下しており、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の血中濃度が高いことが明らかになった。その後、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の代表格の一つであるエイコサペンタエン酸(EPA)は様々な生活習慣病に有効であることが多くの臨床・基礎研究から明らかになったが、その分子標的は未だ十分に明らかになっていない。本稿では、EPAの新しい分子標的の発見と、その分子メカニズムに基づく新しい治療戦略について概説する。
最前線
セミナー
最前線
最前線
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2023 年 59 巻 1 号 p. 54-55
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,58巻11号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
  • 田原 さやか
    2023 年 59 巻 1 号 p. 56-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)は自己抗体である寒冷凝集素(CA)により溶血性貧血を呈する希少血液疾患であり、指定難病の自己免疫性溶血性貧血の一種となる。
    これまでCADの効能または効果で承認されている治療法はなく、寒冷回避によって管理されることが多い。重度の貧血が認められる場合は輸血が行われる。
    本剤は、CAD患者の溶血抑制を目的とした国際共同第Ⅲ相臨床試験において有効性および安全性が確認されたことから、「寒冷凝集素症」を効能または効果として2022年6月に承認された。また、本剤は我が国および米国において希少疾病用医薬品の指定を受けている。
日本ベンチャーの底力 その技術と発想力
薬用植物園の花ごよみ
期待の若手
期待の若手
トピックス
  • 楳窪 成祥
    2023 年 59 巻 1 号 p. 66
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    熱帯雨林の樹皮から単離された天然物群であるガルブリミマ(Galbulimima: GB)アルカロイドは多彩な活性を有し,その一部は向精神薬として利用される.しかし,GBアルカロイドの種類は多様であり,天然からは混合物として単離され,純度の高い単一化合物の量的供給は困難である.そのため,向精神薬成分が未同定であるだけでなく,その作用機構も未解明な点が多い.単一化合物の供給として,全合成的アプローチが取り組まれてきた.しかし,GB類は複雑な構造を有しているため,多段階合成を要し,量的供給が困難であった.例えば,GB13は18〜33工程,ヒンガリンは19〜34工程を要する.今回Landwehrらは,Ni触媒とフォトレドックス触媒の新規カップリング反応の開発および,芳香環の還元-プロトン化による3つの不斉中心の立体選択的構築により,わずか10工程以下(GB13,GB22:6〜8工程,ヒンガリン:7〜9工程)でGB類の全合成を達成した.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Milligan J. A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 58, 6152–6163(2019).
    2) Landwehr E. M. et al., Science, 375, 1270-1274(2022).
  • 石田 良典
    2023 年 59 巻 1 号 p. 67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    低分子薬の開発において,標的分子への結合がいかに選択的であるかは肝要であり,狙った活性とは異なる現象を発現させるオフターゲットを持たないことが求められる.パネルスクリーニングなどの発展により,in vitroでのオフターゲット同定は簡便になったが,細胞やin vivoといった夾雑系にて同定することは難しく,不明な結合分子を持つ薬剤も多数存在する.例えば,これまでアメリカ食品医薬品局が5種類の低分子を認可しているヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase: HDAC)阻害剤が挙げられる.HDAC阻害剤は翻訳後修飾など細胞内環境の影響がその活性発現に重要であり,細胞でのオフターゲット探索が必要である.近年,オミクスの発展,特にケモプロテオミクスによって低分子の結合タンパク質同定が可能になり,薬剤においてもオフターゲットの網羅的解析が行われるようになった.本稿では同技術を駆使した,MédardらによるHDAC阻害剤の共通オフターゲット同定に関する論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lechner S. et al., Nat. Chem. Biol., 18, 812-820(2022).
  • 大月 興春
    2023 年 59 巻 1 号 p. 68
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    これまで天然物創薬研究を通じて,パクリタキセルやシクロスポリン,スタチン系薬など今でも医療現場の第一線で活躍する多くの医薬品が見いだされてきた.天然資源は化学的多様性に富んでおり,創薬研究者にとって医薬品シーズを発見するための魅力的な探索源である.しかし従来の天然物創薬の手法では,植物や微生物,海洋生物などの天然資源の収集,菌株や抽出物の作成に始まり,抽出物ライブラリーの活性スクリーニング,生物活性物質の単離および構造決定,創薬研究に必要な大量の化合物を確保する方法の確立など多くの時間と労力を要する.そこで,質量分析(MS)データに加えて生物活性データや分類学的データなどの複数のオミックスデータをリンクして,生物活性物質の探索を行う手法が開発されている.本手法により,サンプルを1つ1つ順番に評価して化合物を単離する従来の方法に比べて,新規生物活性物質探索のスピードと精度の向上が期待されている.本稿では,生物活性データと非標的メタボロミクスデータを統合するプラットフォーム“NP Analyst”を開発した,Leeらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Lee S. et al., ACS Cent. Sci., 8, 223–234(2022).
    2) Kurita K. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 112, 11999–12004(2015).
  • 外山 友美子
    2023 年 59 巻 1 号 p. 69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎える我が国においてアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)の克服は差し迫った課題の1つであり,治療薬の需要は極めて高い.AD患者脳の病理学的特徴に老人斑が挙げられ,老人斑の主な構成分子として42個のアミノ酸配列から成るアミロイドβタンパク質(amyloidβprotein: Aβ42)の存在が広く知られている.Aβ42は凝集性が高く,Aβ42の凝集は神経細胞に対して毒性を示す.このことから,Aβ42の凝集はAD発症に大きな影響を及ぼすと考えられ,AD治療の戦略としてAβ42の凝集阻害は有望なアプローチであるといえる.
    既に複数の漢方薬が,ADの臨床症状に対して有効性を示すことが報告されている.漢方薬は複数の生薬から作られるため,単一の有効成分の分離や同定は困難であることに加え,それらの漢方薬におけるAβ42凝集阻害に働く有効成分や,その構造に着目した作用機序の報告例は限られている.
    本稿では,Hanakiらが開発した液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography mass spectrometry: LC-MS)と主成分分析(principal component analysis: PCA)を組み合わせた統計手法について紹介する.本手法は,Aβ凝集抑制能を持つ活性成分の探索を目的としている.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Selkoe D. J. et al., EMBO Mol. Med., 8, 595-608(2016).
    2) Matsumoto K. et al., J. Pharmacol. Sci., 122, 257-269(2013).
    3) Hanaki M. et al., Bioorg Med. Chem., 61, 128613(2022).
    4) Sato M. et al., J. Biol. Chem., 288, 23212-23224(2013).
  • 梶谷 直人
    2023 年 59 巻 1 号 p. 70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    概日リズムは,ほ乳類の睡眠覚醒周期,代謝,免疫機能などを制御している.また,概日リズムの機能不全は老化の特徴の1つとなっている.このリズムは,時計遺伝子と呼ばれる複数の転写因子による転写・翻訳から成るフィードバック機構によって形成されている.主要な時計遺伝子の1つであるbrain and muscle ARNT-like protein-1(BMAL1)のノックアウトマウスは,概日リズムが消失して寿命が短くなり,様々な早期老化の症状を示す.このように時計遺伝子と老化の関係が示唆されているが,BMAL1欠損がどのように老化を加速させるのかは不明であった.本稿では,ヒト間葉系前駆細胞(human mesenchymal progenitor cell: hMPC)を用いて,BMAL1による細胞老化制御機構を明らかにした論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Kondratov R. V. et al., Genes Dev., 20, 1868-1873(2006).
    2) Liang C. et al., Nucleic Acids Res., 50, 3323-3347(2022).
    3) Han J. S., Boeke J. D., Bioessays, 27, 775-784(2005).
    4) Petrashen A. P. et al., Nature, 596, 43-53 (2021).
  • 西谷 直也
    2023 年 59 巻 1 号 p. 71
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    神経性食欲不振症(anorexia nervosa: AN)は,過活動や過度な摂食制限,体重減少を特徴とする摂食障害であり,最も死亡率の高い精神疾患である.近年,ゲノムワイド関連解析からANに対するドパミン(dopamine: DA)およびセロトニン(serotonin: 5-HT)神経細胞の関連性が示唆されている.腹側被蓋野(ventral tegmental area: VTA)のDA神経細胞(DAVTA神経細胞)は摂食や身体活動を含む動機づけ行動に関与することが知られている.また,背側縫線核(dorsal raphe nucleus: DRN)の5-HT神経細胞(5-HTDRN神経細胞)の活性化は摂食行動を抑制することが報告されている.しかし,これらの神経細胞がどのようにANの疾患表現型に寄与しているかは不明であった.本稿では,発火頻度依存的なドパミン受容体の選択的活性化に着目し,AN様行動の制御におけるDAVTA神経細胞→5-HTDRN神経細胞回路の役割を示したCaiらの論文を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) He Y. et al., Mol. Psychiatry, 26, 7211-7224(2021).
    2) Cai X. et al., Nat. Neurosci., 25, 646-658(2022).
    3) Pollak Dorocic I. et al., Neuron, 83, 663-678(2014).
  • 伊藤 佐生智
    2023 年 59 巻 1 号 p. 72
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    細菌が宿主に寄生するためには,宿主から栄養を得る必要があり,病原性細菌や常在菌は固有の方法で栄養を獲得している.免疫は細菌の寄生に対する宿主の障壁であり,細菌は固有の方法で免疫を回避する.ある種の細菌は,宿主の免疫応答を細胞内および細胞外寄生菌に対する免疫応答であるtype 1およびtype 3炎症から,寄生虫に対する免疫応答であるtype 2炎症に偏向する.その結果,細菌は寄生が可能となり,宿主にアレルギー性炎症を惹起すると考えられる.本稿では,緑膿菌のプロテアーゼLasBによる栄養獲得機構とアレルギー性炎症の誘発作用について報告したAgaronyanらの論文について紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Agaronyan K. et al., Immunity, 55, 895-911(2022).
  • 伊藤 雄大
    2023 年 59 巻 1 号 p. 73
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    薬物治療に対する反応の個人差は,臨床現場において大きな課題であり,しばしば最適な治療効果の発揮を妨げる要因となる.患者ごとに個別化された治療を行うために,一部の薬剤においては薬理遺伝学検査(イリノテカンによる重篤な副作用発現を回避するためのUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase: UGT)1A1遺伝子検査など)や治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring: TDM)が行われているものの,治療開始早期からの至適投与に至らないケースも多く存在する.日常診療において個別化医療をより推進させるためには,組織生検等の侵襲的な手法を用いずに,薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの機能活性を定量的に評価することが求められる.
    本稿では,心血管疾患を有する患者30名を対象に,リキッドバイオプシーにより薬物代謝活性ならびに排泄能を予測することが可能であるかを評価したAchourらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Achour B. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 111, 1268–1277(2022).
    2) Achour B. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 109, 222–232(2021).
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