本論文においては, 多くの素子で構成されている, セミホットMHD発電ダクト壁を検討した. この素子は, ち密質の耐熱セラミックスで作られており, 直方体の形状をしている. 定常発電状態では, 素子の一面が, MHD発電機の作動流体によって, 一定温度
Twに加熱され, その反対面は, 温度
Tbの支持物によって, 一定温度
T0に冷却されている. この両者間の熱流束は, 温度差 (
T0-
Tb) と熱伝達係数
hによって定まる. 素子内部には, 温度分布と物性値の温度依存性によって熱応力が発生する.
この熱応力による破壊が生じないような, 限界条件が定められる. この限界条件は,
Twと素子の厚さと幅の比, γによって決定され,
T0の最小値又は
hの最大値で表される.
本報の結果は以下のとおりである.
(1) 素子材料がマグネシアセラミックスの場合はγ>4, 又は, アルミナセラミックスではγ>1において,
h=∞が限界条件である (
Tw=1150-1400K,
Tb=300-310K). すなわち,
T0=
Tbとしても, 最大引張り応力が, 素子材料の強さ以下であることが分った.
(2) γ=0 (無限平板) の場合のみに適用できる, 簡便な限界条件計算法が開発された. この方法で計算された結果は, 前報の計算法において, γ<0.5とした場合の限界条件とほとんど同じ値であった. すなわち, γ<0.5の素子の最大引張り応力は, 無限平板での値とほとんど同じであることが分った.
(3) 定常熱応力に対する強さの概略を示す値, Γ=(1-ν)
Et/(
Eα) が発見された (ν: ポアソン比,
Et: 引張り耐力,
E: 弾性率, α: 線膨張係数). 1000Kにおいて, マグネシアセラミックスのΓは約19.5K及びアルミナセラミックスでは約46.7Kであって, アルミナセラミックスはマグネシアセラミックスよりも定常熱応力に対して強いことが示された.
(4) 前報で開発された計算方法では,
Tw<
Tcとされていたが, 本報では
Tw>
Tcの場合でも計算できるようにした. ここで,
Tcはクリープ又は塑性を生ずる下限の温度である.
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