当施設では,症例が脳死あるいは脳死状態に近い状態に至った時点で臓器提供オプションを提示し,最近4年間で10例の心停止下腎臓移植ドナーを得た.内訳は,外傷4例,クモ膜下出血4例,脳内出血1例,脳塞栓1例であった.20腎中17腎が移植され,16腎が良好に機能した.移植されなかった2例3腎中,1腎は直達外傷性変化があり,残る1例2腎は血栓化が著しいblue kidneyであった.このblue kidneyの1例には,遷延性低酸素状態,冷却保存液灌流なし,ヘパリン飽和不足,温阻血時間の延長が関与していた.他方,移植後機能良好の腎臓は,死亡直前の乏無尿,腎機能障害,高体温に耐久性を持っていた.今後本邦にて心停止ドナーからの腎移植を推進するためには,脳神経外科医へのさらなる啓発が必要である.
抄録全体を表示