判断は, 外界の刺激や内部状況の知覚・認知に直接関連した認知的判断と, 対人関係が関与する社会的判断に分けられる. 認知的判断には, 各種感覚受容野の一次・二次中枢と, 頭頂・側頭皮質の特殊受容野が関与する. 社会的判断および道徳的判断には主として前頭前野が重要な働きをなす. 行動は上記判断に基づいて, 過去の学習・記憶に基づいて言語または動作として, またはその両者として発現し, 常に認知・判断にフィードバックされる. そのため, 判断と行動は密接に関連している.
行動には反射性, 衝動性, および計画的の3種類がある. 反射性動作・行動には, 視覚刺激に対して上丘, 聴覚刺激に対して脳幹網様体, および疼痛刺激に対して中脳水道周辺灰白質が重要な働きをなす. それに対して衝動性動作・行動については, パーキンソン病患者に対するL-dopa長期治療中に起こる衝動調節障害, 病的賭け, および同じ行動を反復するpundingが注目される. これには腹側線条体とドパミン作動性中脳辺縁系を結ぶ回路が関係し, 報酬と動機付けおよび薬物嗜癖との関連が注目されている. 計画的行動については, 運動準備脳電位の研究により, 単純な随意運動の場合にはまず前補足運動野, そして固有補足運動野が両側性に, そして外側運動前野が次第に対側性に興奮するのに対して, 複雑な運動では左頭頂葉から活動が始まる. 動作・行動の意図・意志が脳のどの部位でいつ起こるかについてはまだ定説がない状態である. 高次脳機能の皮質局在はある程度明らかにされてきたが, 近年は皮質機能局在論から発展して, 皮質領域間の機能連関が究明され, 臨床的には大脳白質傷害による機能連関の遮断, すなわち離断症候群が注目されている.
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