塞栓術や定位的放射線療法が導入されても, マイクロサージェリーによる摘出が脳動静脈奇形(AVM)の最も完全な治療法であることは変わりはない.したがってeloquent areaの病変に対しても摘出の可能性を検討することが重要であるが, そのためには適切な摘出技術の獲得が不可欠である.AVMの摘出に際して問題となる技術的要因には, 機械的損傷, 熱損傷, 動脈性および静脈性脳虚血および出血があるが, 機能的領域の手術では可能なかぎりこれらを回避しなければならない.機械的損傷を避けるためには, ナイダスの真の境界に沿って剥離, 切除を行う, ナイダス側の組織のみを圧排する, 脳溝を丁寧に, 広範囲に開く, 切除断面の保護, シャープで確実な凝固止血などの注意がいる.熱損傷にはよい凝固摂子と非電解質液の灌流が, 虚血と出血の回避にはAVMの病態生理の正確な理解が不可欠である.これら技術的問題の改善によって, 脳表の機能的領域のAVMでもグレードII, IIIの病変はマイクロサージェリーで安全に摘出することができる.しかしグレードIVの症例ではなお課題が多い.摘出技術について具体的に記載するとともに, 治療上の示唆を与えると思われたグレードIVの1症例を呈示した.
抄録全体を表示