第3脳室腫瘍に対する接近法として,経終板法がある.この接近法のポイントは終板付近の解剖を熟知することである.頭蓋咽頭腫の場合術後尿崩症になることが多いが,下垂体柄はぜひとも保存すべきである.そのためには下垂体柄が第3脳室壁に移行するが,腫瘍が存在する場合には腫瘍によって左右上下に圧排されていることがほとんどであるので,下垂体柄の下垂体入口部をいち早く見つけて,柄がどの方向に圧排されているかを察知し,その部分を損傷しないように最大限の努力をすることである.その際に役だつのは,Dawson's arteryが下垂体および柄に密接に関係していることと,さらに視父叉がOrefixedである場合には鞍結節や蝶形骨平面を削除することである.われわれは現在までに,終板を経由して12例の手術を行った.頭蓋咽頭腫4例,視床下部グリオーマ4例,胚細胞腫2例,下垂体腺腫1例,転移11生腫瘍1例である.頭蓋咽頭腫では1例の再手術例を含めて全例で全摘し得た.下垂体柄は全例保存可能であったが,尿崩症をDDAVPでコントロールしているが,将来離脱できると思われる.半球間裂接近法では1.5〜2cmのスペースがあれば,4.5cm以上の腫瘍でも全摘可能であった.全例で上矢状静脈洞に流入する橋静脈を保存し得た.
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