Brain-Machine Interface (BMI) は脳信号と外部機器とのインターフェイスであり, 出力型, 入力型, 脳機能調節型, 欠損補塡型などに分かれる. 近年, 脳情報解読技術と脳信号計測技術が急速に発展したことで, 企業の参入や投資が加速し医療応用が現実的な課題となっている. また, BMIを用いたニューロモデュレーションの医療応用も期待される. BMI利用により神経活動に可塑的変化を誘導し, 精神神経疾患を治療することを目指す. 本稿では, BMIの開発と臨床応用について, 国内外の状況を概説し, その臨床応用について, われわれの取り組みを紹介する.
グローバル化が進む現代とはいえ世界が均一化したわけではなく, ローカルな特色・強みを生かした研究が世界に貢献する可能性は依然高く, つまり “グローカル” な研究開発の重要性は高い. 悪性脳腫瘍の基礎・臨床研究においても, これまで日本はその強みを生かして人材を輩出しつつ世界に貢献してきており, 一連の胚細胞性腫瘍に関する研究や, 転移性脳腫瘍に対する定位手術的照射のエビデンス創出もその例であろう. 現在も, 日本ならではの研究開発が数々行われており, 成功裏にそれらを世界に発信できることが期待される. 一方で, 日本の研究者を取り巻く環境は厳しさを増しており, 能力を十分発揮できるような研究環境の整備は急務である.
幹細胞の出現によって幹細胞由来神経細胞移植による神経再生に期待が寄せられている. 特に移植細胞による神経回路再構築は, これまでの薬物治療や遺伝子治療とは違った作用機序であり, より根本的な効果が期待される. 一方, 移植に必要な細胞の製造法や移植後の神経接続の制御, 腫瘍形成など克服すべき課題も多い. これまでパーキンソン病を主な対象として細胞療法が発展し, すでにES/iPS細胞由来ドパミン神経細胞の移植が臨床試験として行われている. さらに脳梗塞に対する開発研究も進んでいるが, 大脳オルガノイドを用いて大脳皮質ニューロンの誘導も可能になっており, 今後の発展が期待される.
もやもや病は東アジアに多い原因不明の頭蓋内動脈狭窄症で, 小児と若年成人の脳卒中の原因として重要である. 疾患感受性遺伝子RNF213の多型は発症年齢, 臨床的重症度, 血管病変進行との関連が知られており重要である. またRNF213遺伝子多型は血管外径狭小化, 壁菲薄化を特徴とするnegative remodelingとの関連も報告され, 病態解明が進んでいる. 外科治療においては虚血例に加えて出血例に対するバイパス術の効果が明らかとなり, もやもや病に対する手術適応は拡大傾向にある. 局所過灌流やwatershed shift現象など本疾患に特徴的な術後脳循環の診断と適切な術後管理による合併症回避が重要である.
小児脳動静脈瘻は非常にまれな疾患である. 高流量のシャントを有する場合は心不全などを発症し, 脳出血, 痙攣, 脳局所症状で発症することもある. 新生児期の心不全は死亡の原因となるため早急な治療が必要となる. しかし, その治療に関しては定まった方法はなく個々の症例に応じてコイルやn-butyl cyanoacrylate (NBCA) を用いてtransarterial embolization (TAE) やtransvenous embolization (TVE) などを行った症例が報告されている. 今回, われわれは出生直後に心不全を契機に診断された脳動静脈瘻に対してコイルを併用したNBCAによる塞栓術を施行し, 良好な臨床転帰を得たので報告する.
総頚動脈が閉塞しているにもかかわらず同側の内頚動脈が順行性に流れている病態はきわめて珍しい.
患者は73歳男性. 頚部MRAと3D-CTAを行うと, 左総頚動脈の描出はみられなかったが, 左内頚動脈は描出されていた. 頚動脈エコーでは左総頚動脈は分岐部で完全閉塞しているものの, 近位総頚動脈には緩やかな血流を認め, 左内頚動脈には順行性の血流が確認された. 脳血管造影では左CAGで左総頚動脈に緩やかな造影剤の流入を認め, 総頚動脈分岐の近位まで造影された. 左VAGでは左椎骨動脈筋肉枝と左後頭動脈が吻合しており, 外頚動脈から総頚動脈分岐部のわずかな隙間を通って左内頚動脈が描出された.
総頚動脈閉塞の症例で頚動脈血栓内膜剝離術による血行再建を行った.