多くの骨粗鬆症性圧迫骨折 (以下OCF) は腰痛を主訴に発症し, 椎体高は減じても自然に軽快している. しかし, 偽関節形成や進行性椎体圧潰を引き起こし, 疼痛が遷延しADLの低下や神経障害を呈する症例も少なからず存在する. OCFの保存的治療は急性期治療と慢性期治療に分けられる. 偽関節形成や進行性椎体圧潰などの予防を目的とした急性期治療は安静, NSAIDsやコルセット治療を行う. 受傷後の画像診断で偽関節形成や進行性圧潰を早期に発見することがOCFの急性期治療に重要である. 骨粗鬆症治療薬として, ビスフォスフォネート製剤などを中心とした骨吸収阻害薬とテリパラチド製剤などを中心とした骨形成促進薬があり, それらの薬剤の功罪の理解が重要である. 保存的治療が無効で, 偽関節形成や進行性圧潰により疼痛の遷延や神経症状が出現する場合には手術治療が必要となる. 椎体形成術としてブロック型人工骨や骨セメントなどの充塡や椎体の圧を軽減するための穿孔術などが低侵襲手術として行われている. 最近では2011年に保険収載され, 近年多くの施設で治療可能となったBKP (balloon kyphoplasty) も椎体形成術の有用な手技と思われる. 刻々と変化する可能性のあるOCFに対して, 治療方法の利点と欠点を十分に吟味しながら治療にあたることが必要である.
頚椎後縦靱帯骨化症 (OPLL) に対する標準的な術式として, 前方アプローチによる除圧固定術と後方アプローチによる椎弓形成術が行われている. OPLLは増大傾向を示すため, 前方手術による骨化巣切除が望まれるが, 3椎間以上に及ぶものでは技術的困難と高い合併症率を伴うため後方手術が選択される傾向にある. 長期成績をもとにした術式選択基準, 硬膜骨化の予測と前方手術後髄液漏の予防, 後方手術における固定術の必要性についてコンセンサスが得られつつあるが, さらに患者の年齢・症状・全身状態を総合的に検討して術式を決定する必要がある.
頭蓋頚椎移行部はその解剖・機能の特殊性からさまざまな術式が存在し, それぞれが複雑である. この部に特異的で代表的な術式として, 除圧術としては後側方アプローチ, 経口手術, 固定術としては環軸椎固定, 後頭頚椎固定, 前方歯突起スクリュー固定などがある. そこで, これらの術式の中から最適な手技を判断して選択し, また, 選択された手技を適切に施行することが重要となる. ここでは頭蓋頚椎移行部病変の手術において術式選択と手術のポイントについて述べる.
慢性硬膜下血腫は脳神経外科領域で遭遇する機会の多い疾患であり, 治療法としては穿頭術が標準的な治療となっている. 血腫の排液により症状の改善を認め, おおむね良好な成績を得ているが, 術後血腫の再発をまれならず経験する. 今回当院で経験した慢性硬膜下血腫の再発危険因子を検討し文献的考察を加えて報告する.
2014年1月1日~2015年7月31日に当院で手術を施行した慢性硬膜下血腫187症例 (222手術例) を対象とし, 患者因子, CT所見について後方視的に比較した.
再発は187症例中26症例に認め, 再発率は13.9%であった. 統計学的に有意差 (p<0.05) を認めた再発危険因子は, 患者因子では年齢, 高血圧の既往, 抗凝固薬の内服であった. 術前CT所見では, 血腫量, 正中偏位, ニボーであった. 術後CT所見ではday 1, 7での血腫縮小率であった.
再発を起こす例は術後1週間で血腫がすでに増大していることが多く, 術後翌日から1週間後にかけての血腫増大または増大率により, 再発を早期に予測できると考えられる.
頚椎症性脊髄症に対して行われた前方除圧固定術の治療成績を, 固定方法, 固定椎間数について検討した. 対象は, 術後1年以上が経過し, 現在も経過観察できている330例である. 頚椎症治療判定基準 (Japanese Orthopaedics Association score), C2-7 Cobb angle, C2-7 sagittal vertical axis, 椎間高 (inter-vertebral space) を術前後で評価した.
頚椎前方除圧固定術の固定方法として, ケージによる固定が自家腸骨を用いた固定と比べて良好な結果を得た. 固定椎間数に関しては, 必要最小限の範囲 (1・2椎間) の固定に留めるのがよいと考えられた.
硬膜下血腫を合併した低髄液圧症候群の病態は複雑で, さまざまな治療法および治療経過が報告されている. その理由は, 硬膜下血腫の病態が単一ではなく, また同一症例であっても治療を行う時期によって血腫の病態が異なるためではないかと推察される. 適切な治療を行うためには, 治療を開始する時点での血腫の病態を正確に把握することが重要である. われわれは血腫の病態を把握する目的で血腫腔内圧モニタリングを試みた. 結果, 血腫の病態が可視化され, これを正確に把握することが可能となり, 適切な治療を行い得た. 本法は保存的治療が無効な, 硬膜下血腫合併低髄液圧症候群に対する治療の選択肢となり得ると思われた.
神経線維腫症1型 (NF-1) は多発性に神経線維腫や神経鞘腫を合併することがあり, しばしば難治性の神経痛の原因になる. 従来の脊髄刺激療法 (spinal cord stimulation : SCS) は術後に全身MRIが禁忌であるがゆえに, 腫瘍由来の神経痛は適応外とされてきたため有効性は検討されていない. 今回われわれはNF-1に合併した両下肢の疼痛を主訴とする多発性腰椎神経根腫瘍症例に対し全身MRI対応の新型SCSデバイスを用い良好な除痛効果を得た. SCSは脊髄神経根腫瘍に起因した根性痛に対しても有効であり, 新型デバイスの登場はMRIが撮像できないことで埋め込みを躊躇していた症例にとって朗報である.