脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 1 号
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特集 良性脳腫瘍の基本的治療方針—機能温存のために—
  • 金 太一, 吉野 正紀, 斎藤 季, 中川 大地, 庄島 正明, 武笠 晃丈, 辛 正廣, 今井 英明, 中冨 浩文, 國松 聡, 小山 博 ...
    2014 年 23 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     良性脳腫瘍では脳機能温存を常に念頭に置いた手術検討が重要である. 皮質, 伝導路, 脳神経, 神経核などの局在を把握するためには, 解剖学的情報をもとにした運動野や脳神経の同定, 拡散テンソル画像による白質の神経線維可視化, 機能MRIや脳磁図などによる機能局在の可視化などの方法がある. これらの機能画像と構造画像とを統合させた融合三次元画像は術前の機能局在の把握や手術アプローチの選択に有用である. 最近では術前機能マッピングと手術所見とを手術ナビゲーションシステムで検証することも可能である. これらのツールを用いた手術検討では, 先人たちが確立した手技・技術を継承し, それらの原理, 特性や限界を理解し, その解決策を探求することが重要である.
  • 後藤 剛夫, 國廣 誉世, 森迫 拓貴, 川上 太一郎, 寺川 雄三, 露口 尚弘, 山中 一浩, 大畑 建治
    2014 年 23 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     術前画像診断や, 手術手技, 手術機器が進歩した現在も頭蓋咽頭腫に対する治療は非常に難しく, 議論が分かれるところである. また手術法についても, 経蝶形骨洞到達法, 経眼窩頬骨弓到達法, 経大脳間裂経終板到達法, 経側脳室到達法, さらに経錐体到達法などさまざまな報告がなされている. われわれは頭蓋咽頭腫を発生部位に基づいて, 4つに細分類し, 病変に応じた手術法を選択している. 本論文では, われわれの細分類および手術法選択基準を紹介した.
  • 手術適応と機能温存
    河野 道宏
    2014 年 23 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     聴神経腫瘍の手術は, 腫瘍の摘出とともに顔面神経機能や聴機能の温存が求められる. 放射線治療が確立している現在, 手術適応について厳密さを求められるようになっている. 現在, コンセンサスが得られている手術適応は, 脳槽部25∼30mm以上の大きさの腫瘍や嚢胞性の腫瘍, 若い患者の聴力温存目的のケースや成長速度の速い腫瘍であると考えられる. 聴神経腫瘍手術における機能温存のための重要なポイントとして, 外側後頭下到達法, 機能温存のために必ずしも全摘に固執しないポリシー (内耳道内は全摘), 持続顔面神経モニタリング, 内耳道後壁の十分な開放, 腫瘍摘出の7つの進入路, 腫瘍の串刺し, 止血のテクニック等であると考えている.
  • 機能温存のために
    長谷川 光広, 林 拓郎, 長久 伸也, 安達 一英, 森谷 茂太, 我那覇 司, 稲桝 丈司, 早川 基治, 廣瀬 雄一
    2014 年 23 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     深部髄膜腫は, アプローチの選択に加え, 深部静脈, 脳神経, 脳幹等からの剥離操作が機能予後に直結する. 連続293例の髄膜腫手術から深部髄膜腫を抽出しその頻度, 局在, 脳神経機能温存率, 至適アプローチ等に関し後ろ向きに検討した. 視機能障害を有する傍鞍部病変36例における視機能改善率は89%, 半球間裂アプローチ30例における嗅覚温存率は93%, 内耳道内進展を有する聴覚障害9例の改善率は44%であった. 重要構造からの剥離操作のいかんが術後の機能予後を大きく左右するため, 剥離部位を直視下にできるアプローチの選択とそのための術前の詳細な画像検査, 内頚動脈系を含む術前塞栓術, 多段階手術, 腫瘍活性ならびに境界部の病理所見の理解, Simpson grade IV手術など, 考慮すべき点は多い.
  • 芝本 雄太, 荻野 浩幸, 真鍋 良彦, 岩渕 学緒, 岩田 宏満, 村井 太郎, 橋爪 知紗
    2014 年 23 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     高精度放射線治療の発展によって, 正常脳組織に対する照射を大幅に減らして, 腫瘍部に線量を集中することが可能となったため, 良性脳腫瘍に対する放射線治療の役割が増加している. 本稿では, 種々の高精度放射線治療装置の特徴を比較し, どの装置が良性脳腫瘍の治療に適しているかを考察する. また聴神経腫瘍, 頭蓋咽頭腫, 下垂体腺腫, 髄膜腫の最新の治療成績について, 著者らの経験を中心に紹介する. これらの腫瘍の高精度放射線治療による局所制御率は60~95%程度であるが, 腫瘍が大きい場合は制御率が不十分となる傾向があり, さらに最適な線量分割方法の検討等が必要である. また, さらに新しい粒子線治療の応用も将来の検討課題である.
温故創新
総説
  • 沖田 典子, 成田 善孝
    2014 年 23 巻 1 号 p. 46-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     悪性脳腫瘍の臨床試験におけるエンドポイントは, 治療開始からの全生存期間や無増悪生存期間が一般的に用いられる. 神経膠腫の中でも最も予後の悪い膠芽腫に代表される悪性脳腫瘍の病態の本質は, 神経学的な悪化による日常生活機能の低下である. 神経膠腫患者でも長期生存患者が増えるにつれ, 生存期間の延長だけではなく, 「いかによく, 長く生きるか」を評価する必要がある. 悪性脳腫瘍の手術・放射線治療・化学療法による認知機能や健康関連QOL (health-related quality of life : HRQOL) の低下が問題となっているが, 悪性脳腫瘍についての研究は国内ではいまだ不十分である. 国内における悪性脳腫瘍についてのQOL研究を確立するために, QOL研究の評価法について解説し, 研究論文のレビューを行った.
原著
  • 超音波検査スクリーニング10年間の経験
    渡部 憲昭, 藤井 康伸, 荒井 祥一, 今田 隆一
    2014 年 23 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     過去10年間3施設において, 脳卒中急性期患者のDVT対策として, 弾性ストッキング着用および超音波検査による早期スクリーニングを行ってきた.
     DVT非予防群30例とDVT予防群1,063例との比較では, 中枢側DVTの発生率は20%から2.5%へ減少し, 弾性ストッキングによる有意なDVT予防効果 (オッズ比 : 0.10) を認めた. DVT予防群1,063例の施設別DVT発生率の検討では, 中枢側DVTの発生率と看護体制との関連が示唆され, 下腿DVTの発生率は各施設の超音波診断能を反映した. 下腿DVTの経時的変化を観察した51例では, 中枢側へ進展した症例はなく, 下腿DVTは脳卒中患者においては安全な経過をとるものと考えられた.
     超音波検査によるDVTスクリーニングの要点は, 中枢側DVTを見逃さないことであり, 下腿静脈の観察は簡略化してもよいと思われる.
症例報告
  • 湯澤 美季, 新村 核, 堀 智勝, 澁谷 誠, 松尾 成吾, 朝来野 佳三, 善本 晴子, 白水 秀樹, 石田 敦士, 森山 貴
    2014 年 23 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/25
    ジャーナル フリー
     症例は38歳女性で, 4年前に右聴力低下を発症し徐々に進行していた. 頭部CT上右側頭骨に腫瘍を認め, 前医にて外耳道経由で生検を行いchondroblastomaと診断された. 右聴力低下以外に神経学的異常所見は認めなかった. 頭部CT上右側頭骨内に37×34mm大の腫瘍が存在し下顎関節突起の一部に破壊像を認め, 内耳道と三半規管にも浸潤を認めた. 顔面神経モニターを用い, 機能温存可能な範囲で腫瘍を可及的に切除した. 術後一過性に軽度顔面神経麻痺を認めたものの改善した. それ以外の新たな神経脱落症状はなく独歩退院となった. 最終的な病理学的診断は生検と同様でchondroblastomaであった. 側頭骨に発生するchondroblastomaはまれな骨腫瘍であり, 過去の報告を渉猟し検討した.
神経放射線診断
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