20世紀末から発展した神経内視鏡外科において, 日本でグローカル化された機器, 手技, 教育システムの果たした功績は多大である.
実臨床と機器開発が調和を保ちながら, 独創的視点をもった軟性電子スコープ, 透明シース, パッシブ・ロボティックアーム・ホルダーなどの機器が開発され, これらはシリンダー手術に代表される新たな手術概念を生み出した. また早期から運用された技術認定制度とシミュレーション・トレーニングの導入は, 鏡視下手術を標準化し, 国外でもロールモデルとなっている.
機能神経外科は脳神経外科で最も古い分野の1つで, 日本でも戦前から行われてきた. 定位脳手術はかつては世界をリードし, 楢林博太郎, 佐野圭司らを中心に, 脳神経外科医の多くが行っていた. また, 現在の神経内視鏡, ナビゲーション, 術中モニタリングなどは低侵襲と精度を重視する本分野から発展した. 1960年代の日本でのForel H. Fieldの研究をもとに, 同領域の手術が現在世界的に注目されつつある. 2000年以降, 脳深部刺激の出現で定位・機能神経外科は再び隆盛をきたした. しかし, 国内にはまだ未治療の患者が多く, 脳神経外科がより社会的に評価されるためにもより多くの脳神経外科医が機能神経外科に関与する必要がある.
本態性振戦に対するMRガイド下集束超音波治療 (MRgFUS) の術後早期の治療効果変動と6~12カ月の治療効果を検討した. 視床腹側中間核MRgFUSを受けた本態性振戦患者23名のうち18名 (78%) はclinical rating scale for tremor (CRST) 改善率が50%を超えた. 50%以下の改善不良例は5名 (22%) でMR T2強調画像の凝固巣が有意に大きかった. 術後1~3カ月の治療効果減弱は8名に現れ, 術後6~12カ月に改善不良となるオッズ比が8.33であり, 早期の治療効果減弱は中長期の振戦改善が不良となり得ることが示唆された.
大型髄膜腫により上矢状静脈洞の狭窄・閉塞を認める症例では板間静脈が側副血行路として発達していることがある. 大出血や静脈性梗塞を防ぐためにはこれら板間静脈を可能なかぎり温存することが望ましいが, 板間静脈の温存法について言及している文献は乏しい. 今回, われわれは板間静脈を温存したうえでの腫瘍切除を行ったため報告する. 3DCTAは術前に腫瘍, 上矢状静脈洞および板間静脈の位置関係の把握に, 脳血管造影検査は詳細な静脈灌流動態の把握に有用であった. 術中はこれらの情報をもとに板間静脈を損傷しない開頭が必要であった.
転移性頭蓋骨腫瘍摘出に伴う皮膚欠損に対し回転皮弁による再建を行ったので報告する. 広範囲な欠損には遊離皮弁による再建が好まれるが, 整容的に良好な結果を得られないことが多い. 約30cm2の欠損に対し回転皮弁を用いて再建し, 整容的に良好な結果を得られた.
37歳女性, 乳癌化学療法中に頭蓋骨の突出病変を認め, 転移性頭蓋骨腫瘍の診断となった. 6カ月後の頭部MRIで腫瘍は著明に増大し, 上矢状静脈洞内および真皮へ浸潤を認めたため, 化学療法を中断し外科的切除を行った. 腫瘍摘出は1cmのマージンを確保し, 回転皮弁により欠損部を再建した. 術後1週間で患者は退院し, 化学療法を再開した.
症例は76歳男性. 1年6カ月前に膀胱全摘術を施行され担当医により再発転移はないと説明を受けていた. 2カ月前より右下肢痛を自覚し, 2週間前より右足関節の運動障害が出現し腰部脊柱管狭窄症を疑われて当院受診となった. 腰椎MRIでは症状と一致した画像所見が得られなかったこと, かつ激烈な疼痛と急速進行性に出現した下垂足から悪性腫瘍の存在を疑った. 施行したPET-CTと骨盤内MRIで腰仙骨神経幹および神経叢に骨盤内悪性腫瘍を認め病巣診断に至った.
改めて病歴, 神経学的診察の意義および, 画像検査を実施する際での検査標的設定の重要性を学び, 非常に教訓的な症例と考えられたために報告した.