慢性硬膜下血腫2例の血腫腔内を神経内視鏡で観察する機会を得たので,神経内視鏡の本疾患に対する可能性を検討した.血腫腔内を観察する場合,血液による混濁が視野を妨げ,また狭い血腫腔内での操作あるいは脳表付近での細かい操作がむすかしいなどの問題点があげられる.一方,治療面では神経内視鏡を慢性硬膜下血腫に応用することで,穿頭術の欠点を補える可能性が示唆された.しかし,現在行われている穿頭術による治療成績は良好であるため,神経内視鏡が一般的に慢性硬膜下血腫に応用されるには機種の改良や操作の工夫が必要と思われた.また,今回さまざまな時期の血腫,複数の血腫腔の存在,あるいは血腫腔内の線維性隔壁などの興味深い所見が確認された.今後これらの所見から,慢性硬膜下血腫の成因や血腫形成過程あるいは再発後の転帰や難治性血腫の解明を推論するうえで貴重な情報を得ることができると期待される.
抄録全体を表示