脳神経外科ジャーナル
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30 巻, 10 号
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特集 神経外傷
  • ―頭部外傷の治療と管理のガイドライン第4版での改定点を中心に―
    和田 孝次郎, 豊岡 輝繁, 大塚 陽平, 富山 新太, 戸村 哲, 竹内 誠, 三島 有美子
    2021 年 30 巻 10 号 p. 706-711
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版に沿って解説する. スポーツ脳振盪は章が独立した. 競技現場での診断にはConcussion Recognition Tool 5が役立つ. 重症化を防ぐため, JTAS (Japan Triage and Acuity Scale) 2017を用いた救急医療システムにおけるトリアージを受けることが推奨され, primary surveyとして外傷初期ガイドラインJATEC (Japan Advanced Trauma Evaluation and Care) TMに則った初期診療と全身管理が重要である. 軽症頭部外傷であっても高次脳機能障害が後遺する可能性がある.

  • ―Preventable Trauma Deathを回避するために―
    横堀 將司, 佐々木 和馬, 柴田 あみ, 金谷 貴大, 藤木 悠, 山口 昌紘, 佐藤 慎, 渡邊 顕弘, 五十嵐 豊, 鈴木 剛, 金子 ...
    2021 年 30 巻 10 号 p. 712-719
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

      「防ぎ得た外傷死 (preventable trauma death : PTD) 」 の回避を指向した初期診療はきわめて重要である. PTDは, 適切な診療を行えば救命し得た (予測救命率>50%) にもかかわらず, それらを怠ったために救命できなかった外傷死亡を指す. わが国においても外傷治療の標準化が強調され, その努力によって頭部を含む多発外傷における死亡率, 予期せぬ死亡 (unexpected death≒PTD) は減少しているが, 依然1割の患者死亡が防ぎ得た死亡である. われわれが検討したデータでは頭部外傷に関するunexpected deathのうち, 急激に病態が悪化するtalk and deteriorate症例が26.2%, 抗血栓薬内服患者がその26.8%と多くを占めていた. ゆえにPTDを撲滅するためには高齢者頭部外傷の増加や抗血栓薬内服患者の増加への対策が急務である.

     外傷診療の初期治療には刻一刻と変化する病態生理に先んじたdecision makingが求められている. 気道, 呼吸, 循環の的確な評価と維持に加え, 的確なタイミングでの抗凝固薬中和や抗線溶薬 (トラネキサム酸) 投与の知識も必須である.

     本稿では, 頭部外傷診療の “first one hour” に焦点を当て, 初期診療における重要点を提示したい.

  • 末廣 栄一, 河島 雅到, 鈴木 倫保
    2021 年 30 巻 10 号 p. 720-725
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     頭部外傷では, それぞれの患者の病態は異なり, 脳循環代謝は経時的に変化する. そのような患者に対して, モニタリング下に適切な治療を行う神経集中治療が注目されている. 神経集中治療の要点として, ①脳灌流圧/頭蓋内圧の管理, ②輸液/電解質の管理, ③呼吸管理, ④鎮静/鎮痛管理, ⑤体温管理, ⑥痙攣の管理が挙げられている. 近年, 神経集中治療の発展は著しい. 日常診療の中でも実践しやすいように, 頭蓋内圧モニタリングや脳組織酸素分圧を指標とした神経集中治療アルゴリズムが検討され転帰の改善を得ている. 日本においても, モニタリングを駆使した神経集中治療の普及により重症頭部外傷の転帰改善が期待される.

温故創新
原著
  • ―過去10年を顧みて―
    本田 優, 前田 肇
    2021 年 30 巻 10 号 p. 728-733
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     本誌に過去2回報告した当院の脳神経外科ホットラインの結果と, 直近の過去4年間の385例のデータを比較検討した. 男性205例, 女性180例, 平均72.9歳, 救急車搬送340例で, 全例入院していた. 当科疾患は367例で, 脳卒中297例が最多であった. 過去の報告に比し, 年齢, 当科的疾患割合 (95.3%), 脳卒中適合率 (90.5%) が今回も有意に増加し, めまい疾患/高血圧性脳症/低血糖など脳卒中類似疾患数が11例に減少していた. 麻痺・言語障害患者に特化した対応の増加と, 類似疾患の減少の結果最終形に到達したと考えられたが, 2021年から人員削減となりいったんその役割を終えることとなった.

症例報告
  • 高平 良太郎, 出雲 剛, 廣瀬 誠, 白川 靖, 力武 美保子, 青木 茂久, 戸田 修二, 松尾 孝之, 北川 直毅
    2021 年 30 巻 10 号 p. 734-739
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     症例は61歳男性, 難治性の左顔面痙攣にて当科外来で経過観察中, 症状増悪傾向であったため加療目的に入院となった. 頭部MRIでは, 脳幹前面から左小脳橋角部にかけて不整形な腫瘍性病変を認めた. 腫瘍と前下小脳動脈が左顔面神経のroot exit zoneを圧迫していた. 症状改善目的に開頭腫瘍部分摘出術および微小血管減圧術を施行した. 病理診断はchordomaであったが, MRIの結果や臨床像から最終的にecchordosis physaliphoraと診断した. Ecchordosis physaliphoraは通常無症候性であるが, 発生母地から脳神経圧迫により症候性になり得ることもあると考えられる.

  • 榊原 陽太郎, 中村 歩希, 小野寺 英孝, 川口 公悠樹, 相田 芳夫
    2021 年 30 巻 10 号 p. 741-747
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル フリー

     カーニー複合は, 皮膚色素沈着, 心臓粘液腫, 内分泌腫瘍を主要徴候とする遺伝性疾患である. 症例は20歳女性で, カーニー複合の責任遺伝子であるPRKAR1Aの変異を認めた. 上下口唇に色素性病変がみられ, 血糖負荷では成長ホルモン値は抑制されなかった. MRIのT2強調画像では高信号域の微小な腫瘤が下垂体内部にみられた. 経蝶形骨洞手術により, 灰白色の腫瘤を摘出した. 病理学的には腫瘍細胞はGH陽性でPRKAR1A遺伝子の消失を認めた. 術後の負荷試験ではGH値は抑制され, 経過観察中である. カーニー複合は一般の脳神経外科医にはなじみが少ないと思われ, 本例を提示して本疾患の基本的事項を報告する.

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