脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
23 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集 頭蓋頚椎移行部手術のための神経外科解剖 I
  • 河島 雅到, 松島 俊夫
    2014 年23 巻2 号 p. 108-113
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     今回われわれは, 大孔外側部の微小外科解剖を述べるとともに, transcondylar fossa approach (TCFA) について解説した. TCFAでは, 環椎後頭関節を傷つけずに顆窩から頚静脈結節にかけて骨削除することにより, 頚静脈孔レベルで延髄外側部に広い術野を確保することができる. また, 実際にこの部位の病変を手術する際は, cerebello-medullary fissureを片側性に大きく開放することにより小脳の牽引を容易にし, さらなる広い術野を期待できる.
  • 整形外科の立場から
    根尾 昌志
    2014 年23 巻2 号 p. 114-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     頭蓋頚椎固定術は骨の手術であるということを認識し, 手術にあたってはbone biology, biomechanics, 頭蓋頚椎アラインメントについての知識, 理解が必須となる. これらの視点から, 頭蓋骨や上位頚椎のアンカーの特徴と注意点について述べる. 後頭骨や頚椎のインストゥルメンテーションの最大の合併症は血管損傷であり, これを予防するためには, 血管走行のバリエーションの理解と, 術前のCT angiographyやCT venographyによる椎骨動脈や脳硬膜静脈洞の評価が必須である. また, 上位頚椎のアラインメント不良が, 後頭骨頚椎固定術のもう一つの重篤な合併症である術後の嚥下障害に与える影響についても述べる.
  • 小川 徹也, 永原 國彦, 池田 篤彦, 西村 邦宏, 土屋 吉正, 岡本 啓希, 植田 広海
    2014 年23 巻2 号 p. 121-125
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     頭頚部外科医による翼口蓋窩や副咽頭間隙の手術手技は, 脳神経外科医が行う頭蓋頚椎移行部手術にとって有益と思われる.
     1) 前方から : さまざまな脈管, 神経, 筋肉が存在する. 顎動脈, 翼突静脈叢の盲目的な操作は止血に難渋する. 三叉神経損傷に注意する.
     2) 側方から : 外頚動脈, 耳下腺深葉, 三叉神経, 顔面神経, 内頚動静脈, IX~XII脳神経, 交感神経幹などが存在する. 下位脳神経の損傷は誤嚥・嗄声をきたす.
     3) 後方から : 重要な下位脳神経を温存し脳神経外科医との共同で手術を行うことも多い. 顔面神経の再建も考慮する.
     頭頚部外科医の視点から, 頭蓋頚椎移行部前方の近接部位に関連する手術操作について述べた.
温故創新
総説
  • 新井 大輔, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 富永 貴志, 河岡 大悟, 堀川 恭平
    2014 年23 巻2 号 p. 128-135
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     正中型ヘルニア, 特に正中型巨大ヘルニアに対して通常のLove法では摘出に難渋することがある.
     今回われわれが過去7年間に経験した正中型巨大ヘルニア症例を対象に, 選択した術式の優劣について検討を行った. 今回のシリーズで椎間板ヘルニア摘出に際して採用したアプローチとしては片側部分椎弓切除によるアプローチを行ったもの5例, 両側椎弓切除によるアプローチを行ったもの5例, 一側の椎間関節切除を行い, ヘルニア塊摘出後に椎弓根スクリュー法による固定を行ったもの1例, 経硬膜到達法によるアプローチを行ったもの1例だった.
     どの術式にも一長一短があり, 術前の画像を詳細に評価し, 症例ごとに適切な手術法を選択するべきである.
原著
  • 成澤 あゆみ, 成田 徳雄, 冨永 悌二, 岩崎 真樹, 神 一敬, 中里 信和
    2014 年23 巻2 号 p. 136-140
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     正確なてんかん診断には詳細かつ的確な病歴聴取が必須であるが, 全国のてんかん専門医数は限られており, 地域医療の現場では専門医による早期介入が困難である.
     本研究では, 東日本大震災の被災地にある公立病院脳神経外科を受診したてんかんあるいはてんかんを疑われた患者9例 (15~53歳, 男性5例) を対象に, 大学病院てんかん科の専門医が, インターネットを介したテレビ会議システムを用いて遠隔外来診察を試みた. 4例は治療方針検討, 5例は診断目的の受診で, 全例において通常の対面外来診察と同等の診療が可能であった. 診療報酬上の措置がないなど運営上の問題点はあるものの, 過疎地域への医療支援として今後の応用が期待される.
  • 岡田 富, 藤津 和彦, 市川 輝夫, 向原 茂雄, 宮原 宏輔, 谷野 慎, 瓜生 康浩, 畑岡 峻介, 新野 史, 柳下 三郎
    2014 年23 巻2 号 p. 142-149
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     頭蓋咽頭腫手術において内分泌機能温存と根治切除とは相反する目標となる. われわれは長期経過観察した57症例を分析し, 内分泌機能の温存は腫瘍の発生が視床下部—下垂体柄付着より末梢であればその可能性が高くなり, 付着部やさらに中枢に発生した腫瘍では解剖学的に下垂体柄を温存してもその機能温存はほとんど不可能であるとの結論に達した. さらに摘出標本を病理組織学的に検証し, 根治的剥離面と考えられる切除範囲を考案するに至った.
     今回われわれはこの結論に基づいた根治率を高める到達法ならびに摘出法について論ずる.
症例報告
  • 小野 元, 小林 敦, 神野 崇生, 小菅 康史, 田中 雄一郎
    2014 年23 巻2 号 p. 150-155
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     不自然なくも膜下出血分布を呈し, 破裂動脈瘤の診断を誤った多発脳動脈瘤症例を経験した. 症例は32歳女性, 頭痛を主訴に来院した. CTで右側シルビウス裂と不連続に脳幹前面に出血を認め, 造影CTでは右側内頚後交通動脈瘤と脳底動脈窓形成部動脈瘤を認めた. 出血分布の左右差から右側内頚後交通動脈瘤を破裂源と考え, 急性期にクリッピング術を行った. しかし初回手術時に破裂源の動脈瘤であるかどうかの判断が不十分であったため, 追加治療を予定していた矢先, 出血源であると思われる脳底動脈窓形成部動脈瘤が再破裂し血管内治療にて加療した. 今回の多発動脈瘤症例においては破裂動脈瘤の診断が不十分であったため, 再破裂をきたすこととなった. 多発動脈瘤における破裂動脈瘤の診断には困難な症例が存在するが, 予後に直結するため正確な術前術中所見の判断が重要である.
  • 横須賀 公彦, 平井 聡, 高井 洋樹, 西山 徹, 松下 展久, 戸井 宏行, 松原 俊二, 平野 一宏, 宇野 昌明
    2014 年23 巻2 号 p. 156-163
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
     脳脊髄液減少症 (低髄液圧症候群, 脳脊髄液漏出症) の中に重篤な経過をとる症例があり, われわれは1死亡例を本誌にて報告した. 重症例では症状が急速に悪くなることが多く, 迅速な治療が求められる. しかし, 多くの症例で硬膜下血腫を合併しており, 増悪因子が脳脊髄液減少によるものなのか硬膜下血腫によるものかを判断することはしばしば困難である. われわれは, 重症例における治療方針を考え, 3症例に対し治療を行い良好な成績が得られたので報告する. 治療の特徴は, (1)頭部造影MRI所見のみで診断し治療を開始し, (2)厚い硬膜下血腫に対しては穿頭血腫ドレナージ術を先行させ, (3)ブラッドパッチはL1-2の高さで行うことである.
神経放射線診断
feedback
Top