脳神経外科ジャーナル
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32 巻, 1 号
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特集 脳神経外科日常診療
  • 野崎 和彦
    2023 年 32 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のpandemicの中, 本邦では感染症法において 「新型インフルエンザ等感染症」 として位置づけられ, 新興感染症への対策の必要性と困難性が再認識されている. COVID-19に対する有効なワクチン開発が急速に進められ, 重症化リスクを軽減させるなどの効果がみられるが, ワクチンの効果には限界もあり, 医療と社会経済活動の両立も困難となっており, COVID-19が日常および救急診療に与える影響は依然として深刻である. 本稿では, COVID-19と脳神経外科診療について各種指針を踏まえ概説し, 変異株により変遷するCOVID-19の対応策の方向性についても言及する.

  • ―私の場合―
    君和田 友美, 冨永 悌二
    2023 年 32 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     小児脳神経外科医として働きながら, 妊娠/出産/育児を経験した筆者の体験談を紹介し, 産休/育休制度および待機児童問題を概説した. 日本の女性医師の割合は他国と比べると低いものの増加傾向を示しており, 以前よりも多様な診療科が選択肢となりつつある. 脳神経外科領域においても, 女性会員の割合は増えており, サブスぺシャリティの選択肢も広がっている. 多様な条件下で多彩な働き方や価値観を尊重するためには, 不公平感を払拭する必要があり, 能力に対する評価や報酬, 昇格/降格などといった人事評価を客観的にできる仕組みが望ましい.

     国民に対して安定的な脳神経外科診療を提供するためには, 脳神経外科医の確保が喫緊の課題であるという問題意識を皆が共有する必要がある.

  • 馬場 武彦
    2023 年 32 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     2024年4月から始まる医師の時間外労働規制において, 時間外労働の上限は休日労働を含めて原則年960時間となり, 年1,860時間の上限が一部の医療機関に条件付きで暫定的に定められることになった. 医療機関は勤務医の労働環境の改善, 取りわけ勤務量の削減に注力しなければならないが, 労働時間を大きく左右する宿日直許可の取得をはじめとする夜間の勤務体制の構築と自己研鑽の切り分けを短期的には最優先事項とすべきである. 他職種へのタスクシフトの推進も重要であるが, これには脳神経外科医の意識改革が必要である. 脳神経外科においては, 夜間の脳卒中患者に対応するために, 拠点化や集約化が進む可能性がある.

  • 長谷部 圭司
    2023 年 32 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     日本において, informed consentの意味が取り違えられており, その結果患者の自己決定権が侵害されている. Informed consentとは 「十分に説明を受けたうえで行った同意」 という意味であり, あくまでもその主体は患者本人であって医師ではない.

     そして, 患者がinformed consentを行うことができるよう, 医師は医師法17条を根拠として情報提供を十分に行う法的義務があるのだが, これが説明義務と呼ばれるものである.

温故創新
症例報告
  • 近藤 静琴, 田村 郁, 田中 洋次, 荒井 雪花, 藤岡 舞, 原 祥子, 稲次 基希, 小林 大輔, 横山 幸太, 山村 俊弘, 前原 ...
    2023 年 32 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     毛細血管腫は新生児や乳児の皮膚や軟部組織に好発する良性の血管性腫瘍で, 中枢神経系での発生はまれである. 術前画像での鑑別診断が困難であった脳実質内毛細血管腫の1例を報告する. 症例は57歳女性. 左弁蓋部脳実質内に境界明瞭で均一に造影される3cm大の腫瘍性病変を認めた. 術前鑑別診断に複数の腫瘍を検討したがいずれも非典型的で, 病理診断で毛細血管腫と診断された. 脳実質内毛細血管腫は過去の報告が5例のみで現時点では術前診断が困難であるが, 本症例のDWI, MRS, FDG-PET所見は, 毛細血管腫の血管性腫瘍様病変を反映していると考えられた. 病理確定例の画像所見の報告の蓄積が術前診断精度向上に重要と考えられる.

  • 殖木 洋平, 小熊 啓文, 五味 玲, 川合 謙介
    2023 年 32 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     15歳男性. 松果体部脳腫瘍に対して右前角部より神経内視鏡下生検術を施行し, tract部分には止血と髄液漏予防のために吸収性ゼラチンスポンジを留置した. 診断は未熟奇形腫で, occipital transtentorial approachでの開頭腫瘍摘出術の後, 放射線化学療法を施行した. その後, 吸収性ゼラチンスポンジが原因となり異物性肉芽腫が生じ, 摘出術を施行した. 吸収性ゼラチンスポンジによる肉芽腫形成の報告はまれではあるが, 本症例のように放射線化学療法によるゼラチンスポンジの吸収障害, ならびに体質的なアトピー素因によるゼラチンスポンジへの過剰反応により肉芽腫が形成される可能性がある.

脳神経外科診療とIT
  • 木下 学
    2022 年 32 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

     Radiomicsという研究分野が立ち上がって10年になるが, 多くの臨床医にとってまだまだ馴染みがない研究手法にとどまっている. ある程度コンピュータやプログラミングに精通していることが求められるがために, 研究手法に対して興味はあるものの多くの脳神経外科医がこの研究分野に対して二の足を踏んでいると想像する. 筆者らは脳神経外科医が可能なかぎり簡便にradiomics解析を実行できるようになることを目指して解析ツールの開発を行ってきた. 本稿ではradiomics解析の成り立ちや, われわれが構築した解析ツールを紹介する.

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