脳神経外科ジャーナル
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24 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集 手術手技の基本と応用
  • —Blading techniqueのススメ—
    水谷 徹, 杉山 達也
    2015 年 24 巻 12 号 p. 822-832
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     未破裂脳動脈瘤の手術において, morbidityの原因となるのは, clipを先端のみえない状況で挿入し, 奥の穿通枝を損傷したり, 動脈瘤と癒着する血管の剝離の際の出血, 強い牽引による脳の損傷, 血管の引きつれによる出血, 静脈還流障害など各種があると考えられる. 無理のない術者の姿勢, 両手を使った安定した確実な操作のもと, 無血の術野で, clipの深度を意識し, 先端が常にみえるベストの視野を心がけ, 穿通枝障害を避けることが重要である. またclipのデザインによって動脈瘤と血管の癒着の剝離が必要のない例も多く, 剝離は本当に必要かどうかをよくみきわめることが大切である.
  • —脳動脈瘤コイリング—
    坂井 信幸, 今村 博敏, 坂井 千秋, 有村 公一, 足立 秀光, 谷 正一, 船津 尭之, 別府 幹也, 武部 軌良, 鈴木 啓太, 奥 ...
    2015 年 24 巻 12 号 p. 833-839
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤に対する血管内治療の基本は, バルーンやステントを用いずに, 1本のマイクロカテーテルだけを用いて離脱型コイルを瘤内にできるだけ多く留置するシンプル法が基本である. 成功の鍵は, 脳動脈瘤へのアクセスとその安定で, 母血管の走行と脳動脈瘤の進展方向に合わせてマイクロカテーテルを成形して留置誘導することができ, 安定したマイクロカテーテルの保持ができるかどうかが大きな要素である. そして, 適切なコイルを選択して安定したフレーミングとコイルの充塡により根治的塞栓術を達成するように努める. バルーンやステント支援塞栓術が発展した今でも, 破裂急性期はもとより無症候性の未破裂脳動脈瘤でも, シンプルな方法で治療目的を達成するよう努めることが肝要である.
  • 宇野 昌明
    2015 年 24 巻 12 号 p. 840-845
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     頚動脈内膜剝離術 (carotid endarterectomy : CEA) は症候性および無症候性頚動脈狭窄症に対しての外科的脳梗塞予防手段として第1選択の治療法である. 本邦の脳神経外科医にとってもこの手術手技の取得は必須である. この論文は解剖学的所見に基づいたCEAの基本的な手術手技を概説する. また高位狭窄例での内頚動脈末梢周囲の剝離やパッチを使用した縫合の方法についても概説した.
  • 清水 宏明
    2015 年 24 巻 12 号 p. 846-854
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     中大脳動脈M2, 前大脳動脈末梢, 上小脳動脈, 後大脳動脈などへの深部バイパス術は比較的頻度が少ないが, 動脈瘤や虚血性疾患に対する手術として重要である. おのおの代表症例を提示し, 基本的手技と留意点を述べる. 重要な点は, 1) 頭蓋骨の庇がないよう十分骨削除し視野を確保する, 2) recipientをできるだけ長くくも膜から遊離し吻合しやすい浅い位置に場を作る, 3) M2へのバイパスではその末梢のM4にinsurance bypassをおく, 4) 血液の垂れ込みのない術野を確保する, 5) 遮断時間短縮より一針ごとに確実に吻合するなどである. これらが達成されれば, 浅部バイパス術と同様の吻合手技で手術可能と考える.
  • —Combined transpetrosal approachを中心に—
    河野 道宏
    2015 年 24 巻 12 号 p. 855-863
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     側頭骨ドリリングを用いた頭蓋底手術アプローチは, 小脳橋角部腫瘍や頭蓋底腫瘍のみならず, 後頭蓋窩のクリッピングやバイパスにも用いられ, 外科的治療を行ううえで重要な手術手技である. われわれは1,322例の小脳橋角部腫瘍・側頭骨内腫瘍に対して手術アプローチを使い分けてきた. われわれは, アプローチに要する時間の節約・S状静脈洞 (特に頚静脈球部) の損傷の危険性の回避, 聴力喪失の可能性の回避のために, 3パターンのmastoidectomyと2種類のcombined transpetrosal approachを使い分けており, 具体的に3Dイメージを用いて解説する.
  • 水野 順一
    2015 年 24 巻 12 号 p. 864-870
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     頚椎症や頚椎後縦靱帯骨化症などの変性疾患に対する手術アプローチには, 大別して前方到達法と後方到達法がある. 頚椎椎弓形成術は1973年に本邦にて初めて紹介された後方到達法であり, 広範囲椎弓切除術にみられる合併症を軽減させることができ広く使われる手術法としての地位を確立した. 椎弓形成術では拡大した脊柱管を維持する目的にて, スペーサーを使用することが一般的である. 従来はアパセラムを用いていたが, 固定法が煩雑であることや固定力の問題などが指摘されていた. 今回両開き, 片開き式椎弓形成術ともに使用可能なチタン製スペーサー (Laminoplasty Basket) を開発したので, 使用方法について解説する.
症例報告
  • 黒田 林太郎, 益子 敏弘, 中嶋 剛, 難波 克成, 山口 崇, 鈴木 司, 渡辺 英寿
    2015 年 24 巻 12 号 p. 871-877
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
     近年, 肥厚性硬膜炎 (HP) は全身性に線維性炎症をきたすIgG4関連疾患の1病型であると考えられるようになってきた. 円蓋部に限局性の腫瘤を形成するHPが大動脈炎に合併した自験例では, 病理所見でIgG4陽性細胞が10%程度認められたことなどから, IgG4関連肥厚性硬膜炎と診断した. 大動脈炎の一部もIgG関連疾患と考えられているが, 大動脈炎とHPの合併の報告は少ない. 一方, 円蓋部に限局した腫瘤形成性のHPは報告がない. このような形態を示した理由は不明であるが, 腫瘤性病変で切除可能であったこと, 急速な増大がMRIで確認されたことなどから, 摘出術を行った. 一般的にHPの治療はステロイドの投与であるが, 限局性・症候性の場合には外科的切除も考慮されるべきである.
治療戦略と戦術を中心とした症例報告
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