錐体斜台部ならびに同部の病変への進入路に存在する静脈構造に関して,4つの部位を重点的に解説する.(1)下錐体静脈洞(IPS)下端はpetrosal confluensと呼ばれる膨大部を形成,ここに周囲の静脈がいったん合流.ここから頸静脈球へは大小多数の流出静脈が出るが,血管内カテーテルが通る程度のものは必ずIX脳神経とX-XI脳神経の間に存在する.この主流出路は頸静脈球より下方(頭蓋外)に存在することも多い.Petrosal confluensに合流するものの中にinferior petroclival veinがあり,通常では細いが,異常に拡張している場合は血管内カテーテル経路として利用できる可能性がある.(2)脳底静脈叢を利用し,片側IPS閉塞例でも対側のIPSから脳底静脈叢を介して海綿静脈洞へとカテーテルを導くことができる.(3)錐体静脈は,上錐体静脈洞への流入点から,medial,intermediate,lateralの3グループに分けられる.最も存在頻度が高いのがmedial groupで,錐体静脈を構成する分枝で最も重要なvein of cerebellopontine fissureは,通常このmedial groupの錐体静脈に合流している.(4) ranspetrosal approachを行う際にはLabbe静脈を含む側頭葉から横静脈洞に架橋する静脈,中頭蓋底硬膜を走行するsphenopetrosal sinusに注意が必要である.
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