脳神経外科ジャーナル
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22 巻, 12 号
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特集 動静脈奇形と硬膜動静脈瘻の病態と治療―なにが違ってなにが同じなのか―
  • 里見 淳一郎, 永廣 信治
    2013 年 22 巻 12 号 p. 898-903
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     脳動静脈奇形 (brain AVM : BAVM) は, 一般的に, 胎生3週目頃に形成されるべき細動脈—毛細血管—細静脈の先天的形成異常が原因と考えられているが, 出生後, 特に幼児期以降のある程度成熟した後に発生することもある. BAVMの自然歴は, 血管構築・発症形式により異なることが, これまでに多く報告されている. BAVMの発生に遺伝的関与が明らかとなっているのは, 遺伝性出血性毛細血管拡張症 (hereditary hemorrhagic telangiectasia : HHT) のみである. 成人に発生する硬膜動静脈瘻 (dural arteriovenous fistula : DAVF) の多くは後天性と認識されている. 病因に関するさまざまな報告があるが, 不明な点も多い. 自然歴に関して, これまで静脈還流異常 (静脈洞閉塞, 皮質静脈逆流, 静脈うっ滞) などの血管構築上の異常が悪化に関与する因子として認識されているが, 近年, これらに加え, DAVFの発症形式が自然歴に大きく影響するとした報告が相次いでいる.
  • なにが同じでなにが異なるのか?
    栗田 浩樹, 大井川 秀聡, 竹田 理々子, 中島 弘之, 小倉 丈司, 池田 俊貴, 吉川 信一郎, 大塚 宗廣, 鈴木 海馬, 佐藤 大 ...
    2013 年 22 巻 12 号 p. 904-910
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     代表的頭蓋内シャント疾患である脳動静脈奇形 (cAVM) と硬膜動静脈瘻 (dAVF) の直達術について, “shunt-point extirpation” という視点から対比して報告する. cAVMではshunt pointは脆弱なnidusそのものであり, 手術では流入動脈を順次切断してshunt量を漸減させつつ, venous outflowを最後まで維持しながらnidusを全摘することで達成される (staged arterial approach, total shunt-point extirpation). 一方, dAVFに対する直達術の目的は出血の原因であるcortical venous refluxの解除にあり, 関与するshunt flowを選択的に静脈側より一期的にdisconnectionすることで達成される. Dural drainageがない場合 (Borden type III) はそれがcurativeとなり, dural drainageも存在する場合 (Borden type II) は出血リスクの非常に少ないBorden type I化するalternativeな治療となる (simultaneous venous approach, targeted shunt-point extirpation).
  • 松丸 祐司
    2013 年 22 巻 12 号 p. 911-916
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     動静脈シャントに対する血管内治療には, 経動脈的塞栓術 (TAE) と経静脈的塞栓術 (TVE) があり, 塞栓物質としてはコイルなどの固体塞栓物質とNBCAやOnyxなどの液体塞栓物質がある. 脳動静脈奇形 (BAVM) では, 流出静脈のみを閉塞するとナイダスが破綻し出血する. 安全に根治を得るためには液体塞栓物質によるすべての流入動脈とナイダスの閉塞が必要であるが, 小型のBAVM以外では困難である. そのため血管内治療は, 開頭摘出術あるいは定位的放射線治療の補助療法として, TAEによる流入動脈閉塞や部分的なナイダス閉塞が行われる. 一方, 硬膜動静脈瘻 (DAVF) ではナイダスは存在しないため, 流出静脈洞または静脈の閉塞により出血を生じることはなく, 根治が可能である. そのため血管内治療はDAVFに対する第一選択治療であり, コイルによるTVEか液体塞栓物質によるTAEが行われる.
  • 芹澤 徹, 樋口 佳則, 永野 修, 小南 修史, 平井 達夫, 小野 純一, 佐伯 直勝
    2013 年 22 巻 12 号 p. 917-926
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     脳動静脈奇形 (cerebral arteriovenous malformation : AVM) と頭蓋内硬膜脳動静脈瘻 (intracranial dural arteriovenous fistula : AVF) に対する定位放射線治療 (stereotactic radiosurgey : SRS) の現状と問題点を述べる. AVMに対するSRSは, 小さな (3cm以下) 手術困難な部位にある場合がよい適応である. AVMに対するガンマナイフ治療計画は三次元的にターゲットを決定し, 同部を過不足なくカバーする. 処方線量は20Gyを目標にする. 出血のリスクの高い血管構築を有するAVMに対し塞栓術を積極的に併用したAVM自験321例のガンマナイフ治療成績では, 血管撮影上の完全閉塞80%, 一過性脳浮腫40%, 放射線壊死3%, latency periodの出血率は5%, 晩発性放射線障害10%であった. 晩発性障害には放射線壊死・嚢胞や慢性被膜性血腫形成があった. 一方, AVFはIVRで残存するAVFがよい適応である. 治療計画では, ターゲットをシャント部のみに絞る方法とシャントの可能性がある静脈洞あるいは硬膜を広めに設定する方法がある. AVMよりシャント流量の減少は早期に認められ, 放射線障害は少ない.
原著
  • 本田 優, 案田 岳夫
    2013 年 22 巻 12 号 p. 927-932
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     当院では時間外の頭部外傷, 頭痛および脳卒中疑い患者等当科的疾患は, 日当直医を介さず, 直接脳神経外科医が連絡を受けるホットラインで対応している. 2009年6月∼2012年5月までの3年間に時間外に対応した症例546例を検討した.
     男性285例, 女性261例, 平均年齢65歳, 救急車搬送338例, 入院356例. 当科的疾患は372例で, 脳卒中 (207例) が最多であった. 脳卒中適合率は, 言語障害 (82.1%), 麻痺 (80.2%), 昏睡 (77.4%) で有意に高く, 頭痛 (23.6%), めまい (12.1%), 失神 (11.1%) では有意に低かった. 耳性めまい, 高血圧, 感染症, 低血糖などが適合率低下要因疾患であった.
     ホットラインはwide triageとして機能していた. 適合率を改善し, 地域医療に貢献できれば幸甚である.
  • 森本 貴昭, 安部倉 友, 花北 順哉, 高橋 敏行, 渡邊 水樹, 河岡 大悟, 富永 貴志, 寺田 行範
    2013 年 22 巻 12 号 p. 934-941
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     2003~2011年までに, 当院で腰部脊柱管狭窄症に対し除圧術を行った1,098例のうち, 再手術を行った75人 (84手術) の検討を行った. 検討項目は, 再手術の原因 (術式による比較), 合併症, 術前後JOAスコアおよび腰痛のVASスコアとした.
     再手術の原因は, 再狭窄例が最も多く, 狭窄部位としては外側陥凹, 椎間孔内外が多かった. 術式間での再手術率に有意差はなかったが, 不安定性のために新たに固定術が必要となったものは両側進入例のみであり, 片側進入例では認めなかった. 固定術では隣接椎間狭窄が多い傾向にあった. 再手術時の合併症として, 硬膜損傷が11%認められた. 再手術例の症状改善率は高齢者ほど悪かった.
     再手術の原因, 特徴を十分に把握し, 治療成績の向上に努めていくことが重要である.
症例報告
  • 臨床経過および治療の多様性の検討
    川口 奉洋, 平野 孝幸, 川瀬 誠, 刈部 博
    2013 年 22 巻 12 号 p. 942-947
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     Vertex epidural hematoma (EDH) は通常の急性硬膜外血腫のような巣症状や脳ヘルニア徴候をきたすことは少なく, 特異的な臨床症状を欠くまれな病態である. その臨床経過は, 緩徐に増悪する場合や自然軽快する場合など多岐にわたる. 今回われわれは, 異なる臨床経過をたどったvertex EDHの3症例を提示した. 1例目は神経症状が緩徐に増悪し手術を要した. 2例目は入院時意識障害を認めたが, その後急速に状態が改善し手術を要さなかった. 3例目は画像上の圧迫所見を認めたが神経症状を欠き, 保存的に加療した. 神経症状の増悪因子や手術適応についてのコンセンサスは得られておらず, 最適な手術時期を逃さないために厳重な経過観察を要すると考えられた.
神経放射線診断
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