われわれは, 12歳男児で5カ月時の左腎Wilms腫瘍(stagel, favorable histology)手術後, 7歳時の右眼窩転移に続き, 12年目に脳転移をきたした症例を経験した.手術, 放射線療法, 化学療法にて3年経過した現在, 寛解状態である.組織診断では, 腫瘍はWilms腫瘍の未分化な腎芽細胞成分で構成されていた.また, 患児の体細胞染色体には1, 9染色体長腕, 18染色体長腕の異常や8, 15トリソミーが, 培養腫瘍細胞には1染色体短腕の異常や3, 7, 8, 19トリミソーが認められた.Wilms腫瘍は, 近年治療成績が向上した小児固形癌の1つであるが, 脳転移は稀とされている.なかでも, 遅発性転移は, われわれの知り得たかぎりでは過去に報告がなく, 集学的治療により寛解せしめたので, 文献的考察を加えて報告した.
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