脳神経外科ジャーナル
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26 巻, 12 号
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特集 てんかんと機能的脳神経外科の課題と展望
  • 國枝 武治, 菊池 隆幸, 吉田 和道, 松本 理器, 宮本 享
    2017 年 26 巻 12 号 p. 856-863
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

     てんかんの治療戦略上, 病態の正確な把握が最も重要である. まず, てんかんの診断では, 病歴聴取に始まり, 発作時の症状や変化, 神経学的症状, 脳波検査, CT/MRIといった画像検査を組み合わせることが必要となる. さらに, 症例によっては, 発作時症状と脳波を記録可能な長時間モニタリングが大変有用であり, てんかん以外の発作鑑別には欠かせないものと考えられる.

     初期治療は内科治療になるが, 画像診断の発展に伴って, 外科治療も適応を広げている. 特に, 切除術において良好な発作予後を得るには, 「てんかん原性領域」 の同定が必須となる. 単一で焦点診断が可能な非侵襲的検索手法は現在までに存在せず, 複数を統合して評価に用いている. 各手法間に差異が認められる場合や機能領域との境界が不明確である場合には, 脳活動を直接記録できる頭蓋内電極による侵襲的な脳波記録が必要となる.

     しかし, 従来の手法で主に用いられてきた硬膜下電極にも限界があり, 近年, 定位的深部脳波 (stereotactic EEG : SEEG) が注目されている. また, 脳内ネットワークの変容が疾患の主体であるという疾病概念が提唱され, これに介入することで症状の緩和と良好なコントロールを得ようとする試みが始まっている.

  • 鮎澤 聡, 松村 明
    2017 年 26 巻 12 号 p. 864-872
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

     ニューロモデュレーション (neuromodulation) とは, ディバイスを用いて電気・磁気刺激や薬物の投与を行い神経活動を調節する治療を指す. 刺激や薬物投与量が調節可能であること, また治療をすみやかに中止することができる, すなわち可逆的であることが, 切除や破壊を中心としてきた従来の機能神経外科との違いとして強調される. 現在, その適用範囲は神経疾患のみならず, 内臓疾患や全身の炎症性疾患にまで広がっている. この分野の発展の背景には医工学分野の進歩があり, 光や超音波など新たな刺激や有効な刺激のためのディバイスが開発されている. 今後, それらの刺激に対する生体反応の統合的な理解が必要とされる. また倫理面の整備が必要である.

  • 山田 和慶, 篠島 直樹, 浜崎 禎
    2017 年 26 巻 12 号 p. 873-881
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

     パーキンソン病 (PD) ・不随意運動症の治療アルゴリズムにおいて重要な一角を占めるDBSについて, 現状を整理し, 近未来を展望する.

     【PD】視床下核 (STN)-と淡蒼球内節 (GPi)-DBSの総合的な優劣はつけ難い. むしろ使い分けの議論が必要であろう. 一般にレボドパ反応性の欠如は, DBS除外基準であるが, 薬剤抵抗性体軸症状を改善させ得るターゲットとして, 脚橋核 (PPN) が期待されている. Directional (current) steeringにより, 近傍脳幹構造への電流拡散が制御できれば, 副作用が低減されるであろう. 【ジストニア】GPi-DBSの効果は統計的に確立しているが, 成績は均質ではない. DBS効果の予測因子について考察する. 【本態性振戦】経頭蓋集束超音波 (FUS) 治療が登場し, 視床腹中間 (Vim) 核凝固術が再評価されている. ただし副作用の観点から, 両側FUSは現時点では推奨されない. 【その他の不随意運動症】Lance-Adams症候群, 代謝性神経変性疾患, バリズム, Holmes振戦など, まれな不随意運動症も理論上DBSの適応になり得るが, 比較的少数の症例報告にとどまる.

     新技術導入によるDBSの発展を推進する一方で, 疾患および患者特性に基づいた適応の最適化が必要である.

  • 内山 卓也, 吉岡 宏真, 布川 知史, 加藤 天美
    2017 年 26 巻 12 号 p. 882-891
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

     痙縮は脳卒中・頭部外傷などの中枢神経障害に伴う筋緊張亢進を主体とし, 脳神経外科医が日常診療でしばしば遭遇する神経症状である.

     日本での痙縮の正確な有病率はわかっていないが, 海外の報告では, 脳卒中の35%以上, 重度の頭部外傷の75%の患者が痙縮を呈すると報告されている. 日本の脳卒中患者は2014年の調査では約118万人と報告されており, 痙縮患者だけでも41万人以上いることとなる. また脳卒中後以外の原因に基づく重度痙縮症例も8万人以上いると推計されている. 現在までボツリヌス療法は約5万症例, ITB療法は約1,700症例にとどまっており, これらの治療の恩恵を受けている患者はまだ少ないと考える.

     痙縮治療を発展させるためには, 痙縮に対する治療法の特徴を知り, 患者および患者家族, メディカルスタッフを含めた痙縮治療教育とリハビリテーションを中心とした地域連携の体制作りが重要である.

  • 貴島 晴彦, 柳澤 琢史, クー ウイミン, 枝川 光太朗
    2017 年 26 巻 12 号 p. 892-898
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

     脳機能解析, 特に生理学的な視点からの脳内のネットワーク解析が急速に進んでおり, 神経疾患の解明や克服, さらに脳の情報処理機構を機械学習や人工知能に応用することが期待されている. 諸外国でも多額の資金を投入し研究プロジェクトが立ち上がっている. 本稿では脳内ネットワークについて概説するとともに, 最近の特発性正常圧水頭症と側頭葉てんかんに関する脳内ネットワーク研究について紹介する.

総説
  • 末廣 栄一, 甲村 英二, 鈴木 倫保
    2017 年 26 巻 12 号 p. 899-909
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/25
    ジャーナル フリー

      “専攻医” の先生方が未来のキャリアデザインを作るために現状把握をすることを目的とし, 実態調査アンケートを行った. 各専攻医宛てにアンケートサイトから調査を行った. 内容は, 専攻医の背景, 研修プログラムの満足度・充実度, 将来の希望などであった. アンケートの回答率は39.9%であった. 現行のプログラム選択理由として, “出身大学であること” が最も多かった. 研修プログラムに対しては概ね満足していたが, 病院からの処遇についてはやや満足度が低下していた. 各分野における充実度では, 脳血管障害では高いものの, 小児脳神経外科では低く各分野間での充実度の差が顕著であった. 研修プログラムの構成施設などの工夫が必要である.

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