日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
Print ISSN : 0288-0334
ISSN-L : 0288-0334
32 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 瀧口 美絵
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論文では,国語教育における視覚メディアの教育の位置づけを考える基礎として,1920年代から1930年代にかけて国語教育に影響を与えた「形象化」概念について検討した。「形象化」概念は,垣内松三の『国語の力』を源流とし,『形象と理会』によって具体化される。『国語の力』における「形象」は文章を読んで理解している過程のイメージのみを指しているが,『形象と理会』では,「語」だけでなく「絵」という視覚メディアの要素が新たに加えられたことが明らかになった。その際,「絵」は「語」と同様に,読みの対象とされた,この垣内の「形象理論」を具体化するために石山脩平は,「形象化」の過程において「内的精神的意味」を生み出すために「外的物質的表徴」としての視覚メディアを連動させながら認識させる必要性を説いた。このような石山の捉え方には視覚メディアの影響が大きく,そのことが教育現場に「形象理論」が浸透していく際の基礎となっている。このように,1920年代から1930年代にかけての国語教育における視覚メディアの教育は,国語教育に影響を与えてきた「形象化」という概念が具体化されていく過程で形成されていった。この問題は,現代の国語教育におけるメディア・リテラシー教育の位置を考えていく上で大きな示唆をもたらすものである。
  • 青木 宏樹, 出村 慎一, 北林 保, 藤谷 かおる, 岩田 英樹, 内山 応信, 宗倉 啓, 山下 秋二
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 11-20
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,生徒が判断する体育授業の構成要因及び要因間の関係について,校種間差及び性差を明らかにし,今後の体育授業のための有益な知見を提案することであった。中学生と高校生を対象に質問紙調査を実施し,1442名のデータを解析に利用した。体育授業の7構成要因(意欲,楽しさ,仲間(チームワーク),まもる,学ぶ(わかる),協力,できる)について検討した。意欲,楽しさ,仲間及び学ぶは,男女とも中学生が高校生より高値を示し,両校種とも仲間,まもる及び協力は女子が,楽しさは男子が高値を示した、楽しさとその他の因子間及び協力とできる間の相関係数に有意な校種間差が認められ,楽しさとまもる間及び協力とできる間以外は男女とも中学生が高校生より高値を示した。また,楽しさとまもる間及び協力とできる間は,中学生の男子が女子より高値を示した。以上から,中学生は高校生より意欲,楽しさ,仲間及び学ぶを,また,校種に関わらず,女子は仲間,まもる及び協力を,男子は楽しさを体育授業のより重要な構成要因として捉え,高い関係がある要因は,校種及び男女で異なることが示唆された。
  • 後藤 幸弘, 芹澤 博一, 下田 新
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    絶対評価基準を設定する場合,その拠り所となる根拠が必要で,普遍的なものであることが望まれる。本研究では,生涯スポーツの基礎を培うことを目標とする義務教育段階においては,技能的特性に触れた楽しさを味わせることが求められていることから,保健体育科の中核的教育内容と考えられる技能的側面に着目し,「技能的特性に触れているか」ならびに「機能的特性に触れているか」を拠り所とし,バスケットボールのレイアップシュート成功数,ワンハンドシュート成功数,ドリブル得点,攻撃完了率,シュート成功率,速攻創出率,連携シュート率,ならびに戦術と技術・ルールに関する認識度テストの計9項目について,文部科学省の言う「概ね満足できる」レベル範囲を男子中学生を対象に設定した。
  • 猫田 和明
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,オランダにおいて開発がすすめられている外国語教員のスタンダードの内容と日本の関連する文献にみられる英語科教員の資質・能力観を比較する。これによって,日本の教育環境を踏まえたスタンダードを作成する際に参照できる資料の提供を目指す。比較のための枠組みとして,言語運用能力ベースの資質,知識ベースの資質,指導ベースの資質,個人・対人関係ベースの資質の4分類を用いた。その結果,オランダに特徴的な要素は,(1)目標言語の定常的な使用,(2)社会文化的能力の重視,(3)自立学習の重視,(4)教員集団におけるチーム力の重視などであり,日本に特徴的な要素は,(1)教科書の内容を中心とした指導力,(2)学習意欲の重視,(3)コミュニケーション活動の重視,(4)教職への情熱・使命感などであった。これらの特徴は,教室場面以外で目標言語に触れる機会の多さや両国における教育的価値観と深く関わっていることを指摘した。
  • 臼坂 高司, 谷田 親彦
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学校技術・家庭科(技術分野)の「ものづくり学習」において,製作品を組立てるプロセスでの思考を中心とした学習活動を分析・把握することを目的としたものである。製作題材として設定したマルチラックを組立てるプロセスのプロトコルデータを中学生10名から収集し,組立ての工程と思考要因の順序性について検討した。その結果,組立て工程は,B「けがき」,A「仮組立て」を経由して,D「組立て」へ向かう順序性が表出し,必要に応じて逆方向に推移する関連性が示された。C「下穴あけ」は出現頻度が低く,A「仮組立て」,D「組立て」のいずれかに推移することが示された。また,思考要因の中,(1)「製作手順」が4工程において出現率が高く示され,組立てプロセスを実行するための中心的な思考要因となっていた。各工程における『製作活動の実行』に強い影響を与える特徴的な思考要因として,A「仮組立て」では(3)「完成品の構想」,B「けがき」では(4)「仕上がり」と(5)「強度」,C「下穴あけ」とD「組立て」では(6)「工具・機器の使用法」が示された。
  • 井上 奈穂
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,学力を総合的に把握可能な形で捉えることのできる社会系教科の評価法の開発過程を理論的・具体的に明らかにした。評価法開発の手順は以下の通り。(1)社会系教科の目標を「科学的知識の形成」と解釈する立場を取り上げ,想定される内容構成を明らかにする。(III)。(2)(1)を踏まえ,想定される内容構成と具体的な授業における学習活動との関係を明らかにする(IV)。(3)(2)を踏まえ,学力の定着の有無を判断するのに適切な評価活動を設定し,評価法を提示する(V)。本稿で取り上げたのは,高等学校・公民(現代社会)の単元「消費社会論」である。本単元の分析を通して,科学的知識の形成を目標とした授業に対応する評価法の具体が示された。評価法は,育成が期待される学力を総合的に把握可能な形で捉えることのできるものであり,具体的な授業場面と評価活動が対応している。このように,授業場面と評価活動の対応した評価法により,生徒の学力保障は現実的に可能となる。
  • 福田 喜彦
    原稿種別: 本文
    2009 年 32 巻 2 号 p. 59-68
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,東京高等師範学校附属小学校における説話主義歴史教育の理論と実践を明らかにすることである.東京高師附小は,『教育研究』誌上に教材観や教授法,国定教科書の解説などの情報を提示し,歴史教育研究に先駆的な役割を果たしていた。そして,明治以来のヘルバルト派教育学の流れをくむ開発教授による三段階教授法を洗練させ,国定教科書に基づく説話によって歴史を教授していく指導方法を確立した。山田の歴史教育実践の特色は以下の3点である,(1)説話を中心とした歴史教授によって児童の思考に「想像的直観」を起こさせ,歴史的事象を鮮明にすることを授業の指導過程の中に定着させたこと,(2)教授や学習の中心を教師の説話に置き,教師の豊富な知識によって児童の感情を誘起させたこと,(3)「フェルシュテーエン」の学説も援用しながら児童の発達段階を考慮して直観的,具体的に学習内容を理解させ,了解の域に導く可能性を示したことである。
feedback
Top